ロックマン・モデルAことアッシュからしたら歌って戦うというのは妙な事だ。
ロックマンが存在し、幾度と背を合わせてきたモデルXを扱っているのがヴァンではないという“違い”に戸惑ったが本部に向かうヘリの中で沈痛な面持ちで黙る和真にアッシュは首をかしげた。
「アンタ、どうしてそんな難しい顔をしているさ?」
「ん?ま、お気楽に構えてられないってことさ。あいつ等は話せば何とかなりそうなんだ」
そうはぐらかす和真。
「それより、弦十郎の旦那の話通りなら聖遺物しか反応しない“ギャラルホルン”が反応してコイツが現れた・・・ライブメタルも聖遺物扱いで良いのかねぇ?」
「分からないわね、スキャンデータは単なる鉄だもの。試してみる価値はあるかもしれ
ないけれど」
奏が首をかしげてアッシュを一瞥して呟くとマリアも同意して呟いてみる。
マリアにとっては再会したい人物が平行世界の先にいるからだ。
「新しいロックマン・・・」
「何かお気楽そうデスね・・・」
「貴方たち、大分失礼よね!?」
調と切歌はアッシュを凝視し、ふわりと浮かんだモデルAがアッシュの陰に隠れた。
『な、何だ!?オイラを奪おうってか!』
『落ち着け、こいつ等はそんなことをしない』
どうも先入観からモデルAは興奮気味、そんな若輩ライブメタルをモデルZが嗜める。
この際、どっちが先に製造されたとか考えるのは止そう。
「大丈夫、残りの二人とは話せるよ!シアールさんだって話せば分かってくれる。平気、へっちゃら!」
「・・・うん、そうだな。響の言う通りだ」
悲しげな表情の和真を響が励ます。さてはて、アッシュとて歳頃なわけで例えハンター業を営む女戦士でも恋愛トークは大好物。
ひしっと訓練でもしたかのようにクリスや切調コンビ、翼たちと顔を近づける。
「え?嘘、さっきの本当なの!?」
驚くアッシュ。
アッシュが手錠をされていないのは一重に和真の配慮があってだが、奏者達とも自己紹
介が既に済んでいる。
その時、響がもはや恒例となった一言を言ってしまったのだ。
「ええ、何だかんだ言って和真も踏ん切りがつきそうなのよねぇ」
窓から空を眺め、黄昏るマリア。
「ああ、本当だ。」
無意識に惚気だす二人に慣れたと言わんばかりのクリス。
「大丈夫、マリアが先に既成事実を作ってしまえば勝ち」
「調!いきなり何を言うの!?」
「む、マリアは既に武藤と閨を供にしたのではないのか?」
「翼さん、あれはノーカンデス。何も無かったとモデルXさんが証言しているのデス」
「良いじゃないか、響が実るかマリアが横から掻っ攫うかアタシか奪うかはさて置き」
「うわぁ、モデルA。コイツ、ヌマッてるわ・・・」
『ヌマッテルって何だ?』
和真を取り巻く女性関係に僅かながら、否。大いに引いたアッシュだった。
奏の言葉は冗談で、本部につくなりアッシュに笑ってそう言った。
響もソレは分かっているから必要に噛み付かない。
和真は奏者を優先にとメディカルチェック待ちで、アッシュは弦十郎と話している。
きっと似たようなやり取りが行われているんだろう。
(・・・・O.I.S.切り札足りえるが、モデルZXで使うのは体力と相談だな)
怒りに任せて長時間発動し続けたツケが回ってきた。
アッシュは深く考えない傾向の女性である。なので即決即断、和真と時と似たやり取りの後に弦十郎からの要請を許諾し、次回からは実働部隊に二人目のS.O.N.G.所属ロックマンとして動くことになった。
和真が休憩エリアのソファーでぐて~っとしているとアッシュが缶コーヒーを投げて言
う。
「アンタ、何でそんな死んだ表情してんの?」
アッシュが缶コーヒーを投げながら言うとぐて~っとしながら缶を受け取りプルタブを倒す。
「いや、実際死にそうなんだよ、体力的に」
「・・・・モデルZXにO.I.S.は存在しないはず、なのに貴方のは使えてるってどう言うこと?アタシ達の世界事情にも詳しいみたいじゃないのさ?」
缶コーヒーを呷る和真にアッシュが問いかける。
「ま、これから戦う仲だ。信じるかは別として・・・」
和真が真顔で返答を待つアッシュに身の上を語る。
「立花も問題が無いようで何よりだ」
そう言って、翼が最後にメディカルチェックを終えた響を迎えた。
比較的ダメージが大きかったのは言うまでもなく、マリア達三人。次いで響で、奏と翼、クリスの三人は比較的軽傷で済んでいる。
「でも、マリアさん達が」
「あいつ等は戦闘こそ無理でも日常生活に差し支えないとさ。後は和真だね」
心配そうに医務室を見つめる響に奏が結果を言う。
「アイツ、医者嫌いなんだっけか?」
「む、そう言えば武藤は以前も入院に対してごねたな?」
「何でも昔医療ミスにあってそれ以来嫌煙しているそうですよ?」
クリスが、闘将との戦いの後を思い出して呟くと翼も同意する。それを補足するように響が会話に参加する。
「アタシは今回、アイツにメディカルチェックを受けさせないと不味いと思うんだ。」
「同感だ」
「何だかんだで一人で相手にしてたんだ。その上目に見えて無茶したんだろ?」
奏が、以前の無茶していた自分と今の和真の姿を重ねて言うと翼が同意し、クリスが弦十郎の言っていた状況を思い返す。
「はぁ~アタシ達が空想の産物の世界から女神に送り込まれたねぇ?」
「信じられないだろ?」
呆れたような声を漏らしたアッシュに苦笑する和真、コレまでの語らいに嘘はないとアッシュは気がついている。
あの子達シンフォギア奏者が信頼しているのも納得がいった。
「・・・・本来存在しないO.I.S.を、ましてやモデルXの切り札のツケはデカイ。今のまま行けば間違いなく自滅するわ」
ロックマンとして先輩であるアッシュのライブメタルは少々特殊で、それ故に力のコピーではない・・・・言うなれば開放の代償は想像に難しくなかった。
アッシュが想像する代償は六つのモデルのデータをコピーした時のような物かと思っている。
突然頭に流れ込んでくる情報、それに伴う苦痛。
アッシュ自身、あの時供に痛みの先に
他の適合者ならデータの共有は起きなかっただろうし、自分が苦しんでいる間に命を断たれていたかもしれないと思うことはあった。
「大丈夫だ。俺だって響達を信頼していないわけじゃない。お前さんもな?」
「には見えないわよ、アンタ・・・って噂の歌姫さん達のメディカルチェック済んだみたい」
相も変わらずぐて~っとソファーに沈んでいる和真に半眼で睨みながら呆れるアッ
シュ、視界の片隅で響たちが見えたので言った。
「武藤、奏者は終わった。後はお前だ」
つかつかと歩いてきた翼が和真の前に立って言う。
因みにアッシュは脇に退いた。何か有無言わせない迫力が三人にはあった。
「ホラ行くよ!アンタ逃げないとは限らないからね」
「いや、奏さん?メディカルチェックは逃げないですよ」
「アンタのことさ、マリアから聞いてんだからね!?」
和真が力なく呟くと奏が右腕をホールド、凄い剣幕で言った。
「和真君、行こう。大丈夫、痛いことなんてないから」
「響、俺は医者を嫌うお子様か!?」
子供を諭すような優しい口調で言う響、言いながらも左腕をホールド。
響にツッコミを入れる和真も何時ものような勢いはなく、最終的にずるずると響と奏が引き摺っていく。
「なんてぇか二人共すごいな」
「同感」
僅かに後から来たクリスと唖然とその光景を見ていたアッシュは呟いた。