王騎 ストラグル   作:ミートソースカブトムシ

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現在の王騎はクラスカードの力を引き出せていないので、士郎がマスターの時のセイバーより弱体化しています。
ステータスが魔力以外全部Cランクって感じです。



黒い魔術師

半壊した校舎に息を潜め隠れる。

琴里から命令された事は二つ。

一つ目は士道を守る事。

二つ目は周囲を警戒する事。

士道と精霊の会話が少しだが聞こえる。

 

「トメ!君の名前はトメだ!」

 

『パターン青、不機嫌です!』

 

一人のクルーが慌てた様子で声を荒らげる。

瞬間、上の階から轟音が鳴り響き、マシンガンでも撃ち込まれたかと疑う程の振動が部屋を揺らす。

……多分、まだ大丈夫だろう。

 

パキン

 

身体が強ばる。

何かに恐怖している。

ASTか。

否、あいつらの攻撃は俺には届かないし、随意領域(テリトリー)も俺にとっては無いも同然。

精霊か。

否、恐怖はさらに遠くから来ている。

これは初めての恐怖。

まるで自分の弱点を見れる者が来るような、自身の脆い場所を見られているような感覚。

 

「…こ、れはっ!」

 

ガラスの無くなった窓の向こう。

黒いソレは校舎に迫っていた。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

『おい、琴里、今こっちに向かって来てるアレはなんだ』

 

王騎の怯えたような声が響く。

モニターを見ると、確かに黒い鎧を来た何者かが雷禅高校に接近していた。

ソレは前回の空間震で初めて現れた。

ASTなどどこかに所属してる形跡は無く、ただ精霊のみを攻撃するナニカ。

 

「残念だけど、こっちもアレについてはよく分かってないの、調べても何も出て来ないのよ」

 

幸い、今精霊は校舎の中だ。

CR-ユニットは狭い屋内での戦闘には向いていない。

今は気にしなくても良いだろう。

 

「…それにしても、あんな装備どこから持ってきたのかしら」

 

それはまったくデータに無い装備だった。

シャチを思わせる黒い鎧を纏う魔術師(ウィザード)

独自で作ったとしか考えられないような武装だ。

 

「王騎、もしアレが精霊を殺すって様子だったら、全力で迎撃なさい」

 

万が一に備えて門番を配置しておこう。

 

『了解、夢幻召喚』

 

その声にもう怯えは無かった。

騎士はそれに応えるように、蒼銀の戦装束を身に纏い、不可視の剣をその手に握る。

ここに守り手は顕現した。

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

「この前の…!」

 

空に浮かぶ者たちの誰かがそう言った。

しかし、王騎を攻撃する様子は無い、彼女達にとって今の最優先事項は精霊だからだ。

そして、王騎も彼女達を見ていない。

見据えるのは黒き流星。

今士道の妨害をする可能性があるのはソイツのみ、無論、ASTの奴らが妨害するのであればそちらを斬り捨てる。

 

「貴様は…精霊か…?」

 

兜で覆われた顔からくぐもった男の声が発された。

漂う殺気は糸のように身体にまとわりつく。

 

「人間だ」

 

短く問いに応じる。

 

「ならばそこを退け、人斬りの趣味は無い」

「断る。今友達が女の子口説いてんだ。ここは通せない」

「…あの女共の方が、その友達とやらのナンパを邪魔してそうだが?」

 

実際、ASTの連中は校舎に向かって銃を乱射している

精霊を燻り出そうとでもしているのだろう。

インカムからは何も聞こえてこない。今は行かなくても良い、という事だろう。

 

「あぁそうかもな、でも今はどうでもいいよ

 

この男なら精霊を殺せる。

何か有効な手段を持っている。

でなければ、単身でこんなところに乗り込んでは来ない。

 

『タクミ、多分こいつ退かない』

「そうだな…兵装展開、マルクト」

 

球体が喋る。

タクミ、どうやらそれがコイツの名前らしい。

刀を引き抜くと同時に、周囲に十の球体が出現する。

球体は喋る一つを余して二組に分かれると、水晶の刃を形成した。

それは今士道と話している精霊が振るっていた剣を想起させる。

 

「へぇ…あの精霊のパクリ…みたいなやつか、ロックマンかよアンタ」

「懐かしいタイトルを知ってるな」

 

先に動いたのはタクミの方だ。

速い。目で捉えるのがやっとだった。

迫り来る刀を剣で受け止めると、背後から水晶で形成された刃が迫り来る。

刀を押し返し跳躍した。

水晶の刃はそれでも尚食らいつく。

 

「───────」

 

ソレを斬り払い、壁を蹴って敵との距離を零にする。

敵はそれを受け流すと、後方に飛び退いた。

追撃するように、近くにあった瓦礫を放り投げる。

瓦礫はまっすぐヤツに飛んでいく。

しかし、それは真っ二つに両断され、ヤツに届くことはなかった。

…コイツは不味い。

証拠は無いが、コイツの攻撃を受けるのは絶対にダメだ。

王騎の直感はそう告げていた。

 

随意領域(テリトリー)の中でも動けるのか」

 

からかうように、タクミは笑う。

恐らくまだ本気を出していない。

そんな余裕を感じさせる。

 

『士道!ASTが動いたわ!王騎、今すぐ士道のところに向かって!』

 

最優先すべきは士道の命。

しかし、タクミはこちらを逃がすつもりは無いらしい。

ASTの方に視線を向けると、そこにいないのは鳶一折紙だけだった。

ならば、無理に行く必要は無いだろう、彼女なら士道を守ってくれる……と思う。

 

「……っ!ごめん、そっち行けない!」

 

剣と剣がぶつかり合う。

火花が散り、金属と金属の擦れ合う音が木霊する。攻防は互角だった。

しかし、それは剣のみでの話だ。

漂う刃は暇さえあれば王騎の身体を貫かんと迫り来る。

それを凌いでも、避けた先に刀を振り下ろされる。

不可視の剣を盾にすんでのところでそれを防いだ。

そんな攻防を繰り返す。

 

「ほう、その首、今度こそ取ったと思ったが…」

 

会話する余裕なんてこっちには無いのに、ヤツは涼しそうに喋っている。

なんて化け物。こんなやつなら、確かにあの精霊を追い詰めるのも納得だ。

そんな事を考えていると、校舎から轟音が鳴り響いた。

 

「おい、友達とやらがフラれたんじゃないか?」

「どうだろな…」

 

多分死んでない…とは思うが、流石に心配になってきた。

 

黒い魔術師(ウィザード)は既にこちらを見ていない。

見ているのは半壊した校舎からその身をチラつかせる精霊だった。

 

「まずっ…」

 

掴むより速く、声を発するよりも速く、視認するよりも速く、魔術師(ウィザード)は精霊へと跳躍していた。

攻撃は刀ではなく爪、迎え撃つは剣。

校舎の上部が吹き飛んだ。

化け物同士の戦いは拮抗している。

空中を駆け巡る水晶の刃を難なく弾き返し、繰り出される斬撃を魔術師は受け流し、抜刀する。

互いの得物が衝突する。

AST隊員達は攻撃に参加しない、攻撃の余波だけで校舎が吹き飛んだのだ。

だというのに精霊は健在、そんな化け物達を前にして、誰が怯まず、怯えず、片方に加勢できるか。

 

空飛ぶ女達は呆然と戦いを見ているのみ。

瓦礫が持ち上がる。中から出てきた折紙が二人を睨みつける。

どうやら無事だったようだ。

 

『王騎、離脱しなさい。〈フラクシナス〉で拾うからその場から離れて』

 

インカムから発せられた琴里の声が耳に響いた。

 

「いいのか?あの精霊をほっといて」

『あなたが手こずった相手に涼しい顔してるんだから、大丈夫でしょう』

 

むっ、と反論したくなるが、事実あの精霊は俺を追い詰めたヤツを、何の疲労も、焦りも感じさせない表情でいなしている。

観念した俺は琴里の命令に従って、校舎をあとにした。




次回は何ヶ月後になるんだろうか…
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