問 以下の文章の( )に入る正しい単語を答えなさい。
『分子で構成された固体や液体の状態にある物質において、
分子を結集させている力のことを( )力という。』
《解答》
姫路瑞希の答え
『(ファンデルワールス)力』
教師のコメント
正解です。
ファンデルワールス力は、
イオン結合の間に発生するクーロン力と間違えやすいので注意して下さい。
水谷みゆきの答え
『( 分子結合 )力』
教師のコメント
なんとか答えようとする誠意を感じました。
土屋康太の答え
『(ワンダーフォーゲル)力』
教師のコメント
なんとなく語感で憶えていたのだということは伝わってきました。
惜しむらくは、その答えが分子の間ではなく
登山家の間ではたらく力だったということです。
吉井明久の答え
『( 努 )力』
教師のコメント
先生この解答は嫌いじゃありません。
明久「成功した?」
雄二「失敗もいいところだカス野郎。」
教室に戻ってきた明久に、雄二が罵倒した。
泣きそうになる明久。
瑞希「坂本君、失敗ってどうこうことですか?」
はあ、姫路は分かっていないのか。
雄二は呆れながら、
雄二「どうもこうもあるか。
このバカが最後に逃げ出してくれたおかげで、やって来たこと全てが台無しだ。
あんなモンを見て島田と明久が付き合っていると思うヤツなんているわけがない。」
雄二が丸めた台本で明久の頭をパカンと叩く。
秀吉「そうじゃな。
せめてもの救いは、島田が明久に好意があるという様子を見せたことじゃが・・・。
それだけでは恐らく清水を動かすには不十分じゃろうな。」
秀吉も溜息をつく。
雄二「オマケにもう一度トライしようにも、島田はあんな調子だし、
おまえは姫路と一緒に仲良く戻って来るときたもんだ。」
雄二の席から離れた島田の席を見ると、島田はさっきから明後日の方を向いている。
瑞希「ご、ごめんなさい。
私と明久君が一緒に戻ってくるなんて、
美波ちゃんと明久君が付き合っているのならおかしいですよね・・・。」
秀吉「まぁ、それはクラスメイトじゃからそこまで不自然ではないのじゃが・・・。」
明久が島田を放置していった後で一緒に戻ってくるという状況がマズイのじゃ。
周りにどう思われるか、ではなく島田に対してじゃがな。」
康介「周りにもマズイと思うぞ。
帰ってくるところをあの清水が見ていないわけないだろ。
島田を放置して、姫路を追いかけ、姫路と一緒に帰って来たんだ。
どう見ても明久が姫路に好意があるようにしか思えないだろう。
どのみちおしまいだ。」
秀吉「そうじゃったな。」
瑞希「す、すみません・・・。」
雄二「とりあえず、明久。島田に侘びの一つでも入れて置いた方が良いぞ。」
雄二が顎で島田の方をさした。
え?
明久「そうだね。ちょっと行ってくるよ。」
お、おい!
康介『★△×」
焦って声が出なかった。
とっさに明久の肩を掴もうとしたが、つかみ損ねてしまった。
今行っても逆効果だろうが!!
どんどん進んでいく明久、一方掴み損ねてコケてしまった俺。
みゆきに手を借りて立ち上がる。
みゆき「大丈夫?」
康介「ああ。」
すると雄二が隣りにやってきて
雄二「何をやっているんだ?」
それは俺の台詞だ。
みゆき「(どうして今謝りに行かせたのよ。)」
みゆきが変わりに言ってくれた。
雄二「どうしてって、時間がたてば謝りにくくなるだろうが。」
☆明久SIDE
演劇だったとはいえ、一応彼氏役だったはずの僕が姫路さんと一緒に戻って来るという
状況が美波のプライドを傷つけたってことだろうか。
雄二「とりあえず、明久。島田に侘びの一つでも入れて置いた方が良いぞ。」
雄二が顎で美波の方をさす。
雄二の言っていることはもっともだ。
元々怒っているにもかかわらず、
渋々でも協力してくれた美波をないがしろにするなんて失礼にもほどがある。
ここは謝っておくべきだろう。
明久「そうだね。ちょっと行ってくるよ。」
立ち上がり、美波の席に向かう。
途中で、後から何か聞こえたけど、別にいいか。
明久「あのさ、美波」
不機嫌そうに窓の外を見る美波に遅る多る声をかける。
美波「・・・何?」
でも、美波は声をかけてもこちらを向いてくれなかった。
明久「その、さっきはごめん。」
見ていないかもしれないけど、キッチリ頭を下げる。
でも、美波はこちらを向いてくれなかった。
美波「もうアンタなんか知らない。瑞希と仲良くやっていればいいじゃない。」
明久「いや、姫路さんとは途中で会っただけで。」
美波「言い訳なんて聞きたくない。」
明久「あぅ・・・。」
困った。取り付く島もない。
仕方がない。こうなったらさっきの秀吉の言葉を借りて美波を説得しよう。
明久「でも、このままだと姫路さんが――」
転校させられちゃうよ、って言おうとしていると、
急に美波がこちらを向いて鋭い目つきで僕を睨みつけた。
美波「・・・瑞希、瑞希って、アンタはいつもいつも・・・!」
明久「み、美波?」
美波「どうして瑞希ばっかりいつもお姫様扱いなのよ!
じゃあウチはなんなの!?男だとでも思っているの!?
どうしてウチにはいつもそんな態度なのよ!」
美波が今までに見たことのないような剣幕で一息にまくしたてた。
明久「べ、別にそんなつもりは!」
美波「瑞希が転校させられそうになったら、ウチが瑞希の両親に話をしに行くわ。
だから、もう話しかけてこないで、アンタの顔なんて見たくない。」
そう言い捨てて、美波はまた他所を向いてしまった。
明久「ごめん。悪かったよ。」
最後にもう一度頭を下げてみんなのところに戻る。
皆は僕の方を見て『やっちゃったな』といった顔をした。
○康介SIDE
ここからだと何を言っているのかわからなかったが、突如、
美波「・・・瑞希、瑞希って、アンタはいつもいつも・・・!」
美波「どうして瑞希ばっかりいつもお姫様扱いなのよ!
じゃあウチはなんなの!?男だとでも思っているの!?
どうしてウチにはいつもそんな態度なのよ!」
島田が今までに見たことのないような剣幕で一息にまくしたてた。
雄二を見ると、あちゃぁって顔をしていた。
美波「瑞希が転校させられそうになったら、ウチが瑞希の両親に話をしに行くわ。
だから、もう話しかけてこないで、アンタの顔なんて見たくない。」
明久がしょんぼりして帰って来た。
明久「完全に怒らせちゃったよ・・・。」
秀吉「そのようじゃな。」
瑞希「ごめんなさい。私も後で美波ちゃんに謝っておきますから…・・。」
みゆき「それはダメよ。」
瑞希「どうしてですか?」
エイミー「時間を置いテカラにシタ方がイイと思いマス。」
ムッツリーニ「……今の島田に何を言っても無駄。」
康介「今、明久や姫路が謝っても逆効果しかならないからな。」
瑞希「そう・・・ですね。」
明久「わかったよ。」
はあ、転んだ自分が恨めしい。
雄二「まあ、なんだ。明久に姫路、俺も手伝うから。」
明久「ありがとう雄二。」
瑞希「すみません。坂本君。」
雄二「気にしないでくれ。さて、その話は置いといて、だ。
とにかく、このままだといつまで待ってもDクラスからの宣戦布告はないだろう。
こっちから状況を動かす必要がある。」
話題を切り替えても雄二の表情はいつになく硬い。
雄二「ムッツリーニ。Bクラスの様子はどうだった?」
ムッツリーニ「……現在七割程度の補充を完了。一部では開戦の用意を始めている。」
雄二「そうか。予想よりも早いな。向こうも本気ってことか。」
ムッツリーニ「……休み時間もずっと補充をしていた。」
昼休みや休み時間を費やしてまでテストを受けていたとなれば、
康介「今日中に点数の補充が完了しそうだな。」
雄二「ああ、だからDクラスに仕掛ける前に時間を稼ぐ必要がある。
ムッツリーニ、悪いが須川たちと協力してBクラスに偽情報を流してくれ。」
ムッツリーニ「……内容は?」
雄二「Dクラスが試召戦争の準備を始めているって感じで頼む。
その狙いがBクラスだということも。」
ムッツリーニ「……了解。」
明久「雄二、それって何か狙いがあるの?」
雄二「ただの時間稼ぎだ。
Dクラスに狙われていると知れば、Bクラスは連戦を避けたいと考えるだろうからな。
俺たちへの宣戦布告を躊躇うはずだ。」
みゆき「Fクラス用に用意した戦力をDクラス戦に使わないといけないかもしれないってことね。」
雄二「その通りだ。まあ、本当はCクラスが狙っているという話にしたいところだけどな。」
明久「Cクラスは前の試召戦争でAクラスに負けてるもんね。」
雄二「んでムッツリーニ、ある程度偽情報の流布が終わったらそっちは須川に一任してくれ。
おまえにはほかにもやってもらいたいことがある。」
ムッツリーニ「……わかった。」
ムッツリーニは静かに告げると、須川のところ肉かって言った。
雄二「秀吉、清水を交渉のテーブルに引っ張り出してもらいたいんだが、頼めるか?」
秀吉「それは構わんが・・・交渉と言ってもどうするつもりじゃ?」
雄二「どうするつもりも何も、こちらの目的は一つだ。
清水を挑発して敵意を煽る。向こうが乗ってきたら成功だ。」
清水は今のDクラスの要ともいえる。これはFクラスの行く末を担う胎児なポイントだ。
秀吉「ふむ、清水を引っ張り出して交渉となると・・・
その場に島田も連れて行く必要があるじゃろうな。」
雄二「ああ、その方がより確実に挑発できるからな。
まあ、下手に同席させると逆効果になることも十分に考えられるが、その辺は俺がうまくやろう。」
雄二「うむ、ならば、そちらもなんとかしておこう。
期限を戻すのは無理じゃろうが、交渉に同席してくれるように頼むくらいは可能じゃろう。」
あの状態の島田をね。うん。改めて思う秀吉の度量の深さ。
雄二「そうしてもらうと助かる。」
秀吉「心得た。交渉の場は空き教室、時間は放課後直ぐでよいかの?」
雄二「ああ、そのくらいの時間までならBクラスの宣戦布告を遅らせることができるはずだからな。」
秀吉「了解じゃ。」
秀吉が立ち上がって教室を出ていく。
雄二「さて、水谷とエイミーは島田の事を頼めるか?」
みゆき「頼むって何を?」
秀吉「様子を見てきてくれまいか?俺らが見るより良いと思うんでな。」
みゆき「わかったわ。」
エイミー「任さレまシタ。」
これで残ったのは俺、明久、雄二、姫路の四人。
雄二「ところで明久。」
明久「うん?」
雄二「腹は減っていないのか?」
?突然何を言い出すんだ?
明久「え!何かくれるの雄二?」
明久が子犬のように尻尾を振っているように見えたのは気の所為だろ。
雄二「なあ、姫路?」
明久「え?」
瑞希「あ、はい。」
雄二「明久に何か作ってやってくれないか?」
明久「そう言えば、僕もうお腹がいっぱいで。」
がんばってアピールする明久、そりゃあ命がかかっているからな。
雄二「いや、いや、姫路に迷惑かけまいと我慢しなくていいぞ。なあ、姫路?」
瑞希「はい!」
姫路が元気よく返事をした。
そして、明久が
明久「(ギブ、ギブ)」
雄二「おいおい明久、どうして俺にしか聞こえないくらいの小さな声で『ギブ、ギブ』
何て連呼居ているんだ?おかしなヤツだなぁ?」
明久が全身を使って抗議する。
瑞希「それはいいですけど、材料が・・・」
安堵した明久。
雄二「安心してくれ。調理室の鍵を(勝手に)借りてきた。材料もある。」
ポケットから小さな鍵を取り出す雄二。
明久の顔が青ざめていく。
瑞希「わかりました。明久君、何が食べたいですか?」
必死に考える明久、そりゃあそうだ。ここでの選択が命取りになる。
明久「そうだね。それじゃあ『雄二:ゼリーがいいだろう』!?」
明久は雄二を説得してもダメだと思ったのか、俺に捨てられたチワワみたいに潤んだ瞳で見てきた。
それに対し俺は別れの時のように手を振る。
瑞希「ゼリーですか。わかりました。頑張ってみます!」
しくしくと涙を流す明久。
雄二「よろしく頼む。
容器はドリンクゼリーなんかに使われてるようなパックの奴だと助かる。
たぶん、運動部用の奴が置いてあるはずだ。」
瑞希「はい。じゃあ、・・・あ、明久君どうしたんですか?」
雄二「気にするな。うれし泣きだ。」
明久があふれんばかりの涙を流す。
瑞希「そうですか・・・そしたら頑張って作りますね。」
雄二「ああ。頼む。」
瑞希「はいっ!待っていてくださいね。明久君!」
うれしそうに歩いていく姫路
康介「まあ、なんだ。写真を撮ってやるから泣き止め。」
背中に手を当てて諭す。
明久「それって遺影ってこと!?」
あ、元気になった。
雄二「さあて、行くか?」
康介「どこに行くんだ?」
雄二「調理室だ。姫路がどんな材料を使っているのか気になるんでな。」
ふむ。それは俺も興味がある。
・・・というか俺は雄二の付き添いか?
明久「待ってよ。」
雄二「なんだおまえも来るか?」
明久「どういうつもりだよ!」
半眼で睨みつける明久。でも・・・涙が残っていて・・・幼く見える。
雄二「そんな目でにらむな。別にお前に恨みがったわけじゃないんだ。」
明久「じゃあ、なにさ?」
雄二「姫路の料理が必要なだけだ。」
どうも話が見えてこない。
明久「え?じゃあ、雄二か康介が食べるの?」
康介「俺は食わん!」
つい大声で言ってしまった。
雄二「作戦に必要なんだ。」
あ、そういうこと。食わされるかと思って雄二を気絶させるところだった。
明久「なんだ良かった。それならそうと言ってくれればいいのに。」
雄二「まあ、ああ言った以上、姫路はお前に食べさせようとするだろうがな。」
明久は頭を横に振る。
雄二「さ、行こうぜ。」
康介「おお。」
明久「僕も行くよ。その・・・気になるしね。」
・・・・・・
程なくして僕らは調理室に到着。
中では既に姫路が料理を始めている気配があった。
明久「それじゃ、開けるよ。」
俺も雄二も無言で頷く。
ここから先は危険地帯だ。
姫路に気付かれないようにこっそり扉を開けて中の様子を窺う。
調理室の中からは姫路さんが動き回る音が聞こえてきた。
遠目で調理台に上を確認する。
まだ調理を始めたばかりのようで、特におかしな点は見当たらない。
姫路が棚からボウルを二つ取り出して何かを入れているのが見える。
ゼリーだから、片方がゼラチンで、もう片方が砂糖といったところだろうか。
康介「(なんだ。意外と普通だな。)」
明久「(そうだね。ゼリーくらいなら大丈夫かもしれないね。)」
雄二「(大丈夫だと逆に困るんだがな。)」
何が困るのか聞こうとしたところで、姫路の声が聞こえてきた。
瑞希『えーっと・・・まずは、ココアの粉末をコーンポタージュで溶いて――』
はい?な、何を言っているんだ!?
明久「(か、彼女は何を作ろうとしているの!?
いきなりゼリーから遠く離れた何かになっているような気がするんだけど!?)」
雄二「(静かにしろ明久。姫路に見つかるぞ。)」
康介「(お、おい、見てみろ。ネギ取りだしたぞ。)」
瑞希『オレンジと長ネギ、どっちを入れると明久君は喜んでくれるでしょうか・・・?』
オレンジだ。どう考えてもオレンジだ!
明久「(迷わない!その二つの選択肢は迷わないよ姫路さん!)」
雄二「(お前の為に栄養価に重点を置いた特別料理を作ろうとしてるんだろうな。
・・・味を度外視して。)」
明久「(そんな!?気を遣わないで普通でいいのに!)」
康介「(食べ物がもったいないな。)」
瑞希『あとは、隠し味にタバ――』
雄二「(これ以上は聞くな明久、食えなくなるぞ。)」
明久「(待って!
せめて最後に入れられたのが『タバコ』なのか『タバスコ』なのかだけでも確認させてよ!)」
あ、タバスコの容器が見えた。
その奥の薬品ケースみたいのに入っている・・・あの白い粉は何なんだろう?
雄二「(あまり時間もない。我が侭を言うな。)」
明久「(僕の命に関わるんだけど!?)」
康介「(さ、行こうぜ。)」
雄二「(あ、ああ。)」
明久の必死の抵抗も虚しく、
雄二は明久首根っこを掴まえてズルズルと引きずって、俺はその隣を歩いて、調理室を後にする。