第10問:心理テスト
問 以下の状況を想像して質問に答えて下さい。
『あなたは今、独りで森の中で道に迷っています。
明かりもなく暗い森の中を進むと、あなたは湖のほとりに小さな小屋を見つけました。
これ幸いと中に入るあなた。すると、そこには椅子とベッドと肖像画が。
さて、その肖像画に描かれている人物の特徴は?
頭に浮かんだものを3つ挙げて下さい。』
《解答》
姫路瑞希の答え
『1.楽しげな表情
2.優しい瞳
3.明るい雰囲気』
教師のコメント
これは『あなたの好きな人の特徴』についてわかる心理テストです。
暗い森はあなたの不安を表し、そんな時に見つけた小屋の中にある肖像画は
『あなたの心を支えてくれる伴侶』を表します。
どうやら姫路さんの好きな人は温和で明るくて楽しい人のようですね。
清水美春の答え
『1.気の強そうな目
2.男らしい胸
3.ポニーテール』
教師のコメント
最後の一つがおかしい気がします。
島田美波の答え
『1.折れた指
2.捻じ曲げられた膝
3.外された手首』
教師のコメント
全部おかしい気がします。
木下優子の答え
『1.ちょっと間の抜けた表情
2.女装が似合いそう
3.元気をくれる笑顔』
教師のコメント
2は・・・どうなんでしょう?
翌朝、いつも通り朝ご飯を作っていると、
三沢「ふぉわぁああ・・・。なに、お前、こんな朝から飯作ってるの?」
康介「まあ、そうですね。朝ごはんと弁当ですね。」
三沢「・・・。」
康介「つまみ食いしないで下さいよ。ギリギリしか作ってないんで。」
三沢「お前、後ろに目ぇついてるの?」
康介「ああ、先生ならしかねないんで。」
三沢「俺に対しての評価が酷くないか!?」
事実だと思うんだが・・・
ともか「おはよう。」
生野が起きてやってきた。
康介「飯できてるぞ~」
ともか「わかった。」
その後、みゆき、さくら、エイミー、が起きて、
生野と先生を見送ったあと、悠斗がようやく起床。
そしていつもどおり学校に向かい・・・
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『我々Dクラスは、Fクラスに対して宣戦布告を行う!』
翌日の朝のHR終了直後にDクラス男子がやって来て、
俺らに高らかにそう告げていった。
秀吉「?なんじゃと?」
雄二「どういうことだ。昨日聞いた話だと清水の挑発は失敗のはずだが?」
康介「ムッツリーニ、どうしてかわかるか?」
ムッツリーニ「……昨日何があったかはわからない。
ただ、今日は朝から清水が興奮していた。」
みゆき「清水さんが?それなら昨日の挑発は成功していたってこと?」
秀吉「いや、そんな事はないはずなんじゃが・・・。」
明久。お主、あの後に何か話しておったのか?」
明久「い、いや、別に。それよりも試召戦争だよ!
Bクラスじゃないとはいえ、
今の僕らには厳しい相手なんだから早く準備を始めないと!」
エイミー「怪しイデスね。」
明久「べ、別に怪しくなんかないよ?」
秀吉「ふむ。目が泳いでおるぞ。」
明久が秀吉から目を逸らす。
雄二「おい、お前ら真実はどうであれ、まずは試召戦争だ。
ここまでやってDクラスに負けたら意味がない。
後から問い詰めればポロリとこぼすだろ。」
秀吉「うむ。確かにそうじゃな。今ワシらの中でまともに戦える者は少ない。
この戦力で凌ぎ切るのは至難の業じゃ。余計な事を考えている暇はあるまい。」
ムッツリーニ「……防衛が優先。」
康介「それで雄二、作戦は?」
雄二「考えてある。だが、その前に戦力の確認だ。」
そう言って雄二は立ち上がり、教壇に上がる。
雄二「野郎、よく聞け!
さっき言われた通り、これより俺達FクラスはDクラスとの試召戦争に突入する!
まずは戦力の確認だ!各自、自分の持ち点を紙に書いて持ってくるように!」
ざわついた教室が静まりかえった。
クラスの皆がペンを取って紙に自分の持ち点を書き込んでいく。
秀吉「そう言えば、ワシは1点も消費しておらんな。」
明久「え? そうなの?」
秀吉「うむ。総合科目勝負を挑まれたらワシらが率先して参加しよう。」
心強い話を聞きながら、点数の書き終えた紙を雄二に渡す。
雄二はそれをぱらぱらめくり、
雄二「注目!これから大まかな内訳を話していく。
最初に下位十名に点数の補充をしてもらう。
補充組は教室に残ってくれ。尚、科目は数学を七人、
世界史と化学と保健体育を一人ずつ受けてもらう。
各自の配置は点数確認を終えてから発表する。」
それからしばらくして雄二の配置の発表があり、
雄二「いいかお前ら!前回勝ったからと言って相手を舐めるなよ!
この状況の上に相手は俺達より二つもクラスが上だ!
下手に欲をかくと逆に手痛い目を見るハメになるからな!」
出撃前ブリーフィングとして、雄二が教壇に立って皆に説明を始める。
雄二「どんなに有利な状況でも決して深追いはするな!
決められた場所でひたすら防衛に徹しろ!」
下手に深討ちをすれば、こちらは一気に蹴散らされてしまうだろう。
なんせ事前調査で、5倍以上の戦力差があることがわかっているのだから。
雄二「向こうは圧倒的に有利な女子の総合科目をメインに攻めてくる!
島田と秀吉を主軸にうまく立ち回れ!
限界まで粘ったら状況によっては教室前まで退いてもいい!
以上だ!健闘を祈る!」
雄二の説明を終わるのとほぼ同時に時計の針が九時を示した。
開戦時刻だ。
「「「「ぃよっしゃぁああーっ!!」」」」
今回は渡り廊下や階段を確保するのが目的なので、
先行部隊が開幕ダッシュで現場を目指す。
先行部隊が出て行った後の教室は急に静かになった。
☆明久SIDE
雄二「・・・以上だ!健闘を祈る!」
雄二の説明を終わるのとほぼ同時に時計の針が九時を示した。
開戦時刻だ。
「「「「ぃよっしゃぁああーっ!!」」」」
今回は渡り廊下や階段を確保するのが目的なので、
先行部隊が開幕ダッシュで現場を目指す。
向こうもこちらに何かされる前に勝負をつけようと電撃作戦でくるはずなので、
最初はスピード勝負だ。
僕も渡り廊下に向かおうとしていると、美波も同じように向かっている姿が見えた。
一晩たったけど、まだ怒っているのだろうか?
明久「美波、おはよう。」
美波「・・・。」
明久が島田に声をかけると、島田は無視していた。
明久「Dクラスが宣戦布告してくれてよかったね。」
美波「・・・。」
明久「あとはこの戦いを乗り切るだけだね。」
美波「・・・。」
全然相手にしてもらえない。負けるもんか!諦めずに頑張って話しかけてやる!
きっと一方的に話しているから悪いんだ。質問に変えてみよう。
明久「あのさ、こうしていると、前の召喚戦争を思い出さない?」
美波「・・・そうね。ウチがアンタに見捨てられたこととかね。」
・・・
明久「美波、もしかして・・・まだ怒ってる?」
恐る恐る訊いてみる。
今まで、何回も美波を怒らせちゃったことがあったけど、
次の日にはすっかり元通りだった。こんなことは初めてだ。
すると美波は目を伏せて答えを返す。
美波「・・・それって、どういう意味よ。」
明久「え? どういう意味って?」
美波「どうせウチのことなんて
『男らしいから一晩経ったら忘れてくれるだろう』
とか思っていたんでしょ! バカ!」
明久「う・・・。」
美波「もう話しかけないでって言ったでしょ!
いいからこっちに来ないで!ウチのことは放っておいてよ!」
美波がダッシュで先に渡り廊下に向かって行った。
そんなつもりは無かったのに・・・失敗したなぁ・・・。
廊下を軽く走りながら旧校舎と新校舎をつなぐ渡り廊下を目指す。
D「Fクラス、覚悟しなさい!」
玉野「高橋先生、Dクラス玉野美紀が召喚を行います!」
渡り廊下にさしかかると、Dクラス女子の声が聞こえてきた。
向こうは学年主任の高橋先生を連れている。
思った通り総合科目勝負で挑むつもりのようだ。
福村「上等だ!Fクラスの力を見せてやるぜ!」
「行けるのか、福村!」
福村「任せておけ!目に物見せてやる!」
「「試獣召喚サモン!」」
Dクラス女子とFクラス男子の喚び声が重なる。
そして毎度お馴染みの魔法陣から現れるのは自身の姿をデフォルメ姿を持つ召喚獣。
【総合科目】
Fクラス 福村幸平 118点 VS Dクラス 玉野美紀 1542点
福村「くそ・・・っ!もう保たねぇ・・・!」
「福村!?まだ喚び出したばかりだろ!?」
戦力差1300%、これは酷い。
玉野「くらいなさいっ!」
Dクラスの玉野の召喚獣が刀を振りかぶった。
明久「く・・・っ!こうなったら!」
その動きに合わせ、福村の召喚獣が武器を捨てて構えを取る。
まさか素手で挑む気!?
玉野「い、一体何を・・・!?」
福村「Fクラスを舐めるなよ!」
戸惑う玉野さんをよそに、福村君の召喚獣が迫り来る刀に対して手をかざす。
誰もが固唾を飲んで見守る中、パンッと召喚獣が手を鳴らす音が響き渡った。
福村「へ、へへへ・・・。白刃取り、成功だぜ・・・。」
得意げに告げる福村。そう、アレは無手の極意の一つ、真剣白刃取りだった。
残念ながら彼の召喚獣は玉野さんの攻撃で両断されたけど。
「失敗してんじゃねぇかよ!」
福村「ば・・・っ!ち、違ぇよ!コレは俺の狙い通りなんだよ!」
彼は後にこう語る。
『アレは右脳と左脳を使った白刃取りだったんだ』と。
「福村幸平、戦死!」
福村君の弁明も虚しく、戦死報告が入った。
「よくも福村を!今度は俺が行くぜ!試獣召喚!」
補習室へと連れて行かれる福村を尻目に戦いは続く。
あれ? なんだか、向こうの人数が少ないような・・・
Fクラスを制する為にはこの渡り廊下を突破しないといけないのに、
これだけしか戦力を投入しないなんて不自然だ。
向こうは速攻を狙っているわけだし、もっと戦力を投入して然るべきだ。
『・・・やっぱり姫路さんが居ないわ・・・。』
『階段の方にもいなかったみたい。』
『時間稼ぎが目的みたいな戦い方だし、間違いないよね・・・』
そんなDクラス女子間の会話が聞こえてきたかと思ったら、
戦線の後方で待機していたDクラスの人たちが居なくなっていく。
どういう事なんだろう?
秀吉「向こうは人数が少ない!取り囲んでうまく出入りしながら凌ぐのじゃ!」
秀吉の指示が飛ぶ。
こちらの人数は二十人で、向こうの三倍近い人数だ。
個々人の点数差は大きいけど、この人数差があれば隙を補い合ってうまく戦える。
こちらは正面に秀吉と美波を立てて、その周囲から皆が援護するような陣形を取っていた。
『清水からの伝言だ。「怪しい情報を掴んだので防備を固めます。
その場所は相手の狙いがわかるまで八人で戦線を維持するように」とのことだ。』
『了解』
Dクラスの男子がやってきて伝言を告げたかと思ったら、更に一人が戦線から離脱していく。
?どうなっているんだろう。楽になるのはいいけど・・・
明久「ま、いっか。とりあえず雄二の指示通りに僕も動こう。――試獣召喚サモンっ!」
雄二から受けた指令を実行しよう。
『召喚獣を召喚して一瞬だけ戦いに参加して余裕たっぷりに離脱しろ。
お前が点数を残しているというアピールができたら戻っって来い。』
【総合科目】
Fクラス 吉井明久 331点 VS Dクラス 玉野美紀 1019点
徐々に点数を削られている玉野さんに狙いを定めて召喚獣を動かす。
玉野「あ、アキちゃ──じゃなくて吉井君!? こ、このぉっ!」
一瞬妙な呼ばれ方をしたけど、今は気にしない。
玉野さんから振り下ろされる刀をサイドステップでかわして相手の懐に飛び込む。
さてさて、ここで攻撃を入れることもできるんだけど・・・。
明久「よしよし、と」
敢えて攻撃ではなく頭を撫でるという行為を選択する。
雄二の指令はこれでいいかな。あとは離脱するだけだ。
玉野「え・・・?」
攻撃が来ると身構えていた玉野が呆気に取られている。
明久「それじゃ秀吉、ここは大丈夫そうだし、僕は戻るね。」
秀吉「うむ。了解じゃ。」
秀吉にその場を任せて召喚フィールドから離脱する。
○康介SIDE
現在、教室内に居るのは雄二をはじめ、俺とみゆき、姫路に点数補充の為の十名、
防衛線を突破された際の中間防衛部隊五名を加えた十九名。
俺らは補給試験を受けるでもなくじっとしている。
できれば世界史のテストを受けたいんだけど・・・
みゆき「ところで坂本。」
雄二「なんだ?」
みゆき「どうして点数補充をあんなに細かく分けたの?
早く点数を補充した方が良いんじゃない?」
化学の三沢先生は丸が多い場合、ペケするのが面倒で丸にする、
教師としてはどうかと思うが、俺らにはありがたい先生だ。
保体の大島先生は甘くもないし時間もそんなにかからない。
世界史の田中先生は採点が甘いが時間のかかることで有名だ。
雄二「今回は極力時間を稼ぐのが目的だからだ。
戦術云々というよりは心理戦による睨み合いが必要になる。
そんな睨み合いが必要な状況で数学教師だけを教室の中に
入れて点数補充をしていたらDクラスはどう思う?」
康介「早く点数を補給しようとしているように見える。とか?」
雄二「その通りだ。こちらに備えがないことを教えてやることになっちまう。」
康介「だが、俺らが点数補充していないことはすでにバレていると思うんだが。」
雄二「そこを警戒させるのが作戦ってもんだ。
お前らをここに置いている理由も倉庫にある。」
雄二がノートの布陣を見せてくれる。
瑞希「あ、あのう。坂本君。」
雄二「ちょうど良かった。姫路も一緒に聞いて行け。」
瑞希「は、はい・・・。」
みゆき「それでその理由って何?」
雄二「ああ、相手の戦力を小出しにさせることだ。」
瑞希「あのっ。どういうことですか?」
もう少し詳しく行ってもらいたい。
雄二「俺たちは7割以上の戦力を渡り廊下や階段に投入しておきながら
どうしての戦力の高いお前らが前線に出ない?
廊下や階段を制したいんじゃないのかってDクラスは考えるだろう。」
相槌を打つ俺ら
雄二「だが、階段にも渡り廊下にもお前らが一人も出てきていないとなると
相手はどう思う?」
康介「何かたくらんでいる?」
雄二「その通りだ。
実際、四月のBクラス戦では俺らは屋上からムッツリーニを送り込んでいる。
奇襲を主にするFクラスだから何をするかわからない。
おまえらがその作戦に投入されるべく前線に出てこないのかもしれない。
更に前の戦いで平賀は姫路に一杯食わされているからな。
平賀は警戒して防衛に戦力を割くことになる。」
雄二の将来は、悪徳占い師か詐欺師に違いない。
みゆき「なるほど、そうすればこちらの消耗も抑えられるってわけね。」
康介「だが、向こうが強引に突っ込んで来たらどうするつもりだ?」
いつ奇襲されるかわからないなら早めに倒してしまおうと俺なら思う。
すると雄二は口ブルの両端を上に持ち上げ、
雄二「良い所に気付いたな。無論対応済みだ。」
瑞希「どういことをしたんですか?」
雄二「情報操作だ。その為にムッツリーニには点数補充をさせなてない。」
ムッツリーニは保健体育一つで総合点数のほとんどを補う事が出来る。
なるほど、
雄二「アイツには『FクラスはDクラスとの開戦を望んでいた』
って情報をDクラスにリークさせている。
昨日のこともあるだろうから簡単に信じてくれるだろ。」
瑞希「そういうことですか。
確かにその話が伝われば、Dクラスは更に私たちを警戒するでしょうね。
『勝ち目のない勝負で開戦を望んでいたとは思えない。
Fクラスは何か秘策があるんじゃないか』って。」
みゆき「それじゃあ、昨日、音羽とぶらついていたアレはそう言う意味があったの?」
雄二「いや、あの時は単純にBクラスに対して、
点数補充をしていないっていうアピールが目的だったんだ。
しかし、今となっては意味合いが変わってくる。
向こうにしてみれば
『校舎も違って用が無いはずの俺達がいたなんておかしい。
アレはDクラスを開戦に踏み切らせる為の芝居だったんじゃないか』
なんていう疑問の種になる。
偶然が二つ三つと重なるとは考えないのが人間だからな。
その向こうに何か目的があるんじゃないか、と疑問に思うのは当然だろう。」
今頃、開戦したことに後悔し始めている頃だろう。
なにせ、得られるものなんて何もない上に、負けたら最低設備に格下げだ。
何かのきっかけさえあればすぐにでも休戦に応じるだろう。
仕上げに、もう一つ手を打つ。敵の頭を討つために。」
みゆき「敵の頭っていうと、Dクラス代表の平賀?」
雄二「平賀は無理だ。
こちらを警戒しているから、間違いなく前に出て来ることは無い。
だが、今回の勝負に限ってDクラスの頭は平賀一人だけじゃない。」
雄二の説明を聞いて、姫路がポンと手を打った。
瑞希「わかりました。清水さん
ね?」
雄二「御名答。
清水を落とせばDクラスの開戦派はおとなしくなる。
休戦協定を結ぶ為のきっかけ作りにおあつらえ向きの状況が出来上がるだろうさ。
それに向こうは清水が中心に動いているからな。」
康介「それでどうやって倒すんだ?」
雄二「そりゃあ、明久しかいないだろう。
隣の空き教室で清水と一騎討ちをしてもらう予定だ。」
ちょうどそこに明久が教室に帰って来た。
☆明久SIDE
それにしてもわからないことが多すぎる。
雄二は時間稼ぎが目的って言っていた。
Dクラスに脅威を与える程の戦力を整えて休戦協定に同意させることが最終目的だと。
それはわかる。わからないのはさっき何が起こっていたかという事だ。
どうしてDクラスは戦力を小出しにするんだろう?
さっき言っていた怪しい情報ってなんだろう?
僕のさっきの行動になんに意味があるんだろう?
ダメだ。全然わからない。
喧騒から離れてFクラスの教室に入る。
卓袱台を囲んで談笑している雄二に康介、姫路さん、水谷さんが居た。
雄二「・・・明久しかいないだろう。
隣の空き教室で清水と一騎討ちをしてもらう予定だ。」
僕?どんな話をしているんだろう?
明久「僕が何?」
近づいて聞くと、
康介「さっそく帰って来たのか。」
雄二「おう、戻ったか明久。」
瑞希「おかえりなさい吉井君。」
みゆき「吉井、おかえり。」
挨拶が帰って来た。
明久「あ、うん。ただいま。」
雄二「首尾はどうだ?」
明久「ああ、うん。
一応言われた通りにしてきたけど・・・それより、そろそろ作戦を説明してよ。」
そう言うと雄二は嫌そうな顔をした。
雄二「やれやれ、同じ話を二度繰り返すことになるとは・・・
一回しか言わないからよく聞いておけよ。」
むぅ。姫路さんたちへの説明が終わったころに僕がかえって来たんだろうけど
そんな顔をすること無いじゃないか!
そう言って雄二が面倒そうに説明をし始めた。
・・・<説明中>・・・
雄二「そんなわけで明久、お前には隣の空き教室で清水と一騎討ちをしてもらう。」
明久「え?僕がやるの?もっと強い人の方が良いんじゃないの?」
雄二「いや、それは無理な話だ。
俺は指示を出さないといけないし、ムッツリーニも仕事があるから無理だ。
康介や水谷、姫路は姿を見せるわけにはいかないし、
いざとなったら防衛に加わってもらうからな。
エイミーは本格的に召喚獣を動かすのは今日が初めてだ。
つまり、お前しかいないんだよ。」
美波と秀吉は渡り廊下で、エイミーは階段で戦っている。
なるほど、空いているのは僕だけ。
そして、召喚獣の扱いに一日の長がある僕が出るのが妥当っていうことか。
雄二「それに清水を引っ張り出すにはお前が好都合なんだ。
清水が興奮しているところを見るに、昨日の挑発は成功したんだろ?」
明久「う・・・。そ、れは、えっと・・・。ど、どうなんだろうね?」
挑発の成功失敗はともかく、僕は清水さんのターゲットになる可能性はある。
康介「ああ、だから明久は一人なのか。」
ん?
明久「僕が一人ってどういうこと?」
なにか僕の知らないところでよからぬことでも・・・
康介「このメモを見てみろ。」
ええっと、メモには空き教室にポツンと一人で僕が配置されるようになっている。
明久「?何か意味があるの雄二?」
雄二「ああ、う~んそうだな。
例えば、この位置に須川が配置されていたとしよう。
もしもお前が戦っている相手だとしたら、そこに須川がいる事についてどう思う?」
明久「どう思うも何も・・・意味のないものにしか思えないけど。」
空き教室を地理的に抑えておかないといけないわけでもない。
雄二「まぁ、普通はそう考えるな。それなら、そこに更に条件を付け加えよう。」
明久「条件?」
雄二「ああ。そのタイミングで、須川とお前が姫路を巡って争っていたとしよう。
そうすると、どう見える?」
瑞希「あ、あの、私を巡って、って・・・」
う~ん・・・。
僕と須川君が姫路さんを巡って争っている最中に試召戦争がおきたら
僕としてはそっちも大事な話になるわけだから、
試召戦争とは別に須川君の事が気になるだろうし、
須川君も僕のことが気になっているだろうし・・・。
明久「須川君が僕を待っているように見えるかな。
姫路さんを巡っての話に決着をつけるために。」
雄二「その通りだ。」
雄二「つまり、だ。
この配置は、他の連中には首を取る必要も無い明久が意味も無く空き教室にいるだけに見える。
しかし、清水にとってはそうじゃない。
明久が決着をつける為に清水を待っているように見えるってことだ。
その為にわざわざ明久を前に出して存在をアピールさせたりもしたんだがな。」
僕を前線に出した理由はそれか。
明久「じゃあ、さっき雄二が言っていた『教室前まで退いてもいい』っていうのも・・・。」
雄二「ああ、明久がここで待っているということに気付いてもらうためだ。
休戦の交渉に足るだけの点数補充を終えたら、
階段を開放して空き教室の様子を教えてやる必要がある。
もっとも、こちらが劣勢だと思われるわけにもいかないから、匙加減が難しいところだがな。」
これでうまく清水さんを誘き出せるなら、負けないで休戦に持ち込むことができるかもしれない。
けど、
明久「そんなにうまくいくのかなぁ・・・?」
清水さんが本当に来てくれるんだろうか?
雄二は唇の両端を持ち上げて、
雄二「それは結果を見てのお楽しみだ。」
自信満々に言い切った。
明久「まぁ、雄二がそこまで言うならいいけど・・・。」
雄二「よし。それならとりあえず、明久は隣の空き教室に移動してくれ。
いつ防衛線が突破されるかも分からないからな。」
明久「うん、わかったよ。」
やろうとしていることは一応わかったし、僕は清水さんを待つとするか。
康介「行って来い。」
瑞希「頑張ってくださいね明久君。」
みゆき「いってらっしゃい。」
みんなに見送られて僕は教室を後にする。