東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――広場。
「こいつはいい……鬼。しかも生成りとは……」
バレちまったか……
でもいずれ話さないといけないことだったしな。
「生成り?」
「冬児くんが……鬼?」
京子と天馬も驚いているようだった。
「ちゅうとハンパなことになってるなぁ……いっそ完全に堕ちちまえば話は早いんだが……大連寺がそうだった。二年前の霊災テロ……その首謀者は自らを核に霊災を引き起こし、鬼になりやがった。コイツに鬼は憑いたのは案外二年前じゃねぇか?」
「そうだけど?なにか?」
確かに二年前……あぁ、なるほど。
そういうことね。
「独立祓魔官として、霊災の種は見過ごせねぇ」
その時だった。
「気安く触るな……バッテン野郎……十二神将かなんだか知らねぇが……生成り相手に調子くれてっと……ぶっ殺すぞ」
おぉう、元気いいねぇ。
だが肝心の冬児はチンピラに殴られて地面に落ちた。
「人が必至に制御してる横で……いい加減にしてほしいぜ」
あぁ、必死だったのか。
必死にこいつが頑張ってんのに、チンピラはあんなにふざけて。
まぁ、止めなかった俺も悪いんだけどさ……
「おい……いい加減にしてくれない?」
「チィ!!上等じゃねぇか!!」
チンピラが霊気を開放させる。
ハッ、こんなもんか。
「その程度かよ……ほら」
「なっ!?テメェ……」
俺は三割霊気を開放させる。
この程度でもチンピラの倍はある。
さすが俺クオリティー。
『鏡!!何してるか!!』
なんだ?
俺は声の主の方、上空を見る。
あれは……烏天狗?
それも三羽も……
何か言いあってるようだが関係ない。
今はチンピラだ。
どう殺してやろうか?ん?
「鏡!!鵺はどうした?」
今度はバイクに乗ったあんちゃんだ。
「気配は感じだが、修祓したかんじじゃなかったぞ」
『鏡のバカ、鵺逃がした』
『失態、失態』
「さらには民間人にからんでた!!それもどこぞのチンピラみたいに!!あと、殴ってた!!」
俺も便乗して言う。
チンピラが睨んでくるが関係ない。
「どうなってる?」
「鵺なら逃げちm「逃がしたんでしょうが、ふざけてて」…あ゛ぁん?」
あれ?俺は本当のことを言っただけなんですがね……
「何やってんだか……陰陽塾、なるほど。よし鏡!!俺と共に鵺を追え」
「はぁ?」
「仕事だ」
「チィ!!」
「鏡がいろいろやらかしたと思うが、今は緊急事態につき、霊災追撃に移させてもらう」
「ご武運を」
おっさん教師が言う。
「刃、冬児、おまえらの名前……覚えたからな」
それだけ言い残して、消えて行った。
おぉう、なかなかやりますな。
でもちょっとカッコつけすぎやしねぇ?
―――陰陽塾。
「冬児は?」
夏目が訊いてくる。
「まだ意識は戻ってないよ。なんか俺の親父が施した封印を安定させてるみたいだけど」
正直言って、俺が動いたほうが早く解決する。
でも、それだとな……
なんかだかな……
「まさか、冬児くんが……」
天馬が呟く。
そりゃそうなるか。
友達が生成りだったなんて知ったらな。
「悪りぃな……夏目と京子も。今まで黙ってて……」
「確かに、なかなか言いだせることじゃないわね……」
「冬児のことは責めないでやってくれ。多分さ、俺に気を使って黙ってたんだと思うからさ。それにさ、あいつは安全だ。だって俺が近くにいるからさ……しかもずっとその治療をしてたんだ」
冬児のやつも遠慮しなくていいのにな。
まぁその遠慮がちなところは日本人の悪いところだ(笑)
「こんなところにいたのか」
俺は声のする方を向く。
教師?
「塾長が君を呼んでいる」
どうやら夏目を呼びに来たらしい。
しっかし塾長……あの腹黒ババアがねぇ……
まぁもちろん、俺たちもついていくけどな。
―――塾長室。
「そんな!!夏目くんの龍をおとりに使うなんて!!」
京子がババアに食って掛かる。
確かにおとりに龍を使うのはな……
うちの龍だと殲滅しちまあうからおとりにならないし。
「動的霊災は、龍の持つ上質な陰の気を好むの」
「だからって……」
「もちろん強制ではありませんよ。それと、京子さん。塾内ではちゃんと警護を使いなさい」
これってさ、遠回しに断るなって言ってるようなもんだよな。
「でも、危険すぎます!!」
天馬も心配しているようだ。
確かに北斗ってさ、緊張感が皆無だもんな……
別に北斗がくたばってもいいけどさ、夏目が怪我するのはいただけない。
「父は……父は許可を出したんですか?」
夏目が口を開いた。
おいおい……親父が許可を出したらやるのか?
「祓魔局はそう言っているわ」
なるほど、祓魔局は、ね。
「なら祓魔局に出頭します」
「そんな……」
「夏目くん!?」
天馬も京子も驚いている。
「今回の霊災は二年前の霊災と同じ、夜光信者によるテロ行為であることが極めて高いのです。だからこそ、夏目くんは祓魔局にいた方が安全だとも言えます」
「おいおいババア、忘れたんじゃねぇだろうな……その祓魔局からこのまえ夜光信者が見つかったんだろうが」
ヂリリリリリ
このタイミングで鳴るか?
塾長は受話器をとる。
「えぇ、そうですか……」
それだけ言って、受話器を戻す。
そして一言。
「冬児だんの意識が戻ったようです」
「本当ですか!?」
天馬が言う。
「ただ……目を離したすきに居なくなったらしいわ」
その一言に俺以外の全員が驚く。
「少し朦朧としていたそうだし……正直よくない傾向ねぇ」
頬に手を当てながら言う。
ぜんぜんかわいくねぇから……
むしろ、ね。
―――廊下。
しばらく無言のまま進んでいく。
「バカ刃」
それを破ったのは夏目だった。
「あぁ?」
「どうしてすぐに追いかけないんだ?いつもの刃なら、一も二もなく冬児を探しに行くはずだろ?」
「そうだな……そうかもしれねぇ……けどな。俺はおまえの式神だ。だから主の近くにいて主を守る。これが俺の役目だ」
「だから君はバカなんだ。そんな中途半端な気持ちで僕を守れるのかい?」
「あぁ、守れるよ。フェーズ4までなら体術だけでも守れる」
「え……」
さすがにこの返しは予想外だったらしい。
普通ならここで無理だ。
とか言うんだろうけど、俺は違う。
くぐってきた修羅場の数が違う。
越えてきた脅威の大きさが違う。
だから俺には関係ない。
「そ、それでもだよ!!冬児の親友なら探してやれよ!!ほら、行け!!」
……もうヤケクソじゃねぇか。
まぁ主の命令なら行くしかねぇか。
―――???。
「コン」
「ははぁ」
天馬も来たか……
うし、やるか。
「冬児を探すのを手伝ってくれ」
「かしこまりましてございまする」
日本語が変じゃないか?
「天馬はあっちを頼む」
「う、うん」
天馬ってさ、体力なさすぎじゃね?
ちょっと走っただけではぁはぁいってるし。
とりあえず、二手に分かれた。
コンも、上空から探しているようだ。
それにしても、どこに行ったのかなぁ。
気もさぐれねぇし……
つーか、しらみつぶしにさがすのに渋谷は広すぎる。
おぉ?
「いってぇ……」
誰かにぶつかったようだ。
「おいゴラァ、どこ見てやがんだ!!」
……とんだチンピラにからまれたな。
「おいなんだその顔は!!」
「……放せよ。ぶち殺されてぇのか?」
「ひぃぃぃぃぃ!!」
胸ぐらをつかまれたので、殺気をぶつけてビビらせる。
「そのへんにしておかないか?いやなら……俺がt「いえ、結構です。どもっした」
…誰かさがしてるのか?」
こいつ……なんでわかる?
「誰を探しているか分からないが、同じ制服の少年なら少し前に見かけた。様子がおかしかったから覚えている」
「そうか……どこでだ?」
「この先だ」
そう言って指察したのは実技試験の場所。
「サンキュ」
「早くいってやれ」
俺は駆けだす。
そして、一度振り返る。
そこには誰もいなかった。
もしかして……いや、まさかな。
―――実技試験会場。
「ざまぁねぇよな……塾長に釘を刺されたってのに、ふたを開ければこのザマだ」
とりあえず、俺は『写輪眼』を開眼させる。
ふむ、鬼気は感じられないな。
でもこれは……鬼の匂い?
「らしくねぇな冬児、おまえには情熱がないから鬼は住みようがないんじゃなかったのか?笑える話だな、鬼になりたいとかスカしてたおまえがな」
「本音は今も変わっちゃいねぇさ……鬼になりたいまでとは思わねぇでも、なってかまわないとは思ってる」
はぁ……まったく、なんでこの世界の人間はこう面倒なのが多いんだ。
「正直、これが俺の考えなのか鬼の考えなのかわからねぇし……正直どっちでもいい。変えようがねぇのさ……俺の本質に根付いたことだからなぁ」
「なにが本質だ……まだ数十年しか生きてねぇガキがナマ言ってんじゃねぇぞ!!」
「悪いが……俺はお前とは違う」
そりゃそうだ。
片や、神様。
片や、人間だけど鬼に憑かれている。
「そうだな……でもおまえは考え過ぎだ」
「何も考えないバカよりましだ」
「何も考えてないか……そうか、そう見えるか」
何も考えてない。
それは何も考えてないことを考えている。
なに言ってるか分からないけど、そういうことだ。
あー面倒だな。
「帰ってこいよ」
「帰ってどうなる?また封印を強化して、自分の中の鬼をごまかして……このままずっと先、俺は爆弾を抱えたまま生きていくんだぜ!!それがどんなもんか……おまえにわかるのか!?」
「あぁ、わかるよ。おまえが爆弾なら俺は核だ。ちょっと衝撃を与えただけで世界を破壊しつくしちまう」
「そんなのは建前だ!!そうだ……そうだ!!一番手っ取り早いのが、さっさと鬼になって払われちまえばいいのさ!!」
冬児の姿が変わる。
鬼武者?
髪が白に染まった。
体には青い鎧をつけている。
これが冬児に憑いている鬼?
ふぅん……かっこいいな。
「つーかさ……甘ったれてんじゃねぇぞ、このガキが。おまえの命はもうテメェ一人のもんじゃねぇんだよ。俺や夏目、京子に天馬。かかわった人が一緒になって創り上げたもんだ!!テメェだけでどうこうしていいもんじゃねぇんだよ!!」
「俺と殺りあおうってのか!?今の俺と!!いっぱつ当たるだけで頭が砕けるぜ!!」
「やってみろよ。俺はデコピンで頭を吹き飛ばせるぜ」
「バカが!!」
俺は特攻する。
もちろん加減をしてだ。
速度は精々普通の人間程度だ。
何回も攻防を続ける。
だがそれは終わりを告げる。
俺は動きを止める。
そして、冬児が俺の顔面に一撃を入れ……ずに止める。
「どうした?できねぇのか?そうだよな……俺の頭が砕けちまうと思ってるもんな!!」
俺が腹に一撃を入れる。
冬児は倒れる。
そして俺は冬児に馬乗りになる。
胸ぐらをつかむ。
「伊達によぉ、何年もつるうじゃいねぇんだ。おまえに俺が殺せないことくらいわかる。なんせおまえは心から仲間思いだからなぁ……それがおまえが自分自身にかけた呪いだ。たかが鬼ごときにどうこうできるちゃちな呪いじゃねぇ。そいつが解けねぇかぎりなぁ、おまえは鬼と戦うしかねぇ……いい加減よぉ、腹くくれや!!」
その瞬間。
冬児の鬼化が解ける。
どうやら成功か……
そんでもな……
「手間かけさせんな」
俺はデコピンをする。
それは結構な力を込めて。
もちろん冬児は気絶したよ。
「はぁ、これが青春ってやつかねぇ……何万年前にやったきりだったよ」
次は鵺か……