☆明久SIDE
先週末に行われた『雄二&霧島さん結婚大作戦』も結果を見れば無事に終わり、
いつもどおり平穏な週末の夜。僕の家には雄二が泊りに来ていた。
明久「あれ?雄二、何か買って来たの?」
雄二「食いものだ。お前の家にはろくな物がないからな。」
そう告げてテーブルの上にビニール袋を置く雄二。
明久「へぇ~。差し入れなんて、随分気がきくね。」
ガサゴソ、とビニール袋を開ける。すると、中には食べ物と飲み物が入っていた。
・コーラ
・アイスコーヒー
・カップラーメン
・カップ焼きそば
飲み物と食べ物がそれぞれ二つずつ入っている。これはありがたい。
明久「それで、雄二はどっちにするの?」
雄二「俺か?俺は――」
どうせ雄二はコーラと焼きそばだろう。
コイツの好みぐらい聞かなくてもわかるけど、
雄二「――コーラとコーヒーとラーメンとやきそばだ。」
明久「雄二キサマ!僕に割り箸しか食べさせない気だな!?」
雄二「待て!割り箸だけでも食おうとするお前の思考に一瞬引いたぞ!?」
慌てて雄二は止めに入る。
雄二「というか、割り箸がないと俺は素手でラーメン食う羽目になるだろうが。」
親指と人差し指で麺を摘まんで『熱い、熱い』と言いながらラーメンを食べる雄二の姿はシュールかもしれない。
雄二「まあ、割りばしはやらんが、代わりに他の物をお前にもきちんと買ってきてある。」
明久「え!そうなの?」
雄二「ああ。もう一つ袋があるだろ?そちがおまえの分だ。」
言われてみて気づく。一つ目の下敷きになっていてわからなかったけど、
よく見るとビニール袋はもう一つあった。
明久「なんだ。やっぱり僕の分も買って来てくれてたんじゃないか。」
雄二「まぁな。先週末は世話になったからな、感謝の気持ちだ。」
明久「そうか。雄二も素直になったんだね。」
下敷きになっていた袋を取り出し、中身を見る。
・こんにゃくゼリー
・ダイエットコーラ
・ところてん
明久「僕の貴重な栄養源がぁあーっ!」
全てカロリーオフという事実に涙が出る。
雄二「気にするな。俺の感謝の気持ちだ。」
明久「くそっ! 全然感謝していないな!?あの計画を実行するのに僕がどれだけ苦労したと思っているんだ!」
僕はダイエットコーラを取り出して構える。
雄二「うるせぇ!お前こそ、あれ以来俺がどれだけ苦労しているのか知っているのか!」
雄二は、普通のコーラを取り出して構える。
明久「……やる気かい、雄二?」
雄二「ああ。お前とは決着を付ける必要があると思っていたところだ。」
明久「上等。早打ちで僕に挑んだ事を公開するんだね。」
互いに相手を睨みつけ、牽制し合う。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 一色即発の空気 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
―――ピチョン
明・雄「「――っ!!」」
その音をきっかけに、状況は静から動へ。
にらみ合いから闘いへと動きだす。
開始動作はほぼ同時。それならこの勝負の行方はこの後の動き次第――!
先制攻撃をしないと!!
シャカシャカシャカ(ペットボトルを振る音)
ブシャアアァァァァ(お互いに向けて炭酸飲料を射出する音)
バたバタバタバタ(目を抑えてのたうち回る音)
明・雄「「目が、目がぁぁぁああっ!」」
しみる!コーラーが目に染みるよ!
くそう、さすが僕のライバル。
雄二「やってくれるじゃねぇか、明久!」
明久「雄二こそ、さすがは僕がライバルと認めた男・・・!」
そして雄二はコーヒー、僕はところてんを武器に
互いの尊厳をかけ、闘いへと身をゆだねた。
――★食べ物を粗末にしてはいけません。絶対に真似はしないでください!★――
明久「・・・雄二、一時休戦にしない?」
雄二「・・・そうだな。この戦いはあまりにも不毛だ。」
気が付けば全身がゼリーやところてんやコーラーやらでベタベタになっていた。
もの凄く気持ちが悪い。
雄二「明久、シャワー借りるぞ?」
明久「うん。タオルは適当なの使っていいよ。」
雄二「言われなくてもそうする。」
雄二は気持ち悪そうに、着ているシャツを摘まみながら脱衣所へと消えていった。
続いてバサバサ、と景気良く衣服が脱ぎ捨てる音が聞こえてくる。
明久「あ、そういえばさ、雄二。言い忘れていたんだけど――」
清涼祭の後色々あって木下さんがお風呂に入った時お湯が出ないことで怒られたっけ。
【第2章20話後半 ・ 第2.5章1話後半~2話 を参照ください。】
雄二『なんだ?』
バスルームから響くドア越しの声。その後蛇口をひねる音が聞こえた。
明久「ガス止められているから水しか出ないからね。」
雄二『ほわぁぁ――っ!?』
ガチャッ! ズカズカズカ
雄二「……先に言えやコラ」
腰にタオルを巻いた雄二は寒さで全身に鳥肌を立てていた。
明久「ごめんごめん。言い忘れてたよ。
えっとね、心臓に近い位置にいきなり冷水を当てると体に悪いから、
まずは手や足の先にかけてから徐々に―――」
雄二「誰が冷水シャワーの浴び方を説明しろって言った!?」
明久「なに熱くなってるのさ雄二。そうだ、冷たいシャワーでも浴びて冷静に。」
雄二「たった今浴びたから熱くなってるんだボケ!くそっ、このままじゃ風邪ひいちまう。」
明久「う~ん・・・。
そんな事言われても、僕の家のお湯が出ない事実は変わらないし。」
雄二「やれやれ仕方ない。明久、外へ出るぞ。」
明久「外?あ、そっか。皐月荘に行くんだね。」
雄二「それもいいけどな。プールもある処に行こうぜ。」
明久「プールもある処?」
ちょっと遠くにあるスパリゾートの事だろうか?
でも、今から行くには遅すぎるし。
雄二「ああ。シャワーもプールもあって、ここから近くて、尚且つ金もかからない処があるだろうが。」
シャワーもプールもあって、ここから近くて、尚且つ金もかからない処っていうと
――ああ、あそこか。なるほど。
明久「オッケー。すぐに用意するよ。雄二は水着はどうするの?」
雄二「俺はボクサーパンツで泳ぐさ。水着と大して変わらないだろ。」
明久「りょーかい。」
手早くすまして、僕と雄二は目的地である文月学園へと向かった。
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鉄人「・・・で、何か言い訳はあるか?」
二時間後、僕と雄二は文月学園宿直室に居た。
明久・雄二「「コイツが悪いんです。」」
綺麗にハモる僕と雄二の声。そしてお互いを指さす。
明久「って明らかに悪いのは雄二じゃないか!
雄二がまともな差し入れを持ってきたらこんなことにならなかったのに!」
雄二「それは違うだろ!
お前がガス代を払っておけばこんなことのはならなかったんだぞ!」
明久「何を言うのさ!水が出るだけマシじゃないか!」
雄二「水すら出ない事もあるのか!?」
鉄人「・・・もういい。よくわかった」
なぜか鉄人は額に手を当てため息をついていた。
明久「わかってもらえました? それは良かったです。」
雄二「んじゃ、わかってもらえたところでそろそろ帰るか。いい加減時間も遅いしな。」
明久「そうだね。それじゃ西村先生、失礼しま――ぐえっ!」
頭を下げて出て行こうとしたら、鉄人の太い腕が僕と雄二の首を抱え込んできた。
い、息が・・・!
鉄人「そう急ぐ事もないだろう二人とも。
帰るのは恒例のヤツをやってからでも遅くはないよな?」
グイグイとすごい力で首を締め付けられていく。
ここで下手な抵抗をしたら首の骨を折られかねない!
明久「そっそうですね・・・。是非、そうさせてもらいます・・・。」
雄二「お、俺も、そうさせてもらおう・・・。」
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第13問:英語
鉄人「今からバカどもの補習を行う。今から言う日本語を英訳しろ。
【問題】『私は所有者の許可なくプールを使ったことを反省しています。』」
吉井明久の答え
[I reflect on having the poor without owner's poor without owner's permission.]
鉄人「坂本、訳してみろ。」
雄二『私は所有者の許可なく貧民層の人々を使ったことを反省しています。』
鉄人「貴様は奴隷商人か。」
明久「あ、あれ!?どうしてそんな文章に!?」
鉄人「この阿呆が!よりによって"pool"と"poor"を間違えるな!中学校で習うような単語だろうが!」
明久(しまった。唯一自分で考えた部分だったのに全文、雄二のを写せばよかった。)
鉄人「さて、次々行くぞ。
【問題】『私は反省しているので、来週末にプールの掃除を行います。』だ。」
明久「そうですか。それは大変そうですね。頑張ってください。」
鉄人「(ボコッ)英訳しろ。」
明久「うぅぅ・・・。鬼教師・・・。」
雄二「鉄人に見つかったのが運のつきだった。」
鉄人「(ボコッ)西村先生と呼べ!」
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●康介SIDE
明久「てなことがあって、おかげで散々な週末だったよ。」
週明けの教室。朝のHRが始まるまでの時間、いつものメンバーで卓袱台を囲んでいた。
しかし、卓袱台もいいなあ。こうして和んでみんなと話せるし。
秀吉「そうじゃったか。それは災難じゃったの・・・」
気遣うように柔らかな表情を浮かべている秀吉。
康介「しかし明久、まだ払ってなかったのか?」
明久「だって、・・・」
雄二「おまえがガス代払っておけば、罰でプール掃除なんてしなくて良かったんだけどな。」
ムッツリーニ「……重労働」
ムッツリーニが、ボソリと呟いた。
明久「だよね。あんな広い所を掃除なんて、考えただけでも気がめいるよ。」
自業自得なんだろうけどプール掃除は同情するな。
雄二「褒美という程じゃないが、プールを自由に使っても良いと鉄人に言われたぞ。」
明久「え?そうなの?」
雄二「ああ。だからみんなで今週末にプールに来ないか?」
ただし、来るかわりに掃除手伝えってか。
御冗談を、横ではムッツリーニが頷こうとして・・・
雄二「ただし、来るなら掃除を手伝ってもらうけどな。」
ムッツリーニ「……」
雄二の言葉で固まるムッツリーニ
雄二「ちなみに、女子にも声をかけるつもりだ。」
ムッツリーニ「……ブラシと洗剤を用意しておけ。」
・・・ムッツリーニらしいと言えばらしいが。
俺の言葉に動きを止めたが、後のフォローにあっさりと頷いた。
秀吉「うむ、そうじゃな。
貸切プールなぞ、こんな時でなければなかなか体験できんじゃろうし、相伴させてもらうかの。
無論、ワシも掃除を手伝おう。」
明久「え?結構大変だと思うけど、いいの?」
秀吉「うむ、お安いご用じゃ。」
秀吉も行くのか。
明久「康介も来るよね。」
行くか・・・。
康介「ああ。」
雄二「んじゃ、おーい!」
美波「どうしたの坂本?」
みゆき「何か用?」
瑞希「呼びましたか坂本君?」
エイミー「何デスか?赤猿様」
・・・まだ赤猿とか読んでいたのか。
明久「あ、赤猿様って・・・」
大笑いする明久
秀吉「直接的じゃな。」
ムッツリーニ「……斬新。」
明久を羽交い絞めにし首を絞める雄二
明久「ギブイブ!!」
雄二「その呼び方は辞めろ!」
エイミー「ジャ、何テ呼ベバ良いデスカ?」
康介「ユウユウとかどうだ?」
パンダの名前になかったけ。
雄二「そんな恥ずかしい名前で俺を呼ぶな!」
美波「どうして、可愛いじゃない。」
みゆき「じゃ、レッドモンキーを縮めてレモンってどう?」
瑞希「すごくかわいいですっ!」
雄二「やめろ!俺をそんな名前で呼ぶんんじゃねえ!!」
真っ赤になる雄二、そして真っ青になる明久
秀吉「雄二、明久が死にかけとるぞい。」
慌てて明久を放す雄二
エイミー「ソレじゃア、何て呼べバ良いデスカ?」
雄二「普通に坂本って呼べ!」
康介「それじゃあ捻りがないだろ。坂モンなんてそうだ?」
美波「それいいじゃない!」
雄二「良くない!ってか捻りなんてもんいらないだろ!」
全く、贅沢者が。三案も拒絶するなんて
ムッツリーニ「……プールの話。」
そういえばそうだった。
みゆき「プールって?」
雄二「コホン、はあ、今週末、学校のプールを貸切で使えるんだが、暇だったら来ないか?」
「「「「え・・・?」」」」
プール、という単語で四人が一瞬ビクンと反応する。
明久「あ、さては四人とも予定があったりする?」
まあ、予定があったら仕方がないよな。
美波「い、いや、別に予定はないんだけど。その、どうしようかな・・・?
プールって言うと、やっぱり水着だし・・・」
みゆき「そう、よね。」
瑞希「そ、そうですよね。水着ですよね・・・。その、えっと・・・」
消極的な三人
エイミー「エ~、ドウしてデスカ?ミんナ行かナイんデスカ?」
説教的なエイミー
そういえば、エイミーって大きかったって言ってたよな。
【 参照:第2.5章第9話バカテスト英語:歓迎会】
雄二「そうか、まあ、仕方がない。
一つだけ言っておくが・・・、秀吉は来るぞ。明久に水着を見せにな。」
島田と姫路は目の色を変え
美波「ひ、卑怯よ木下!自分には自信があるからって!」
瑞希「そ、そうですっ!木下君はズルいですっ!」
秀吉「・・・お主らは何を言っておるのじゃ。」
・・・なんか秀吉に同情するなあ。
雄二「で、どうするんだ?」
美波「い、行くわ! その、イロイロと準備をして・・・」
瑞希「そ、そうですね。準備は大事ですよね。」
複雑そうな顔をする島田と姫路
みゆき「私も、私も行く!」
どうしたんだろう。
雄二「決まりだな。」
エイミー「他のみんなは呼バナイんデスカ?」
明久「呼ぶよね雄二」
雄二「ああ、無論だ。翔子には俺から言っておく。後は翔子が他の連中にも伝えるだろう」
秀吉「雄二も素直になったもんじゃ。」
秀吉は頷きながら顎に手を当てて言う。
ムッツリーニ「……成長した。」
礼の計画で仲良くなったのか。
康介「ようやくか。」
明久「雄二も大人になったね。」
雄二「いや、そう言う問題じゃない。」
エイミー「ドウイウ、問題デスカ?」
雄二「後々になってからこのことが翔子に露見してみろ。俺はどうなる?」
ミンチ?
雄二はすごく真剣な顔をして、その顔の裏には恐怖が垣間見られる。
明久「樹海の奥・・・いや、湖の底・・・」
みゆき「でも、それは無いんじゃないかな。
だって死なせたら好きな人と別れ・・・無理心中」
なるほど、みゆきの考えが適切そうだ。
雄二「恐ろしい想像はやめてくれ。まあ、そんなとこだ。」
エイミー「ジャア、ミンナで行くンデスネ!」
雄二「そういうことだ。土曜の朝10時に校門前で待ち合わせだ、水着とタオルを忘れるなよ。」
「「「「了解!!」」」」
鉄人が教室のドアを開ける音が響いた。