東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――登校中。
「おはよう、みんな」
天馬が俺たちにあいさつをしてくる。
「おーっす」
俺は天馬に返す。
「おはよう夏目くん」
だが京子は夏目にあいさつをする。
「試験も後半戦だね~」
天馬が言う。
あぁ、そうだな。
あのダルイ試験もやっと後半戦か。
もう勉強は嫌だ。
「刃くんはどう?」
「ん~?俺かぁ……ま、赤はないな」
「当たり前でしょ!!」
京子がつっこんでくる。
ははは、別にいいじゃないか。赤点さえ取らなければ。
「いい加減しっかりやれよ、本気でやれば満点取れるんだから」
夏目が言ってくる。
あー……確かにそうなんだけどな。
記述が多すぎてダルイ。
あんなに書くなんて無理だ。
「まぁそのうちな」
「そのうちって……」
そんなことを言いながらも歩き続ける。
ふと、後ろを振り返る。
すると、冬児が立ち止まっていた。
「どうした?」
「あぁ、もう半年だな、と」
―――教室。
「プリントは、後ろから集めてこい」
担当の教師が言う。
あ゛ー……やっと終わった。
疲れたわ~。
「あの~……刃くん?」
天馬が声をかけてきた。
「ん~?どした?」
「どうだったのかなと思って……」
「余裕だ……けど最低限しか解いていない。さっさと解いてあとは寝てた」
「あはは……」
「刃!!次は実技だぞ!!」
今度は夏目か。
そういえば実技もあったな。
朱蓮と白は使えるわけないしな……
今回は俺が出張るか。
―――競技場。
俺は今、京子と模擬戦をしている。
京子は人造式を出して攻めてくる。
だが甘い。
「結」
俺は結界を張る。
ただし、槍の軌道をそらせるためのものだ。
大きさにすると、鉛筆程度の大きさだ。
そうしないとバレちまうからな。
大友先生にはバレてそうだけど。
「今度はこっちのターンだ」
俺はなんの変哲もない刀を創造する。
もちろん創造したのがばれないように、懐から紙を出してそれを霧散させたときに出る煙に乗じてだ。
俺は刀を抜き、人造式に特攻する。
もちちろん、反撃をしてくる。
それを刀でいなしながら、腹を斬りつける。
「う~ん……さすがにこの鈍らじゃあ、たいして効かないか」
とは言ったものの、相手の人造式は少しだけラグってる。
あぁ、俺の斬撃の速度が速かったからか。
まぁいい、もうそろそろ決める。
「コン!!」
「はい!!」
俺はコンに指示を出す。
たった一言。
これだけでいい。
コンは、人造式の気を引く。
その隙に俺は神速で人造式の後ろに回り込む。
そして……
「破ッ!!」
刀を『念』で強化して、斬りこむ。
もろに食らった人造式はラグがひどくなる。
よ、よかった……壊れるんじゃないかと思った。
そこまで強化しなかったのが幸いしたな。
「これで俺の勝ちだな」
「くっ……」
京子は悔しそうに顔を歪める。
ははは、悔しいか。
「お見事です、刃様!!」
コンがほめてくれた。
ほめてくれた。
コンが、ほめてくれた。
ハッハッハ!!
俺に敵はもういないぜぇ!!
「おまえもたった一言だけでよくあそこまで動いてくれた」
コンの頭を撫でながら言う。
「そ、そのような、もったいなく、かたじけなく……」
腕をブンブン振りながら言う。
ちなみに顔も真っ赤だ。
……かわいい。
「ふん、本来黒楓(こくふう)は白桜(はくおう)とセットなんだから」
……関係なくね?
ようは使い手の技量不足だろ?
「そんなこと実戦でも言うつもりか?あとさ、式神操ってるときさ、無防備すぎ。おまえ自身を狙われてアウトだぞ」
「そ、そんなことわかってるわよ!!」
本当にわかってんのかよ……
わかってたら直してるはずだろ。
―――夕食。
「はぁ~疲れた。やっとメシか……」
今日の夕食はきつねうどんだ。
油揚げがたまんねぇ。
コン?
コンは隣で油揚げを食べてるぞ。
お茶も飲んでるけど。
「隣……いいかな?」
夏目か……
答えは決まっている。
「もちろんだ」
もちろんOKだ。
当たり前だろ。
「あのさ……刃は本当に、絶対に『陰陽師』にはならないの?」
夏目ェ……
どうしたんだ?
何回も言ってるはずなんだけどな……
「だから俺は『結界師』だからさ、『陰陽師』にはなれない。つか、なんでそんなに『陰陽師』になって欲しいの?『結界師』でもこうして一緒にいられるじゃん」
「それは……それはだって……お、おんなじじゃん」
……一緒がいいってことですか?
そうなんですか?
……悩むな。
夏目にここまで何回も頼まれたらな……
でもなぁ……自分の考えを曲げるのもなぁ……
「だ、だめ?」
ぐぅ……
上目遣いは反則だ。
そんな目で見られたら……
そんな目でみられたら……
断れるわけないじゃないかッ!!
「うし、しょうがねぇ、『結界師』から『陰陽師』に転職してやる!!」
「ホント!?ありがとっ、刃!!」
「ちょ、おまっ!?」
ガバッ!!と抱き着いて来る夏目。
よかったぜ……
周りに人が居なくて。
いたらホモ説が流れちまう。
あの寮監二人が主に流しそうだ。
―――夜、屋上。
「おっす、なんだ?タバコか?」
俺は冗談まじりに冬児に言う。
「んなわけねぇだろ……」
「ほれ」
俺は缶コーヒーを冬児に向かって投げる。
「サンキュ」
それを難なく受け取る。
「明日の実技さ……霊災の修祓とはな」
「まぁ疑似霊災だしな……クラス全員でなら何とかなるだろう」
「夏目は見学だってよ……俺も見学してぇ……」
マジでさ……ダルぅ……
なんで霊災の修祓なんだよ……
模擬戦でいいだろ。
「試験の必要がないってことだろ?陰陽塾は実力主義だ」
「俺たち凡人は、地道にやるしかねぇか」
「おい、おまえが凡人だったら世の中のほとんどの人間がクズになっちまうぞ……」
ごもっともで。
「冬児さ、最近さ、霊気が乱れてねぇ?」
「……そうか?まぁ、意識するようにはなったな」
やぱっりか……
「コントロールできるようになったのか?」
「そうかもな……まぁ、おまえが心配するようなことにはならないさ。親父さんの治療がバッチリ効いてる。無茶はできねぇが」
ならいいだけどな。
「ま、おまえがいれば無茶するようなことにはならないだろ」
「当たり前だ」
そんなこと起きたら間違えなく日本は沈むだろうな。
「そんじゃ、行くわ」
「おう」
俺は一足先に部屋に戻った。
―――翌日、バス。
「ふぁぁぁぁぁ……ねみぃ……」
「まったく……早く寝ないからだぞ」
夏目がプリプリ叱ってくる。
そんなこと言われてもなぁ……
ラノベは一度読んだらとまんねぇぜ!!
―――広場。
目の前では、教師たちが疑似霊災を起こそうと準備をしている。
正直に言おう。
不安しかねぇ。
いくら疑似とは言え、霊災だ。
そこから本物の霊災につながるかもしれない。
まぁ可能性の話だが。
そして、時は来た。
「では、実技試験を始める」
「「「「「はい!!」」」」」
みんなは術を発動させる。
「よし、いいわ。もう少しよ」
京子がみんなに言う。
隣でメチャクチャ天馬が焦ってるんですけど……
「落ち着け天馬。焦ってもしょうがない」
「わ、わかった」
本当にわかってるのか?
まだあたふたしてやがるぞ。
「みんな、落ち着いて。時間をかけてもいいから確実に霊気の変更を正すの」
時間をかけるのはまずいんじゃないの?
瘴気が漏れてるし、それを吸い込んだらまずいし。
それにしても冬児はうめぇな……
焦る様子もないし。
さて、俺もやりますか。
「臨、兵、闘、者……皆、陣、列、前、行」
む?
おかしくないか?
霊気が強くなってないか?
「おかしいわよこれ、霊気が強くなってない!?」
誰かが叫んだ。
すると、地面がひび割れ、そこからも瘴気が漏れてくる。
これはまずいねぇ……
「みんな、結界を強めて。抑えるわよ!!」
京子がみんなに指示をする。
だがみんなは少しパニックに陥ってて聞こえていないようだ。
「結界班は現状を維持!!」
「修祓班はただちに結界外へ退避しろ!!」
おっさん教師がみんなに指示を飛ばす。
天馬もコールセンターへの連絡を頼まれた。
「冬児!!しっかりして!!」
冬児……?
まずい!!
「冬児……」
「まだ、もつ……」
とてもそうは思えないんだが……
まぁ本人がいいならそれでいいだろ。
「が、余裕はねぇ」
ダメじゃねぇか!!
その時だった。
ドオォォォォォォォォォォォォォ!!
瘴気が一気に噴き出してきた。
「まずい!!」
「だめ……結界が!!」
「うぐぅぅぅぅぅぅ……・」
ますます冬児の調子も悪くなっていく。
しょうがねぇ……
やったりますか。
「十二人の先神よ…百鬼を退け、凶災を祓わん」
それは先代当主達を呼び寄せる召喚式神、破軍。
「東海の神、名は阿明、西海の神、名は祝良―――」
鎖が放たれ、瘴気が抑えられる。
「祓いたまい、清めたまう―――」
瘴気に、新たに紡がれる神咒。
俺の後ろからなにかが出現する。
「はらいたまい、清めたまう。いわまくもあやにかしこきはらえどおおかみのおおみいずをこいのみまつり、すべてのまがごとけがれをはらいのぞかむと―――」
十二の破軍を囲むように四体の式神が顕現していた。
すなわち、北に玄武、東に青龍、南に朱雀、西に白虎。
四神相応の陣だ。
それによって増幅された祓えは、瘴気を極限まで抑える。
さて、仕上げだ。
「『式神融合』黄泉送葬龍斬・神獣奉刀」
今回の式神は朱蓮と白だ。
おかげですごい力だぜ。
現れた刀で瘴気の元を斬る。
すると、瘴気は消えてなくなった。
俺はくるっとみんなの方を向く。
「これでいい?」
「あ、あぁ……す、すまない」
おっさん教師が頭をポリポリかきながら答えてくれる。
すると、固まっていた夏目がこっちに走ってきた。
「すごいじゃないか!!それよりも今のはなんだい!?」
後ろにいるクラスのやつらも興味津々のようだ。
みんな耳を傾けている。
まぁ答えてもいいだろ。
結構奥の手だけど。
「今のは式神・破軍だ。花開院陰陽術秘儀で、これを使える者は別格とも言われるほどの術だ。先神を呼び出して、その霊力を借り極限にまで術者の『才』を増幅させるんだが……正直、これはあんまり使いたくない。今のも一割程度で使ったんだが……制御が難しくてここら一体を吹き飛ばしそうになった」
「「「「「……………………………………………」」」」」
みんな黙り込んでしまった。
とりあえず、俺は式神・破軍を解く。
そして、一番初めに口を開けたのは夏目だった。
「ねぇ刃……花開院ってさ、なに?」
あ……
この世界に花開院家はないんだっけか?
まずったな……
そうだ!!
「夏目、この前話しただろう?俺のこと」
「刃のこと……あぁ、そういうことね」
どうやら納得してくれたようだ。
多分だが、俺が転生者だからというのと他の世界のことだろう。
そう思っていると思う。
「お゛いぃ」
冬児が叫ぶ。
何事だ?
「全員……ここから……離れろ……今……すぐにだ!!」
ここまで冬児が焦っている。
それにこの気配……鬼?
直後、瘴気の出ていたところに何かが着地した。
「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
さらに冬児の様子がおかしくなる。
「刃様!!」
コンが声をかけてくる。
だがその声には焦りがある。
俺は原因の方を見る。
そこには、馬鹿でかいキモい鬼みたいなものがいた。
「フェ、フェーズ3……鵺!!」
その瞬間だった。
『ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』
鵺が叫んだ。
それはソニックブームのように衝撃を与えてくる。
がぁぁぁ、うるせぇなぁ……
クラスのやつらも耳を抑えるが、完璧には遮断できていないようだった。
しょうがねぇな……
「結」
俺はクラスのやつらと、教師を囲うように結界を張る。
「みんな、無事か!!」
そう訊くと、数人だが返事をしてくれる。
ざっと見回すが、特に被害は出ていないようだった。
「コン……どうした?」
「……刃様、あやつ、手負いです。何かを恐れている」
教師がみんなに指示している中、俺はコンに声をかける。
そして帰ってきたのは少し驚くことだった。
手負い?
あいつが?
一体誰に……
それに恐れる?
「なんだぁ?ガキ共が俺の獲物に何やってやがる。おまけになんだこの結界……まったく仕組みが理解できねぇ」
俺は声の主を見る。
げ……なんだこいつ。
白髪で、メッチャピアスしてて、装飾品をゴチャゴチャ。
そして額にはバツに刻まれた傷。
「お、鬼喰い……オーガ・イーター」
教師の誰かが言った。
「おいジジイ……その名で俺を呼ぶんじゃねぇ。俺の名は鏡伶路だ。十二神将相手に調子くれってと……ぶっ殺すぞ」
やべぇ……まったく怖くない。
なにこのチンピラ。
完全な雑魚キャラ臭がするんですけど(笑)
「バカ!!刺激を与えるな!!」
おっさん教師が言う。
それを無視して近づいていくチンピラ。
そして、また鵺のシャウト。
それに対してチンピラは……
「うるせぇ……黙れ」
それだけで黙らせた。
逆に言おう。
そこまでしないと黙らせられなかった。
殺気をぶつけるなり、威嚇するなりあるだろうに。
「甲種言霊だ……霊災相手に!?」
夏目が驚いている。
そこまですごいのか?
俺は視線だけで魔王を黙らせるやつを知ってるぞ。
「吽!!」
チンピラが言う。
すると、鵺の体に稲妻がほとばしる。
だが、それと同時に鵺はビルを駆けあがって逃げる。
「面倒かけさせんなよ。もう―――」
そしてチンピラは何かを唱え始める。
すると、炎が上がる。
炎は鵺に迫っていき、やがて鵺を包み込む。
そして、鵺はそのまま下に落ちる。
被害?
そんなもんあるわけねぇだろ。
俺は結界張ってるんだから。
「はぁ、もう少し周りに配慮できないものかね」
「あ゛ぁ?誰だ今ほざいたやつ」
あ、やべ。
聞こえてた。
「俺だけど?なにか?」
「ふぅん……おまえ、名前は?」
「一番初めのやつがいい?俺さ、名前変わってるから」
「始めのでいいからさっさと答えろや!!」
「土御門刃」
「へぇ……おまえがねぇ」
なぜ、俺があえて土御門と名乗ったか。
それはだな……面白いことになりそうだからだ。
「聞いてるぜぇ……大連寺のゴスロリ娘を泣かしてやったそうじゃねぇの。あんなガキでも十二神将の端くれだ。もうちっと胸張ってもいいんじゃねぇか?」
チンピラは俺の周りをぐるぐる回りながらしゃべる。
落ち着けよ!!
止まって話せよ!!
ガキかよ!!
「俺はその方が好きだぜ……なんせいきがってるガキの方がイロイロとやりがいがあるからなぁ」
その時だった。
鵺が起き上がって襲ってきた。
それをなんかチョイチョイっとやって防いだ。
何したかはどうでもいい。
「先にこっちを始末しとくか……おまえあの結界張ったやつか?」
「ん?そうだけど?」
「なら、その結界を使ってこいつを始末してみろ」
「えぇ……」
ダルい……いやね、大した作業じゃないけどさ、チンピラに命令されてやるのはちょっとな……
「んだよ、鵺ごときにビビってんじゃねぇよ」
「いや、ビビってないよ。うん。もっと怖いの知ってるし」
「へぇ……」
チンピラが近づいてくる。
そして俺の胸ぐらをつかんで持ち上げる。
ぐえぇ……ちょとばかし苦しい。
「実にいいぜそういうの……やりがいがある」
……いい加減むかついてきたな。
ゴオォォォォォォォォォォォ!!
今度はなんだ?
ってまた瘴気か……
そういえばあそこには鵺がいなかったっけ?
「チィ!!瘴気喰って、回復しやがった」
あーあ、何やってんだこのチンピラ。
「おおぉぉぉぉぉぉおおおおおぉぉ!!」
冬児がまた叫びだした。
こりゃ本格的にまずいかな……
「別の霊災?動的霊災……鵺じゃねぇ……そのガキなにか憑いてるな。カッハハー!!」
チンピラが冬児に近づいていく。
いったい何する気だ?
「おまえら、マジ最高だぜぇ!!」
そしてそのまま冬児のヘアバンドをとっ……た?
「ハハハ!!こら立派な生成りだ!!落ちるまであと一歩ってとこか?」
あいつは……何をした……?