王騎 ストラグル   作:ミートソースカブトムシ

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三百年ぶりですね。
今回も短いですがどうぞご覧ください。


訓練

未来を奪われた。

家族を奪われた。

唯一残ったのは兄からプレゼントされたボール型のロボットだけ。

死体すら残らず、この世から大切な人達が生きていた証をほとんど奪われた。

錠前が砕ける。

途端、身体のどこかが作り替えられていくのが分かった。

世界に線が引かれていく。

 

「─────」

 

世界は綺麗で、視界は死でいっぱいだ。

線まみれの世界の中で、祖母が言っていた事を思い出す。

 

『───拓海はあの人にとてもよく似ている、まるで生き写しでも見ているかの様だよ』

 

あの人とは祖父の事だ。

深海から来る人類の脅威を退けた等、武勇伝を何個か聞いた事があるが、どれも夢物語のような話だった事を覚えている。

 

「…立たなきゃ……」

 

重い体を無理矢理叩き起こす。

誰かがこれを見たのなら、ゾンビ映画のワンシーンかと思うだろう。

立ち上がり、既に機能を停止した電柱にある線に触れる。

 

ずぶり

 

特に抵抗もなく、指がくい込んだ。

そのまま指を線の通りに走らせると、そのまま切断できてしまった。

電柱が音を立てて倒れる。

この眼の性質をやっと理解した。

 

「おじいちゃんも、これを見てたの?」

 

少年、朝月拓海は歩き出す。

この世から空間震を無くすため、

空間震により家族、友人を奪われた事をきっかけに彼の運命は捻れてしまった。

 

空間震が起こらなければ、明るい運命があったかもしれない。

鋼鉄の少年はそんなことを思った。

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

「や、やっと終わった…」

 

状況判断能力強化訓練とやらが実施されてから一週間が経った。

ノベルゲームという物はもうお腹いっぱいである。

 

「もう重いノベルゲーはいいや…人形に魂移されたり別ルートのヒロインを殺さなかったら主人公が殺されたりヒロインが火だるまになったりはもう見たくない……」

 

このゲーム、主人公を何がなんでもぶっ殺すという意思が感じられるのだ。

選択肢を間違えれば即死したり、少し前の選択肢が影響して死んだり、ヒロインが闇堕ちして死んだり…

とあるボス系ヒロインを相手にする際、選択肢に悩んでいたら時間切れでヒロインが死亡した時はコントローラーを握り潰しそうになった。

あのキャラ、このゲームの中だと一番好きだったからか心に結構クるものがあった…

そんなことを考えていると、隣で恋愛シミュレーションゲームをプレイし終えたのか「どんなもんじゃーいッ!」と声を上げ、右手を高く突き上げる友人の姿がある。

画面を見ると、おそらくハッピーエンドを迎えたであろう画面が表示されていた。

彼の訓練は俺よりも酷かった。

俺より少し早めに訓練を始めていた彼は、初日こそ様々なリアクションをしていたらしいが、俺が初めて見た時は既にかつての黒歴史(古傷)を抉られることへのリアクションが薄くなっており、俺の方が士道に行われる所業に対してリアクションが激しかった。

無表情で涙を流す士道を見た時は黒リボンの琴里は人の心を持っていないのではないかと疑った。

 

「おや、二人同時に終わったか。少し時間がかかったが、第一段階はクリアとしておくか」

「二人共CGコンプしているし、とりあえずは及第点かしらね。……とは言っても、あくまで画面の中に対してだけだけど」

 

背後から令音と琴里の声が聞こえた。

 

「じゃ、次の訓練だけど……」

 

次の訓練、と聞こえた瞬間、視界がぐにゃりと歪んだ気がした。

次の訓練となるとなんだろうか、スポーツか?将棋か?またノベルゲームか?

様々な思考を巡らす。

あのゲームのストーリーが個人的に序盤から結構好きだった。

しかしその結果最初からキャラ達に感情移入してしまった結果中盤からの鬱展開Aがトラウマになってしまっているらしい。

 

「やだ、盗み聞きしてたの?相変わらず趣味が悪いわね。この出歯亀ピーピング・トム」

 

ピーピング・トム、確か覗き魔だかを指す言葉だったか。

 

「目の前で喋ってて盗み聞きも何もあるか!」

 

士道の抗議は適当にあしらわれ、次の訓練の話題に切り替わる。

ディスプレイに校内の映像がいくつも映し出された。

琴里達が言うに、口説きの実戦である。

本番では精霊という危険が伴う怪物を口説き落とさなければならないのだ。

たしかにそういう訓練はしておくべきだろう。

 

「良かったー…士道の立場じゃなくて」

 

聞こえていたのか士道がこちらを振り返る。

俺には何も出来ないのでこっちを見ないで欲しい。

 

「あら、それは良かったわね王騎。王騎には後で士道とは違う訓練を用意しているから、楽しみにしてなさい」

「えっ」

 

とてもいい笑顔で琴里が言う。

あの顔は絶対何かある、そして俺のメンタルはボロボロになる。俺の最近調子が良い直感がそう言っていた。

その後、士道はタマちゃん先生の三十路手前の焦りに若干恐怖したり、鳶一折紙と交際関係になったり。

 

うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ───────

 

空間震警報が鳴った。

琴里が士道に《フラクシナス》に移動するため、戻ってくるように伝える。

 

「タイミングすごいな…」

『や、やっぱり、精霊なのか……?

 

士道が問うと、琴里は一拍置いてからそれに答えた。

 

「えぇ、出現予測地点は──雷禅高校(ここ)よ」




次回はデートの約束をするシーンですね。
自分あのシーン好きなんですよね、十香が拾ってきたばかりで警戒心が高い猫みたいな感じがして
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