世間一般的には日曜日にお出かけとは普通だ。が、今回ばかりは事情が違う。
和真にとってデートとはイレギュラーや四天王、アルカノイズと戦うよりも未知の行動である。
一般的にデートとは男性側から誘う物であり(ここは偏見)女性をその日一日の間、楽しませなければならない。
デートに至るまで何度も会話を重ね、趣味趣向把握し、下調べを行った上で行動する物なのだが。
『もっと服のレパトリー増やしなさいよ!』
何故かとっても気合の入っているモデルL。
デートに赴くのはお前じゃないぞ、と言うか何で起こられているんですかね?
「仕方ないだろ、手持ちの服はこれだけなんだから」
そう言って何時もの青いジーンズ生地の上着をダークグレーのTシャツの上から来て、
青いジーンズと実にシンプルな構成だ。
さて、問題の難所に赴くとしよう。
未来はすこぶる機嫌が悪かった。
「響がデート・・・男の人とお出かけ・・・穢される・・・」
ぶつぶつ呟いている様は実に怪しい人全開だが、和真の過去話を聞き出す手前の口実に過ぎない。
男は獣、そんな偏見が一人走りした結果である。
「お、落ち着ついて。未来先輩、和真さんに限ってそんな甲斐性が・・・」
「あるかも知れないのデスよ、調」
「バカ!な?大丈夫だ、アイツの過去を聞いてやろうって言う魂胆ってだけだから」
ゆらりと未来が振り返る、瞳はどす黒く濁って目はまったく笑っていない。
宥めていた調、うっかり口を滑らせた切歌、趣旨を打ち明けて未来の冷静さを取り戻そうとするクリス。
クリスの手には集音機搭載双眼鏡、これは奏の暴露によりS.O.N.G.のOTONAは協力体制を構築。ブラウザの下で録画中である。これも弦十郎が持たせた物だ。
因みに主犯格は友里あおいだ。
「でも、響。昨日の夜からすっごい気合入れて洋服選んでたの・・・」
未来から溢れる
「それに、自分から起きれたんだよ?」
普段の響を知る彼女達からすれば、それは凄い事だと思わざる終えない。
高校生なら普通自分で起きれるが、立花響という少女は、未来に起してもらっている。
それは奏者達には周知で、特に気に止める所ではないが、自分で起きたという一点が驚
きだ。
「お、武藤が来たな!」
クリスが言うと一瞬、未来が残像を残して雑木まで移動し、雑木から覗いているように見えた。
司令室の一部で「怖っ!」と言われているのは知らぬ所である。
「十分前・・・・まだ着てないか」
そう呟き、和真は自販機に向かっていこうとすると、其処にクリス達奏者も滅多に見ない、化粧をした響が現れた。
「おまたせ~!和真さん」
響の姿は確かに気合が入っている。
ピンクのロングスカートをメインにしたコーディネート。女の子らしさを全面に出した物でナチュラルメイクも合わさって非常に可愛らしい。
「お、それじゃ行こうか?」
「うん!先ずは水族館がベターかな?」
「そうだな~其処で良いか。」
『あんたが考えなさいよ!』
響の問い掛けに深く考えず、彼女の行きたい所をチョイスするとモデルLが激怒している。
何でかね?
「お、動き出したぞ。目的地は水族館みたいだ!」
集音器搭載双眼鏡で覗いていたクリスが言う。離れていた四人は、二人にあわせ動き出す。
「元の世界じゃどんな風に過ごしていたんですか?」
バス停まで移動する道中で響に尋ねられる。
「いや、特に変わったことはしていないぞ?普段は仕事して、休みは出かけたり、ぐーたらしたりしてた。ノイズなんて存在しない、平和なもんさ」
「どんなお仕事してたんですか?」
「職人紛いのこともしてたし、車の整備工もしてた。後はアレだ、食品工場のメンテ部とか」
ぐいぐい来る響きに答えつつ、バスを待っている和真。
「・・・普段見ない服装だから新鮮で可愛いな。」
「ふぇ!?そ、そうかなぁ?あははは」
不意に服装を褒めると響は顔を赤くして笑っていた。
さて、和真はS.O.N.G.でモニタリングされているなんて知る由もなく、オペレーター二人と司令の息抜きに献上していたりする。
「さりげなく服装を褒めるとは、中々やるな」
等と弦十郎が評価していたり。
「わぁ!」
水族館について、チケットを購入して入ると響が歓喜に声を上げた。
しかし、左を見ても右を見てもカップルだらけ。一人で舞い上がっていた響は少し気恥
ずかしくなった時、響の手を取って和真は歩き出した。
「和真さん!?」
「どうせなら、楽しまないとな!」
普段は一歩引いている和真が手を引いていることに驚きこそしたが、響は思い出す。
そう、コレはデート。デートなのだ!
辺りはカップルだらけだし、別にへんなことはない!
「そうだね!えへへ~」
嬉しくなって頬が緩むのを感じながら響は後に続く。
「クリス先輩」
切歌が圧力に耐えかねてクリスに耳打ちした。
「んだ・・よ?」
振り向いたクリスは、戦闘民族・・・いや、どうすればここまでどす黒いオーラを纏えるのか?この状態の未来を知っている気がする。とクリスは考える。
「未来先輩、何かヤバイデス」
「ひぃっ!」
「どうしたの?調ちゃん、早く行かないと」
真っ黒な瞳に見据えられた調は思わず悲鳴を漏らしたとか。
それから二人の時間は続く。
水族館を出て、レストランに入り、身の上話から他愛ない世間話に切り替わり、昼食を取りながらペンギンが可愛かったとか水族館の感想を言い合う。
「次は洋服も見たいです!」
「そっか、それじゃあ午後はショッピングだな」
「うん!」
次の目的地が決まり、会計を済ませてショッピングモールに向かう二人。
本部にて
「司令、ブラック珈琲どうです?うんっと濃い奴」
「ああ、貰おう。」
藤尭が席を立ち、なにやら胸焼けを起しているだろう弦十郎へ尋ね、珈琲メーカーに向かっていく。
因みに、映像を見ていた何人かの黒服は砂糖を吐くという奇病を発症したそうな。
「これ、どうですか?」
新作のトレンド、らしい服の試着をしていた響が試着室のカーテンを開く。
いや、普通に可愛いんだけども・・・。
「ああ、似合ってるよ」
「えへへ、これ買おうかなぁ」
上機嫌で試着室のカーテンを閉める響。
『楽しそうだね、彼女』
「ああ・・・」
モデルXに同意して、和真は響を待った。
その後も楽しい時間は続く。
ゲーセンやカラオケ、ボーリングなどを梯子して一通り遊び倒した頃、時刻は夕方に差
し掛かっていた。
「ご飯どうします?」
「そうだな・・・何処かお勧めのお店ある?」
「あ、そうだ!“ふらわー”行きましょう。とっても美味しいお好み焼き屋さんがあるんですよ!」
「分かった。そこに行こうか」
お店に入るや、ふらわーのオバちゃんが和真を響の彼氏認定したりとひと悶着あった。
「ほぉ~!たい焼きが絶品デス!」
「ホントだ、おいしい」
ふらわーに近いところで尾行していた四人も腹ごしらえ中、露店で買ったたい焼きは思いの他美味しかった。
「な?武藤がバカに変なことすることはなかったろ」
「え、うん。そうだね・・・何を考えていたんだろう、私・・・」
たい焼きを頬張る調と切歌を他所に最後まで見届けたクリスは未来に言うと未来も妄想が先走ったことに申し訳なくなった。
さり気なく謝ろう、そう思う未来である。
男が女を送るまでがデート、という和真の持論。寮まで二人で手を繋いで歩いてきた。
なんとなく別れるのが惜しくて、響の足取りはゆっくりとしたもので、それに和真は何も言わず合わせていたが、寮は逃げないので普通に歩くよりも時間はかかるがやがて辿り着く。
そんな栓のないことを考えてから、寮の手前で響は立ち止まって和真に顔を向けた。
「今日はワガママ聞いてもらってありがとうございました」
「ああ、俺も楽しかったよ」
どうしてだろう?別れるのが惜しいと思う。もっと長く一緒にいたい、そんな今まで抱えたことのないもやもやを抱えて響は言葉を紡ぐ。
「・・・また、たまにワガママ聞いてもらっても、いい?」
さっきまで元気一杯だった少女が、今はしおらしい態度で、しかも上目遣いでそんなお願いをしてくる。
そんな響に、和真はこちらから是非にとお願いしたい気分になる。
あくまで気分だ。
「ああ、当たり前だ。だからそんな顔しないで」
どういう訳だろうか?マリアが部屋に上がりこんだ時とは違う胸の高鳴りに戸惑う和真。
本当の恋人同士なら、ここで別れのキスでもするのだろうが。
「あれ? 響と和真さんじゃん! 何してんの?」
最高に空気読めてない板場の声が聞こえてきて、二人は固まった。
「ホントだ。やっほービッキー、和真さん!」
「こんばんわ、立花さん、和真さん」
安藤と寺島も現れる。どうやら三人で出掛けて丁度今帰ってきたらしい。
「こ、コンバンワ・・・」
『何てタイミングだ。作為的なものを感じるね!』
動揺を隠せない和真に何処か面白がっているような声音のモデルXの声が聞こえた。
「さささ三人も、で、でか、出掛けて、たんだ」
響なんて羞恥で頭が爆発寸前、きっと恋人ならっと淡い妄想が先走ってしまい今にも顔から発火するんじゃないかと言うほど熱い。
「...もしかして響と和真さん、デートしてた? 響の格好、超気合い入ってない!?」
「ホントだ! ビッキー超可愛いよそのスカート!」
「女の子らしさが全面に出ていてとてもナイスです、立花さん!」
こんなことを言ってくる三人に響は頭から湯気を発生させ、
「ひゃああああああああああああ!!」
ついに耐えきれず、日々鍛えた足腰を用いて猛スピードで寮の中へと消えていった。
「もう、何てタイミングなの・・・」
さらに未来が現れて肩を竦めた。
「未来も出かけてたのか?」
「え!?え、まぁ、はい。それと和真さん、ごめんなさい!それじゃっ」
和真が尋ねると実に歯切れの悪い返答を返し、最後に頭を下げると未来も颯爽と寮内に消えていく。
「和真さん、ヒナになんかしたの?」
そんな安藤の問いに、
「さ、さぁ?心当たりないんだけど」
と和真は首をかしげながら帰路に着いた。