☆明久SIDE
雄二「高橋女史!悪いがここは通らせてもらうぜ!行くぞ―――起動(アウェイクン)っ!」
雄二の掛け声で『白金の腕輪』が起動した。
それと同時に雄二の召喚獣が消滅する。
雄二が持っている腕輪の能力は、召喚フィールドの作成。つまり――
高橋「干渉ですか・・・!やってくれましたね坂本君・・・!」
雄二「行け明久!ムッツリーニ!」
明久「行ってくる!」
ムッツリーニ「……任せておけ(グッ)」
異なる二種の科目のフィールドが重なり、召喚フィールドがバラバラに崩れて召喚獣も消失していく。
「「「吉井達に続けーっ!」」」
その後ろに他の男子も続こうとするが、
高橋「く・・・!吉井君と土屋君は逃がしましたが、あなたたちまで通しはしません!」
その時には高橋先生が召喚獣を呼び直していた。
雄二「流石は高橋女史。判断が早い・・・」
雄二の呻き声が聞こえた。
高橋先生は自分の召喚フィールドを消したみたいだ。
そうなると雄二の召喚フィールドが残って召喚獣が再び姿を現す。
どうやらこの先は僕とムッツリーニだけで進むしかなさそうだ。
明久「ムッツリーニ、打ち合わせ通り大島先生をよろしく!」
ムッツリーニ「……了解。」
他の怒の会より若干長い階段を駆け降り、女子風呂への一本道へと辿りつく。
階段を振り切ったその先には、雄二の予想通り大島先生と、加えてもう一人
愛子「待ってたよ、ムッツリーニ君。もしかしたら来ないんじゃないかと思ったよ。」
明久「く、工藤さん・・・」
木下さんたちが協力しているのに工藤さんは・・・
明久「工藤さん、そこをどいてくれないかな。僕らは君に手出しをする気はないんだ。」
戦闘の意思がないことを告げるけど、
ムッツリーニ「……明久、先に行け。これは俺の戦い。手出しは無用。」
一瞬ムッツリーニに惚れた。
明久「でもっ!」
愛子「ボクも一応女の子だから、通すわけにいかないんだけど――」
ニヤリと笑う工藤さん
愛子「――いいよ。ムッツリーニ君に免じて通してあげる。」
明久「けど・・・。」
ムッツリーニとはいえ、大島先生と工藤さんを相手にするなんて・・・
愛子「吉井君はムッツリーニ君を信じられないのカナ?」
信じられないわけじゃない。だけど・・・
ムッツリーニ「……行け、明久。」
明久「けど、」
ムッツリーニ「……明久、与えられた役割を果たせ。」
っっ!!
鋭く研ぎ澄まされた目をしたムッツリーニ、今まで見たことがなかった。
本気で勝つ気だ。この二人に。学年最強クラスの二人に。
明久「わかったよムッツリーニ。僕は鉄人を倒す。」
そう言って僕は工藤さんの横を通り過ぎ、大島先生の横を通り過ぎる。
二人とも止めようとしなかった。逆に工藤さんからは
愛子「健闘を祈るよ。吉井君。」
健闘を祈るって、鉄人との戦いに?どうして?
そんな事を考えながら鉄人との決着に向かう。
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◇ムッツリーニSIDE
大島「土屋、お前には失望した。まさか教師を相手に勝てるなんて幻想を抱くとはな。」
ふん、誰が決めた。
愛子「それじゃあ、――」
どうして俺に背を向ける?
愛子「――こうならどうですか?」
大島「工藤、貴様どういうつもりだ!」
何を考えてる工藤愛子。
ムッツリーニ「……何をしている工藤愛子。」
愛子「何をってわからない?ムッツリーニ君。」
大島「どういうつもりか答えろ!」
フッおもしろい。
ムッツリーニ「……工藤愛子、貴様との決着はいずれ必ず。」
愛子「望むところだよ。ムッツリーニ君。それじゃあ、」
ムッツリーニ「……土屋康太――」
愛子「工藤愛子――」
ムッツリーニ・愛子「「――保険体育教師、大島先生に試験召喚戦争を申し込む(みます)!!」」
大島「覚悟はできているんだろうな土屋、工藤!」
そう言い終わるとフィールドが形成された。
ムッツリーニ「覚悟をするのは大島先生、試獣召喚(サモン)」
愛子「ボクとムッツリーニ君には叶いませんよ。試獣召喚(サモン)」
大島「どうやら、教師をなめてかかると痛い目に合うという事を
教えてやらないといけないようだな!試獣召喚(サモン)」
【保健体育】
体育教師 大島武 501点 VS Fクラス 土屋康太 774点
Aクラス 工藤愛子 483点
愛子「・・・・・・む、ムッツリーニ君・・・。」
俺の点数に言葉を失う工藤と大島先生
ムッツリーニ「……俺も失望した。教師が生徒相手に負けるなんて現実。」
大島「(ギリッ)土屋、貴様・・・。」
誰も教師に生徒が勝てないなんて決めていない。
しかし、
愛子「ムッツリーニ君、ボクは・・・。」
先ほどまでの威勢を失った工藤、俺だけの所為ではないが、
ムッツリーニ「……俺と決着をつけたければもっと強くなれ工藤愛子!」
落ち込んでいる工藤を見ると気に障る。
愛子「うん!」
ハッ!?、今のは・・・何でもない!
ムッツリーニ「……行くぞ、工藤愛子。」
俺は小太刀を構え、
愛子「そうだね。ムッツリーニ君!」
工藤は大斧を構えて、
かつての師の召喚獣を倒すため突き進む。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆明久SIDE
みんな、ありがとう。
不可能だと思われた作戦は、今、多くの仲間たちに助けられて成功を収めようとしている。
ギュッと拳を握り誓う。『必ず鉄人を倒す』と。
鉄人「・・・やはり来たか、吉井。」
扉の前に立つ最後の敵が目を開け、静かに構えをとる。
明久「勝負だ鉄人!この僕の本当の力を見せてやる!」
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第16問:物理
問 以下の問いに答えなさい。
『観測者Aが速度vで走っていると、
正面から周波数fの音を発し速度v’で走行してくる救急車がやってきた。
音速をVとしたとき、観測者にどのようなことが起きるのかを書きなさい。
また、その現象の名称も併せて答えなさい。』
《解答》
秋月さくらの答え V+v
『観測者Aには車から発する音の周波数がf(――――)となって聞こえる。
V-v’
現象の名称・・・ドップラー効果 』
教師のコメント
F1マシンが通過する時もこれと同様の現象が起こっていますね。
物理現象は一見難しいように思われますが、意外と身近に存在するものです。
吉井明久の答え
『観測者Aが速度(v’+v)で撥ねられる。
現象の名称・・・交通事故 』
教師のコメント
きちんと相対速度を補足してあるあたりが腹立たしいです。
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☆明久SIDE
明久「先生!よく僕がここまでたどり着くと思いましたね!他の先生は皆楽観していたのに!」
鉄人「俺は相手を過小評価せんからな!
貴様は阿呆だが、口惜しいことにその行動力は並ではないと認めている!」
明久「それはまた、ありがとうございます――――っと!」
鉄人の拳を木刀を使って上手くいなす。もう前回のように油断はしない。
向こうは格上の召喚獣だと思って戦う!
鉄人「だが、その行動力は他のことに活かすべきだ!
これでは貴様ら只の性犯罪者だ!停学が怖くないのか?」
外見からは想像できないような鋭い蹴りが放たれる。
これをまともに受けたら吹き飛ばされる!
明久「脅そうったってそうはいきませんよ!
これだけの人数がいれば全生徒の特定はできないはず!
一部の生徒だけの処分なんて、出来るわけがない!」
なんとか屈んでやり過ごし、反撃に木刀を脇腹目掛けて横に薙ぐ。
でも、その攻撃は鉄人の太い腕に弾かれた。文字通り筋肉の鎧ってことかい!
鉄人「それは言葉を換えれば、特定されたら停学になるという危険な状態だと、なぜ理解できんのだ!」
明久「それなら覗きに加担した生徒をリストアップしてみせるんですね!」
弾かれた勢いを利用しての回し蹴り、これは防御されることなく太腿にヒットしたけど、
よろけたのは鉄人ではなく僕の召喚獣の方だった。
いくら召喚獣の体重が軽いからといってもあり得ない身体だ!
鉄人「言うじゃないか!ならば貴様らを全員打ちのめし、ゆっくりと名前を記録してやるとしよう!」
明久「ぐっあっ!」
体勢を崩した僕の召喚獣に鉄人の拳が浅くヒットした。それなのに吹き飛ばされ壁にぶち当たった。
それに伴って僕の身体にも痛みが返ってきた。
鉄人「貴様をその一人目にしてやる!」
止めを刺すためにのっしのっしと召喚獣に歩み寄る鉄人。
あのバケモノを相手に召喚獣が一体だけじゃ力不足だ。
いくら康介達でもあの高橋先生じゃ暫くは増援は期待できない。
だったらどうする?一度退散して・・・いいや、ありえない。
ここまで来た以上、石にかじりついてでも勝利をもぎ取る!絶っっっ対、負けるもんか!
明久「行くぞ――っ!二重召喚(ダブル)っ!」
喚び声に応じて現れた分身に指示を出す。
鉄人「ぐぅっ!吉井ぃいい!貴様ぁ・・・!」
突然現れたもう一体の召喚獣の攻撃をなんとか防ぎ、鉄人は慌てて距離をとった。
一体だけで足りないのならもう一体追加してやればいい。
幸いにも僕にはその力がある。この前手に入れることのできた力が。
鉄人「白金の腕輪か。学園長も余計なことをしてくれたものだ。」
鉄人の表情から余裕が消えた。召喚大会で手に入れた賞品、『白金の腕輪』。
僕のは召喚獣をもう一体喚ぶことができるという効果を持つ。
うまく使えば鉄人を打倒することだってできるはずだ!
明久「先生、勝負はこれからです。」
二体の召喚獣に構えを取らせ、挟み込むように移動させる。
主獣(メイン)は右から、副獣(ダブル)は左からそれぞれ木刀を繰り出した。
鉄人「ぬっ。くぅっ・・・!」
まったく逆の方向から訪れる攻撃に対して鉄人の体勢が崩れる。
よしっ!すかさず二体同時にガラあきの膝にローを放つ。
が、これは鉄人が膝を曲げて丸太のような腿で受けた。
まるでタイヤを蹴ったようなフィールドバックが僕に伝わってくる。
拳、蹴り、木刀を駆使して左右から鉄人に攻撃を加える僕の召喚獣。
明らかに先ほどまでと違って鉄人は劣勢だ。
こちらの攻撃がどんどんヒットしている。でも、
明久「(ギリッ)全然ダメージを与えられない・・・!」
鉄人は頭部や鳩尾といった最低限の箇所だけを防御し、その他は頑強な肉体で弾き返していた。
このバケモノめ!
鉄人「どうした吉井?焦りが顔に出ているぞ?」
僕の表情を見て鉄人が口の端を持ち上げる。
一件優勢なようだけど均衡状態になっただけで僕の状況はかなり厳しい。
僕は主獣の行動に加えて副獣の行動も同時に考えないといけないからだ。
いつまでもこの状態を維持できない。
主獣の木刀を振るわせ、副獣は右拳を突き出す。木刀を避け、拳を受けた鉄人は拳を放つ。
その目標は副獣――じゃなくて主獣か!両腕を交差させてガード、その間に副獣は左肘を鉄人の脇腹へ。
肘でブロックされたから、今度はローキックを主獣いや副獣の方が――
鉄人「動きが鈍っているぞ吉井!」
明久「くぅっ!」
右腕に鋭い衝撃が走る。これは主獣か副獣、どっちが受けた攻撃だ?
しまった!追撃が!攻撃の手を緩めたらって間に合わない。
拳が来る。急いで副獣に防御を―――!?フェイクか!殺ら――
明久「ぶふぁっ!・・・・ぐ、ふぅ・・・・・・っ!」
はあ、はあ、鳩尾に鋭い痛みが走る。
僕は苦しみに耐えかねて、廊下に背中から倒れ込んでしまった。
鉄人「ここまでだな、吉井。」
決着はついた、と言わんばかりに余裕を見せる鉄人。
分厚い筋肉という鎧に守られ、
こちらの攻撃当たってはいたものの内部に全然とどいていなかった。
鉄人「所詮、下心の為の集中力なんてそんなものだ。」
ゆっくりと鉄人が倒れている僕に近づいてくる。
ハ、ハ、ハ、そうだ。僕には集中力が足りていなかった。
だから余計なことを考えて主獣と副獣の行動が混ざってしまう。
けど、そんなことが今わかったところで二体を同時に操る集中力なんてすぐに身に付くわけがない。
この場は僕の負けだ。覗きは諦めて、明日からは集中力を・・・
明久「そうかぁっ!」
全身のばねを使って跳ね起きる。そうだ!まだ手はある。
鉄人「ほう・・・まだやるのか?根性だけは人一倍だな。」
立ち上がった僕を見てどこか楽しげに口元を歪める鉄人。
どこまでも余裕のある態度を崩さない。だが鉄人、笑っていられるのもここまでだ!
明久「鉄人、感謝するよ。今アンタは僕にヒントをくれた。」
鉄人「ヒントだと?」
明久「今、言ったじゃないか。『集中』って。」
二体の召喚獣でそれぞれに指示を出すから頭が混乱する。
攻撃を別々の箇所に分散させるから相手の防御を貫くほどの威力が出ない。
それが今の僕にとっての問題だ。けど、その二つはたった一つの方法で解決することができる。
明久「そう、集中だ。狙いを絞るんだ。
主獣も副獣もそして僕自身も、今から放つすべての攻撃を只の一点――」
一撃で筋肉を崩せないなら、何度も同じ場所を攻撃すればいい。集中だ。
今から放つすべての攻撃を――
明久「―――アンタの股間に集中させる!」
鉄人の表情に動揺が走った。
鉄人「き、貴様、なんて恐ろしいことを考えるんだ!?」
明久「行くぞ鉄人っ!」
ローと見せかけて金的狙いに変化するキック。
足元を狙ったと見せかけて股間を突きに行く木刀。
鳩尾狙いから下腹部狙いに軌道を修正した拳。
これら全ては、たった一度の急所攻撃の為に・・・!
鉄人「こ、これほど執拗な急所攻撃をするヤツは初めてだ・・・!」
鉄人の表情から余裕が消える。よし!これならイケる!
脇腹狙いから金的蹴り、肘を取ると見せかけて股間に肘鉄、ストレートに急所突き、
とにかく股間ただ一点に攻撃を集中する。
みんなの思いを、そして
・・・日頃の恨みを込めて!
気が付くと、向こうは防御に手一杯になっていた。
そろそろだろう。
明久「悶絶しろ!鉄人っっっ!!!」
攻撃が来ないなら、と副獣が力を溜めて大きく拳を振う。
鉄人「く――っ!」
鉄人はその動きを見て股間のガードを固めた。
明久「なんて、ウソです。」
その瞬間、主獣を動かして副獣を踏み台に鉄人の背後へと跳ばせる。
今の予備動作はフェイク、本命はこっちの主獣だ!
鉄人「しまっ――」
明久「もらったぁぁーっ!」
下段防御に回した腕は頭部の至るまでに時間がかかり間に合わない。
僕の召喚獣の手刀が鉄人の無防備な首へと吸い込まれて、
鉄人「ぐぅ・・・っ!よ、吉井、きさ、・・・ま・・・・・・・」
ドサッ、重い音を立てて、鉄人はゆっくりと床に倒れ伏した。
明久「フ、フ、フ、フハハハハ。」
やった、遂にやった。悲願だった鉄人を倒した!
ムッツリーニがかっこよすぎましたね。