東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】   作:眠らずの夜想曲

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第9話~恋心、それは・・・~

―――バス。

 

 

「いやぁ……面倒だな、合宿」

「えぇ?楽しみでしょ合宿」

 

 

俺の言ったことを速否定する夏目。

しかもお菓子の袋開けながら……

 

 

「はぁ……」

「元気だしなよ刃!!」

「ちょっと~、うるさいでぇ」

 

 

大友先生が突っ込んできた。

 

 

「この実技合宿はなぁ、一応抗議あつかいやからなぁ」

「「すいませーん」」

 

 

夏目がニコニコしながら答える。

俺は面倒そうに返す。

 

 

「キミらなぁ、驚かすつもりはないけど……しんどいでぇ」

「しんどいか……」

 

 

まぁ、なのはのO☆HA☆NA☆SHI程ではないだろう。

 

 

「いつもの僕たちに比べればそんなことないですよ!!」

 

 

夏目が意気揚々と答える。

 

 

「まぁ、辛気臭くてもしょうがあらへん。今のうちに羽のばしときぃ。今のうちにな」

 

 

あやしいな……

まさかあいつを連れてきたりなんか……

まさかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――山、階段。

 

 

俺たちは荷物を持って山を登っている。

と言っても、しっかりと舗装されているので全くと言っていいほどきつくない。

だが、京子は結構疲れたようだ。

そりゃそうだ、キャリーケースなんて持ってくるんだから。

階段との相性は最悪だ。

 

 

「ねぇ、冬児くんはいつ合流するの?」

 

 

京子が俺に訊いてくる。

 

 

「うちの親父の診察が終わり次第だとよ。なんか今の冬児に一番有効な封印にしあげるんだと。詳しくは知らねぇ」

「でも、そんな大幅な調整した後でいきなり合宿なんて……」

「むしろ好都合だと。さっさと試せるから」

「それにしても、きついなぁ」

 

 

京子がキャリーケースを階段にひっかけながら言う。

よし。

 

 

「ほら、持ってやるからよこせ」

「えぇ!?い、いいわよ別に……」

「いいから、女の子にそんな大きな荷物はきついだろ?」

「……わかったわよ」

 

 

渋々納得して俺にキャリーケースを渡す。

俺はそれを軽々と待ちあげる。

 

 

「あんたって……相変らずデタラメね」

「大きなお世話だ」

 

 

まぁデタラメなのは否定しないけど。

 

 

「んじゃ、行きますか」

 

 

もう少しで上りきれる。

あぁダルい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――頂上。

 

 

門をくぐる。

そこにいたのは―――

 

 

「もーう、先輩たち遅いしー」

 

 

鈴鹿がががががが。

なんでここに?

 

 

「今回の合宿には、大連寺鈴鹿くんも参加することになったんや。みんな、仲良くしたってや」

 

 

大友……テメェ余計なことを。

 

 

「仲良くしてくださいねー、せーんぱーい」

 

 

せーんぱーいのトーンが下がったぞ。

ちょっと引くぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――簡易式神特訓、其の一、カレー作り。

 

 

現在進行で俺は簡易式を操って一人でカレーを作っている。

なんで一人でだって?

だってみんなが失敗したら大変じゃないか。

せっかくの合宿でおいしいカレーが食えないなんて……

なんかかわいそうじゃね?

 

ちなみに普通は一人一体だが、俺は三体操っている。

火加減、調理そして混ぜる。

火加減は状況によって強さを変える。

調理は材料を洗って切る。

混ぜるは鍋に材料を入れてその後混ぜて完成させる。

 

うし、始めるか。

手始めに野菜を切らせる。

それと同時に空いている式神で火の準備を始める。

薪を割り、火は……摩擦熱だな。

 

 

「す、すごいね刃くん……一人で三体も操るなんて」

「それにすごい正確だね」

 

 

声のする方を向くと女子が二人いた。

クラスのやつだな。

 

 

「まぁな、簡易式は便利だからな。案外日常生活で使ううちになれてな。こうなった」

「「へ、へぇ……」」

 

 

二人とも顔が引きつった。

変なこと言ったか?

言ってなくね?

 

 

「あっちちちち!!」

 

 

夏目が何か騒いでいる。

あぁ式神とリンクしてたからか。

俺はそんなことはない。

確かにリンクされているが、感覚の共有は絶対にしない。

したら致命傷を受けた時とかが大変だからな。

 

よし、そろそろこっちも完成だろう。

煮込み終わったしな。

 

俺の作ったカレーはまだ隠しておこう。

とりあえず俺は天馬の作ったカレーをもらった。

 

 

「いただきます」

 

 

そして一口。

こ、これは……

 

 

「食べられなくはないよね?」

 

 

天馬が一口食べて言う。

確かに食べられなくはない。

が、好んで食べる味ではない。

緊急事態なら食べてもいいか。

その程度の味だった。

 

 

「夏目くんに倉橋さん、それに大連寺さんのはすごいね。料理は下手だったけど、式神の操作は完璧だったもん。特に夏目くんは、本当に式神に乗り移っているみたいだったね。やけどしたときも、完全にリンクしてたでしょ?ほとんどまるごと意識を簡易式に集中させるなんて、あれってすごいことなんだよ」

「へぇ……」

 

 

でも料理はダメだったんだな。

まずかったんだな。

 

 

「はい、ダーリン♪」

「なんだ?」

 

 

鈴鹿が何か持ってきた。

 

 

「決まってるじゃなーい。あたしの作ったカレー、ダーリンに食べてもらいたくって♪」

 

 

この瞬間だった。

天馬は自分の分のカレーを持ってサムズアップして去っていった。

おい。

 

 

「つかよ、これカレー?」

「ごたごた言ってるとアツアツのカレー、その口に流し込んじゃうぞ☆」

 

 

仕方ないので俺は鈴鹿の持ってきたカレー(?)を口に入れる。

 

 

「にっが……まぁマシか」

「なんだこれは……カレー?そんなわけない。とりあえず言わせてくれ、まずいと」

 

 

これは人間の食べるものではない。

 

横から手が伸びてきた。

冬児?

 

 

「これカレーなのか?」

「はぁ?遅刻ぼっこいてるヘアバンドが何偉そうなこと言ってるわけ?」

「おまえこんなところまで刃追っかけまわしてんのか?」

「バカ言ってるんじゃないわよ!!アンタのとこの担任に頭下げられてわざわざきてやってんの!!」

 

 

大友……テメェ、マジで一回シメる。

 

 

「刃、おまえ別に作ってあるんだろ?」

 

 

冬児がニヤっとしながら言ってくる。

ハハハ、バレてたか。

 

 

「仕方ない、出してやろう。俺が結構本気で作ったカレーをな!!」

 

 

そう言いながら俺は鍋の方へ向かう。

そしてご飯とカレーをよそる。

これを三つ作る。

俺と冬児と鈴鹿の分だ。

 

そしてテーブルに戻る。

 

 

「さぁ括目せよ!!これが本当のカレーというものだ!!」

 

 

そう言って二人の前に皿を置く。

二人は一口食べる。

そして……

 

 

「お、おいしい!!何このカレー!?おいしすぎるんだけど!!」

「あぁ、さすが刃だ」

「ハッハッハ、おかわりもあるからな!!」

 

 

この声に反応したのか、夏目が寄ってきた。

 

 

「なんだ?夏目も食べるか?」

「う、うん。いいかな?」

「もちろんだ!!」

 

 

俺はカレーをよそって夏目に渡す。

そして夏目も一口。

 

 

「お、おいしい……おいしいよ!!」

 

 

夏目のこの一言がきっかけになった。

 

 

「なんだなんだ?」

「そんなにおいしいの?」

「私にも頂戴!!」

 

 

などとじゃんじゃん俺のカレーを食べに来た。

そして必ず言ってくれるのがこれだ。

 

 

「おいしい!!」

 

 

うれしいねぇ……

作った人間としてこれほどうれしい言葉は知らないね。

 

その後は、使ったものを簡易式で洗った。

これでカレー作りはお終いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――林。

 

 

「双角会?」

 

 

鈴鹿からこの名がでた。

俺は知らない。

無論、他の人もそうだった。

 

 

「二年前のあたしの父親を始め、過激な夜光信者で組織されている秘密結社のことよ」

 

 

この一言でみんなが顔を見合わせる。

ちなみにこの場には、俺、夏目、冬児、鈴鹿、天馬、京子がいる。

 

 

「夏目に接触してきてるのも、その連中なんだそうだ」

「しかも双角会の構成員は陰陽庁の中に潜り込んでいるらしいって噂は昔からあるらしいの。あたしの父親とその部下の六人部ってのがそうだったし。それと、Dこと蘆屋道満」

「あぁ、あのクソジジイな……」

「呪捜部はDも双角会と繋がりがあると思ってる」

 

 

なかなかこの世界も面倒なことになっているな。

まだまだ深くは知らないがな。

 

 

「あの、大連寺さん」

「何よ」

 

 

夏目が話しかける。

 

 

「正直なことを教えてください。僕は本当に夜光の生まれ変わりなんですか?」

「夏目……」

 

 

それは違う。

違うが、そうは言えなかった。

俺が言ったらしょうがないと思ったからだ。

 

 

「あたしは今でもそうだと思っている。けど断言はできない。今ではあたしが夜光研究の第一人者みたいに言われちゃってるけど、そもそも興味を持った発端―――

 

 

俺はそっから先が頭に入ってこなかった。

そう、考えていたからだ。

夜光について。

俺は夏目は夜光の生まれ変わりではないと断言できる。

なぜか?

そんなもの『答えを出す程度の能力』でいくらでもわかる。

いつ創ったかって?

そんなの今だ。

能力創造なんてもう一瞬でできる。

 

この能力に調べてみた。

 

夜光の転生者は誰だ?

 

と。

答えはこうだった。

俺。

神浄刃。

あれぇ?

マジか……

そりゃ見つからないよな。

同時に納得することもあった。

ガキの時の封印についてだ。

なぜか知らんけど身に覚えのない封印。

それも結構強力なものが俺の体に仕掛けられていた。

まぁ、そんなもん神様パワーで簡単に解けるんだけど。

ふんふん……どうしよ。

まぁ秘密にしておくしかないよな。

 

 

「彼はレポートの中で、あの烏羽を使えば夜光の転生かどうかは判明するって唱えていたの」

 

 

鈴鹿のこの一言でさらにみんながいきを飲む。

烏羽、夜光の愛用したコート。

それあったら俺もバレちゃうね。

マズイね。

 

 

「今は陰陽庁に保管されてるはずだし、なんなら、倉橋のつてを頼って試してみれば?」

 

 

この間、夏目はずっとうつむきっぱなしだ。

どう声をかけていいのか俺にもわからない。

 

 

「そこで俺は考えたんだが……今後、緊急時には大連寺に力を貸してもらおうと思う。ま、その見返りと言っちゃなんだが……夏目、おまえ少しは大連寺の実験に付き合うとかできないか?」

 

 

この一言でまたうつむく。

 

 

「おい……ふざけんな冬児。そんなことは俺がさせねぇ。絶対にだ」

「刃、俺は夏目に訊いてんだ」

 

 

この野郎……

 

 

「僕は―――」

 

 

夏目が言いかけたその時だった。

 

 

「いやよ」

 

 

鈴鹿が声を言った。

 

 

「こっちからお断り」

「おまえ、さっきは―――」

「冗談……アンタらとなれ合うってのは毛頭ないっての」

 

 

それだけ言って去っていった。

まぁもともと鈴鹿はいなくても大丈夫だ。

正直に言うと、俺一人でもだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――夜。

 

 

「眠れないのか?」

「うん……ちょっと考え事」

 

 

夏目がこっちに寝返りをうつ。

それと同時に俺と目が合う。

そして顔が赤くなる。

 

 

「なぁ、生まれ変わりの件なんだけどさ」

「うん……」

「俺が断言するよ。おまえは夜光の生まれ変わりじゃないと」

「え?」

 

 

目をパチクリさせて言う。

 

 

「俺のことは前に話しただろ?」

「うん……転生者だって……」

「そうだ。だからな、いろいろな能力も使えるんだ。例えば『答えを出す程度の能力』とかな」

「あ……」

 

 

ここまで言えば夏目も気づくだろう。

でもそれと同時に、なら本当の夜光の生まれ変わりもわかるんじゃないか?

と思われてしまう。

まぁそこは適当にごまかそう。

 

 

「わかってくれたか?」

「うん……でも―――」

「そこから先はまだ知るべきではない」

 

 

俺は夏目の唇に人差し指を添えながら言う。

 

 

「ぼ、僕お風呂入ってくるね」

「そうか……なら俺も入ろっかな~」

「い、いいよ。一人で大丈夫だから///」

 

 

恥ずかしそうに言う。

かわいいやつめ。

 

俺は意識を闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――翌日、林。

 

 

「話ってなんだ?」

 

 

京子に呼び出された。

何だってんだ?

 

 

「あんた、わかってないみたいだけど……鈴鹿ちゃんに協力を仰ぐ場合、鍵は刃。あんたよ」

「わかってるよ……でもな、そこまでして必要な協力じゃねぇ」

「はぁ?いくらあんたが強いからって十二神将よりは「俺は去年の夏、あいつに勝ってる」…はぁ?」

 

 

何かいもはぁはぁ大変だな。

 

 

「まぁそれは置いておいて……」

「置いておくのか」

「あんたさぁ、鈴鹿ちゃんのことどう思ってんの?」

 

 

う~ん……精々妹だな。

確かにかわいいんだけどさ……あぁ、かわいいは正義だったな。

 

 

「あのねぇ……刃気づいてる?」

「ん?」

「あの子……あんたのこと―――」

 

 

その時だった。

 

 

「まてこの乳女ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

鈴鹿のご登場だ。

 

 

「何勝手に口走ってんだよてめぇ。このくそ野郎は好きなやつがいるんだって!!」

 

 

俺を指さして言ってくる。

よし、ここは正直に話そう。

 

 

「うん、いるねぇ。ざっと二十人ぐらい」

「「え?」」

 

 

鈴鹿はおろか、京子までも驚いているようだ。

 

 

「え?去年のあの式神だけじゃないの!?」

「ん、まぁね。この世界にはいないけど、いつでも……いや、一ヶ月に一回、一人だけ会えるか。全員いっぺんに会えるのは年に一度だけだけど」

「「え……?」」

 

 

今度は驚きの中に戸惑いが混じっていた。

 

 

「この世界にはいない。俺の一番初めに結婚した相手は。でも生きている。それだけでいい。俺はそうやって―――まぁここから先は話せない」

「なによそれ……あんた一体―――」

 

 

そこから先は言うのをやめたようだ。

いや、言えないが正しいか。

だって泣いているんだもん。

 

 

「一体、ね……あえて言うなら、ただ万能なだけの人外だ」

「人外って……もしかしてあんたも生成りなの?」

 

 

神が憑いているって言えばいいのか?

確かにこの肉体はこの世界にもともとあったもので、そこに俺が転生したから……わからん。

 

 

「それはありえない。それだけは断言しよう」

「そう……」

 

京子はどこか納得していないようだ。

 

 

「わかった……」

 

 

鈴鹿が口を開けた。

 

 

「ヘアバンドが言ってた協力ってやつ」

 

 

俺と京子は顔を見合わせる。

マジか……

まぁありがたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――帰り、バス。

 

 

帰りのバスはみんな寝ていた。

俺はヘッドホンで音楽を聴く。

 

夏目が俺の肩に頭を乗せてきた。

そう言えばこういう普通のことが今までの世界ではできなかったな。

どの世界でも戦い闘いの日々だったからな。

たまにある休日も様々な理由でなくなっていったし。

 

ふと、夏目のリボンが解けていることに気が付く

俺は夏目を起こさないようにポニーテールにした。

いやぁ、起こさないようには難しかったぜ。

 

こんなひと時も悪くはないな。

 

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