段々と島の緑が濃くなってきた、5月上旬。
世間は大型連休……いわゆるゴールデンウィークに突入していた。
鳥白島にも少なからず観光客が訪れていて、物珍しそうに島内を観光していた。なんとなく、島全体が賑やかな気がする。
でも、そんな大型連休など関係なく、今日も俺は良一やじーさんと一緒に早朝から沖に船を出していた。
「……やはり、ここ数年はアナゴも数が減っているな。以前はもっと獲れていたんだが」
じーさんが船の生け簀を見ながら、ため息をついていた。
鳥白島近海の海は、季節によって獲れる魚が全く違う。今の時期は、はえなわ漁でアナゴを狙っているんだけど、どうも漁獲量が少ないみたいだ。
アナゴ以外の魚もそれなりに獲れているから、きちんと仕分ければそれなりの儲けにはなるだろうけど。
「……まぁ。こんな日もあるだろう。今日はもう戻ることにしよう。良一、船を出せ」
「船尾よーし。舵中央よーし……発進!」
じーさんから指示を受けて、良一が船を鳥白島に向けて発進させる。彼は最近船の免許を取ったらしく、練習がてら操縦させてもらっているらしい。
「うおっとっと……」
やっぱりじーさんに比べて、まだ運転に荒々しさがある。船の縁に掴まっていないと、海に落ちそうで不安だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……おはよう」
「ああ。おはよう、しろは」
港に戻り、いつものように魚の仕分け作業をしていると、これまたいつものようにしろはがやってきた。
「……今日はどんな魚があるの?」
「今日は少しだけど、アナゴがあるよ」
「じゃあ、それを3匹もらえるかな……あふ」
「しろは、なんか眠たそうだな」
「……うん。ここのところ、連休でお客さんが多くて」
「ああ……」
しろはは食堂で働いているし、この大型連休で忙しいのかもしれない。俺に直接関係はないけど、観光客はやっぱり多いだろうし。
「ところでしろは、アナゴってどう食べればいいの?」
「……そろそろ私に聞くの、やめて欲しいんだけど」
「毎回釣れる魚が違うからさ。しろはの知識を借りたくて」
「……下処理する前に、頭の後ろに包丁を入れて、手早く血を抜いて。アナゴは生で食べちゃ駄目だよ。血清毒があるし」
「え、毒があるの?」
俺は思わず、袋に入れようと手に持っていたアナゴを見てしまう。
「怖がらなくても、きちんと処理して、火を通したら抜けるよ。ウナギとかと同じ」
「確かに、ウナギって必ず火を通してあるよな……」
「きちんと下処理ができたら、後は天ぷらにしたり、かば焼きにして、美味しく食べられるよ。もう一度言うけど、生で食べちゃ駄目だからね」
「ああ、わかったよ」
「……うん。それじゃ」
しろはは最後にもう一度だけ念を押して、港から去っていった。アナゴは生はダメ。肝に銘じておこう。
「……羽依里、今日も仕上げにあれをやるぞ」
カゴの中でうつろな目をしているアナゴを見ながらそんなことを考えていると、じーさんから声をかけられた。今日も四天王スクワットの時間だ。
「それじゃ、お疲れ様でしたー!」
「……羽依里、待て」
「え?」
恒例となった四天王スクワットを終え、帰宅しようとしてると……バケツを持ったじーさんに呼び止められた。
「悪いが、この魚を港の商店に届けてやってくれ。先日の飲み会で、酒を差し入れてもらった礼だ」
そういえば、この島の漁師は休日の夜に集まって飲み会を開くのが通例になってるらしい。俺や良一は未成年だから、まだ参加したことがないけど。
「わかりました。届けてきます」
「頼んだぞ」
じーさんから魚の入ったバケツを受け取って、俺は港へ向けて歩き出す。
商店があるのは今いる漁港じゃなく、定期船が発着する方の港だ。
ここからだと島の反対側になるんだけど、ついでにその商店で朝食用のパンを買ってもいいかもしれない。あそこのコーンマヨパン、美味しいんだよな。
そう考えると、仕事の後でも不思議と足が軽くなった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「わざわざありがとうね。鳴瀬のじーさんによろしく言っといて」
「はい。伝えときます。それじゃ、失礼します」
持ってきた魚を商店の店主に渡して、お店を後にする。
そして結論だけ言うと、パンは全て売り切れていた。どうやら始発の船でやってきた観光客が店に押し寄せて、全部買って行ってしまったらしい。
「……おのれ、ゴールデンウィーク」
俺は誰にでもなくそう吐き捨てると、来た道を戻ることにした。
「……あれ?」
さっきとは打って変わって重くなった足を引きずりながら歩いていると、坂のところの食堂にのぼりが出ているのに気がついた。
「ここ、モーニングセットとかやってたんだ」
思えば、今の時間にこの店の前を通るのは初めてかもしれない。大抵、漁港から加藤家に直帰だし。
ちょうどお金も持ってるし、たまには豪華な朝ごはんにしてみようかな。
「おはようございまーす」
そんな結論に至った俺は『営業中』の札がかかった店の扉を勢いよく開ける。
「ふわ……いらっしゃ……い」
……そこにはフリフリピンクなエプロンをしたしろはが、あくびをしながら立っていた。
「「え」」
次の瞬間、俺たちはお互いに視線を合わせたまま固まる。これは、色々と予想外だ。
「え、えーっと、しろは、そのエプロンは……?」
「こ、ここここのエプロンはその、この店のマスターの指示で。接客業はこういう格好をするのが当然だって言われて。私はもちろん嫌だったんだけど。でも所詮私は雇われの身だし。お給料に色つけるって言われたから、朝だけならいいかなって思ったんだけど、まさかあなたが来るなんて思わなくて」
しろはは目を白黒させながら、必死に弁解していた。
「し、しろは、落ち着いて。ほら、深呼吸」
俺はそんなしろはを必死に落ち着かせる。
これまで、幾度となくピンク妄想全開になる蒼を止めてきたんだ。こんな展開は慣れている。しろは、どうどう。
……しばらくして、しろはは落ち着きを取り戻し、俺はようやくモーニングにありつくことができた。
そのメニューは、クロワッサンにサラダ、そして緑茶だった。
「このクロワッサン美味しいな。しろはが焼いたのか」
「ううん。それはマスターだよ」
「え、マスター?」
確か、しろはの親戚の人だっけ。パンなんて焼けるんだ。
「そう。夜のうちに用意しておいてくれたの。モーニングは用意も簡単だし、私の担当」
「そうなのか……ところでさ」
「な、なに?」
「クロワッサンなのに、なんで緑茶? コーヒーとかないの?」
「ごめん。マスターからの指示で。緑茶しか出せないの」
「別料金払うから、コーヒーもらえない?」
「このお店、コーヒーないから」
「えぇ、ないの……?」
これだけ美味しいクロワッサンなのに、一緒にコーヒーが飲めないなんて。
俺は仕方なく、緑茶を片手にクロワッサンをほおばった。うう、もどかしい!
「おはようございまーす!」
最後に残ったサラダをちまちまと食べていると、背後の扉が勢いよく開いて、新しいお客さんが入ってきた。
「あれ、羽依里?」
「え、鴎?」
急に名前を呼ばれて振り返ると、大きなスーツケースを持った鴎が立っていた。
「お前も島に来てたのか?」
「ついさっき、島に着いたの! しろしろも久しぶり!」
「ど、どうも……」
しろはにも挨拶をして、鴎はニコニコ顔のまま、俺の隣に腰掛ける。
「ところで、ここってしろしろのお店だったんだね!」
「ううん。私はただのお手伝い。マスターは別の人」
「マスター?」
「そ、そう。マスター」
「そのマスターはしろはの親戚の人らしいぞ」
人と話すのが苦手らしいしろはは、ぐいぐい来る鴎とは話しにくそうにしていたので、俺が会話を引き継ぐことにした。
「そんな羽依里は、朝ごはん?」
「ああ。この店、朝はモーニングをやってるらしくてさ。クロワッサンが美味しいんだ」
「じゃあ、私もそのモーニングください! 実は朝ごはん、食べてなくて」
「わかった。すぐできるから、少し待ってて」
注文を受けて、しろははすぐに調理に取りかかった。
「楽しみだなー」
直前に渡されたおしぼりで手を拭きながら、鴎は待ちきれないと言った感じだった。
鴎よ、この島のモーニングのもどかしさに悶えるがいい!
「……も、もどかしい!しろしろ、コーヒー欲しい!」
「駄目」
「ううう、もどかしいよぉっ……!」
俺の予想通り、鴎はモーニングを食べている間、緑茶を片手にずっと悶えていた。
本当、あのもどかしさだけはなんとかならないものか。今度、紬からもらった缶コーヒーとか持参してみようかな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
結局、鴎が食べ終わるのを待ってから一緒に食堂を出た。
「え、あおちゃんたち退院したの!?」
俺の話を聞いて、鴎は顔をほころばせる。
確か、最後に鴎が島にやってきたのは正月だった記憶があるし、二人が退院したのを知らなかったみたいだ。
「今は姉妹揃って駄菓子屋でバイトしてるから、会いに行ってやってくれ」
「もちろん! 役所での用事が済んだら、さっそく行ってみる!」
そんな話をしながら、住宅地への道を歩く。大型連休中ということもあって、朝から結構な数の観光客とすれ違う。
「ところで、鴎がこの島に来たってことは、また何か企んでるのか?」
「人聞きの悪い言い方しないでよ。実は、ゴールデンウィーク限定のイベントを企画しててね」
そう話を振ると、鴎はすごく楽しそうな笑みを浮かべる。
「え、イベントって、どんな?」
……確か、正月に行われた『ゴッサムな寒中運動会』や『全島対抗もち投げ大会』は大盛り上がりだった記憶がある。
「題して、ゴールデンウィークはおとーさんとゴールデンボールを探せ!」
「ゴールデンボール」
思わず口に出してしまったけど、男ならこの言葉の別の意味に気づくはずだ。
「島のあちこちに、ゴールデンボールを隠してあるの! そのゴールデンボールの中には、金の鍵が入っていてね。その鍵を使って、宝箱を開けるの!」
話を聞いてみると、親子で楽しめる宝探しイベントらしかった。こういうの、よく考えるなぁ。
……ところで本人は気づいていないみたいだけど、ゴールデンボールを大声で連呼しないで欲しい。さっきからその、観光客の視線も気になるし。
「それで、宝箱の中身を何にするか、悩んでるんだよね」
「島でやるんだし、鳥白島の特産品とかを現地調達してみたらどうだ?」
「鳥白島まんじゅう一年分とか、島唐辛子ヤバネロの詰め合わせとか?」
「前者は良いけど、後者はやめといたほうがいいと思う。あれ、本当にヤバいから」
以前、一度だけおすそわけしてもらったことがあるけど、あれは食べ物じゃない。試しに作ってみたエビチリが大変なことになったし。
「そうだ、親子向けのイベントって話なら、お菓子とかも入れてあげたらどうだ?」
「あ、それもいいね。その辺りは駄菓子屋さんに相談してみようかなぁ……うーんうーん……」
そして鴎は顎に手を当て、足を止めて考えにふけってしまった。鴎はイベント企画する才能はあるんだけど、こうなると自分の世界に入るのか、なかなか動かない。
「鴎、どうせならスーツケースに乗ったらどうだ? お前が乗って考えている間、俺が押してやるから」
「え、いいの?」
「ああ、こう見えて今の俺は漁師だからな。体力には自信があるんだ」
「わーい! 羽依里イズいい奴!」
言うが早いか、鴎はどっかりとスーツケースに腰を下ろす。
「よし、超特急で役所まで運んでやるからな」
俺はそう言うと、気合いを入れてスーツケースを押し始めた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「うう、疲れた……」
鴎を役所に送った後、俺はへろへろになって加藤家へと帰りついた。
最近は体力もついてきたと思っていたけど、仕事の後に島の端から端まで往復したら、さすがにきつかった。
「しかも片道はスーツケース押してたし……鴎のやつ、また太ったんじゃないか……?」
思わずそんなことを口走ると、どこからか『失礼な』と憤慨する鴎の声が聞こえた気がした。
「駄目だ。少し休もう……」
限界を感じた俺は、手早くシャワーを浴びて部屋に戻ると、そのまま倒れ込むように眠ってしまった。
……しばらく休んで、14時くらいに目が覚めた。
そのまま身支度をして、すぐに蒼に会いに駄菓子屋へと向かった。
「……あれ?」
駄菓子屋に到着してみると、そこでは鴎が空門姉妹と何やら話をしていた。
「それじゃ、蒲焼きさま太郎、ベイビースター、うんまい棒を3ダースずつください。それと、梅ジャムも1ダース!」
「蒲焼きさま太郎……ありました。これですね」
「うんまい棒は何種類かあるけど、どの味にするのー?」
「あおちゃんにお任せするよー」
どうやら、先のイベントの景品で使う駄菓子を買いに来ているみたいだ。沢山の駄菓子が奥の倉庫から運ばれてきて、そのまま鴎のスーツケースへと吸い込まれていく。
「駄菓子がダースで売れてます。これは大口取引ですよ」
ぽんぽんと駄菓子が売れるのが嬉しいのか、藍がそう口にしていた。それにしても忙しそうだし、もう少し様子を見てから声をかける事にしよう。
「チョレーーーイ!」
その時、少し離れた場所から奇声が聞こえた。見ると、そこには卓球台が出されていて、天善とイナリが卓球をしていた。
どのみち暇なので、俺は近くの地面に置かれていたスコアボードを手に持ち、二人の勝負を見守ることにした。
「……いくぞ! 舞卦処撥斗!」
「ポポポーーーン!」
「ぐわぁぁぁっ!?」
天善の放ったブレ球を、イナリはその尻尾で器用に打ち返していた。相手の回転を見事に殺した、完璧な一撃だった。
「イナリ、少しは手を抜いてやらないと、天善も自信なくしちゃうぞ」
俺はスコアボードをめくりながら、イナリにそう声をかける。
「ポンポンー」
それはできないぜ。みたいな感じで首を振られた。キツネにも、それなりにプライドがあるらしい。
「さすが長年連れ添った混合ダブルス。鷹原も蒼と同じようなことを言うんだな……気持ちは嬉しいが、そんな心遣いは不要だ!」
そこで本気になったのか、天善が腕に巻いていたサポーターを外す。それは地面に落ち、砂埃が舞う。
「相変わらず、重たいサポーターをつけてるんだな」
「……当然だ。そしてこれを外した今、空も飛べそうな気がする。さあ、いこう」
そして、枷から解放された腕から強烈なサーブが繰り出される。
「ポン!」
しかし、イナリはそれを容易く返す。
「今だ! 魂伝影念獅坐威砲!」
自身のサーブが返されたところで、天善は再び必殺技を放つ。
「ポーン!」
……その強力なブレ球も先程と同じように打ち返され、カウンター気味に天善の陣地の右隅に決まる。これで8-0。イナリが圧倒していた。
それにしても、天善が卓球をしてるのを久しぶりに見た気がする。
最近は俺もあまり秘密基地には行けないし、天善も仕事が忙しいのか、徹卓することも減っているみたいだ。
学生時代、秘密基地で良一や天善と卓球をしたことを懐かしく思いながら、俺は二人の勝負を見続けた。
……その後、天善は果敢にイナリに挑み続けたけど、結局完封負けに終わった。
あのふわふわな尻尾で受けられたら、どんな回転でも止められてしまう。本当に無慈悲だった。
「合計金額、4万2000円になります」
卓球勝負が終わるのとほぼ同じころ、鴎の買い物も終わったらしい。それを見て、俺も店の方に行ってみる。
「例のイベントの景品なのか? すごい金額だな」
「ちゃんと経費で出るから心配ないよー。あ、役所宛で領収書ください」
「えっと……ごめんなさい。蒼ちゃんお願いします」
「いいわよー。ちょっと待ってねー」
経費に、領収書。あまり島では普段聞かない単語が飛び交っていた。
「これだけ売れれば、おばーちゃんにいい報告ができますよ。これは上得意様ですね」
というか、藍も独学で勉強してるんだろうか。最近、前にも増して難しい単語を口にしてる時があるんだけど。
「そうだ。三人はアイス食べる? いい買い物ができたし、私が奢っちゃおう!」
嬉々として代金を受け取っている藍を横目で見ていたら、鴎がそう言ってアイスクリームケースへと向かう。
「よし、これにしよう!」
そう言って鴎が手にしたのは、恐竜のたまご。いわゆる爆弾アイスと呼ばれるやつだった。
「このアイス、懐かしいよね!」
「本当だな。まだ売ってたんだな」
真ん丸なゴム容器の中にバニラアイスが入ったアイスで、この先っぽのゴム口を切って、ちょっとずつ出てくるアイスをちゅーちゅー吸うんだ。すごく懐かしい。
「それじゃ、これ4つください! あと、ハサミ貸して!」
「はい。200万円ですよ。ハサミはそこにあるのを使ってください」
「はーい」
鴎がさくさくとお会計を済ませて、爆弾アイスを俺たちに手渡してくれる。
受け取った俺たちは、ゴム口を切った後、好きな場所で食べ始める。藍はカウンターの中で食べるわけにはいかなかったので、鴎と一緒に表のベンチに座っていた。
俺は蒼と並んで、座敷の入り口に腰を下ろす。
「あ、久しぶりに食べるとおいしーわねー」
「だな。懐かしい味だ」
二人並んで、丸いアイスをちゅーちゅー吸うように食べる。
「んく。ちゅっ……ちゅるっ……」
……隣で夢中になってアイスを吸ってる蒼を見ていたら、俺の中にある考え浮かんだ。
……子供の頃は気にしてなかったけど、今になって大人目線で考えると、このアイスって……形状といい、食べ方といい……。
「このアイス、まるでさ……」
「へっ? 羽依里、何か言った?」
「……まるで、おっぱいみたいだよな。このアイス」
「は?」
思わず口にしてしまった俺の言葉を聞いて、蒼が固まった。
「はぁぁぁぁ!?」
……直後に絶叫。
「何てこと言うのよ―――!」
「ごめん。俺だけ変なトラウマを抱えるのは耐えられなくて。いつかのセミとエビのお返しってことで」
「意味がわからないわよ―――!」
「ほ、ほら、怒ってないで食べないと。その、どんどん出てくるし」
「今の話聞いて、食べられるわけないでしょーーー! 羽依里が食べなさいよ! ほら!」
蒼は顔を真っ赤にしながら、俺の方におっぱ……いや、爆弾アイスを押し付けてくる。確かに俺の言い方も悪かったかもしれないけど、そこまで毛嫌いしなくても。
「わ、わかったよ。俺が両方食べるから。落ち着いて」
「落ち着けないわよ―――! どーせこのアイスを食べた後は、あたしのもって言うんでしょー!」
久しぶりのピンク妄想全開だった。本格的に付き合いだしてからは、だいぶ落ち着いてきたと思ってたんだけど。
「……あの二人、仲良いねー」
「……そうですね」
そして距離が離れているせいか、ベンチに座る鴎たちには騒ぎの詳細は伝わっていないみたいだ。ある意味、助かった。
「くーださーいな」
「おお、ズクズク、久しぶりー!」
なんとかアイスを食べ終え、未だに少し顔が赤い蒼を必死になだめていると、静久がやってきた。
「あら。今日はパイクオリティな皆が揃っているのね。会えて嬉しいわ」
駄菓子屋にいる面子を見ながら、静久は笑顔でそう感想を口にしていた。
ハイクオリティならわかるけど、パイクオリティってなんだろう。
「静久さん、いらっしゃいませ」
そんなことを考えていると、藍がベンチから立ち上がってカウンターへと戻った。どうやら接客モードらしい。
「今日はどうしましたか?」
「また紬へのお土産を買いに来たの。パリングルスはあるかしら」
「パリングルスですね。確か新作出てますよ」
その台詞を聞いて、藍は慣れた手つきでカウンターの下を漁り始める。
定期的にパリングルスの新作が出てるのは知ってるけど、この時期の新作って何だろう。
「……これですね。『初夏に爽やかなお茶香る。緑茶味』らしいですよ」
「え、緑茶味?」
藍が取り出したパリングルスは、何とも言えない緑色のパッケージをしていた。静久や鴎も、興味津々と言った感じで見ていたし、俺と蒼も思わず近づいて、まじまじと見てしまう。
「これ、美味しいのかな」
「どうかしら。確かに昨今、抹茶ブームではあるみたいだけど」
静久は訝しげにパッケージを見ていた。買うかどうか、悩んでいる様子だ。
「お店用の試供品がありますけど、皆さんで食べてみますか?」
その時、藍がそう言って別のパリングルスを取り出した。フレーバーは同じ緑茶味だけど、小さ目の容器に入っている。
「そうね。味の保証がないものを紬に持って行くわけにもいかないし、皆で食べてみましょ?」
年長者の意見に皆が賛成し、さっそく食べてみることになった。
何枚かティッシュペーパーを敷いて、その上に緑茶味のパリングルスを出してみる。
「……すごく緑々してるんだけど」
隣の蒼が、そう感想を述べていた。その細い指先に摘まれたパリングルスには、これでもかというほど緑色の粉がかかっていた。
なんの粉だろう。抹茶塩ってのもあるし、その類だろうか。
「とりあえず、食べてみよう」
意を決して、全員が緑茶味のパリングルスを口に運ぶ。
「……なんか、粉っぽいね」
「そ、そうね。なんというか、独特な味ね」
「正直、おいしくないんですけど」
「これは喉乾くわねー」
正直に言うと、美味しくない。塩気もないし、これ、本当に普通の抹茶の粉末だ。一枚食べるごとに、水分が持っていかれる。喉がむごっほだ。
「そうだ。天善やイナリも食べてみないか?」
そう言いながら表に目をやるけど、先の二人は卓球台ごと消えてしまっていた。何て逃げ足の速さだ。
「……そうね。やっぱりサワークリームオニオン味と、うずしお味を貰えるかしら」
「はい。200万円です」
その後、静久は無難な味を選んで買い、灯台へと向かっていった。オブラートに包んだ言い方をしていたけど、やっぱり緑茶味はおいしくなかったんだろう。
「それじゃ、私も帰るねー」
時を同じくして、鴎も満足したらしく、元気に帰っていった。
「……くーださーいな」
「あ、しろはちゃん。いらっしゃい」
先の二人が帰った後、カウンターの陰で蒼と一緒に座っていると、今度はしろはがやってきた。今日はしろはとよく会う気がする。
「あの、そろそろ通販代行の品物が届いてるんじゃないかと思って」
「ああ、例のスイカバーですね。届いてますよ」
そう聞いた藍がカウンターを離れて、アイスクリームケースの方へ向かう。スイカバー?
「鳴瀬のしろはちゃん用。この段ボールですよね」
そして藍は小さ目の段ボール箱をケースから取り出して、カウンターの方へ戻ってくる。
「えっと、スイカバー5本入り、手数料込みで1500円です」
「ありがとう」
……高い。一本が普通のスイカバーの3倍の値段だ。
「当たり前ですけど、要冷凍になってますから。帰ったら早めに冷凍庫に入れてくださいね」
「うん」
しろははすごい笑顔だった。正直割高なんだけど、そこまでして食べたかったんだろう。
「……えっ。どうしてあなたがいるの」
その時、しろはは初めて俺がここにいることに気付いたらしい。明らかに、見られたくなかったという顔をしている。
「その……しろは、念願のスイカバーが手に入って良かったな」
「いや、これはあの、その」
「本当にスイカバー好きなんだな。まさか、通販代行までして手に入れるなんて」
「う、うぅ……」
「安定供給されるまで、大切に食べないとな。なんせ、元の値段の三倍……」
「こい……どすこいっ!」
「ぐはっ!?」
しろはは俺にそう吐き捨てると、そのまま段ボールを持って、走っていってしまった。
一方、生どすこいを正面から食らった俺は駄菓子屋の床にもんどりうって倒れてしまった。
「……しろはにどすこい言わせるなんて、羽依里、調子に乗り過ぎたわねー」
隣の蒼もそう言って苦笑いを浮かべていた。うぅ、久しぶりに食らった……。
その後、外出していた駄菓子屋のおばーちゃんが帰って来るまで、俺はどすこいショックに打ちひしがれていたのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……そんな駄菓子屋での出来事から、数日後。この日は仕事が長引いて、お昼までかかってしまった。
遅い昼食を済ませた後、蒼に癒してもらおうと駄菓子屋へと足を運ぶ。
でも、そこにはおばーちゃんしか居なくて、今日は蒼たちは揃って休みだと言われた。
ここ最近、午後からは駄菓子屋で過ごすことが当たり前になっていたのもあって、急に暇になった。
蒼のいない駄菓子屋に居座ってもしょうがないし、あてもなく島を歩くことにした。
「俺の蒼センサーによると、こっちに蒼がいる気がする……!」
特に思い当たるフシがあるわけじゃないけど、そんなことを呟きながら浜辺を歩く。
「あ、羽依里ー!」
すると、灯台へ続く道のところに、空門姉妹と鴎がいた。
俺の蒼センサー、なかなかに優秀じゃないか。
「あれ、三人ともどうしてこんなところに?」
「ツムツムに会いに、灯台に行ってたの!」
「せっかく鴎が島に来てるんだし、紬にも会わせてあげようと思ってね。その帰りなのよー」
「羽依里こそ、どうしてこんなところに?」
「え? えっとその……」
「……もしかして、自前の蒼ちゃんセンサーが働いた……とかですか?」
その時、藍が俺の心を見透かしたようにそう口にする。もしかして、藍にもついてるんだろうか。蒼センサー。
「え、羽依里、そんなのついてるの?」
「あはは、まさかねー」
冗談に聞こえたのか、鴎と蒼が一緒に笑う。でも、俺は笑えなかった。
「……ところで、どうして鴎はスーツケースに乗ってるんだ?」
「実は、疲れちゃって」
……なるほど。ここから灯台までは結構な距離があるし、帰り道の途中で歩き疲れてしまったのか。
「そうか。それじゃ俺たちは帰るから。鴎、頑張れよ」
「ひーん」
そう言いながら蒼の手を取ると、鴎がスーツケースの上で顔を覆ってしまった。
「……ねぇ羽依里、可哀想だから押していってあげない?」
「そうですよ。女の子を泣かせたまま放っていくんですか? 男の子として、最低ですよ」
スーツケースを押すきつさを知っている身としては、このまま速やかに退散したい所だったんだけど。両サイドからそう言われると、賛同せざるを得ない。
「……わかった。押すよ。鴎、役所前まででいいのか?」
「ありがとう! やっぱり、羽依里イズいい奴!」
さっきまでの沈んだ顔がウソのように、ぱあっと明るい表情になった。俺はそんな鴎の変わり身の早さに苦笑しつつ、スーツケースの後ろにつく。
その拍子に、風上に立つ鴎からいい匂いがした。香水なのか、シャンプーの香りなのかはわからないけど。
……そういえばここ数日、島では鴎について色々な噂が流れている。
どこかの財閥の社長令嬢だとか、高名な作家の孫娘だとか、病気の療養で島に来たとか、内容は人によってバラバラだったけど。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
「よーし、いくぞー!」
元気いっぱいに指示を出す鴎を見ていると、どの噂も当てはまりそうにない。所詮は噂だよな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
鴎が乗ったスーツケースを俺が押して、藍と蒼がその少し後ろをついて歩く。そんな状況がしばらく続いた。
「……ねぇ。こうやって見てると、なんだか変な主従関係に見えるんだけど」
「いや、気のせいだろ」
「今度、おとーさんのカメラ借りて写真撮ったげよっか? 客観的に見たら、絶対そう見えると思うけど」
「やめて。お願いだから」
そんな話をしながら、がらがらとスーツケースを押し続ける。5月とは言え陽射しはそれなりにあるし、少し汗ばんできた。
「そうだ。蒼ちゃんも乗ってみる?」
「へ?」
「きっと、羽依里が押してくれるよ?」
その時、鴎がそう言ったかと思うと、スーツケースから飛び降りた。ちょっと。走行中のスーツケースから突然降りるのはやめてほしい。
「……はい。どうぞー」
そして自分に代わり、蒼にスーツケースを勧める。
「うーん、羽依里が押してくれるわけだし……じゃあ、少しだけね」
蒼はそう言って、恐る恐るスーツケースに座る。まさか、こんな展開になるなんて。
「それじゃ、押すからな」
「さ、最初は優しくお願いします……!」
「十分わかってるから、そんな意味深なこと言わないで……」
俺はスーツケースに乗り慣れてない蒼が驚かないように、ゆっくりとスーツケースを動かす。
「け、結構揺れるのね」
「だろ。一度だけ乗ったことがあるけど、なかなかなバランス感覚が要求されるんだ」
「なんか、遊園地のアトラクションみたいよねー」
蒼も最初は戸惑っていたけど、段々と慣れてきたのか、楽しそうにしていた。
「……そうだ。今度は藍が乗ってみる?」
蒼はしばらくスーツケースに揺られた後、後ろを歩く藍にそう提案していた。
「え、でも……」
藍は複雑そうな顔で運転手の俺を見る。
「もしかして、俺じゃ不服なのか? パワーには自信があるぞ」
「そういう問題じゃありません。気分の問題です。羽依里さんに押されるなんて嫌です」
うぐっ。そこまではっきり言わなくても。
「はいはい。あたしが押したげるわよー。羽依里、止めて」
そのやり取りを見て、蒼は俺にスーツケースを止めさせて地面へと降りる。
「え、それは逆に悪いですよ。むしろ、私が蒼ちゃんを押してあげます」
「いいからいいから。あたしが押したいの。早く座りなさい」
そしてそのまま藍の背中を押して、スーツケースへと座らせた。
「それじゃ、いくわよー。よいしょー。よいしょー」
藍が乗ったスーツケースを蒼が押す。さすがにゆっくりだけど、少しずつ進んでいく。
「……な、なかなか揺れますね」
「でしょー。バランスとるの、結構大変なのよ?」
「そうそう。私も普段、安穏と乗ってるだけじゃないのだぞー」
姉妹の会話に、鴎が参加する。そんな微笑ましい様子を、俺は少し後ろを歩きながら見ていた。
そろそろ住宅地というところで、少し疲れが見えてきた蒼に代わって、俺がスーツケースを押す。
運転手が俺に変わったことで藍もスーツケースを降りて、鴎がいつもの位置に座った。
「きみといーっしょーなーらー♪」
しばらく押していると、鴎が唐突に歌いだした。
「鴎、いきなりどうしたんだ」
「皆疲れてるし、歌でもうたったら元気になるかなって」
「それにしたって、選曲があるだろ。ずいぶん古い歌だな」
「いいじゃない。好きなんだから! きみといーっしょーなーらー♪」
「……あれ? その歌、まだ流行ってるんですか?」
蒼の隣でその歌を聴いていた藍が、ふいにそう言う。
「ううん。流行ってないけど……どうしたの?」
「い、いえ。なんでもないです」
あの歌……確か、ミディアンシャーロットのwithだっけ。結構古い歌だし、どうやら藍の昔の記憶にあるかもしれない。
「そうだ藍、知ってる曲なら、一緒に歌ってみたら?」
その様子を見て、蒼が笑顔でそう提案する。
「え? は、恥ずかしいんですけど」
……そこでなんで俺を見るんだろう。
「いいじゃない。藍、歌も上手かったし。大きな声を出すのもリハビリのうちだって、おかーさんも言ってたでしょ?」
「それはそうですけど……わ、わかりました。でも、羽依里さんは耳をふさいでいてください。聞いちゃ駄目です」
「……この状況で耳塞いだら俺、スーツケース押せなくなるんだけど」
「蒼ちゃんに耳栓してもらってください。それならいいでしょう?」
「駄目。人に聞いてもらうのもリハビリよ。藍、頑張って」
「うう、蒼ちゃんがいじめる……」
……結局、リハビリの名のもとに藍は鴎に合わせて小声で歌っていた。鴎の声が大きくてあまり聞こえなかったけど、普通に上手だったし、そこまで恥ずかしがる必要ないと思うんだけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「……ふう。到着だ」
「羽依里、ありがとう!」
なんとか無事に鴎を役所前まで送り届けることができた。こうやって実際に押してみると、結構な距離があった。
「……そうだ。羽依里たちはこの連休、どこかお休みある?」
スーツケースを押しすぎて痛くなった腰を伸ばしていると、鴎が笑顔で俺たちにそう聞いてきた。
「あたしたちはいつでもいいわよー?」
「俺は明後日だな。基本、日曜日が休みだからさ」
「じゃあ、その日に皆でおでかけしよう!」
そう言いながら、どこからか数枚のチケットを取り出していた。
「鴎ちゃん、それなんですか?」
「春祭りのチケットだよ! 私の企画したイベントが大成功したお礼ってことで、のみきさんにもらったの!」
「え、春祭り?」
チケットには『宇都港春祭り入場券』と書かれていた。どうやら、本土の港で開かれるイベントらしい。
「ここまで運んでもらった、鴎の恩返しってことで」
「それを自分で言うのな」
「別に良いじゃない。羽依里もあおちゃんとデートできるし、ありがたくない?」
「ありがたいです」
俺は大袈裟にひざまずきながら、鴎からチケットを受け取る。
「現金ねー」
「やっぱり、変な主従関係あるんじゃないですか? 写真撮ります?」
そんな俺と鴎を、空門姉妹が少し離れた場所から見ていた。だから、写真はやめて。
「もちろん、あおちゃんたちにもチケットあげる!」
直後、鴎はそう言いながら二人にもチケットを渡していた。それでも、その手にはまだたくさんのチケットが握られていた。
「ところで、なんでそんなにチケットを持ってるんだ? お礼にもらったにしては、多すぎないか?」
「えへへー。実はこのチケットのことで、皆にお願いがあるんだけど……」
一度はにかんだ後、期待に満ちた視線を俺たちに向けてきた。
「せっかくのおでかけだし、春祭りには、できたら皆で行きたいの。羽依里たち、チケット配るの手伝ってくれないかな?」
「そういうことなら、良一や天善にも声をかけてみるよ。チケット、何枚か借りていいか?」
「もちろん!」
こういうイベントは大人数で行った方が楽しいに決まってるし、鴎の気持ちもわかる。予定日までもう一日あるし、皆にも声をかけてみよう。
「あたしも紬やしろはに声をかけてみるわねー」
「うん! よろしくね!」
その後、蒼たちも数枚のチケットを受け取り、渡す相手を探すことになった。
女性陣は二人に任せて、俺は良一や天善にでも声をかけてみることにしようかな。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……そして、日曜日。
待ち合わせ場所の港には、俺と空門姉妹、鴎の他に、しろはとのみき、紬と静久がやってきてくれた。
俺も良一と天善にも声をかけたけど、その日は二人とも用事があるからと、断られてしまった。
天善は仕事だと言っていたから仕方ないとして、俺と休日が同じはずの良一は妹と用事があるとか言っていた。
ある意味では、心おきなく蒼とデートできるんだけど、これだけの人数の中で男が俺だけっていうのも、なんか寂しい気がする。
「……見事に女の子ばっかりですね」
藍はその場に集まった皆を見ながら、嬉しそうに言っていた。蒼曰く、藍は女の子が好きっていうし、居心地いいのかもしれない。
「あの、俺もいるんだけど」
「羽依里さんは浮き球だと思いますから」
そう声をかけたら、そんな冷たい言葉が返ってきた。俺、海に浮いてるあのカエルと同じなのか……。
「ねぇツムツム! 祭り会場では、ワタアメの無料配布があるらしいよ!」
「おおー、それはミリョクテキです!」
その時、藍の隣にいた鴎と紬がイベントのチラシを見ながら、そんな話をしていた。
「あれ、紬ちゃん、ワタアメ好きなんですか?」
「はい! 好きです!」
気になる話だったんだろうか。そんな二人の会話に藍が入っていった。
「アイさんはワタアメ好きですか?」
「まぁ。それなりです。というか、ワタアメ嫌いな女の子っていないと思います。味が同じなので、飽きちゃいますけど」
「あら、今はイチゴ味とか、メロン味とか、ワタアメも色々な味があるのよ?」
「え、色々な味があるんです?」
そこで、静久が話を付け加える。確かに最近は、色々な味がついたザラメが売られているらしいけど。
「そうよ。色々な味を一度で楽しめる、レインボー味とかもあるの」
「レ、レインボー味!?」
どんなものを想像したんだろう。藍が珍しく大きな声を上げていた。
……その後、三人はワタアメ談義を始めてしまったので、立つ瀬のなくなった俺は視線を泳がせる。
蒼は鴎やのみきと話をしているし、そこに俺が入っていくのも……。こういう時、男一人だけだと地味につらい。
「……なに?」
その時、そんな皆の輪から少し離れた場所に一人でいたしろはと目が合ってしまった。
「いやその、しろは、今日はお店の手伝いの方は良かったのか?」
目が合ってしまった手前、そう言いながら近づいていく。
正直、しろはが来てくれたのは予想外だった。大勢の人が集まるイベントとか、苦手っぽいのに。
「今日は、マスターに丸投げしてきたよ。あの人、連休の前半は家族サービスだって言って、ずっと休んでたから」
「あ、そうなのか」
ここ数日、しろはがすごく疲れた顔をしていたのは、自分ひとりであの食堂を切り盛りしていたからなのか。
「しろは、偉いな」
「……別に。それより、スイカバーのほうが重要」
「え、スイカバー?」
唐突に出てきた単語に、俺は理解が追い付かない。
「これですよ。スイカバー引換券」
その時、さっきまで向こうで話していたはずの藍が手に半券のようなものを持ってこっちにやってきた。思いっきり手書きっぽいけど、なんだろう。
「一枚150円なんですが、この券を持っている人は、スイカバー発売後に優先的に交換できるんです」
……なるほど。つまりは一本につき50円でスイカバーを予約したようなものか。
「今日、皆とお祭りにいく代わりに、この引換券を渡したんです。代金は先払いですけど、先物取引ってやつですよね」
ちょっと違う気もするけど。藍、何の勉強してるの。
「つまり、この引換券に釣られた……と」
「だって、貴重なスイカバーだよ。それを5本も。こんな魅力的な話は、二度とないと思うし」
熱弁していた。まんまと藍に乗せられた感は否めないけど、スイカバーを通販代行で買うくらいだし。出し惜しみはしないみたいだ。
「……まぁそう言うな。しろはがいいなら、いいじゃないか」
その時、のみきを先頭にして、鴎と蒼もこっちにやってきた。
「私たちもしろはと外出できて、嬉しいしな」
そう言うのみきは笑顔だった。動機はなんにせよ、しろはが皆と一緒に外出するのが嬉しいらしい。
「でものみき、今日は良一が一緒じゃなくて残念だったな」
「な、何の話だ? 標的がいないぶん、気が楽だぞ」
そう言ってはいるけど、目が泳いでいた。実に分かりやすい。
「ところで、本土に行くときもその水鉄砲持って行くのか?」
「ああ。護身用だからな」
もはや自然体になってしまってるけど、本土であの水鉄砲を背負って歩いていたら、それはそれで目立ちそうなんだけど。
「のみきさん、その水鉄砲と一心同体だしね!」
「そうよねー。鴎が催したイベント……ゴールデンボールだっけ? その時も華麗に撃ちまくってたらしいじゃない」
「あ、あれはただのデモンストレーションだ。浜辺のテントをなぎ倒してしまったことは、悪かったと思っているが」
鴎と蒼に褒められて、のみきが照れていた。ところで、鴎のイベントって親子参加型の宝探しイベントじゃなかったっけ。
のほほんとしたイメージがあったんだけど、テントをなぎ倒す? どんなイベントだったんだろう。今更ながら、見に行けばよかった。
「どうやら、鴎はイベントの企画運営に関しては天賦の才があるらしいしな。次の企画も、よろしく頼むぞ」
「うん! 任せておいて!」
のみきに言われて、鴎が大きな胸を張る。イベントの内容がすごく気になったけど、それを聞く前に船が港に入ってきた。
なんとなく周辺も慌ただしくなってきたし、俺たちも遅れないように船に乗ることにしよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
船内では年長者の静久が皆を引率してくれ、予定の確認や注意点をしてくれた。
それでも、女性ばかりの中に男性一人というのは、なかなかにつらい。人によってはハーレムだと羨ましがるかもしれないけど、実際はいいことばかりじゃない。
特に、鴎が藍のお化粧に気づいてから始まった化粧品トークは俺が入っていける内容じゃなかったし、どうしても疎外感は感じてしまう。
「ふふ。パイリ君、さすがに退屈そうにしてるわね」
なんとなく窓から海を眺めていたら、隣に座っていた静久がそう声をかけてきた。
「いや、なかなか入れる話題じゃなくてさ。ガールズトークっていうのかな」
「隣に蒼ちゃんがいれば多少は違ったのかもしれないけど、今は藍ちゃんが離さないみたいでね」
「いや、それは別に気にしてないよ」
藍の方を見てみると、蒼の隣にぴったりとくっついていた。
島の外に出るのは4月以来だと思うし、まだ少し不安があるのかな。
「……そういえば、静久も今日は島にいたんだな」
静久は普段本土に住んでいるんだし、どうせなら宇都港で合流しても良かったような気がするけど。わざわざ引率しに来てくれたんだろうか。
「ええ。私は昨日から灯台に泊まっていたしね。せっかくだから、今日のお祭りに参加した後、実家に帰ることにしたの」
「ああ、そういうことだったのか」
蒼が紬にチケットを持って行ったとき、静久の分も渡したと言っていたけど、あらかじめ予定が立っていたのかな。
「パイリ君のおかげで、紬といい思い出ができそうよ」
「チケットはもともと鴎のだからな。お礼を言うなら鴎に言ってやってくれ」
「そうなのね。後でお礼を言っておくことにするわ」
「ああ、そうしてやってくれよ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
……30分足らずの船旅を経て、俺たちは宇都港へと到着した。
港の外は結構な人で溢れかえっていたけど、大き目の案内板が設置されていたおかげで、春祭りの会場はすぐに見つけることができた。
「皆―、こっちだよー」
外に出てますます元気になった鴎が、先頭に立って皆を引っ張っていく。
……やがて大きな仮設ゲートが見えてきた。そのたもとに係員らしき人の姿も見えるし、どうやらここで入場券の確認をするらしい。
俺たちは各々、チケットを切ってもらって祭り会場へ足を踏み入れた。
……港から海に面した広大なスペースに無数の屋台が並び、所狭しと人が行きかっている。
料理を提供している屋台からは何とも言えない良い香りが漂い、どこからか賑やかな音楽も聞こえてくる。いかにもお祭りといった雰囲気だ。
「これはすごいな」
「そうねー。春祭りって来たことないけど、楽しそう。人もすごいし」
誰にともなく呟いた俺の言葉を、いつの間にか隣に来ていた蒼が拾ってくれた。大型連休中で、天気も最高。人が集まらない理由はなかった。
「はぐれちゃいけないし、手繋ぐか?」
「そ、そう……ね」
一瞬動揺して、それからおずおずと伸ばされた手を、俺は優しく握る。
「それじゃ、まずはワタアメ食べよう! あいちゃん、しろしろ、こっちだよ!」
直後、入口でもらった会場マップを見ながら、再び鴎が先頭を切って歩き出す。俺たちもそれについて、会場を練り歩くことにした。
「おお、これだよ! これがレインボーワタアメ!」
そして辿り着いたワタアメの屋台では、七色に輝くワタアメが目立つところにでんと置かれていた。
「……すごいですね。どんな味がするんでしょうか」
藍は先日外出した時と同じように瞳を輝かせて、興味津々といった感じだ。
「よーし、ここは私が買うから、皆で食べよう!」
え、1000円とか書いてあるんだけど。さすがに奮発するにも限度があるような。
「ほらよ。お前らにレインボー」
「ありがとう!」
俺も少し出そうと財布に手を伸ばすも既に遅く、鴎は怪しいサングラスをした店主からレインボーワタアメを受け取っていた。
「それじゃあいちゃん、好きなところどうぞー」
そして鴎は一番に藍へとそのワタアメを差し出す。
「えっと、それでは……」
藍は一瞬たじろいだ後、赤色と緑色の間の部分を摘み取って、口に運ぶ。
「……あ、おいしいです。ワタアメなのに、本当にイチゴとメロンの味がします」
「でしょう? 最近のワタアメは進化しているのよ」
「そですよ! これでアイさんもワタアメの虜ですね!」
そんな藍の反応を見て、静久と紬が嬉しそうな声を出していた。
「はい、それじゃ他の皆もどうぞ―?」
次に鴎がそう言って、俺たちの方にもレインボーワタアメを差し出してくれた。
一口食べてみると、俺が食べたのはバナナみたいな味がした。本当に七つの味があるみたいだ。
ちなみにその後、紬は無料配布のワタアメを二つも平らげていた。さすが、ワタアメの申し子だった。
「あいちゃん、しろしろ! 射的があるよ!」
その後は屋台巡りが続く。春祭りと銘打っているだけあって、それらしい屋台も多く並んでいた。
そして鴎が見つけたのは、射的の屋台だった。
「いらっしゃい。遊んでいくか?」
「……あれ、天善?」
聞いたことある声だと思ったら、店番をしていたのは天善だった。
「誰かと思えば、鷹原たちじゃないか」
「天善はどうしてこんなところに?」
「まぁ、副業というやつだ。ちゃんと許可は得ているぞ」
天善はそう言いながら、コルク銃を掲げてみせる。
「一回100円。弾は3発。どうだ。やってみないか?」
「やる!」
鴎が即答して、コルク銃を受け取っていた。
俺はそんな鴎の脇から、並んでいる景品を見てみる。細々としたお菓子がほとんどだったけど、中にはエンジェルパイやブルジョワチョコといった大物も見える。
そして一番目立つところには『店主特製卓球トレーニングセット』と書かれた箱が置かれていた。なんだろう。天善が以前つけてた、重りの入ったリストバンドとかもらえるんだろうか。正直、いらないけど。
「じゃあ、私とのみきさんがお手本を見せるよ!」
俺がそんなことを思っていると、鴎とのみきがコルク銃を構えて、景品の前に立つ。やっぱりこの二人、やけに銃を持つ姿が様になってる。
「景品は完全に下に落とさないと、あげないからな」
「もちろん、わかってるよ!」
「鉄板だな。いくぞ」
二人は最前列の標的に狙いを定め、軽い発砲音を響かせる。
「おお、すごい」
直後、その音に合わせるようにリズム良くお菓子が落下していく。両者ともに全弾命中。合計6個ものお菓子を手に入れていた。
「へー、二人ともやるわねー」
「見事なオテマエでした!」
他の皆も感心していた。俺も思わず拍手してしまうほど、二人の腕前は見事だった。
「でも、普段から水鉄砲を扱い慣れてるのみきが上手なのはわかるけど、鴎も意外に上手なのな」
「冒険に銃撃戦はつきものだからね!」
つきものだっけ? なんか違う気がするけど。
「じゃあ、次はしろしろとあいちゃんの番だよ! 頑張って!」
「え? あの、私はあまり自信がないんですけど」
「私もその、やったことないし」
正直二人はあまり乗り気じゃなかったけど、鴎に促されるままコルク銃を手に取る。
「藍、ゆっくりでいいから、良く狙うんだぞ」
「しろしろも、銃を構える時はわきをしめて! こうだよ!」
慣れない様子でコルク銃を構える二人を、のみきと鴎が指導する。どっちも頑張れ。
「い、いきます」
「うう、れいげんいやちこなれ!」
……直後、乾いた音が響き渡る。
「あ、あれ……?」
「むー」
音はしたけども、景品は一つも落ちなかった。しろはは不満そうにコルク銃を見つめている。
「……しろは、コルク銃の性能は関係ないと思うぞ?」
「……それじゃ、あなたは得意なの?」
「……も、もちろんじゃないか。子供の頃は、早撃ちの羽依里(クイック・ハイリ)として名を馳せていたんだ」
しろはに言われてつい、そう口にしたけど、もちろん嘘だ。そんな二つ名で呼ばれたことなんてない。
「それじゃ羽依里さん、私と一つ勝負をしませんか?」
「え、勝負?」
その時、藍からそんな言葉を投げかけられた。
「そうです。蒼ちゃんと一日、デートする権利を賭けての勝負ですよ。まさか逃げたりしませんよね? 早撃ちの羽依里さん?」
……あの表情から読み取るに、どうやら藍は俺の嘘を見抜いているみたいだ。
「おおー、せっかくですし、タカハラさんの腕前を見てみたいです!」
……後ろの紬がその大きな瞳を輝かせながら俺を見ていた。しまった。これは逃げられない。
「羽依里も観念して、実力を見せてあげるしかないわねー」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、蒼も笑顔を向けてくれていた。蒼のことだし、俺の嘘を純粋に信じてくれてるんだろう。
「い、良いだろう。早撃ちの羽依里に勝負を挑んだこと、後悔させてやるからな」
「早撃ちの羽依里さんと勝負ができるなんて光栄ですね」
藍はそう言ってほくそ笑む。でも、藍もさっきは全弾外したはずなんだけど。あの自信はどこから湧いてくるんだろうか。
「勝負は三本勝負。より大きな景品を落とした方の勝ちです」
「わかった」
俺たちは天善に代金を支払い、三丁のコルク銃を受け取る。大きな景品を落とした方が勝ちなら、数は関係ない。狙うは大物だけだ。
「それじゃ、準備はいい? 一本目! よーい……!」
鴎の掛け声に合わせて、俺と藍はコルク銃を構える。全く自信はないけど、藍も上手という感じはしない。これはいい勝負ができるかもしれない。
「撃て―――!」
「くそ、全然当たらない……」
……結論から言うと、勝負はグダグダだった。
一本目は互いに全弾外し、二本目、三本目も同様。合計9発もの弾を発射したにもかかわらず、景品にかすりもしなかった。
所詮はおもちゃの銃ということで、命中精度は最悪。なんで鴎たち、この銃で楽々と景品を落とせたんだろう。しろはじゃないけど、銃の性能を疑いたくなる。
……このままでは決着がつかないということで、勝負は延長戦。四本目に突入していた。
「……あ! 当たりましたよ!」
その直後、藍はプリッツンを倒していた。
「良く倒したな。だが完全に下に落ちないとあげれないんだ。悪いな」
「むぅ。天善ちゃん、少しくらい甘く見てください。さもないと、子供の頃のあの出来事を皆にバラしますよ」
「み、店側を脅迫するのはやめてくれないか」
藍がそう言いながら、天善を睨みつけていた。天善も動揺しているし、この二人の過去に何があったんだろう。
「藍、勝負に集中した方が良いぞ。今から俺はあのブルジョワチョコを落とすんだ。天善、新しい銃をくれ」
「ちょっと、抜け駆けは許しませんよ! 天善ちゃん、私にも新しい銃をください!」
……一瞬冷や汗をかいたけど、結局四本目もお互いに成果なし。
「よし、今度こそ……」
自然と始まった五本目の勝負。その最後の最後。
「……あ、やった! やりましたよ!」
藍は渾身の一発で長森ミルクキャラメルを落としていた。これで勝負ありだった。
「くそ、負けた……」
「見てください蒼ちゃん、やりましたよ!」
「藍、良かったわねー」
勝負には負けたけど、景品を手にして子供のように喜ぶ藍を見ていると、不思議と悔しくなかった。
「……なんだか、すごく懐かしい感じがしました」
キャラメルを女性陣で分け合いながら、藍は本当に嬉しそうだった。それこそ小さい頃、良一たちを相手に同じような勝負をした思い出があるのかもしれない。
「……藍のためにわざと負けてくれたんでしょ? ありがとね。羽依里」
その時、蒼がそう耳打ちをしてきた。実は全力で勝ちに行ってたなんて言えなくなってしまった。
まぁ、蒼とデートする権利は藍に取られてしまったけど、蒼の好感度はむしろ上がったっぽいし。結果オーライとしよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「それじゃ、私と紬は向こうを見て来るわね」
「ああ。15時に入口のゲート前に集合だぞ」
「わかりました!」
お昼を少し過ぎた頃、自由行動しようという話になった。
どのみち、お昼は屋台でそれぞれ好きなものを食べる流れになっていたし、自由行動にした方が動きやすいと思う。
「しろしろ! あっちにメキシコ料理の屋台があるんだって! お昼はそれにしよう!」
「え、私は別に、一人でも……」
「いいからいいからー。一緒に食べた方が美味しいよー」
「わわわわ……」
一瞬逃げようとしたしろはだったけど、鴎にがっしりと襟首を掴まれて、そのまま引っ張っていかれてしまった。
えーと、俺はどうしようかな。
ちらっと蒼の方を見る。その隣には藍がいて、しっかりとその手を握っていた。先の射撃勝負の結果もあるし、これは蒼は誘えなさそうだ。
「羽依里さん、ちょっといいですか」
そんなことを考えていたら、藍がこっちにやってきた。
「射撃勝負には私が勝ちましたけど、蒼ちゃんとのデートはまた今度にします。今日は、羽依里さんが蒼ちゃんとのデートを楽しんでください」
「え、いいの?」
「私はいつでも蒼ちゃんとデートできますし。蒼ちゃんも、今日は羽依里さんと一緒の方が楽しいでしょうから」
先の蒼とそっくりな仕草で俺にそう耳打ちをすると、藍はのみきたちと一緒に人波へと消えていった。
「……これはもしかして、皆が気を使って俺たちを二人っきりにしてくれたのかな」
「あはは、そうかもねー」
俺たちは一瞬顔を見合わせて笑った後、自然と手を繋いで飲食ブースへと向かった。
「うわ、さすがに混んでるな」
ちょうどお昼時ということもあって、屋台近くに設置された飲食スペースはなかなかに賑わっていた。
運よく近い席を確保できた俺たちは、立ち並ぶ屋台を眺めながら昼食のメニューを考える。
焼きそばにお好み焼き、たこ焼きといったお祭りの定番メニューから、タコスにシシカバブといった風変わりなメニューまで、多種多様な屋台が並んでいて、悩む。
「どれもおいしそうよねー」
「そうだな。どうしようかな」
少し考えて、俺はお好み焼き、蒼は焼きそばにすることにした。変わった料理に挑戦してもよかったけど、せっかくの春祭りだし、ここはお祭りっぽいものを食べよう。
「じゃあ、俺が買ってくるから、ここで待っててくれよ」
「うん。よろしくねー」
蒼に席を確保しておいてもらって、俺が屋台へと向かう。人は多いけど、屋台の数が多いおかげか行列はできていない。これならスムーズに昼食を調達できそうだ。
「えーっと、焼きそばの屋台はどっちだったかな……」
蒼には出来たてを食べてもらいたくて、先に俺の分のお好み焼きを買い、焼きそばの屋台を探す。
「……わぎゅっ!?」
周囲を見渡しながら、ふいに立ち止まると、後ろを歩いていた人が俺の背中にぶつかった。
「あ、すみません。急に立ち止まっちゃって」
とっさに振り返って謝ると、背後に女の子が立っていた。
見た感じ、中学生くらいかな。短めの髪に、陽に映えるような蝶の髪飾りが印象的な子だった。
「い、いえ。平気です。私の方こそ前を見てなくて。ごめんなさいです」
ぶつかった拍子に鼻を打ったらしく、涙目で鼻を押さえながら、そう謝ってくれた。
「いや、悪いのは俺だからさ……あれ?」
……振り返った拍子に、その子と目が合う。
「……あの、おにーさん、前にどこかで会いましたっけ?」
不思議とお互いに目を逸らせずにいると、その子が不思議そうな顔で言う。
「……いや、そんなことはないと思うけど」
見た感じ、島の子じゃなさそうだし。観光で島に来ていたなら、それなりに印象に残ってそうだ。たぶん、初対面だと思う。
「そ、そうですよね。えへへ。変なこと言って、ごめんなさい」
「なっちゃん、どうしたのー?」
「なんでもなーい! すぐ行くよー!」
その時、少し離れた場所にいた子が心配そうに声をかけてきた。どうやら、友達と一緒だったみたいだ。
「それじゃ、おにーさん、失礼します!」
もう一度頭を下げて、去っていった。俺の方に非があるはずなのに、すごく礼儀正しい子だった。
その後、目当ての焼きそばを買って、蒼のいる席へ戻った。
「ありがとー。おいしそうねー」
「だろ。ちょっと遅くなったけど、焼きたてを用意してもらったんだ。さっそく食べよう」
一方で、俺のお好み焼きは少し冷めてしまったけど、蒼が喜んでくれたんなら全然気にならなかった。高火力の鉄板で調理されてる分、美味しかったし。
食事を済ませた後は、蒼と二人で祭りを見て回る。
「皆、俺の人形劇で大いに笑ってくれ―――!」
会場中央に用意された特設ステージでは、謎の旅芸人が糸も何も使わず人形を動かしていた。
「どうやってるのかしら。すごいわねー」
多種多様な人形たちがステージの上を縦横無尽に動き回る様は、見ていて圧巻の一言だった。
「え、あんな大きなアリクイのぬいぐるみが動いてるわよ。しかも、上に女の子乗ってるし」
「あのアリクイ、機械仕掛けでもなさそうだし。本当にどうやってるんだろうな」
観客もすごく盛り上がっていたし、ステージイベントは大盛況だった。俺たちも一緒になって、童心に帰ってはしゃいでしまった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「面白かったわねー」
ステージイベントを思いっきり楽しんだ後、腕時計を見ると、14時。
皆と約束した集合時間まで、あと一時間ある。どうしたものか。
「……そうだ羽依里、ちょっと座らない?」
「え?」
他に面白そうな催し物があったかな……とか考えていると、蒼がそう提案してきた。もしかして先日みたいに、体調が悪くなってしまったんだろうか。
「そんな顔しないで。別に体調悪くなったわけじゃないから」
そんな考えが顔に出てしまっていたんだろうか。蒼が俺の顔を見て、苦笑しながらそう言っていた。
「そ、そうなのか。なら、いいけど」
「そうそう。それじゃ、あそこにしましょー?」
そして蒼が指差したのは、時間的に人がほとんどいなくなった飲食ブース。その外れに備え付けられたベンチだった。
「……ねぇ、羽依里。聞いてくれる?」
そのベンチに腰を下ろすと、いつの間にか真剣なまなざしになった蒼が俺の方を見ていた。
「……どうしたんだ?」
いつもとは違う、決意を秘めた目。蒼がこの目をするときは、決まって重要な話がある時だ。
「伝えるの遅くなっちゃったけど、あたし、明日から学校行こうと思うの」
「え、学校?」
「そう。もちろん、おかーさんや藍には話したんだけどね。復学しようと思うの」
「一年以上休んでても、そんな簡単に復学ってできるものなのか?」
「あー、なんか特例……みたいな?」
「特例?」
「ほら。あたしって七影蝶の記憶のおかげで勉強だけはできてたし、学校では優等生だったのよー」
そう言って、どことなく自虐的な笑みを浮かべる。結局、その知識は藍の七影蝶を探すための副産物的なものだったからだろうか。
「でも、その知識のおかげで進級までさせてくれるっていうんだから感謝よねー」
俺の心を読んだようにそう言う。つまりは、学校に行く期間は一年で済むわけか。休学してるのに進学するとか聞いたことないけど、そんな特例が認められるくらい、蒼の成績が良かったんだろう。
「でも、勉強はできるかもしれないけどさ。その……大丈夫なのか?」
「へっ?」
「……島の皆、もう学校にはいないんだぞ」
蒼が眠っていたのが一年。その後のリハビリで一年。合計二年間、蒼は学校を休んでいた。
その間に、かつて蒼と一緒に通っていた島の皆は学校を卒業してしまった。
「知った友達もいなくて、学校で一人だけ。それでも、頑張れるのか?」
どんな理由があろうとも、蒼は一度留年してしまっているわけだし。少なからず奇異の目で見られるかもしれない。
学校という狭い世界の中では、その枠から少しでも外れた人間への風当たりは冷たい。
俺もかつて、クラスメイトからそんな視線を送られたことがあるから、当事者の気持ちはわかっているつもりだ。
「でも、学校は卒業したいのよ。たとえ一人でもね。そう決めたの」
その瞳はまっすぐに俺を見ていた。蒼が一度やると決めたことを曲げないのは知っているし、そうなると、俺がやることは一つだ。
「……わかった。なら、俺も全力で応援するよ」
「え、いいの?」
「ああ。島の皆だって、学校生活では先輩だぞ。七影蝶の知識があるから、勉強の方は問題ないだろうけど……」
「あー……それなんだけど、一つ問題があるのよ」
「え、問題?」
「なんか今のあたし、七影蝶からもらった記憶の半分くらいしか残ってないのよねー」
「え、それって大丈夫なのか?」
「あたし自身の記憶は大丈夫だから、心配いらないわよ? でも羽依里に起こしてもらった後くらいから、それまで在ったはずの七影蝶の知識がなくなってる感じなの。なんでかしらね」
「七影蝶から得た知識が無くなるなんてことがあるんだな……」
まるで記憶そのものが抜け出たみたいだ……なんて考えていると、ある情景が思い出された。
「……あれ? もしかして、あの時……」
「え、羽依里どうかした?」
「いや、ひとつだけ思い当たる節があってさ」
「思い当たる節……?」
「ほら……俺と蒼が初めて出会った、あの夏さ。藍が目覚めたのと入れ替わるように、お前が寝ちゃったよな」
「覚えてるわよー。あの頃は頑張りすぎて、頭の中が色んな人の記憶でぐちゃぐちゃになってた」
「一週間くらい経って、ようやく蒼が目覚めてさ。起きたばっかりの蒼を背負って、島中を練り歩いたろ」
「そうだったわねー。今思うと、めちゃくちゃ恥ずかしいことしてたわね」
「それで日が暮れる頃に、神域に辿り着いたんだ」
「……ごめん。あたし、山を登り始めたくらいまでしか記憶にないけど」
「……だろうな。神域についた時にはお前、もう寝ちゃってたし」
もしかして、まだ迷い橘が咲いているのでは……そんな一途の望みに賭けて、神域にやってきた。結局、間に合わなかったけど。
「それで神域についてすぐに、お前の身体からすごい数の七影蝶が飛び出したんだよ」
「え、そうなの?」
「ああ。今思えば、その時に蒼の七影蝶と一緒に、他の七影蝶も抜け出てしまったのかもな」
「だから、今のあたしは七影蝶の記憶が減ってる……一理あるわねー」
蒼は口元に手をやりながら、神妙な顔つきで頷いていた。
「……あれ? 羽依里、ちょっと待って。その時って、あたしの身体から沢山の七影蝶が飛び出したのよね?」
「ああ。それこそ、10匹や20匹なんてもんじゃなかったな」
「じゃあ、その中からあたしの七影蝶がわかったっていうのは……なんで?」
「……イナリが鳴いて教えてくれたのもあったけど、その……思いっきり触れた」
「はぁぁぁぁぁ!?」
蒼は驚きのあまり、絶叫に近い声をあげながら立ち上がった。
「じゃ、じゃあ、あたしのその、全部……」
「……うん。蒼の記憶、全部見た」
「忘れて――――!」
「……ごめん。無理」
「幸せそうな顔してるんじゃないわよ―――!」
蒼は続けて俺の両肩を掴んで、前後にゆすってくる。そんなことしても、絶対忘れないから。
「うあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ……」
蒼は表現しがたい声を上げながら、頭を抱えて座り込んでしまった。
「ごめん。もし俺の七影蝶が飛び出した時は、好きなだけ触っていいからさ」
「触るか―――! 冗談でもそんなこと言わないでよ!」
「ごめんなさい」
「ふーーーっ! ふーーーっ!」
蒼は大変怒ってらっしゃった。なんとか機嫌を直してもらえないだろうか。
「あ」
そのとき、おあつらえ向きな屋台を見つけた。
「蒼、そろそろ喉渇いてないか?」
「……なに? 食べ物でご機嫌取りでもする気? 言っとくけど、そんなんじゃ許してあげないんだからね」
「久しぶりにブルーハワイ食べたくないか」
「……食べる」
……うん。蒼の中から怒りが消えていくのがわかる。どうやら、ブルーハワイは怒りも超越するらしい。
「買ってくるから、少し待っててくれな」
俺は足早にかき氷の屋台へと向かい、ふたつのブルーハワイを手に戻ってくる。島の駄菓子屋より量は少なくて、その割に値段は高いけど、ここは四の五の言ってられない。
「ほら、久しぶりのフルーハワイだぞ」
「……ありがと」
蒼はむすっとした表情のまま、俺の手からブルーハワイを受け取る。
「……あ、おいしー」
そしてブルーハワイを一口食べると、たまらず笑顔になっていた。どうやら怒りも収まったらしいし、本当にブルーハワイ様様だ。
俺も胸をなでおろしながら、一緒にブルーハワイを食べる。うん。安定の味だった。
……かき氷食べてすっかりご機嫌になった蒼の隣で、俺は考えていた。
……やっぱり、蒼から七影蝶の記憶が減ってしまったのは問題なのかもしれない。
さっきの話からすると、蒼が学校の成績が良かったのは七影蝶の知識に頼っていた部分が大きいんだろうし。
場合によっては、本当に俺や島の皆で勉強を教えてあげたりしないといけないかもしれない。一応学校は卒業したし、それなりに勉強はできると思うんだけど。
「……ねぇ、羽依里。聞いてる?」
「え、何?」
そんなことを考えながら、頭の中で数学の公式とか思い出していると、蒼がすぐ近くに顔を寄せていた。
「羽依里のかき氷、食べさせて?」
「え、どうして?」
「もう。食べさせてくれたら、あたしの記憶見たの許してあげるって言ってるの」
ああ。蒼の中で、そう言う流れになったんだ。
「同じブルーハワイだけど、いいの?」
「いいから。お願い」
……そう言って口を開ける。これはもしかしなくても、食べさせてくれって意味なんだろうな。
「……恥ずかしいんだけど」
「あたしだって恥ずかしいわよ。ほら、早く」
俺は思わず周りを見渡す。遠くに屋台がある以外、ほとんど人はいないみたいだ。
「い、一回だけだからな」
「えー」
……そこで残念そうな顔しないで。
「一回やったらさ、二回も三回も同じだと思わない?」
「そ、それは、そうかもしれないけどさ……」
俺は自分のかき氷と蒼の顔を交互に見ながら、どぎまぎする。その間にも、蒼は顔を少しずつこっちに近づけてくる。蒼って、こんなに積極的だったっけ。
「じゃ、じゃあ、いくぞ……あーん……」
「あーん……はむっ」
俺のスプーンの先に乗ったかき氷が、蒼の小さな口に吸い込まれる。
いつだったか、こうやって寝てる蒼にかき氷を食べさせたことがあった気がする。
「んー、羽依里のかき氷も美味しいわねー」
「どっちも同じ味だけどな」
「同じじゃないわよ。羽依里の味がする」
「……その手の不意打ち、本当にやめて」
俺の放ったお約束は見事にカウンターされてしまった。嬉しすぎて、思わず顔を隠す。
「それじゃ、今度はあたしが羽依里に食べさせてあげる」
同じ調子で、蒼の口に何度かかき氷を運んであげていると、唐突にそう言われた。
「あ、やっぱりそうなるんだ」
「当然でしょー。あたしばっかりだと、やっぱり不公平だしねー」
……なんか趣旨が変わってる気がするけど、蒼がやりたいと言うんなら、俺は受け入れるしかない。
「はい。あーん」
「あーん」
さっきとは逆に、蒼が俺の口にかき氷を運んでくれる。うん、安定のブルーハワイだ。
「やっぱり美味しいな」
「どっちも同じ味だけどねー」
「同じじゃないぞ。蒼の味がする」
「ひゃー……」
さっきのやりとりをそのまま返してやる。俺の言葉を聞いて、蒼も顔を赤くする。どうだ。恥ずかしいだろ。俺も恥ずかしいけど。
「じゃあ、今度はまたあたしが……」
「……おお、二人ともこんなところにいたのか。そろそろ船の時間だから用意を……」
……食べる方は恥ずかしすぎたのか、蒼が再びブルーハワイをすくったところで……のみきがやってきた。
「あ……」
そして、笑顔のまま固まった。
「えっとその、のみき。これはだな」
「い、いや、皆まで言うな。邪魔をしてすまなかった。心置きなく続きをしてくれ」
「今から続きをする勇気なんてないです―――!」
「のみき、待ってくれーーー!」
顔を赤く染めながらきびすを返し、ふらふらとおぼつかない足取りで去っていくのみきを、俺と蒼は慌てて追いかけたのだった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「楽しかったわねー」
楽しい時間はあっという間に過ぎ去って、俺たちは帰りの船に飛び乗った。
蒼と並んでデッキの柵にもたれるようにして、ようやく一息つく。
「ねぇねぇ。それで、のみきさんは恋人さんに会えたの?」
「か、鴎、声が大きいぞ……! おかげで少しの時間だが、会うことができたよ」
だいぶ傾いてきた夕日を背に受けながら、皆の様子を見ていると、そんな会話が聞こえてきた。
デッキの柵にもたれながら一息ついていると、そんな会話が聞こえてきた。
もしかして、今日良一が妹と用事があるって言ってたのは口実で、実はのみきとこっそり会っていたのかな。
……船の時間をずらして本土で合流して、こっそりと春祭りデート。あり得る話かもしれない。
そこまでしなくても、俺たちみたいに公言して堂々と付き合えばいいのにな。
「やっぱり、ミニ動物園が可愛かったですね。ミニウサギとか、始めてだっこしましたよ」
「そですね。あの可愛さはハンソクです!」
……ちなみに藍は少し離れたところで、紬たちと祭りの感想で盛り上がっていた。藍は藍なりに、春祭りを楽しんだみたいだ。
俺としては、この調子で妹離れしてくれると嬉しいんだけど。蒼と二人っきりの時間が増えるかもしれないし。
「……ふぅ」
そんなことを考えていると、隣の蒼が小さくため息をつく。なんとなく、不安を含んでいるような気がした。
「……明日からの学校、やっぱり不安があるのか?」
「あ、わかっちゃった? 実は、少しだけねー。友達できるか不安」
どうやら図星だったらしい。力なく笑いながら、柵を伝うようにしてすぐそばに寄ってくる。
まぁ、その不安も当然だろう。蒼からしてみたら、クラスメイトは全員知らない人になるわけだし。
それに、三年生ということは受験が控えている。そんな時期に好き好んで友達を増やそうって人は少ないかもしれない。
「だからさ、その、明日から頑張るために、ご褒美欲しい」
「ご褒美か……」
俺は蒼の顔を見ながら、しばし考える。
どうせなら、後々の楽しみになるようなことが良いよな。それを目標に、頑張れるようなさ。
「……じゃあ、蒼が無事学校を卒業できたら、プロポーズするよ」
「へー、プロポー……はぁぁ!?」
一瞬遅れて俺の言葉の意味を理解したのか、素っ頓狂な声をあげる。
「あ、あんた、なに言ってんの!?」
「だって、学生の間は結婚できないじゃないか」
「け、けっこ……ちょっと、さすがに話が飛躍しすぎじゃない!?」
「いや、俺としては飛躍してるつもりなんてないけど」
まだ一年近く先の話だし、俺たちが付き合った時間を考えたら、自然の流れだとは思うんだけど。
「その、プロ、ポーズは全然嬉しいんだけど……そんな先の話じゃなくて、今日のところは一歩を踏み出す勇気というか、キスとかで良かったんだけど……」
「え、そんなので良かったの?」
「そ、そう」
「お安い御用」
「……んむっ!?」
ちょうど目の前に蒼の顔があったので、そのまま唇を重ねる。少し恥ずかしいけど、今ならデッキには島の皆しかいないし。
「ぷはっ……もう、いきなり過ぎ」
「これで、少しは勇気出た?」
「……うん。明日から頑張れそうな気がする。羽依里パワー、補充したし」
そんなパワーが俺の中にあるかわからないけど、蒼の助けになったんなら満足だ。
「……ちょっと。こんな場所でもラブアピールですか?」
その時、さっきまで紬たちと喋っていたはずの藍が、いつの間にか頬を膨らませながらこっちを睨んでいた。さすが反応が早い。
「いや、ちょっとご褒美をさ」
「そう、ご褒美をねー」
「は? 蒼ちゃん、詳細を聞いていいですか」
その後はしつこく言い寄ってくる藍をうまくあしらいつつ、俺たちはオレンジ色に染まる鳥白島が近づいてくるのを、ゆっくりと眺めていたのだった。
第四話あとがき
皆さん、おはこんばんちわ。トミー@サマポケです。
今回は5月上旬。ゴールデンウィークに鴎と再開したところから始まり、モーンニング騒動と駄菓子屋を経て、メインは宇都港での春祭りでした。
複数人が参加するイベントを書くと、どうしても長くなってしまいますね。イナリと天善の卓球勝負や、藍と羽依里の射的勝負など、長々と書いてしまった気がします。
そして、春祭りの飲食ブースでぶつかった子は夏海ちゃんです。オリキャラですが、いわゆるゲスト出演になります。分かる人に懐かしんでいただけたら嬉しいです。
また、作中で羽依里君が予想していた通り、春祭りではのみきと良一もこっそりデートしています。それにしても妹を出しに使うなんて、良一もやりますねw
ちなみに、春祭りの屋台の中にはいくつか小ネタも混ぜてみました。
ステージで人形劇を披露していた謎の人形遣いはAIRの往人さんですし、レインボーワタアメを売っていたのはCLANNADの秋生さんだったりしました。お分かりになりましたでしょうか。
そしてストーリーの方では、ラストで蒼が学校に復学することになりました。七影蝶関係で若干の不安はありそうですけど、今回も隙を見ては羽依里とイチャラブしてましたし、島の皆の支えがあれば大丈夫だと思いますw
さて、次回は5月下旬。つまるところ、羽依里君の誕生日のお話です。楽しみにされていてください。
では、今回のあとがきはこの辺りで。
一言感想や評価など頂けましたら、次話執筆への活力になりますので、よろしくお願いします。