桜並木のアルカディア   作:野生のムジナは語彙力がない

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待たせてしまい、本当に申し訳ありません。
最近仕事が忙しくてですね……なんと言いますか、全然やる気が起きなくて……期待していた方々には本当に申し訳ないと思っております。
数ヶ月も待たせるとは……これは……クソザコですねぇ〜

あと、念のために言っておきますが……ムジナはアイアンサーガの大体の結末を予知しており、未来の話ということもあってその予知に基づいたストーリー展開をしているので、細かいところはご想像にお任せします。(現状)

ムジナの予知が外れても……可能な限り整合性を取りますが、もし整合性が取れないくらいに変な方向に話が進んだ時は……安心してください、ちゃんと考えておりますので。

それでは、続きをどうぞ……
(前編見返し推奨です)


中編ー波乱万丈 鬼ごっこー

 

 

 

あらすじ

みんなでお花見に来た

 

 

 

(ふぅ……)

 

小休止とばかりに桜の根元に腰を下ろしたところで指揮官は小さく息を吐いた。

エルとフルに連れ回されること30分……その30分の間に、指揮官はたっぷりと双子の案内を受けることとなった。

 

「おつかれー指揮官ー!」

 

「お疲れ様です、指揮官さん」

 

そんな指揮官の前で、双子の姉妹はいつの間に用意していたのだろうか……ビニールシートの上に行儀よく座り、嬉々とした様子で大きなバスケットの中を漁って何やら準備をしていた。

 

(何してるの?)

 

「え? お茶とお菓子の用意だけど?」

 

「アフタヌーンティーなのです」

 

そう言って双子は手際よくお茶の準備を進めていく……エルは魔法瓶を傾け、取り出したカップに紅茶を注ぎ、フルはバスケットの中からクッキーや煎餅、羊羹、カステラ、桜餅などのお菓子を次々と取り出してはお皿の上に盛り付けていく……

 

そして10秒もしないうちに、指揮官の前には熱々の湯気がたつ紅茶と、綺麗に盛り付けられたお菓子の山が用意され、立派なお茶会の場が完成した。

 

(流石に早いね)

 

「そりゃ高橋家のメイドだからね! はい、指揮官」

 

そう言ってエルは指揮官へ紅茶の入ったカップを差し出した。指揮官が手を火傷してしまわないようソーサーの準備も忘れていない。

 

「指揮官さん、お菓子はどれがいいですか?」

 

フルが取り分け用のお皿を片手に聞いてくる。

 

(それじゃあ、お任せで)

 

「はいなのです。では、疲れた時は甘いものって言いますし……手始めにカステラとクッキーにするのです」

 

そう言って、フルは広げたお菓子の山からひょいひょいとお菓子を移動させ始めた。フルがお菓子を用意してくれている間に、指揮官はエルの淹れてくれた紅茶に口をつける。

 

程よい酸味と落ち着いた香り

 

「どう? 美味しい?」

 

(うん、美味しいよ)

 

「そっかー、良かったー 」

 

指揮官の言葉に、エルは悪戯っぽく笑った。

 

「指揮官さん、お待たせいたしました」

 

そう言ってフルはお菓子の入ったお皿を差し出してきた。しかし、取り分け用のお皿の上にはカステラとクッキーを始めとした大量のお菓子が山のように積まれており、1人で食べきるには多すぎる程だった。

 

(あ、ありがとう……でも、少し多い気が……)

 

「あ、無理して全部食べる必要はないよー」

 

「残しても私たちが食べるのです」

 

そう言って双子もそれぞれ自分のお皿にお菓子を山になるように盛り付けていく、それが双子にとっての最大級のおもてなしなようだった。

 

しかし、煎餅とクッキーが同じ皿の中に入っているのはどうなのだろうか……? そんなことを思いつつ、指揮官は手始めにカステラを口にした。

 

(うん、美味しい。お茶とよく合うね)

 

「ふふっ、良かったです」

 

指揮官の様子を見てフルは小さく笑った。

……だが、何やら急に申し訳なさそうな顔をして

 

「あの、指揮官さん……ごめんなさい」

 

(え? 何が?)

 

「いえ、色々と連れ回しちゃって……もしかしたら迷惑だったかなって思ったのです。なんというかその……ちょっと、はしゃぎ過ぎちゃったかも……」

 

(そんなことないよ)

 

暗い表情を見せるフルに、指揮官はむしろ桜の種類など色々と勉強になって充実した時間を過ごすことができたということを伝えた。

 

「そう言ってくれると嬉しいのです」

 

指揮官の言葉にフルの表情が明るくなった。

 

「まったくもー、フルってば心配性なんだから」

 

それを見ていたエルは「やれやれ」と肩をすくめてみせた。

 

「フル? 指揮官が迷惑に思うわけないじゃん! なんてったって高橋家のメイドだよ、アタシたち。ふつーーーーの人にとっては高嶺の花なんだよ? しかも、世にも珍しい学生メイドなんだよ? そんな私たちが直々に案内をしてあげてるんだよ? むしろもっともっと感謝してほしいくらいだね!」

 

大人しいフルに対して、自信家であるエルはどうやら自身が高橋家のメイドであることをとても誇りに思っているようだった。

 

「指揮官さん、お姉ちゃんはああ言っていますけど……本当は指揮官さんにお花見を楽しんで貰いたいって思っているんですよ。昨日だって、指揮官さんを案内するって夜遅くまで打ち合わせを……」

 

「ちょっ……フル!?」

 

フルの突然の暴露に、エルは顔を真っ赤にして動揺した。

 

「うぅ……フル! それは言わない約束でしょ!?」

 

「でもお姉ちゃん! そんな言い方じゃ指揮官さんに嫌われてしまうのです! だから、言わないといけない言葉はちゃんと……」

 

「余計なお世話よ! もう!」

姉のことを心配するフルに、エルはツンとした態度をとった。

 

(そっか、2人とも……ありがとう)

そんな2人に、指揮官は丁寧に礼を述べた。

 

「……ま、まあ、指揮官には色々と良くしてもらったからこれくらいはね」

 

「そうなのです。指揮官がいてくれたおかげで色々と問題も片付いたことですし、なにより夏美お嬢様たちも最近は明るいのです」

 

「そうそう、よく笑うようになってるからね!」

 

エルとフルが言っているのは高橋家の令嬢、高橋夏美とその義理の弟である高橋龍馬のことだった。

かつては高橋家のお家騒動などで一悶着あったものの、それももう過去の話。現在は騒動もひと段落してお互いの中にあったわだかまりも解消し、2人とも平和な時間を過ごしている。

 

「だから、これはちょっとしたお礼なのよねー」

 

「指揮官さん、ご満足いただけたでしょうか?」

 

(とっても!)

2人の言葉に、指揮官はゆっくりと頷いた。

 

その後も、双子の姉妹による指揮官へのおもてなしは続いた。沢山の美しい桜に囲まれながら、双子との会話を楽しみつつ、指揮官は美味しいお茶とお菓子に舌鼓をうつのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

機動戦隊アイアンサーガ

非公式季節イベント『桜並木のアルカディア』(中編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(少し、食べ過ぎたかな……)

 

双子の姉妹とのお茶会を十分に楽しんだ後、食後の腹ごなしも兼ねて通りを歩いていた指揮官は、そこで妙な気配に気づいた。

 

(あれは……?)

 

見ると、桜の木々の間に見知った人影

 

茶髪の髪の毛、素っ気ないような顔つき。学生らしく、くたびれたワイシャツの上に黒塗りの学生服を着ているが、しかしそれはA.C.E.学園の制服ではなかった。

 

少年は桜の木の陰に身を隠し、まるで何者かの襲来に備えているかのようにピンク色の森の中に視線を送り続けていた。

 

(佐伯、何してるの?)

 

指揮官は少年の背後に近寄って声をかけた。

 

「うわっ!?」

 

するとその少年……佐伯は突然声をかけられたことに驚いたのか、びくりと体を震わせ指揮官へと振り返った。

 

「な、なんだ……あんたか」

 

指揮官の姿を見るなり、佐伯は安心したように大きく息を吐いた。それから「見つかったかと思った……」と何やら呟きを放った。

 

(見つかった? 何に?)

 

「悪い、用事なら後にしてくれないか、今は……」

 

「あ〜〜〜! 見ーつけた!」

 

 

すると、どこからともなく可愛らしい声が響き渡った。

 

「う……」

佐伯の口からため息が漏れる。

 

2人が声のした方向に目を向けると、天真爛漫な笑みを浮かべた少女が佐伯のことを指でさしていた。

白い肌、子猫を思わせる無邪気な瞳と頭部に生えた猫耳。そして少女の背中からはこれまた猫らしく、尻尾にも似た緑色のケーブルが伸び、少女の後ろでくねくねと動いている。

 

(……遥?)

 

「あれ、指揮官さんもいるねー?」

 

そう言って遥は桜の木をかき分けるようにして2人の元へと近寄ってきた。

 

「指揮官さんも、隠れんぼしたいの?」

 

(隠れんぼ?)

 

「うん! 今、みんなで隠れんぼしてるの、今は私が鬼ね!」

 

そう言って遥はキョロキョロと周りを見回した。

 

「まったく……せっかく上手く隠れられたと思っていたのに、指揮官が声をかけてきたせいで見つかってしまったじゃないか」

 

佐伯は恨めしそうに指揮官を見やった。

 

(ごめんね)

 

「じゃあ、他の人を探すことに協力してもらうぞ」

 

「そうだよ! 指揮官さんも、私たちと一緒に隠れんぼしようよー!」

 

(えぇ……)

2人に迫られ、隠れんぼをする流れになってしまったところで、指揮官は時間を確認した。そして、あの方がここに来るまでにはまだ時間があることを確認すると、隠れんぼに参加することを決めた。

 

「え? 何、指揮官もやるの?」

 

そうしているうちに、遥と同様桜の木々をかき分けるようにして、少し遅れて会話の中に入ってくる者の姿があった。

 

「あ、そっちはどうだった?」

 

「いや、残念だけど見つからなかった」

 

遥の問いかけに、その少年……エディはそう言って大きなため息を吐いた。

制服のたるみを直そうともせず、いつものようにボザボサの金髪をかきむしって、楽しそうな遥とは対照的にゲンナリとした表情を浮かべている。

 

「っていうか、なんでボクまでこんなこと……」

 

「えー? 楽しいでしょー?」

 

「別に……いや、悪く思わないでくれよ。ボクはインドア派なんだ、どうしても体を動かすことは苦手でね。こうして長い間歩かされているだけでも……もうね」

 

そう言ってエディは手頃な桜の木の根元に「よいしょ」と疲れたように腰を下ろした。

 

(珍しいね、エディが隠れんぼに参加するなんて)

 

「いや、参加する……というより、無理やり参加させられたという方が正しいかな。まあ、ボクの方も暇だったし、たまにはいいかなって」

 

そう言ってエディは肩をすくめてみせた。

 

「指揮官も知っての通り……こいつ、放っておくとすぐ爆弾を弄り始めるからな。こんなところでそういう事をさせるより、他に何かさせた方がマシだろ?」

 

エディを一瞥しながら佐伯はそう説明した。

 

(ああ、そういうことね)

 

「失礼な、ボクだって爆発させていいものとダメのなものの区別ぐらいつくさ。特に、こんなに綺麗な場所をめちゃくちゃにするつもりは……」

 

「しょっちゅう学園で爆発騒ぎを起こしている奴が何を……この前、美術室でボヤ騒ぎを起こしかけたのはどこのどいつだったっけか?」

 

「それはほら、爆発は芸術だって言うだろう?」

 

「芸術は爆発な!」

 

(危ないことは控えてね?)

佐伯とエディの会話を聞いて、指揮官は少しだけ彼らの学園での生活が心配になった。

 

「ねえ! いつまでもお休みしてないで、そろそろ見つかってない他のみんなを探しに行こうよ!」

 

そう言って遥は地面に座り込むエディの服を引っ張った。

 

(ところで、他には誰がいるの?)

 

「えーっとね……あと見つかっていないのは瞳ちゃんとソフィアちゃん、そして心宿さんたちだね」

 

「ああ、ソフィアと瞳はともかく、心宿さんたちを見つけるのは至難の業だろう……なにせ姉妹揃って暗殺者、隠密行動のプロだからな」

 

「それじゃあ、がんばろー!」

 

(そうだね)

 

そうして、新たに指揮官を仲間に加えた隠れんぼが始まった。3人は「もう歩きたくない」と駄々をこねるエディを引きずりながら隠れている仲間たちの捜索に向かった。

 

 

 

その結果

瞳とソフィアはすぐに見つけることができた。

 

 

 

瞳は隠れんぼそっちのけで沢山の猫たちと戯れていたところを発見された。遥と同じく尻尾にも似たケーブルを背中に生やした彼女は、それを猫じゃらしのように扱って猫たちの興味を引いていた。

余談だが、それを見た遥が「自分もやるー!」と猫たちの群れに突撃をかましてしまい、驚いた猫たちは一斉に散らばってしまうのだった。

 

 

 

「ところで、マスターはなぜ参加を?」

 

皆と一緒になって隠れている仲間を探している指揮官のことが気になったのか、瞳は指揮官にそう尋ねてきた。

 

(意外?)

 

「いえ、そういうわけでは」

 

(ん……時間潰しっていうのもあるけど、この後の道案内も兼ねて、少しでもこの辺りのことを知っておこうって思ったのもあるかな)

 

「道案内ですか?」

 

(いや、なんでもないよ)

 

「そうですか」

 

指揮官の言葉に瞳は小さく頷いた。

 

 

 

ソフィアは偶然にも桜色の着物を着ていたので背景と同化してかなりの迷彩率を発揮していた。……なのだが、彼女の長く美しい黒髪は白と桃色の背景にどうしても浮いてしまい、あえなく発見という形になった。

 

 

 

「なあ……指揮官」

 

指揮官の姿を見つけたソフィアが声をかけてくる。

 

(どうかした?)

 

「いや……その………………やっぱり、なんでもない」

 

ソフィアは少しだけモジモジとした様子を見せた後、小さなため息を吐き、そう言って指揮官に背を向けて歩き始めた。

 

(あ、そうそう……その服、よく似合ってるよ)

 

「……っ!!」

 

指揮官がそう告げると、ソフィアの体が僅かに震えた。

 

「そ、そう? あ、ありがと!」

 

(?)

ソフィアはそれだけ言うと、逃げるようにしてその場から立ち去った。残された指揮官は、疑問符を浮かべてそれを見送るのだった。

 

 

 

こうして、新たに2人の仲間を加えて隠れんぼは続けられたものの、しかし心宿たちの姿を発見するには至らなかった。

 

「もう、誰? あの人たちを隠れんぼに誘ったのは?」

 

いくら探し回っても一向に見つからないことに嫌気がさしたのか、エディが突然地面に座り込み、そんなボヤキを放った。

 

「私だよ? たくさん人がいた方が面白いかなって思って」

 

「誘う人を考えてよ……」

 

遥の言葉に、エディは深いため息を吐いた。

そして唐突に地面に落ちていた枝を拾っては、鉛筆を使う要領でそれを手に持ち、その先端で何やら地面に文字を書き始めた。

 

(影も形もない、彼女たちの気配すらも。流石、高橋工業の暗殺部隊出身者たち……敵に回すとここまで厄介とは)

 

「まあ、敵って言っても隠れんぼのだけどな」

 

指揮官の隣にいた佐伯が淡々とツッコミを入れた。

 

(まあ、頼もしいではあるよね)

 

そう言いつつ、指揮官は座っているエディに視線を送ると、彼はちょうど地面に文字を書き終えたところだった。

 

地面には日ノ丸の言語でデカデカと……

『どうせ 誰も 見つからない』

 

 

 

「なんでそんなこと書くの!? 言って!!」

 

 

 

「ふふふ……消えてしまった仲間を見つけることもできず、ボクらは永遠にこの森を彷徨うことになるのさ……」

 

疲れのせいかネガティブシンキングになってしまったエディの体を掴み、遥は彼の体をゆさゆさと揺さぶった。

 

「もー! 遥怒った! 全機発し……」

 

(待って! 2人とも大袈裟すぎだから)

 

「お、落ち着け遥!」

 

指揮官と佐伯は軽く喧嘩になりかけた2人の間に割って入り、彼らの衝突をなんとか防ぐことに成功した。

 

「じゃあさ、心宿さんたちを見つけられる良い方法でもあるっていうの?」

 

「それは……」

 

エディに痛いところを突かれ、佐伯が口ごもる。

 

「あ、じゃあさ! 何か新宿さんたちの興味を引くものを用意してみるってのはどうかな? 」

 

代わりに答えたのは遥だった。

 

「興味を引くものって?」

 

「そうそう! 例えば、心宿さんたちの好きな食べ物とか、欲しがっているものとか、最近ハマっているものとかを準備してあげればきっと心宿さんたちも出てくるんじゃないかと思うんだ!」

 

遥の提案に、佐伯とエディは顔を見合わせた。

 

「つまり、物で釣るのか……だが……」

 

「うん。アイデアとしては悪くないと思うけど、肝心の物資はどこで調達するって言うの?」

 

2人は微妙な顔をしてそう告げた。

彼らがいる桜海道は先に述べたように「聖地」とされており、一般人の立ち入りは固く禁じられている他、大量の桜で彩られたその景観を損なわないよう、建築物の設置に関しても半径数十キロに渡って規制が敷かれている。

つまり、物資を調達するためにはここから遠く離れた町に繰り出す必要があるということだった。なお、この場所では重火器の使用も勿論のことBMの使用に関しても堅く禁じられているため、お花見を最も楽しみにしていた佐伯の相棒は基地でシクシクとお留守番をしているというのは完全に余談である。

 

「うーん、その必要はないと思うよー」

 

しかし、2人の思惑に対して遥は楽観的だった。

 

「いや、だけど物が……」

 

「心宿さんたちが貰って喜びそうな物なら既にあると思うよ? 」

 

「え、どこに……?」

 

「そうだよね? 指揮官さん」

 

そう言って遥は指揮官へと振り返った。

 

(ん?)

 

「いやいやいや、いくら指揮官が凄い人だからって、そんな都合よく心宿さんたちが欲しがっているものを持ち歩いているわけないだろ……」

 

(いや、あるよ)

 

「あるのか!?」

 

指揮官の言葉に、佐伯は目を丸くした。

 

(えーっと、心宿一が……最近サングラスのコレクションに熱中しているらしいからサングラスを一つと、心宿二は燃料タンク、心宿三は京菓子をと……)

 

そう言って指揮官はどこからともなくプレゼントを取り出した。

 

「へー、これ京菓子って言うんだ? おいしそ〜」

 

「この燃料タンク、爆発させたら面白くなりそうだね」

 

「いやいや、お前ら注目するところはそこじゃないからな!」

 

指揮官が持っているプレゼントを興味深そうに見つめる遥とエディに、佐伯は思わずツッコミを入れた。

 

「な、なあ指揮官……サングラスや京菓子はまだ良いとして、なんで燃料タンクとかそんな都合よく持っているんだよ?」

 

(まあ、指揮官だからね。燃料タンクくらい常備しているよ)

 

「いや、フツーの指揮官はそんなもの常備しないと思うぞ? 普通! というか、どこから出してきたんだよ!?」

 

(深く考えない方がいいよ)

 

「……もういい、疲れた」

 

ツッコミに疲れた佐伯は深いため息を吐いた。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

エル

「なるほどね! これが『備えあれば嬉しいな♬』なのね!」

 

フル

「『憂いなし』なのです」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

(それで、これをどう使うの?)

 

「えーっとね、遥、前に本で読んだんだ〜!」

 

指揮官からプレゼントを受け取った遥は、そう言いながらプレゼントの入った箱を地面の上に優しく置いた。

 

「まず、こうしてプレゼントを地面に置いてね〜」

 

「「ふむふむ」」

佐伯とエディも遥の行動に注目する。

 

「次に、おっきな籠と棒とロープを用意して……まず籠をプレゼントが見えるように角度をつけて置いて、そしてロープを結びつけた棒を籠と地面の隙間に差し込んで……」

 

(これは、アレだね)

 

「うん、中のものに釣られて獲物がやって来た時に、ロープを引っ張ると籠が落ちて中にいる獲物を捕まえられるっていう仕組みのアレだね」

 

「って、ちょっと待てッッッ!!!」

 

遥がトラップを設置していると、佐伯が急に大声をあげた。

 

「ん〜? どうしたの〜?」

 

「いやいやいや! 無理がある!」

 

佐伯は遥の作り上げたトラップを指差して続ける。

 

「いくらなんでも古典的すぎるだろ! 相手は人間! 仮にも高橋工業の暗殺部隊出身! かちかち山のタヌキじゃないんだから、そんな見え透いた罠に引っかかるわけないだろッッッ!!!」

 

「そう? やってみないと分からないんじゃない?」

 

「できねーよッッッッッッッッッ!!!!!!」

 

楽観的な遥に対して、佐伯のツッコミは最高潮に達した。

 

(佐伯くん、落ち着いて)

 

「し、指揮官!? なぜ止めるんだ!?」

 

(まあまあ。出来るか出来ないかは置いといて、トライアンドエラーの精神で、まずはやってみようよ)

 

「くっ……分かった。だが、あんたも本当は気づいているだろう? この作戦が絶対に上手くいくはずがないってことを、それをオレは……」

 

 

 

 

 

数分後……

 

 

 

 

 

「やったあ! かかったあ!」

 

籠の中でモゴモゴと蠢く3人を前に、遥は歓喜の声を上げた。

 

「かかるんかいッッッッッッ!?!??!」

 

佐伯は絶叫した。

 

「これじゃあ姉妹揃って只のポンコツ暗殺者じゃないか!? お前ら今までよくそんなんでやってこれたな!? というか、なんでこんなん雇った!? 高橋工業ッッッ!?」

 

「……なんとでも言うがいい」

 

激しいツッコミを入れる佐伯を前に、籠の中から心宿三姉妹の三女……心宿三の蚊の鳴くような、か細い声が聞こえてきた。

 

「やっと解放された……ああ、疲れたぁ……」

 

「はぁ……はぁ……こ、こっちもツッコミ疲れた……」

 

隠れんぼに無理やり参加させられたエディとツッコミに疲れた佐伯はいかにも疲労困憊というようにその場に座り込んだ。しかし……

 

「さぁ! 次、行ってみよー♬」

 

「「え"!?」」

 

2人とも、元気が有り余っている遥に肩を掴まれてしまい、抵抗する暇もなく、そのままDOLL特有の人並み外れたパワーで桜の森の中へと引きずられてしまうのだった。

 

(3人とも、お疲れ様)

 

佐伯たちが居なくなるのを見計らってから、指揮官は密かに籠の蓋を開けた。そこから中を覗き込むと、そこには狭い籠の中で礼儀正しく正座をして向かい合っている三姉妹の姿があった。

なお、羞恥心からか3人とも顔を赤くしている。

 

「そんな目で見ないでくれ、主上……」

 

(別に、無理して引っかからなくても……)

 

「その……遥様のあの期待に満ちた眼差しには、どうしても逆らえなかったのだ」

 

心宿三の言葉に、長女である心宿一と次女の心宿二は小さく頷いた。どうやら、今回の三姉妹の恥ずかしい失態ぶりの裏には遥への優しさが隠れていたようだった。

 

プロの暗殺者としての矜持とプライドもあるだろうに……遥のためを思ってそのプライドを捨てる決意をしたことを踏まえると、かなりの英断だったということは言うまでもなかった。

 

(そっか……)

 

「主上、恥ずかしいところを見せて申し訳ない」

 

(ううん、気にしてない)

 

「なら良かった……」

 

(本当、お疲れ様)

 

そう言って、指揮官はそっと籠の蓋を閉めるのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

 

 

(そろそろかな)

 

隠れんぼから抜け出た指揮官は、来た道を戻って公園の駐車場に来ていた。広い駐車スペースの中には指揮官たちがここに来るために使った車両が4台、端の方に停められているだけで他には何もなかった。

そもそも指揮官たちは今日はここを貸し切っているので、他に車があるのであればそれはそれで問題なのだが……

 

指揮官はその中央付近に立ち、時間を確認していると……

 

「先生ー!」

 

指揮官の後ろから、男の子の声が聞こえてきた。

 

(……?)

 

指揮官が振り返ると、そこにはなぜか……いや、最早女の子用の服を身につけることが当たり前のようになっている金髪の男の子……龍馬が手を振って、とてとてと向かってきていた。

 

改めて龍馬の今の状態について説明すると、彼は女性用の和服を着ており、しかも丈は短く桃色を基調としていることから、そのため男の子でありながら、とても可愛らしい雰囲気を放っていた。

 

(龍馬くん、どうかした?)

 

「僕? 僕は何もないよ。お姉ちゃんとお花見をしてまわっていたら先生の姿が見えたから、どこに行くんだろうって思ってついて来たの」

 

そう言って龍馬は満面の笑みを浮かべた。

 

「先生はこんなところで何をしているんですか?」

 

(ああ、それは……)

 

「龍馬ー? どこへ行ったの?」

 

その時、龍馬が来た方向から別の声が響き渡った。

 

「あ! お姉ちゃんだ! こっちこっちー!」

 

「龍馬……あら? 指揮官も一緒だったのね」

 

両端を満開の桜で挟まれた花道から、高橋龍馬の義理の姉……高橋夏美が姿を現した。操炎術という文字通り炎を操る力を持つ彼女の髪の毛は情熱的な赤みがかかっており、その色合いは夜明けの日差しにも負けぬ力強さを誇っている。

 

そして、彼女の着ている服は龍馬と同様、日の夜丸の伝統的な装束……和服であり、見るからに幼さを感じさせる龍馬の和服とは対照的に、纏う者に清楚で落ち着いた雰囲気を与え、それを着た夏美は学生とはとても思えないほどの『大人の女性』に仕上がっていた。

 

(夏美、気分はどう?)

 

「とっても良いわ!」

 

夏美はとても幸福そうな笑みを浮かべた後、龍馬の隣に来ると、まるで舞うような立ち回りで和服を閃かせ、指揮官の前で綺麗な礼を一つした。

 

「指揮官、本日はこのような素敵な場にお誘い頂き、誠にありがとうございます」

 

「ほんと! ありがと〜先生!」

 

姉に倣って龍馬も礼をした。

 

(いいよ、それよりも……少しはリフレッシュできた?)

 

「ふふっ、そうね。最近は高橋家のことでとっても忙しい日々が続いたから、こうしてリフレッシュできるのは本当にありがたいことね……本当なら着物なんかより動きやすい体操服とかに着替えて、靴とか脱いでこの道を思いっきり駆け抜けてみたいくらいだわ」

 

そう言って夏美は「まあ、同じ学園の人たちもいる手前、それはできないでしょうけど」……と小さく笑って付け加えた。

 

「ねぇ先生! 先生も僕らと一緒にお花見しようよ!」

 

「ああ、それはいい考えね!」

 

龍馬の提案に、夏美はポンと手を叩いた。

 

(それは非常に魅力的な提案だけど、ごめん……実は先約があるんだ)

 

「約束があるの? そっか、なら仕方ないね〜」

 

指揮官の言葉に、龍馬は残念そうに笑った。

 

「もしかして、他に誰かこの場所に……?」

 

指揮官を横目に、夏美は駐車場を見渡して首を傾げた。

 

(まあね)

 

「指揮官、それは一体誰なの? 日ノ丸の人?」

 

(それはまあ、見てのお楽しみってことで)

 

「???」

 

「へー? 誰だろー?」

 

夏美と龍馬は頭に疑問符を浮かべた。

(2人とも、きっと驚くと思うよ?)

そんな2人に、指揮官はそんなことを告げた時だった……

 

(ん、噂をすれば……)

 

その時、駐車場の中に一台のリムジンが入ってきた。

 

駐車場に入り込んできたリムジンは、非常にゆったりとした動きで駐車場の中を進み……遊びを入れるかのようにそこら辺を一周した後、そのまま中央にいる指揮官の元へ一直線に向かってきた。

 

全体的に黒塗りで窓ガラスにはスモークが貼られており、車外から中の様子は見えないようになっている。一見するとごく普通のリムジンのように見られるものの、車体には高強度の合金が用いられており、部位にもよるがフロントならばBMから放たれる砲弾すら弾き返すことができる程だったりする。

 

「あー……疲れた〜」

 

リムジンの運転席から1人の少女が姿を現した。

青髪で、気だるそうな顔をした少女だった。

 

(シェロン!)

 

「え、シェロンさん?」

 

リムジンから下りてきた意外な人物……シェロンを見て、夏美は驚きを隠せなかった。何でもないというように欠伸を一つして、小さく伸びをする。

唯一、いつもと違う点を挙げるとすれば、いつものようなヘソ出しシャツとショートパンツというだらしない格好ではなく、彼女にしては珍しく上下に女性用の黒いスーツをきっちりと着こなしているというところだ。

 

「指揮官? 待ち合わせの相手ってシェロンさんなの?」

 

(まさか)

 

夏美にそう言って、指揮官はリムジンへ近寄る。その手には、いつのまにかシェロンの大好物であるジュースが握られている。

 

(シェロン、お疲れ様)

 

「どっから出したし……まあいいけど」

 

指揮官からジュースを受け取ったシェロンは、ストローに口をつけて一気にそれを半分ほど飲み干した。そして、小さく息を吐くと……

 

「ねぇ、指揮官?」

 

(ん?)

 

「この私にここまでさせたんだから、分かってるよね?」

 

(もちろん)

 

リムジンの真横に立った指揮官はシェロンの言葉に強く頷いた。なにせ彼女は、日ノ丸最大のVIPである彼女を連れて来るという大役を見事に果たしたのだ。

 

「そうこなくっちゃね〜お礼、期待してるよ〜♪」

 

そう言ってシェロンはニヤリと現金な笑みを浮かべ、それから指揮官に背を向けた。彼女がそうするのを見計らってから、指揮官は後部座席のドアに手をかけた。

 

(お手をどうぞ)

 

「うむ♪」

 

ドアを開け、指揮官が手を差し出すと、間もなくして白い小さな手が指揮官の掌に触れた。指揮官が小さな手を優しく握ると、その人物は繋がれた手を支えにしてゆっくりと車外に姿を現した。

 

「う、嘘でしょ……!?」

 

「え……ええっ!?」

 

目の前に現れたその人物を見て、夏美と龍馬は驚きのあまり両目を大きく見開いた。

 

「久しいな、友よ」

 

(はい、神皇様)

 

指揮官は彼女の前で膝をつき、最大限の敬意を示した。

 

 

 

彼女は日ノ丸の君主である『神皇』

 

 

 

美しい艶やかな黒髪、日ノ丸の古典的で厳粛な身なり。

どこか幼さが感じられる風貌であるにもかかわらず、それに反して彼女の内側から放たれる煌びやかで神聖な雰囲気は、彼女と対峙したあらゆる者を萎縮させるほどの圧倒的な存在感があった。

また、日ノ丸の民から崇められていることもさながら、彼女の所有する能力のことも踏まえると、彼女は人類で最も神に近い存在であると言えた。

 

 

 

(本日は来ていただき、ありがとうございます)

 

「いや、感謝するのはこちらの方だ。今日はこのような素敵な場に余を連れ出してくれて、とても嬉しいと思っている。こうしてまた、お主と相見えたこともな」

 

(はい。こちらこそ、お会いできて嬉しいです)

 

「ふふっ……変わらないな、お主は」

 

(神皇様もお変わりないようで)

 

そうして、2人はお互いに小さく笑いあった。

 

「し、神皇様って……本物の……?」

 

「そ、そうよね……あの方は、見紛うことなき日ノ丸の盟主、神皇様。まさか、こんなところでお目にかかることができるなんて……」

 

龍馬と夏美が見つめ合う2人をポカンと眺めていると

 

「む? ……おお、誰かと思えば高橋の娘ではないか」

 

そんな視線に気がついたのか、神皇は夏美に目を向けてそう聞いてきた。

 

「えっ!? わ……私のことをご存知なのですか?」

 

「うむ、余はなかなか外の世界へ足を踏み出すことができない身なのでな。指揮官殿はそんな余を気遣って、たまに文でのやり取りを通して外の世界の色々なことを教えてくれるのだ」

 

神皇は指揮官へ微笑んでから言葉を続ける。

 

「何でも、勉学で多忙な学生の身分でありながら、高橋家をより良いものにするべく毎夜寝ずの努力を続けているそうだな。うむ、そなたは立派な御人だな」

 

「わ……私はただ、父のしたことを少しでも償いたくて、ただ必死になってやっているだけで……そのように褒められることでは」

 

「なに、そう謙遜するでない。お主はよくやっていると……余は心より思っておる。当然、ここにいる指揮官殿も同じくな」

 

「神皇様……」

 

神皇の真っ直ぐな、それでいて優しげな言葉に、夏美は心の奥底で感情の昂りを感じた。たまらなくなった彼女は失礼だと思いつつも神皇から目を逸らし、神皇の背後に控えている指揮官に視線を向けた。

 

すると指揮官は夏美に微笑みを送った。

そうして、彼女の感情は決壊した。

 

「ううっ……」

 

「お姉ちゃん、泣いてるの……?」

 

夏美のやっていることは償いであり、当たり前のこと。普通に考えれば褒められるものではない。夏美自身、それが当たり前だと思っていた。

 

いくら努力をしても、無理をしても、誰にも認められることのない、終わりのない償いの日々……それが永遠に続くと思われた。……今日、この日まで……

 

だからこそ、神皇の言葉と指揮官の微笑みは、今の夏美にとって大きな救いとなった。思いがけず訪れた肯定を前に、夏美の心は激しく揺れ動く

 

夏美は両手で顔を抑えて咽び泣いた。その瞳から溢れ出した大粒の涙が、手の隙間からこぼれ落ちる。龍馬は姉のことを気遣って傍に寄り添い、泣いている彼女のことを優しく抱きしめてあげた。

 

「余は、そなたのような者にこそ、この国の行く末を任せたいと思っている。日ノ丸の盟主としてこれからの益々の精進を期待しておるぞ」

 

「勿体ない、お言葉です……っ」

 

弱々しくも、夏美は力強い意志を込めて呟く。体を支配する脱力感、龍馬に体を支えられながらも、しかし、夏美は決して泣き崩れることはなかった。

 

「では、行こうか」

 

(ええ)

 

指揮官と神皇はしばらく夏美のことを見守った後、もう大丈夫であることを見計らってから、桜海道3丁目へと続く桜の道に向かって横並びに歩き始める。

 

「神皇様! 指揮官さん!」

 

しばらく歩いたところで2人は背中に夏美の声を聞いた。

 

「ありがとう、ございました!」

 

振り返ると、泣き腫らした目をした夏美の姿。

彼女は遠く離れた2人に向けて大きな声でそう言って、深々と頭を下げた。そして頭を上げた時、彼女の瞳に涙はなく、代わりに強い光が浮かんでいた。

 

そんな夏美の姿は、指揮官と神皇の心に強い安心感を与えるのだった。

 

 

 

 

次回、

神皇様とお花見(実質デートですよ!指揮官様!)

光子VSカルマ

〇〇乱入(ヒント:ヤンデレ)




開発期間、数ヶ月でこのクオリティはクソザコかな?
まあ、元々語彙力がないので悪しからず……

あ、そうそう一つご報告が

ムジナ、ついにアレを見ました! はい、ちゃんと全話です!

なんといいますか、やはりがむしゃらに努力を重ねる主人公っていいですね! 見てるこっちからしても応援したくなりますし、その努力が実った時の達成感と言ったらもう感無量といったところですかね!

ムジナはやっぱりこう……成長していく主人公っていうストーリー展開が本当に大好物でして、なので相性が良かったのか心の底から面白いとは思えました。なので、つい最近まで凡用なアニメだと侮っていたムジナを殴りたくなってしまいましたね!

登場人物たちもこれまた個性豊かで良し!
今度映画もやるそうなので、これは観に行きたいですね!

え? なんの話をしているかって……



……『鬼滅の刃』ですけど?



……グレンラガン?
ああ、はい……グレンラガンは少しだけ見ました。アニキが死んでしまったところだけ……その、すみません……名作として知られているので人間ドラマとして見れば面白いとは思うのですが、その……メカニックがどうしても好かなくて、昭和ロボっぽい見た目と全身ドリルのやっつけ感はムジナの口には合わないといいますか……ごめんなさい

でも、今回ダッチーはよくやった方だと思っています。
確か、グレンラガンは版権問題とかで色々制限があったと聞きます。それでもストーリーは兎も角、こうやって機体とパイロットを実装できたのはすごいなぁと……何が言いたいかというと、「ダッチーは悪くないよねぇ〜?」

……なんか、色々とすみません
次は早めに書き上げます……それでは、また……
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