東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――祓魔局、目黒支局。
「喜べ、スーパーVIP待遇だ。なんせ俺がお前らの護衛につくんだからなぁ」
「あ、結構です。どうぞ、お帰りください」
「テメェ、ぶち殺されてぇのか!!」
まったくうるさいチンピラだ。
だいたい俺より弱いやつに護衛が務まると?
否、務まらない。
「刃、そこまでにしときなよ。講義が始まるよ」
しょうがにないな。
夏目にそう言われちゃったら従うしかない。
なんせ俺のゴシュジンサマだし。
「シェイバ、見てろ」
シェイバ?
あぁ、隣にいつオレンジ髪のやつか。
そいつは短くうなずく。
なんだ?
チンピラは何をする気だ?
……シェイバが俺のことを睨んできてるんだけど。
俺、何かした?
―――中庭。
「大友先生が行ってたとうり、今度の捜査はかなりの大がかりのようだね」
「それに……アイツがな……」
夏目に冬児が返す。
アイツ……シェイバのことだ。
「シェイバって呼ばれてたよね?」
座ってじっとこっちを見ている。
正直言ってキモい。
「さっき、鈴鹿ちゃんにメールで聞いてみたわ。十二神将だし、何か知ってるかも」
その時、京子のスマホが鳴る。
京子が内容を読み上げる。
「バカ刃に言っとけ!!シェイバは陰陽庁が鏡に禁止していたヤバい式神って聞いてるよ!!見かけがどうでも絶対に気を抜くな!!」
沈黙がこの場を支配する。
見かけ、ねぇ……
……いかにも軟弱そうだ。
ただ……目がイってる。
「おっと……」
「何やってるんだよ……」
俺は手に持っていた箸を落としてしまった。
「しゃーねぇ、新しいの持ってくる」
俺はそう言って、食堂へ向かった。
―――食堂。
「よぉ……」
げぇ……なんでチンピラがここに?
「話があんだ。ちょっとこい」
テーブルに乗せた足でテーブルを叩き、命令してくる。
「なんの用だ?」
「あぁ?それが護衛についてくださった年長者に対する態度か?」
「何言ってんだガキが。俺のが年上だ」
「はぁ?テメェ歳いくつだ?」
「5万1150歳」
「あ゛?ザケてんのかテメェ?」
えー……
俺は真面目に答えてあげたんだけどな……
折角の善意を……
「ふざけてない。本当のことを言ったまでだ。ちなみに俺の知り合いには三兆歳オーバーの人外の女の子もいるぞ☆地球が氷河期のころから存在したとか」
「……ケッ!!そのことはもういい。大友の件で訊きたいことがある」
大友のことで?
何を?
何を知りたいんだ?
「Dを撃退したのは小暮ってことになってるが……やつはぎりぎり間に合ってないはずだ。時間的にな」
いいえ、余裕で間に合ってません。
「つまりそれまでDを足止めしたやつがいることになる……まず確認したい。大友は生きているのか?」
「生きてるよ」
「なんだ?そっけねぇ答えだなぁ。命の恩人に「まずその認識から改めろ」…あぁ?」
「Dを撃退したのは俺だ」
「……ザケてんのか?」
またその返しか……
レパートリーの少ないやつだな……
「ふざけてない。実際にあのジジイを殺ったのは俺だ」
「……そうか。とりあえずダメージはデカかったわけだな?」
「あぁ……俺とジジイの戦闘の余波に巻き込まれてな」
大友も結界を張っていたようだが……
意味をなしていなかったか。
「聞かせてくれねぇか?」
「あぁ?」
「おまえとDの呪術戦の内容。俺の気持ちわかんだろ?だから話せ、もったいぶらずにな」
……どうしよ。
忍術については話さないほうがいいか?
でもそれは不可能だ。
戦闘は忍術が基本だったからな。
しかたない……仮に忍術が理解されてもこの世界の人間には俺が教えない限り忍術は使えないだろう。
「忍術を使った」
「忍術だと?」
「そうだ。俺は一切呪術を使わなかった」
「んなバカな……それに忍術だと?忍者が使うアレか?」
「そうだ」
それからもしばらく続く。
使った系統。
どのような戦法でいったのか。
最後はどういう仕留め方だったのか。
「なんだそりゃ……そんなデタラメなことがあってたまるか!!天候を簡単な術一つで変え、それを利用して強力な術で一気に仕留める……しかもたいしてエネルギーを食わない……」
「呪術ならものすごく時間がかかるものも、忍術なら一定量の印を結ぶことで可能にする。これが一番の呪術と忍術との違いだな。忍術のが便利だ。なんせ呪術みたいに小難しいことを一切考えなくていいんだからな」
ここまで話すと、チンピラが黙り込む。
顎に手を当てて考え込む。
フフフ、悩め悩め。
「Dの呪術に関してはあまり気にしてなかったからな……まったくと言っていいほどわからないが……まったく脅威を感じなかった。あれなら俺の娘のがよっぽど怖い」
「……おまえの娘どんだけだよ」
あれー?
口調が変わってますよー?
「まぁそれはどうでもいいことか。で?他に訊きたいことは?」
「そうだな……おまえ、何年でそこまで至った?へたすりゃ十二神将全員でかかっても勝てない。だから聞きてぇ……何年かかった?」
……まさかこんなことを訊かれるとは思わなかったぜ。
でもまぁいいだろ。
このくらい答えても。
「俺のこの力は年月をかけて進化したものもあるが……基礎は百年だ。百年かかった」
「そうか……」
納得した、そんな顔をしている。
「悪かったな、いろいろ聞いちまって」
「んにゃ、別に」
チンピラは立ち上がる。
そして出口の前で立ち止まる。
「なぁ、刃。おまえ、そんなに実力があるなら祓魔官でも目指せよ。おまえがこっちに来れば面白くなりそうだからな」
「気が向いたならな……」
「そうか」
今度こそ、出て行った。
はぁ……今の話し合いで少しだけ評価が上がったぞ。
―――中庭。
「常務が終わっても双角会狩りが終わってるとは限らない……なるべく一緒にいたほうがいいと思うぞ。鈴鹿は冬児と天馬が探しに行っている」
その時だった。
「何をしている」
声をかけてきたのは俺にボロクソにやられたプロの祓魔官(笑)だった。
「ここで何をしている。おまえを慕う者たちが死力を尽くして戦っているというのに」
「何の話ですか?」
プロが夏目に言う。
もしかしてコイツ!?
「助けに行ってはやらないのか?おまえにとってはバカな信者なんて矮小くだらない。取るに足らない存在なのか?教えくれ、北辰王」
その瞬間、夏目と京子の体がこわばった。