東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――中庭。
「あなたは……」
「双角会か?」
俺は訊く。
夏目も京子は警戒をしている。
「少なくとも今はもう違う。ただ、やつらの気持ちはわからんでもない。土御門夜光にすがらざる得ない気持ちは。この春、霊祭テロを起こした六人部千尋と新宿支局で呪捜部と戦っている牧原義隆は陰陽庁の同期でな。一晩中、夜光について語ったものだ」
「江藤さん……」
夏目もドン引きだ。
「迷惑な話だよな。だが……あんたに夢を見た者がいること、知っておいてほしい。せめてもの手向けに、こいつに呪力をそそいでやってくれないか?」
そうやって取り出したのは赤と黒の御払い棒的ななにか。
俺にもわからん。
しばらく沈黙が続く。
先に口を開けたのは江藤だった。
「すまない。邪魔をしたな……」
そして、俺たちの前から離れた時だった。
江藤はシェイバに斬られていた。
シェイバは刀についた血を舌でペロリとなめとる。
「殺さないほうが良かったかな?」
呟くシェイバ。
「伶路が悪いんだ。全然遊ばせてくれないから。で、何これ?」
そんなの俺が知りたい。
とりあえず、夏目と京子を下がらせる。
周りには人が集まってきた。
江藤が棒に手を伸ばす。
「えい」
その手をシェイバが刀で貫く。
その瞬間、瘴気があふれ出てきた。
「喼急如律令!!」
夏目が式神を投げて結界を張る。
「刃様!!瘴気はどうやら地下にももぐっているようです!!このままでは霊脈が!!」
いつの間にか出てきてたコンが言う。
その間にも周りに地割れが広がる。
そして瘴気は四方に散り、霊災となる。
「フェーズ3ってとこか?」
面倒なことを……
「出でよ、北斗!!」
夏目が北斗を呼び出す。
そして霊災の一部を止める。
「倉橋さん!!護法式を!!」
「わ、わかったわ。白桜、黒楓!!」
京子も一部を止めにかかる。
うし、俺もやるか。
『写輪眼』を開眼させる。
そして印を素早く結ぶ。
「千鳥光剣!!」
俺も一部を斬り刻む。
だが、すぐに次が来る。
夏目が俺たちの前に出る。
「我の周りを囲め、這う者の足を妨げよ!!喼急如律令!!」
俺たちの周りに光の柱ができる。
だがそれは一撃で壊れる。
「だめだ、時間稼ぎにもならない」
だがそれもここまでだった。
「だめだよぉ……遊ぶなら僕が先でしょ!!」
シェイバが仕留めたからだ。
「こいつ……霊災になりかけてるな」
「北斗!!」
夏目が北斗に指示を出して、シェイバを仕留めさせる。
だが、シェイバはそれを片腕で受け流す。
「ハハッ!!こりゃすごいやぁ!!」
こいつ……戦闘狂か?
このままではらちが明かないな……
仕方ない……一気にいくか。
その考えもすぐに取り消される。
「そこの塾生!!早く逃げなさい!!」
祓魔官が俺たちに叫ぶ。
ここは甘えちゃうか。
「行くぞ!!」
俺たちは食堂に向かう。
―――食堂。
「とりあえず、冬児たちと合流するぞ」
パリィン!!
窓ガラスが割れる。
そこから出てきたのはシェイバ。
「まってぇ……まってよぉ」
ヤ、ヤンデレ!?
もー怒ったぞ!!
「ぶち殺してやる……朱蓮、白」
『お、応』『は、はい』
龍刀を二振り出現させる。
そして思いっきり踏み込む。
「うわっ!!」「きゃっ!!」
そのせいで床にクレーターができる。
その勢いをのままシェイバに突っ込む。
そのまま壁まで弾き飛ばす。
だがシェイバはすぐに反撃をしてきた。
「たのしいなぁ!!」
甘い!!
動きが単調だ!!
シェイバの刀を弾く。
そして十文字に斬りこむ。
そのタイミングでちょうど北斗が乱入してくる。
北斗はシェイバを口でくわえ振り回す。
だがシェイバは腕を犠牲にして離脱する。
そして―――
「北斗!!」
北斗がシェイバの刀に貫かれる。
北斗がラグる。
「コレが龍かぁ。この刀、髭斬って言うんだ。どうだい?すごいだろ?」
そして北斗が消える……
それと同時に夏目が膝をつく。
「はぁはぁはぁ……」
どうやら自分で消したようだ。
「ちょっと……なんで龍消しちゃうのさ?出してよ!!龍、龍、龍!!」
「うるせぇんだよ……」
俺は怒ったぞ!!ふrrrrrrrrrrざぁぁぁぁぁ!!
「京子、おまえは夏目と冬児と天馬と逃げろ。ここは俺が殺る」
シェイバを吹っ飛ばしながら言う。
「え……で、でも……私」
チィ!!
しゃーない!!
「夏目!!しっかり掴まってろよ!!」
夏目をお姫様抱っこして走る。
シェイバはゆっくり俺たちを追いかけてくる。
―――???。
とりあえず、建物のなかに入る。
階段をあがり、上の階を目指す。
途中、窓からシェイバの足止めをする冬児を鈴鹿が見えた。
すまねぇ……
扉を閉めて、結界を張る。
「とりあえz「刃か?」…」
「土御門くん!!」
奥からか……
そこからぞろぞろと陰陽塾の生徒が出てくる。
「まだ霊災は祓魔されてないの!?」
女の子が叫ぶ。
「一体どうなってんだよ!?」
今度は男だ。
それと同時に結界が破られていく。
「みんな、隠れろ!!」
みんなはしたがって隠れる。
そして扉が斬り飛びされる。
そこから赤く目を光らせたシェイバがふらふらとやってくる。
「あの龍……君が死にかけたら出てくるよね!!」
俺は夏目を突き飛ばす。
そして迫ってきた刀を受け止め―――きれずに吹き飛ばされる。
そして衝撃破が夏目……に?
「夏目くん!!」
京子が叫ぶ。
「なんだよ、形代も持ってないの?」
シェイバは夏目に言う。
「腕とか足とか斬り飛ばしたら、龍出してくれる?」
斬り飛ばす?
何を?
夏目の手と足をか?
「龍出せよ、出せよ。ほら。なんだよ、怖がってばっか。だから男の格好をして周りをだましてたんだ。ずるい奴」
この一言で、夏目は涙を流した。
「ずる、嘘つき」
泣かせたな……
夏目を泣かせたな!!」
俺は無言で、気配を『絶』で消してシェイバに近づく。
そして思いっきり蹴り飛ばす。
「夏目を泣かせた責任、とってもらうぜ」
俺は静かに怒る。
そして唱える。
二天龍の覇の呪文を。
「我、目覚めるは」
俺の周りが陥没する。
「覇の理を体現せし、二天龍なり」
辺りには旋風が巻き起こる。
「無限を喰らい、夢幻を掌握す」
龍の波導が場を支配する。
「我、天の龍の覇王と成りて」
やがてそれは形を創り始める。
「汝を天龍の極地へと誘おう」
詠唱が終わる。
『Juggernaut Ultimate Drive!!!!!!!!!!!』
俺を漆黒の鎧が包み上げる。
すぐに兜を取る。
うし、視界良好。
羽織るものを創造し、夏目にかける。
「まってろ、今すぐ片をつける」
「うん」
シェイバに近づく。
それは一歩。
だが逸歩だ。
シェイバをさらに蹴り飛ばし、外に出す。
「冬児……見てろ。これが俺の怒ったときの力だ」
「お、おう……」
若干引いてるな。
俺はかまわずシェイバを蹴り飛ばして開いた穴から出る。
ガアァァァァァァァ
霊災か……
「霊災ごときが俺にケンカ売ってんじゃねぇぞ!!」
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!!』
ものすごい勢いで倍化する。
そして拳で一撃。
パアァァァン!!
一撃で爆散する。
ハッ!!
「さて、シェイバ。おまえには地獄を見ることすらさせないぞ!!」
『BBBBBBBBBBBBBBBBBBBoost!!!!!』
『DDDDDDDDDDDDDDDDDDDivide!!!!!』
シェイバの霊力を一気に半減して吸収する。
そして倍化する。
その霊力を龍刀に込める。
「あばよ」
十文字に振りぬく。
すると、霊力がその痕をなぞるように飛んでいく。
それはシェイバに向かう。
「ははは!!たのしいなぁ」
シェイバは向かい撃つ。
結果は分りきっている。
シェイバは木端微塵だ。
まだ怒りは収まらねぁが仕方ねぇ。
とりあえず―――
「終わったぜ!!」
夏目に向かってサムズアップをする。
あ、そういえば夏目が女だってことバレちゃったよな……
『写輪眼』でやっちまうか?
でも、いずれバレることだしな……
そんなことを考えていると、みんなが集まってきた。
もちろん夏目もだ。
だが表情は暗い。
それに下を向いている。
「はぁ……さっきも言ったけど終わったぜ」
「あ、あぁ。それよりその鎧……」
「あ、よっとこれでいいな」
鎧を消す。
そしてみんなに向かい合う。
「んー……訊きたいことがありそうだからある程度こっちから言うわ。まず、夏目はさっきみんなもわかったように女だ。今まで男のふりをしてきたのは土御門家のしきたりだ。そんでもって俺の嫁だ」
「「「「嫁ぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」」」」」
この時ツッコんできたのは全員男だ。
「そう、嫁、奥さんだ。んで、次はさっきの鎧だ。あれはおれの二天龍の式神の覇を纏った。ただそれだけのことだ」
そう言うとみんなは顔を見合わせる。
まだ理解で仕切っていないようだ。。
その中で、一歩前に出てきたやつがいた。
京子だ。
最初は笑っていた。
でも作り笑いだ。
「倉橋さん……」
夏目がなんとも言えない顔で呼びかける。
それを皮切りに京子の表情が暗くなる。
「嘘つき……」
「おい……」
頬には涙が滴っていた。
「嘘つき!!」
今度は力強く言った。
言い切ったのだ。
俺は静かに『写輪眼』を開眼する。
そしてみんなに幻術をかけて帰らせる。
冬児と天馬以外だけど。
二人には通常の眼に戻してアイコンタクトをする。
先に帰れ。
それがわかったのか、二人は帰っていった。
「夏目……」
「やいばぁ……」
「今は泣け。胸ぐらい、いくらでも貸してやる」
「うん……うわあぁぁぁぁぁぁ!!」
叫ぶ。
泣き叫ぶ。
俺は黙って頭を撫でることしかしない。
「ごめんね……ありがと」
「あぁ……気にするな。俺はおまえの男だからな」
ニカッと笑って答える。
それに対して夏目は顔を赤くするだけだった。
そのまま俺たちは宿舎へと手をつないで、ゆっくり、ゆっくりと帰っていった。