「何故、今なって否定する!?サイバーエルフとなっていたなら姿を現す事もできただろうに!!」
何故、助けてくれなかった?何故、私を弄くる輩を咎めに出てこなかった!?
そんな行き場のない感情が、怒りとなってシアールを支配する。
シアールは外見よりも精神年齢が若干低い、そんなことも災いしてか少女特有の癇癪を押さえ込む術に
「あの大戦でサイバーエルフとしての自力で活動するエネルギーを使い果たしてしまったんだ・・・と言っても今の君は聞いてくれないだろうね!」
何度か互いに壁蹴りで宙へ身を躍らせ、交差した所でXブレードを振るうシアールの腕を掴んだ
「イレギュラーは排除する!
シアールが、アルティメットアーマーを纏う。
轟!と強風とでも例えようか、余波に思わず防御姿勢になる
「人間は歪んでいる!間違いを犯す!人間はイレギュラーだ!!」
シアールが吼え、地を蹴った。
怒りに任せて力を振るう彼女は、一瞬でも間違いなくSE.エックスの知る幼き日のシアールからは想像もできない物で、彼女の蹴りは見事に
「・・・・さっきから聞いていれば、被害妄想爆発ですかアンタは!?」
逆転した。
「何も知らない奴がっ」
シアールが、フットパーツに内蔵されたバーニアを吹かした。が、シアールの方がバランスを崩し乱回転をして、駅の商業ビルの壁に突っ込んだ。
「ああっ知らん!」
ダメージを無視した和真が、増設されたフットパーツを掴んで放り投げたのだ。
『か、和真!?』
モデルXが、信じられない物を見たというような声を上げた。
「すまん。コイツの言い分に堪忍袋の緒が切れた!」
壁からずり落ちて、ぱちくりと瞬きするシアール。
眼前の男はエックスではなく、武藤和真に戻ったようだというのは分かる。だって、さっきまで満足に反撃してこなかった彼が、いきなり反撃に転じたのだから。
それだけでなく、なぜか怒っている。
「人体改造されて、科学者が憎くて、他も皆そんな風に見えた!?エックスの後釜にしか見られなかった!?人間は間違いを犯す!?当然っ!!」
『やりすぎるなよ?』
その様子にモデルZが釘を刺した。
傍から見たらシアールは良くて十八歳前後の女の子、和真は二十五歳の成人男性。互いにロックマンであるという一点を除けば、事案決定である。
「ロックオン!」
本部では、モニターに映る様子に藤尭がゾッとした。
『ああっ知らん!』
そんな言葉がスピーカーから響くと緒川が涼やかな表情で、
「武藤さん、キレましたね」
そう呟く。
「ああ、キレたな。和真君!奏者達のほうは状況が終了した!」
弦十郎もそれに同意し、戦況を伝える
「人間は間違える!100パーセント正解しながら進む人間なんていないんだよっ!」
「だからこそっ!私が」
「そんなことがエックスの望みだとでも!?それにっ」
チャージ・フロストタワー、ソレは巨大なつらら上の氷塊を五、六回落す範囲攻撃だ。
シアールが信じられないというように和真を見る。
チャージ攻撃は、通常のプラズマチャージショットを除いてこの男に見せていないのにも関わらず、対応しているのだ。
氷塊を足蹴に三角跳び、モデルFXに換装してナックルバスターで一つを殴り壊す。
「四天王だって、お前のやり方に疑問を持っていたんじゃないのか!?」
O.I.S.を発動し、ナックルバスターを連射。連続で氷塊を破壊し尽くす和真にシアールは舌打ちする。
『和真君!新たなロックマンの反応が出現した!』
「なんっ!?」
一瞬の反応の遅れが、運命を分けた。
「私を否定するお前を倒して突き通す!武藤和真ァァ!!」
黄金の鏃が飛来する。
アルティメットアーマーに搭載されている
「だとしてもっ!!」
和真はモデルZXに換装、ZXセイバーを斜めに構えて駆け出す。
ノヴァストライクは高エネルギーを纏って突っ込む突進技と言う性質上、高密度のエネルギー体をぶつけて逸らすという荒業が可能な筈だと和真は仮説を立てる。
ZXセイバーの出力を最大にして、さらにO.I.S.を発動。出力の底上げと身体能力の底上げを行う。後は、一番近い技を持つシンフォギア奏者、翼との訓練で見つけたチャンスを物に出来るかどうか。
アメノハバキリは巨大な実体剣だったのに対して、ノヴァ・ストライクは純粋なエネル
ギーの塊。
上手く行く何ていえない。
「らしくない事してるじゃない!?ヴァン」
救いは頭上から、二丁拳銃と言うには大型のバスターショットを構える少女がライブメタルエネルギーを視覚化した四角い図形の中心に居た。
「ギガ・クラッシュッ!」
金色の矢と化したシアールとその四角い図形を展開したロックマンが放った高密度の銃撃の
和真の目論みは一先ず成功したと言うわけだ。
「モデルA!?ってことは・・・アッシュか!?」
見上げて驚く和真、その脇に着地するS.O.N.G.にとって未知のロックマン・モデルA。
「ん?よく見たらアンタ、ヴァンじゃないわね!?」
『だからぁ!あのホール潜ったら可笑しなことになるんじゃないか?って言ったじゃないか!』
知り合いだと思っていた彼女は、面食らうように言って「お前誰よ?」と顔に書いてあり、その相棒はどうやら面倒な事になる事を予見でもしていたのか適合者を非難するモデルA。
「チッ!奏者まで着たら面倒か」
「アレ?あっちのロックマン・・・ん~何処となくモデルXに似てない?」
舌打ちして離れるシアールをモデルAのロックマンことアッシュが凝視しながら呟いた。
「人違い&シリアスブレイカーありがとよ、お蔭で頭冷めたわ・・・」
よくよく考えれば、ノヴァ・ストライクに自己ブースト込みとは言え、セイバーで逸らそうとか大分無理あったわ。普通にやった暁には響と奏、後はマリアか?兎に角奏者達に女性特有の圧で攻められることになっていただろう。
あ、弦十郎さんも黙ってないわコレ。
「・・・・互いに冷静になったらしいな。一つ聞かせろ、お前は何で見ず知らずの他人
の為に命を掛ける?」
どうやら、アッシュの登場は怒りのままに戦っていた和真を冷静にさせてシアールの戦意を削ぐ結果を生んだようで、シアールはただ捨て身の戦い方を貫き通す和真に興味を持ったのか尋ねた。
「一生懸命生きる人から命を奪う権利なんて誰ももっちゃいない。それが誰であっても」
パリンッ!とシアールが足元に転送ジェムを落として割った。
彼女を中心に広がる魔法陣、それを見たアッシュが動き出そうとしたが和真が手で制する。
「・・・一度引く。貴様らS.O.N.G.ならメモリーから基地の場所も知りえるだろ
う・・・待っているぞ?」
シアールは言い残して、地面に沈んでいった。
その光景を信じられないという表情で見ていたアッシュが振り返り、尋ねようとすると明るいオレンジよりの橙色の弾丸が飛んできて和真に突っ込んだ。
「ぐぼらっ!?」
「和真君!大丈夫!?」
「たった今致命傷を負ったわ・・・」
和真へ違法タックルをかました少女が「ええ!?」などと狼狽している光景は、アッシュのハンター人生においてもなく、ぞろぞろと歩み寄ってくる少女達の姿に目を疑う光景だった。
皆が皆、色こそ違えどピッチリスーツ!身体のラインがモロに出ている、そんな彼女たちは大の字になる和真へ親しげに話しかけていくのでアッシュは更に驚いた。
「まさか、変態!?」
「なわけないだろ!あたたたっ!?」
抗議しつつも顔を顰める和真。
響に抱きつかれて、倒れている状態なので説得力は皆無だが。
『やはり、モデルZXに追加したO.I.S.をレイジングエクスチャージで性能の底上げ発動は無茶だったようだね』
『だが、そうしないとアルティメットには届かないのも事実だ』
『にしてもよ、モデルXのおかげで一々踏ん張らなくて良いのは助かるよな』
『モデルF、アンタ後で折檻ね』
『何でだよ!?』
出番が無かったことに拗ねたモデルLが、自身の性能以上になった事に喜ぶモデルFを弄ると思わず叫んでいたモデルF。
モデルXとモデルZは、和真が肩を抑えて表情を顰めるのに当然の結果と言わんばかりの反応だ。
「そっちも無事で何より・・・おい、翼。落ち着け!」
「そうだぞ!怪しいけど旦那の報告聞いたろ!?」
「止めないで奏!怪しければこれを罰するのは当然よ!」
「その理屈だと俺も・・・あ、最初に斬りかかられたわ」
今にもアッシュに斬りかかりそうな翼を止める奏と何かを思い出して達観する和真が居た。
アッシュ合流。
近いうちにXV編に移行したい今日この頃。