問 以下の問いに答えなさい
『西暦1492年、アメリカ大陸を発見した人物の名前をフルネームで答えなさい。』
《解答》
姫路瑞希の答え
『クリストファー・コロンブス』
教師のコメント
正解です。卵の逸話で有名な偉人ですね。
コロンブスという名前は有名ですが、
意外とファーストネームが知られていないことが多いようです。
意地悪問題のつもりでしたが、姫路さんには関係なかったようですね。よくできました。
清水美春の答え
『コロン・ブス』
教師のコメント
フルネームはわかりませんでしたか。
コロンブスは一語でファミリーネームであって、
コロン・ブスでフルネームというわけではありません。気を付けましょう。
島田美波の答え
『ブス』
教師のコメント
過去の偉人になんてことを。
吉井明久の答え
『コロンブスの卵』
教師のコメント
コロンブスの卵とは
『一見簡単そうなことでも、初めて行うのは難しいというたとえ』のことで、
名前ではありません。
【解説】
コロンブスはアメリカ大陸を発見し、一躍有名になったわけですが、
『アメリカ大陸の発見はだれでもできること』と成功を妬み批判する人々が出てきました。
そこで、コロンブスは批判する人々に卵を立てさえたが、誰一人絶たせることが出来ず、
コロンブスは卵の尻をつぶして卵を立てさせて見せたことから。
○康介SIDE
康介「Zzz,Zzz」
☆明久SIDE
なんだろう。
教室が今までにないくらい静まり返っている。
いつもの騒がしいFクラスが嘘のようだ。
教室には先生の板書の音だけが響く。
三沢「・・・(バキッ)」
チョークが折れる音がした。
三沢「おい!お前らどうした?なんかしゃべれよ!」
いや、普通しゃべっちゃいけないんじゃ・・・。
「吉井コロス。」
「吉井刺す。」
「吉井ブッ殺す。」
・・・
三沢「お前らどうした?
・・・まあいい。じゃ、ええっと姫路。
この場合3molのアンモニアを得る為に必要な薬品はなんだかわかるか?」
瑞希「美波ちゃん・・・やっぱり、明久君のことが・・・。」
三沢「・・・。あ、あ、音羽!音羽!お前ならできるよな!」
康介「Zzz,Zzz」
三沢「音羽ぁああ!!頼むから起きてくれ!!」
三沢先生が康介をがくがく振っている。
ふと、誰かの視線を感じてあたりを見回してみた。
すると目があいそうになって慌てて顔を伏せる人が居た。
――美波だ。
な、なんだろう。まさかずっと僕の方を見ていたんだろうか?
それってなんだか、その・・・好きな人にする仕草、みたい・・・だ。
な、何だか鼓動が速くなって・・・あ、熱い。
なんてことを考えていると
あっと言う間に時間がたって、一時間目の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
三沢「もういい、お前らなんて知らねぇえ!!」
逃げ出すように三沢先生が出ていく。
「吉井のヤツ、島田と目と目で通じ合っていやがったぞ・・・!」
「島田は狙い目だと思ったのに、あのクソ野郎・・・!」
「畜生・・・!姫路、木下に続いて島田までヤツに持っていかれたら、
このクラスの希望はアキちゃんしかいねえじゃねぇか・・・!」
殺意の籠められた視線が飛び交う中、誰かが僕の席にやってくるのが見えた。
ピコピコと馬の尻尾を動かしながら歩いて来るのは
明久「み、美波?」
美波「アキ。お、おはよ・・・。」
目を伏せたままの美波から挨拶が聞こえてくる。
明久「うん、おはよ。」
うう、僕も目を見られない。
相手があまりに怒っていて目が見れないことはよくあるけど、こんなのは初めてだ。
美波「あ、あのねアキ。お願いあるんだけど、いいかな・・・?」
明久「な、なにかな?」
お互いに目を見ない会話が続く。
美波「その・・・今日のお昼、一緒に食べない?」
別に今までだったら何気ない日常の光景だったのかもしれないけど、今日は何かが違う。
明久「あ、そ、そうだね。それじゃ、お昼に水飲み場で・・・。」
返事するだけなのに、異様な緊張をした。
美波「ううん。そうじゃなくてね、ウチがアキの分も作ってきたから――」
美波が手に提げた鞄から何かを取り出そうとしたその時、
美春「お姉さまっ!何をしてるんですか!?」
突如教室内に悲鳴のような制止の声が響き渡った。
美波「み、美春!?ウチの邪魔をしにきたの!?」
美春「当然ですっ!手作りのお弁当は美春と一緒に食べましょう!
お姉さまが昨日お弁当用の食材を買っている姿を確認してから、
美春は何も食べずにたっぷりとお腹を空かせてきましたから!」
美波「でも、これはその、アキの為に。」
美春「お姉さまが朝の四時に起きてわざわざお手製のタレで下味をつけた唐揚げとか、
ちょっと奮発して買った挽肉で作ったハンバーグとか、
産地に気を遣って選んだじゃがいもで作ったポテトサラダとか、
考えるだけで美春は、美春は・・・!」
美波「待ちなさい美春!どうしてアンタがそこまで知ってるの!?」
○康介SIDE
う~ん、なんだか、うるさいな。
眼前に広がる光景は・・・あれ?化学は?もう終わったのか?
みゆき「起きたの?」
康介「ああ、あれ?三沢先生は?答えた後の記憶がないんだが。」
みゆき「それは夢の中で答えたんじゃない?」
康介「?」
みゆき「いや、答えてないから。現実世界では。」
・・・ああ、
康介「それで、どうして・・・」
みゆき「清水さん?」
康介「ああ、その清水さんがどうしてここにいるんだ?」
みゆきが会話を聞いてみろとジャェスチャーする。
美波「・・・だって、ウチはアキと付き合っているんだから。」
その瞬間、
バンッ
明久「畳替えしっ!!」
シュカカカカッ
周りから一斉にカッターが明久の元に吸い寄せられた。
もし、フローリングだったら明久は落ち武者のようになっていたことだろう。
というか明久の近くに居るのは危ない気がする。
美春「お、お姉さま・・・?付き合ってるなんて、冗談、ですよね・・・?」
清水さんはよろめきながら聴いた。
そんな清水に島田は静かに首を横に振って答えた。
美波「冗談なんかじゃないわ。ホントの話。」
美春「そ、それじゃ、お姉さま。
美春の幻覚だと思った今朝のキスも、本当に・・・?」
康介「何か一波乱起きそうだな。」
みゆき「やっぱり?」
康介「見てみろ清水の目を。」
美波「だからね、美春、これからもウチの――」
美春「(…男なんか)」
美波「――あくまでお友だちとして――」
美春「(…男なんかが存在するから、お姉さまが・・・)」
みゆき「なんだか清水さん小刻みに震えていない?」
美波「美春、聞いてる?」
美春「男なんかが存在するからお姉さまが惑わされるんですーっ!」
康介「覚醒したな。」
直後、清水は弾かれたように動き出した。そして、その矛先は明久だ。
美春「この豚野郎を始末します!
そして美春が第二の吉井明久としてお姉さまと結ばれるのです!」
みゆき「言っていることがよくわからないんだけど。」
康介「俺もわからん。」
明久「ちょ、ちょっと清水さん!?かなり錯乱していない!?
僕を始末したところで入れ替わることは難しいと思うけど!?」
美春「極力身体に傷をつけないように始末した後、剥いだ皮をかぶって吉井明久になりすまします!」
康介「グロイな・・・」
清水がすごく速い動きで明久に迫り、逃げる明久。女を賭けての戦いが始まった。
少し離れて明久と清水の戦いを見物する。
清水が素早い動きで明久を肉薄し、三角定規の鋭角部分で明久の右眼球を貫こうとした。
が、紙一重で明久が回避した。
雄二「惜しいな。」
見物していた雄二がつぶやいた。
秀吉「今のはきわどかったのう。」
みゆき「吉井が少しでも遅れていたら串刺しだったわね。」
その後も清水からが繰り出される攻撃を必死に受け止め、逃げる明久。
これはもはや一方的だ。
明久「助けて!ムッツリィーニ!!」
ムッツリーニ「……今、消しゴムのカスで練り消しを作るのに忙しい。」
エイミー「凄くおッキクなっテマス!」
断わられた明久
明久「康介!見てないで助けてよ!」
康介「悪いが俺は見物するのに忙しい。」
明久「くそ、こうなったら・・・秀吉!」
秀吉「まあ、頑張るのじゃ!」
雄二「明久!さっさと殺られろ!」
明久「そんな秀吉!僕を嫌いになったの?
それから雄二はどうして罵声なのさ!」
雄二「俺は、お前の不幸が好きだ。」
明久「そんな告白しなくていいよ!」
美春「ごちゃごちゃうるさいです豚野郎!さっさと殺られなさい!」
しだいに教室の端へ追い詰められていく明久。
明久「待ってよ清水さん!一旦落ち着こうよ!」
美春「待ちません!豚野郎は消えるべきです!
美春はお姉さまと結婚して、生まれてくる娘に
お姉さまの『美波』から字を取って『美来』と名付けるのです!」
明久「待つんだ清水さん!息子が生まれたらどうするんだ!」
美春「男なんかが生まれるのなら『波平』で充分です!」
明久「そんな、あんまりだよ!」
美波「二人とも!その前にウチと美春じゃ子供ができないって気づきなさいよ!」
美春「さぁ、無駄話は終わりです。五秒あげます。神への祈りを済ませて下さい。」
明久「く・・・っ!」
明久の必死の交渉はむなしく失敗。じわりじわりと確実に清水が距離を縮めていく。
雄二は口先を上げて、
雄二「ふん、決まったな。これでおしまいだ。」
あと一歩で決着がつく。そんな時に、
ガラッ
鉄人「さぁ、授業を始めるぞ。今日は遠藤先生が出張しているので俺がビシビシ――ん?
やれやれ・・・清水か・・・丁度いい。」
鉄人がやって来た。
康介「野球中継を途中で打ち切られた時の感じだな。」
みゆき「ああ、確かにね。」
雄二「(チッ良い所だったのに。)」
ムッツリーニ「……残念。」
エイミー「面白かっタデすヨ。」
秀吉「お主ら・・・。」
それぞれ言葉を残してすぐさま席について授業の準備をする。
鉄人「長谷川先生が出張でHRを三沢先生に任せていたんだが渡すのを忘れていてな。」
三沢先生・・・
そう言って越人は清水に近づき、
鉄人「受け取れ。」
茶封筒を渡した。
鉄人「授業が始まるから清水は自分の教室に戻るように。
お前らは早く席に着け、たまには教科書を開いて予習ぐらいしたらどうなんだ?」
美春「きょ、今日は特に大事な用なんです!西村先生、今だけは美春を見逃して下さい!」
茶封筒を開けながら鉄人に食い下がる清水。
鉄人「特に大事な用事?それはどんな用だ?」
美春「はい、『この教室の男子を全て殲滅する』という特に大事な――」
ん?どうしたんだ。
取り出した紙切れを凄いスピードで粉々にしたぞ!
そして、またプルプルと震えだした清水
美春「――これはどういう事ですか!」
鉄人「今までの行いの結果だ。早く教室に戻れ。」
美春「納得が出来ません!どうして美春がそこに居る豚野郎と同じなんですか!」
鉄人「昨日の緊急職員会議で決定された。
先週の強化合宿の一件とこれまでの行動を鑑みての処置だ。」
・・・
みゆき「(吉井と同じってことは)」
康介「(『観察処分者』に指定されたってことか。)」
なるほど、本来なら退学という処置を行う所であったが、
学外への漏えいを防ぐためといったところか。ババアも大変だな。
美春「美春が何をしましたか?
美春はただ、お姉さまとの愛を求めただけです!」
・・・ダメだ。清水の頭は現代の精神医学では治せない
鉄人は大きなため息をついて、清水の首根っこを掴み、
鉄人「早く教室に戻れ。それと今後この教室への立ち入りを禁じる。」
ピシャン
Fクラスからつまみ出し、扉を閉めた。
美春「お、お姉さまっ!まだお話が!せめてその豚野郎を抹殺して――」
ドンドンドンと清水が扉を叩く音が聞こえる。
鉄人「清水、『観察処分者』ではなく、『要観察処分者』を新設し、貴様を指定することも提案された。
前例がないことから却下されたが、反省が足りないようなら『要観察処分者』の指定も検討するが?」
途端に扉を叩くを音がしなくなった。
『要観察処分者』って何?
明久の上ってことはさぞ辛い『お手伝い』が待っていることになるのだろうけど。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
☆明久SIDE
美春「お、お姉さまっ!まだお話が!せめてその豚野郎を抹殺して――」
ドンドンドンと清水さんが扉を叩く音が聞こえる。
鉄人「清水、『観察処分者』ではなく、『要観察処分者』の指定も提案された。
前例がないことから却下されたが、反省が足りないようなら『要観察処分者』
の指定も検討するが?」
途端に扉を叩くを音がしなくなった。
鉄人によってFクラスを叩き出された清水さんは
覗き窓越しに僕を睨みつけながら、それ以上抗う事もなく清水さん僕らの教室を後にした。
鉄人「さあ全員席に着け。授業を始める。教科書86ページを開けろ。今日の内容は――」
ふと、美波から話しかけられた。
美波「(ア、アキ。また、お願いがあるんだけど、いいかな・・・?)」
明久「(え?なに?)」
ちょっと目を合わせにくい。
美波「(えっと、アキの卓袱台を一緒に使わせて欲しいんだけど・・・。)」
明久「(へ?卓袱台?)」
美波「(うん。さっきの騒ぎでウチの卓袱台使いにくくなっちゃって。ごめんね。)」
言われてみると美波の卓袱台はボロボロになっていることがわかる。
そうか、さっきの騒ぎでか、それなら一応僕にも責任があるわけだし。
明久「(いいよ。)」
美波「(そう。ありがとっ。)」
パッと花が咲くように笑うと、
美波「(じゃ、す、座るわね・・・。)」
美波は僕の隣に座った。・・・それはいいんだけど。
きょ、距離が近い!女の子特有の良いにおいが・・・
ハッ!周りから今にも襲い掛かってきそうな凄い殺気を感じた。
しかし、鉄人が抑止力になっているのだろう。今日のところは感謝だ。
だけど、休み時間になったら――
サワッ
明久「ひぁっ!」
考え事をしていると、背筋にくすぐったい何かを感じて、肺から空気が絞り出された。
美波「(あ、ごめんねアキ。)」
美波が謝りながら髪の毛を手で押さえる。そうか、さっきのは美波の髪のか毛・・・。
明久「(い、いや、別にいいけど・・・。)」
まだこそばゆいので首筋に手を当てる。
よく女の子が『中途半端な長さにしていると首がくすぐったい』と言っているのはこういう事なのだろう。
確かにこれは耐えがたい感覚だと――
サワッ
明久「ひぁっ!」
まただ。目をやると、今度は美波が髪の毛を片手に楽しげにこちらを見ていた。
美波「(アキってば、『ひぁっ!』って。変な声。)」
今度はわざとだったのか。
く・・・っ!
僕をからかっているな!
それならこっちも、とは思ったものの・・・
僕の髪は短いから美波に同じことはできない。
筆のようなものでもあれば・・・そうだ!
随分前に筆箱に入れておいた『あれ』の存在を思い出した。
目的のものを取り出そうと筆箱の中を探る。
美波「(アキ、何をしているの?)」
明久「(もちろん、仕返しの準備だよ。コレで美波にも同じことを――)」
美波「(・・・)」
サワッ
明久「ひあっ!」
三度目だ。
明久「(ず、ズルいぞ美波!今度は僕の攻撃のはず!邪魔はナシだよ!)」
美波「(そんなもの用意されたら邪魔するに決まっているでしょ!?
思いっきりインクが付くじゃない!)」
美波に手を押さえつけられ、僕は持っていた筆ペンを落としてしまった。
僕の攻撃手段が・・・っ!
明久「(くそっ!それなら美波の髪を使うまでだ!)」
美波「(ちょ、ちょっと!?)」
僕に掴ませまいと髪を抑える美波の頭に手を伸ばす。
狭いスペースだし、そんな抵抗は無いに等しい。
程なくして美波の束ねられた後ろ髪は僕の手中に収まった。
よし!これで思いっきり反撃を・・・
明久「(・・・。)」
美波「(・・・あ、アキ?どうしたの?)」
急に動きを止めた僕を訝しんで美波が顔を覗き込んできた。
明久「(いや、その・・・。)」
思わず言いよどんでしまう。
だって、手触りが良くて、良い匂いもするし、何よりドキドキする。
これは僕の知っている髪の毛じゃない!
となると、
明久「(なるほど、ヅラか・・・。)」
美波「(アンタ何言ってんの!?)」
引っ張っちゃって思わぬ事故が起きないようにそっと手を放す。
美波も苦労しているんだな・・・。
美波「(こらぁっ!もの凄い誤解したまま手を離さないでよ!
きちんと触って確かめなさいよね!)」
美波は手を頭の後ろにやると、スルッと何かを抜き取った。
その後、束ねられていた柔らかそうな髪の毛が宙に広がる。
陽の光を受けて流れるそれは、まるで絹のように艶やかで、銀細工のように煌びやかだった。
美波「(これでもきちんと手入れしているんだからね!
ズラ扱いなんて冗談じゃないわ!触ってたしかめなさいっ!)」
ヘアゴムを外してほどかれた髪を一房、美波が僕に手渡してくる。
けど、触って確かめるまでもなかった。
明久「(ごめん、美波、僕の誤解だったよ。)」
美波「(?怪しいわね。ほんとうにちゃんとわかったの?)」
疑わしげな視線を僕に送る美波、でも、僕は本当にわかってる。だって、
明久「(もちろんだよ。いくら僕でも、[こんな・・・]を作り物と間違えたりはしないよ。)」
美波「(こんな、何?)」
明久「(そ、その・・・、こんな、[きれいなもの]、を・・・。」
美波「・・・え・・・?」
その時だった。
「「「もう我慢ならねぇーーっっ!!!」」」
そんな時、教室中から怒号があがった。
見えるのはカッターを構えて僕の方を向いているクラスメイトたち。
一体何事!?
○康介SIDE
さきほどまでカタカタして我慢していたみんなが突如、
「「「もう我慢ならねぇーーっっ!!!」」」
教室中から怒号があがり、明久に向けてカッターを構える。
「さっきから見てりゃあ、これ見よがしにイチャイチャしやがって!」
「殺す。マジ殺す。絶対に殺す。魂まで殺す。」
美春「・・・お姉さまの髪に触るなんて・・・八つ裂きにしても尚、赦されません・・・!」
「出入り口を固めろ!ここで確実に殺るぞ!」
全員が一斉に投擲モーションに入る。
みゆき「(に、逃げようよ。)」
みゆきの提案に頷き、即座に教室のはじに避難する。
さっきと同じように雄二や秀吉、エイミーも避難していた。
雄二「お前らも来たか。」
みゆき「だって巻き込まれるじゃない。」
康介「ムッツリーニは・・・って聞くまでもないか。」
エイミー「師匠はヤラナイとイケナイことがあるッテ言ってマシタ。
私は危なイから避難シテろッテ!」
秀吉「まあ、心配しなくてもよかろう。特に下心で動くときのあやつは。」
雄二「だな。」
美春「全員カッターの投擲終了後、間髪入れずに卓袱台を叩きつけるのですっ!
決して、お姉さまに当たらないように注意するのですよっ!」
「「「了解っ!!!」」」
雄二「さすがだな。」
康介「ああ。」
カッターで相手の動きを止めて卓袱台の圧倒的な質量でとどめをさす。
全方位からの攻撃である以上、相手に逃げ場はない。
この場合、怪我する覚悟で一方向に突破する以外打開策は無い。
無論、『助かる可能性がある』というだけだが。
美春「お姉さま!早くこちらに避難して下さい!そんな豚野郎と一緒にいると危険です!」
明久「清水さんいつの間に!?
しかも皆どうして清水さんの言うことを聞いて卓袱台まで構えてるの!?
クラスメイトを大事にしようよ!」
美波「美春、まだウチのことを諦めてくれないの?
こんなこと続けても、お互い辛いだけなのに・・・。」
美春「お姉さまはそこの豚野郎に騙されているだけなんです!
そこの豚野郎がお姉さまに密着しいる姿を見て黙っていられるはずがありませんっ!」
美波「み、密着って、仕方ないでしょう!?
代わりの卓袱台なんてないし、狭いんだからくっつかないとダメだし・・・。」
美春「それなら姫路さんのところでいいじゃないですか!」
美波「そ、それは・・・。
だって、ほら、瑞希はきちんと勉強するから邪魔したら悪いでしょ?
その点、アキなら邪魔になってもならなくてもどうせ成績は悪いんだし・・・。」
明久「美波、僕、微妙に悪口を言われている気がするんだけど。」
瑞希「あの、美波ちゃん。私は別に邪魔だなんて思いませんから、こっちに来て下さい。
その・・・色々と話したい事もありますし・・・。」
美波「気持ちは嬉しいけど・・・。
でも、瑞希は優しいから、ウチが邪魔でも我慢しちゃうでしょ?」
瑞希「い、いいえっ。本当に邪魔じゃないですから。」
美春「とにかく、お姉さまのことを本当に想っているのはこの美春以外――」
鉄人「いい加減にしないか。今は授業中だぞ!!」
とうとう鉄人の一喝が入った。
教室が急に静かになる。
鉄人「清水。授業はどうした?」
美春「そ、それどころではありません!お姉さまが!」
鉄人「清水。」
俺らでもあまり聞いたこと無い、凄くドスの入った低い声。
鉄人「二度目の警告だ。おとなしく自分の教室に戻れ。
それと、もう一度言うがこの教室への出入りを禁止する。わかったな?」
美春「・・・わかりました。」
不承不承といった体で清水が教室から出て行く。
美春「お姉さま、卓袱台だから豚野郎の近くにいるというのなら、
美春にも考えがありますからね・・・!」
この空気のなかで口を開くとは・・・
清水はそう言い残すと明久を親の敵のように睨みつけて行った。
鉄人「お前らも授業中に遊ぶんじゃない。そういったことは休み時間にやれ。」
みんなは言われた通りに卓袱台を元の位置に戻し、カッターをしまう。
こうして、この場は鉄人のおかげで事なきを得た。
かのように見えた。