人と言うには強力過ぎる器だ。その心臓は竜種のそれであり、呼吸するだけで魔力を生成している。
これはアーサー王の再現、しかし神秘の薄れたこの時代ではかのアーサー王を再現する事はほぼ不可能だ。
何世代にもわたって積み重ねた物ならまだしも、たった一世代でその様な物を生み出すなど夢のまた夢。
しかし"アイツ"はそれを可能にした。聖杯を使って。
自らの作った七体の人形にそれぞれに一枚のクラスカードを与え、殺し合わせた。
かつて冬木で行われた聖杯戦争という儀式。それを再現した物らしい。
違う点はサーヴァントと聖杯だろう、"アイツ"の行った聖杯戦争は神稚児という聖杯が使われた。
神稚児、無差別に人の願いを叶える天然の願望機。
しかしこの神稚児は天然と言うべきではないかもしれない。
朔月家に生まれた唯一男児の神稚児。
今まで例外無く女児であり赤い目を宿して生まれた神稚児、それまでは現れなかった男児にも現れた。
いや、これの場合は本来女児しか覚醒しなかった神稚児としての能力を紅眼という名前が覚醒させてしまったのか、"アイツ"の願いがそうさせたのかもしれないが、今ではもう分からない。
「はぁ…」
手に入った物はどこの英霊と接続してるか分からないセイバーのクラスカードと聖杯戦争について書かれた資料くらいだ。
「王騎の体を元に戻すんだ…もっと情報を…急がないとな」
剣龍宏は今日もまた自らの無力さを呪った。
____最初は王騎のことを殺してしまおうと考えていた。
被害者から加害者になることが確定しているのなら、いっその事殺してしまえばあの子は楽なのでは無いか、と。
力が暴走してしまえば、あの子は空間震と同等の災害を引き起こしてしまう。
規模は町一つ。
いや、それは当時の話だ。ここまで時間が経ってしまったのなら国の二つや三つは覚悟しなくてはいけないだろう。
数少ない方法を考える。
聖杯戦争をまた再現し、王騎の体を元に戻す事を願う。否、クラスカードを制作する技術もサーヴァントを召喚する術式を作る技術も無い、何より聖杯が無い。
時間旅行による過去改編。否、抑止力の排斥対象になる可能性があるし何より現実的じゃない。
無理矢理カードを抜き出す。否、完全に同化したカードを抜き出してしまえば王騎は無事ではすまない、良くて廃人だろう。
方法を考えても全て無駄だと現実が嘲笑う。
それでも
「ははっ、
宏は別行動中の妻を思い出す。
今まで王騎を助けに行った理由が自分でも分からなかった。
ただ放っておけなかったのが自分でも分からなかった。
王騎には人として幸せに生きてもらう。
それがたとえ夢物語に近い物でも決して諦めない。
王騎の力が暴走した場合は抑止力が働きます。
ただ王騎が抑止力を倒してしまう可能性と倒される可能性は五分五分です。