青年、武藤和真は何時ものように帰路についた。
繰り返される日常、変わったのは新種の感染症で緊急事態宣言が発令され、長い事休みになる。
そんな暇つぶしに彼は『ダブルコレクション』を寄り道して買った。
懐かしい、彼のゲーマーの原点とも言えるシリーズの合作だ。
懐かしさを胸にやりたいとはやる気持ちを抑えて帰宅する。
日々の疲れか、真っ先に向かったのはベッドである。吸い込まれるように倒れこみ、心地よいまどろみに任せて意識を手放す。
それが、武藤和真が
「・・・・夢だな」
目が覚め、白い空間に大の字になっていることに気がつくと真っ先にそう結論付けた。
「所がどっこい、夢じゃないんだなぁこれが!」
どうなっているのか床(?)が開くと一般的な女神に聞くような風体の女性が現れた。
神々しさに何処となく残念さを孕んでいるように感じるのは気のせいだろうか?気のせいだろう、そう思うことにした。
「は?」
「私は女神・スミア。貴方を“ある世界”に送ります!」
「・・・・頭大丈夫ですか|?」
女神・スミアの登場、そしてぶっ飛んだ発言に不思議なことを大抵は許容する和真も思わず叫ぶ。叫ばなければならない気がした。というかアレか?ネット小説とか良く見る転生と言う奴だろうか。
死んでない、自分は断じて死んでいない!
「あ、寝ただけとか思ってるよね?キミ」
「そうだよ、寝たの!だから夢以外ありえない。自分が女神なんていう残念さんに絡ま
れるいわれもない」
はっきりと言い切ると床下?から「だよね」とか「むぅ」とか聞こえる。
どうやらスミアと和真の話を聞いている第三者がいるようだ。
「でもね、武藤和真くん。キミには拒否権なんてないんだ。」
「へ?」
「君は直ぐに理解し、思い知ることになる。私が虚言壁の残念さんでないことを。予言しても・・・いや天啓かな。夢の地続きだと思って無茶をするだろうし、“君は世界を跨いでも君なのだから”」
ぱちんっ!とスミアが指を鳴らす。有無言わせない決定事項を告げる装置のように優し
い口調だが、常人が理解できない現象を引き起こす。
「喜びなよ、何度も夢に見たヒーローになるんだ!」
「はぁぁぁっ!?」
ぽっかりと割れた床、底は見えないから結構な高さだろう。てか死ぬ。
死に落ちで目が覚めるとかゴメンこうむる!
そこから和真の行動は早かった。
手を伸ばし、何とかヘリに手をかけた。
日々の運動不足なんて何のその、非常時は通常の三倍は力がでる。火事場のバカ力からと言う奴だ。
「よし、ぶっ飛んだ奴と言うのは良く分かった!」
「おお、よじ登るだけの元気あるんだ。安心していいよ?君が行くのは似て非なる世界だ。私は頑張る人間は好きでね。そうだ、キミが扱う予定の力を拡張してあげよう。」
「そりゃどうもっ!」
何とかよじ登る。安心は出来ないがスミアが常識の通じない手合いと言うのは良く分かった。
「それじゃ、行って来ると良い。何、力は送ってあるさ、これ以上彼女達に血を流させない為にも」
スミアが言った瞬間、和真の視界はホワイトアウトした。
「一人暮らしのワンルーム、ノイズ被害なんちゃらなる書類・・・ノイズって何だ?アレか、無線とかで流れる雑音か?」
目が覚めると和真はあの女神にエンカウントする直前まで、当たり前のように使っていた部屋にいた。
細部は微妙に異なるがこの際どうでもいい。何故なら25歳にもなって実家暮らしだったはずなのに、町外れのオンボロアパートに何故住まっているのか?政府からノイズ被害の保証金なる物を受け取って生活費等々に当てていた世捨て人状態らしいというのは日記から確認できた。
(書類から分かったことは、ノイズ被害とやらで親兄弟は死に今の俺は身寄りがないと。うん、身の上は分かった・・・後は何で“ライブメタル”を
机の柄に置かれた青と赤の顔を模したような掌サイズの鉄片、知る限りでは変身アイテムであり、それが玩具化されたなどと言う情報は無かった。
(スミアは力を送ってあると言っていた。このライブメタルは俺の力と言うのか?二つ・・・モデルXとモデルZ、モデルZXになれっての?)
もやもや考えても仕方ないとコンビニへ生き抜きに出かける。
金銭は代わらないようで助かった。
コンビニで週刊誌、珈琲を買って帰路に着く。
週刊誌を開いてみれば見出しに「ノイズの脅威から世界を救ったシンフォギア」とあった。つまり、ノイズはシンフォギアとやらの活躍で無力化された。
そう解釈するのが打倒だろう。
『逃げるんだ』
唐突に頭に響く声、直接頭に語りかけるような声に戸惑って足を止めたときだった。
ズバッ!
カマイタチ、そう表現するとしっくり来る見えない剣戟がアスファルトを切裂いていた。そして、幾つもの魔法陣が展開すると其処から週刊誌に載っていた写真とソックリな有象無象の化け物がせり上がって来る。
同時刻。
Squad of Nexus Guardians、通称S.O.N.G.の司令室に警報が響く。
オペレーターが報告を入れる。
「市街南東にてアルカノイズの反応を確認、現在市民の避難のために警報発令中!」
司令の風鳴 弦十郎はその報告を聞き、指示を飛ばす。
「シンフォギア装者に出動命令! 被害を最小限に抑えるんだ!」
各オペレーターは装者宛に回線を繋ぎ連絡を始めると状況を纏めていたオペレーターの一人、藤尭 朔也が叫ぶ。
「司令、最速で向かえるのは風鳴翼、マリア・カテンツヴァナ・イヴの両名です!」
「わかった。二人にはすぐに他の装者も合流すると・・・」
「って、えぇ? なんだこれ!」
何かを見た藤尭が驚きの声をあげる。
「どうした?」
「未確認のエネルギー反応を確認!映像モニターに出ます!!」
同時に弦十郎の見る画面に藤尭からデータが送られる。それを見た彼の目が見開かれる。
「これは・・・一体・・・!?」
観測される僅か前。
和真は踵を返し、駆け出した。
「っ!?」
出現時間が災いした。
深夜と言う事もあり大抵の人間は寝静まっている、突然の警報に対応できない人々も多く家から慌てて身体一つで飛び出してくる姿が目に入った。
「こっちはっ・・・ああ、もうっ!!」
住宅街を避けようと退路を探ると一体が住宅街へ、最後尾を走る女の子に迫ったのだ。
『今から行ったところで間に合わないだろう』
頭に声が響く。
「間に合うかもしれないでしょう!」
必死に走る。普段の運動不足を感じさせない、それどころか普段よりも早くアルカノイズを追い抜いた。
『今の君は無力だ、奴らに抗う力はないだろう?』
また響く。逃げろ、諦めろと。
「やりようはあるかもしれないだろ!」
和真がアルカノイズと女の子の間に滑り込んだ。ナメクジのようなアルカノイズが飛び掛ると和真は向かって走り、スライディングで避ける。
「うっし、逃げたな・・・・どうしたモンかな?」
見渡せば、左右は高い塀。前後はアルカノイズ、普通に積んでいる状態だった。
『大丈夫、僕が力を貸してあげる』『気にいった。自らを省みないとはな』
二人、そう二人ぶんの声が頭に響いて上着の内ポケに捻じ込んでいた鉄片が閃光を放った。
閃光一閃。
「さて、何が起きたか分からないが・・・逃げる!」
ロックマン・モデルZXへ変身した和真は、向かってきていたナメクジ・アルカノイズをZXセイバーで一閃の元に撃破、壁を蹴ってアルカノイズの頭上を移動しながらセイバーからバスターへ専用武器・ZXコンポジットを変形させてZXバスターを放った。
深夜の高速を一台のバイクが疾駆する。
「くっ、やはり近いとは言え陸路では!」
運転する女性、風鳴翼が苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。
アルカノイズの出現に避難する人々が車で逃げ出したせいで大渋滞を起していた。深夜にも拘らず自家用車で逃げるとか律儀にも程がある。
「何ですって!?」
「マリア?」
混乱する最中に被害の真っ只中へ飛びこもうとする二人の女性が、トップアーティストだと誰が気が付こうか?
運転に集中する翼と本部から随時情報を聞き取るマリア・カテンツヴァナ・イヴ。二人は他の奏者達よりも先行して現場に向かっている最中にマリアが驚愕し叫んでいた。
「未確認がアルカノイズを撃破しながら、市街地を離れて行ったらしいわ。映像があるそうよ」
「これは!?」
マリアが端末に送られてきた映像を見せると泡や事故を起こすのではないかと言うほど翼は動揺した。
翼さんはゼロ見てるし、当然だよね?