翼が「今日はマリアに譲ろう」と言った所から、今に至る。
「ごめんなさい、付き合わせてしまって」
ミーティング事態は、午前中で済んだのでやることのない和真は二人(モデルX&モデルZ)と話を使用と思っていたところだったのだが。
今日は表の顔と言うかアーティスト業が休みのマリアが、とある場所に付き合ってもらいたいと言うので、承諾した。
颯爽とサングラスと車のキーを持って来たマリア。そして、彼女の運転する車の助手席で花束を持っているという状況だ。
(俺も運転免許、もってるんだけどなぁ)
と内心ぼやいてみる。
『この世界の免許じゃないだろ?』
とモデルXが正論を言う。
(まぁ、そうなんだけどね?)
「どうしたの?」
モデルXと他愛ない話をしていると横からマリアが声をかけてきた。
まぁ、他者から見れば車内はマリアと二人っきり。ぶつぶつ言っていれば気になるだろう。
「声、出ててた?」
「いえ、そうではないけど。心ここにあらずって感じだったから」
「モデルXと話していたんだ、対愛ないことだけどね」
そう言うとマリアはへぇ、と相槌を打ってアクセルを踏んだ。
「後は、美女と二人っきりって空間に耐性がないだけさ」
本音である。これは紛れもなく和真の本音だ。
「あら。話題を変えましょう。今までは何をしていたのかしら?」
「仕事一筋だよ、広く浅く色んなことをやったもんだ」
最初、あの自宅には幾つかのユニフォームがあった。職には付かずバイトで食いつないでいたんだろう。
「そう、凄いじゃない。色んなことが出来るのね」
等とマリアと世間話を弾ませながら時間を過ごす。
一方で、本部の車庫では翼が黙々とバイクの整備をしていた。
彼女の仕事は遅番で、まだ時間がある。今度の休みはマリアに融通してもらおうと思っていたりする。
「大丈夫。今度は連れて行くからね、奏」
今は無き相棒の名を呟いて作業を続けていく。
ある駐車場で車は動きを止める。
小高い丘の上。そこは霊園であった。
車を降りたマリア。それに続く和真。
やがて二人の脚は一つの墓の前で止まった。
「久しぶり、マム・・・」
墓石に刻まれた名は、
『Nastassja Sergeyevna Tolstaya』
「なかなか来られなくってごめんなさい。本当は切歌と調も連れてこようと思ったんだけど、急に思い立ったものだから」
そう言うと和真から受け取った花束を墓前に供える。何も語らずに膝をついたまま墓石を見つめるマリア。
ゆっくりと口を開く。
「この人はね。この間私達の仲間になったの。違う世界から来たらしいわ。」
独り言のように続けるマリア。
「初めて戦ったのに、人を気にして立ち回っていたの。誰かの為に全力で命を掛けられる、凄い人よ」
そんな風に、あの時は映っていたのか。とマリアの独白を聞いて和真は思う。
其処まで出来る人間ではないのだけれど、と。
「私達は相変わらず元気にやっている。だからマムも心配しないで。新しい仲間と必ず生きて、生き抜いて、そして私がマムと同じくらいお婆ちゃんになった頃に会いに行くわ」
静かに語るマリアの後ろで和真は拳を握っていた。まるで自身の胸を握りしめる様に。
決心する切欠にも彼女の言葉は成ったと思う。
その背から溢れる想いを感じるかの様に強く握り締めた。
「今度は二人も連れて来るわ。またね、マム」
立ち上がるマリア。だが動こうとしない。彼女はそのまま墓前で立ち尽くしていた。
ポツリと雨が一滴、彼女の足元に降った。
その背中を和真は無言で見つめていた。
「時間をとってもらってありがとう、和真」
「いや・・・気にしなくて良い」
和真は少し俯き、歩くべき地面を見ながら答えた。他に何を言えばいいのかわからなかった。
だがあの墓はマリアに、そして切歌や調にとって大事な人物なのだけはよくわかった。
そして、今はいない事も。
「・・・どうして俺を?」
ふと口から出たのは疑問だった。
何故自分は共をさせてもらったのだろう。
その質問に彼女は寂しそうな声で答える。
「・・・本当は一人で来るつもりだったの。でも、一人で来る勇気がなかったのよ」
先を歩くマリア。どこかその背は小さく見えた。
「そんな時に貴方を思い出した。これ幸にと貴方を引き込んだ。・・・酷い女ね、私は」
更に小さくなる背中。肩が少し震えている。
それを見た和真は自然にマリアの右手を握っていた。
本来、こんなことをする柄ではない。自然と動いた自分に内心驚いているが言葉を紡ぐ。
「俺ははあのお墓に眠る人が誰なのかはわからない。でもマリアにとって大切な人なのはわかる」
「まだ大切な人を亡くした事の無い俺はマリアの辛さがわからない。それでも、仲間として一緒にいることは出来る」
「だから今度ここに来るときには、俺に遠慮なく声をかけてくれ」
突如握られた手に驚く。彼の暖かい右手が自分の手を包んでいた。
不器用ながら、精一杯誠意を込めた言葉。
マリアは震える声でその手を握り返す。
「頼っちゃうわよ、いいの?」
「ああ、頼られるのは慣れている。」
和真はマリアからはとても頼もしく見えた。
「もう、それじゃあ貴方は本当に・・・」
ヒーローのようだ、と最後までマリアが言う事はなかった。
二人は本部に戻るべく車に戻る。
「さぁ、帰りましょう」
「そうしよう」
車が二人の視界に入る。同時に通信機が鳴った。
『二人共!例の反応が検知された!!』
マリアが出た通信機からは弦十郎の切羽詰った声が響く。
「いや、既に目視した・・・・」
サイドバックから二つのライブメタルを取り出す和真。
視線の先、車の陰に午前中の話にあった一人が立っている。
「・・・・新たな主の命により、死んでもらう。S.O.N.G.のロックマン!」
四天王、残影軍団のリーダー・ファントムの登場である。
ファントムさん、意外とロクゼロでは好きなキャラ。
エックスに忠義を尽くして自爆とかつぼでした。