東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――廊下。
「親父さんとはまだ連絡つかずか」
「あぁ……」
連絡が取れない。
こまったものだ。
能力を創れば一発だが、そんなことの為に創るのはなぁ……
「夏目!!刃!!」
むむむ?
この声は―――
「多斬子」
「やぁ!!また会えてうれしいよ!!」
「おまえ、どうしてここに?」
「今日は一日、見学に来たんだ」
見学?
何をだ?
何を見学しに来た?
―――教室。
「間違いないのか?」
隣に座っている冬児が話かけてくる。
多斬子は授業を一番前の席で受けている。
「あぁ……あいつが前に話していた相馬多斬子だ」
多斬子は後ろを向き、手を振ってくる。
手を振って返す。
「火事といい、派手な日だな」
確かに……今日一日でいろいろなことが起こりすぎている。
―――食堂。
「うわぁ!!学食ってこんなに種類があるんだ!!」
俺と夏江と冬児は多斬子を案内していた。
多斬子はショーケースに見入ってる。
「こういう場所、初めてなの?」
夏目が訊く。
「うん」
反応でわかりますけどね。
「じゃあ、次は呪練場にでも行くか」
―――移動中。
「おまえ、楽しそうだな」
隣で歩いている多斬子に言う。
ずっとニコニコしている。
「うん、こうしてみんなと一緒に歩くのが夢だったんだ」
「夢?」
夏目が訊き返す。
俺も訊き返しそうになった。
これが夢か……
「僕はこれまで、ずっと一人でで呪術の勉強をしてきたからね」
正真正銘の箱入り娘、姫様ってとこか?
この世界にもいたんだな。
「ここの塾生だってのは、嘘、ってことか?」
それだ、それが一番聞きたかったことだ。
「嘘じゃないよー。確かにまだ籍はないけどね」
「どういうことだ?」
思わず訊きかえしてしまった。
籍がない。
なら塾生ではないだろ。
「それは……まだないしょ」
一瞬表情が暗くなった。
何だ?
何を隠している?
「それより、倉橋長の娘さんは?」
「あー……」
「こいつら今ケンカ中でな」
なんで言っちまうかな冬児くん。
「ごめん……」
ほらー、いらない気を使わせちゃったじゃん。
「あ、でもだったら早く仲直りした方がいい。ちゃんと話せばわかってくれるよ」
「ちゃんと話せば……」
夏目?
気にしないでおこう。
「夏目くん」
この声は……おっさん教師。
「少し、いいかな?陰陽庁が事情を聴きたいそうだ」
「わかりました」
あやしい……
「陰陽庁?」
「……あぁ、家事のことだろう」
「火事?」
俺は火事のことを簡潔に話す。
「土御門の本家が、消失?」
後ろに下がりながら信じられないと言った表情だな。
「じゃあ、手に入れたって……本当なのか!?」
急に叫びだした。
誰か……いないな。
一体なんだったんだ?
―――呪練場。
「夏目」
「何か分かったか?」
夏目が来たので、即座に質問する。
夏目は首を横に振る。
「逆に事情を知らないかって……」
「陰陽庁も知らないのか……」
冬児の言う通りだ。
陰陽庁が知らない。
まず、これがおかしい。
本気で捜せばもう少しどうにかなるはずだ。
ということは、グルか?
「僕が説明するよ」
口を開いたのは多斬子だった。
「僕は君に可能な限り隠し事はしたくない。まず、泰純氏は無事だ。行方は分からないが、屋敷に火を放ったのは彼なんだ。原因は陰陽庁の強引な行動にもあったみたいだけど。もうしわけない」
そう言って頭を下げる多斬子。
「要約するとこうか?陰陽庁が土御門家を攻撃した。火事はその結果だと」
なんだそりゃ?
陰陽庁……つぶしちゃうか?
「本来、土御門と対立するなんてあってはならない。ただ……泰純氏は責任を放棄してきた人だ。それをもめ事を生んだとすれば仕方なかったとしか言いようがない」
「おい、さっきから何ふざけたことぬかしてんんだ?」
俺は多斬子に近づいていく。
なんだ?
気配を感じる。
「下がっていろ」
多斬子は何かに命令した。
「夏目、僕は土御門夜光と個人的に……いや、血筋として因縁があるものだ。僕が君のことをずっと気にかけていたのは君が夜光の生まれ変わりであるからでもあるんだ」
「君はまさか夜光信者n「違う!!」…」
ますますわかんねぇ……
「夏目が知っている夜光信者とは違うんだ。どうか……どうか信じてほしい!!」
この状況で信じろと?
何甘いこと抜かしてんだ?
「おまえさ、何がしたいの?」
「……僕は、みんなと仲良くなりたい。本当に……それだけなんだ……僕には君たちみたいに親しく話せる友達がいなかった。人に何か伝えるのが下手だ……きっと無礼だったり、不作法だったものもあると思う。でも呪術でなら言葉にできないことも伝えられる。だから夏目……どうか一度、僕と手合せしてほしい」
……戦闘狂ですか?
なんで火災のことを話してたのに手合せに?
意味わからねぇ……
なんか夏目は承諾してるし。
俺たちは下に降りる。
目の前では夏目と多斬子が向き合っている。
手合せが始めると、多斬子は水の呪術を、夏目はそれを土の呪術で防ぐ。
「五行結びて、霊脈を絶つ!!喼急如律令!!」
先に場を変えたのは多斬子だ。
地面び五芒星が浮かび上がった。
「霊脈を絶った!?」
「鈴鹿に天馬?」
「土御門の龍を封じたわけね」
なるほど……北斗対策ね。
「式神生成、喼急如律令!!」
多斬子が手に乗せた大量の式神を鳥にして飛ばす。
「式神生成、喼急如律令!!」
夏目も負けじと鳥を出す。
だが色が違う。
多斬子は白なのに対して、夏目は黒だ。
まるで烏だな。
「すごい……やっぱり夏目くんは天才だね」
天馬が言う。
本当にそうなのかね。
裏では努力をしていそうだ。
まぁ努力の天才と言ったところか?
「何言ってんだ。そんな言葉で片付けてやるな。俺たちは知っているだろ……あいつはだれよりも努力をしていることを」
うむ、俺が一番知っている。
「どうした夏目!!土御門の技、夜光の技はそんなものじゃないはずだ!!」
多斬子が吠える。
それに対して夏目は―――
「僕は土御門夏目だ。夜光など知らない!!知るものか!!」
竜巻が巻き起こる。それによって鳥の式神は全て紙に戻る。
「君も、己の運命から逃げるつもりか?一、二、三、―――」
なんだ?
何かヤバそうだ。
「何か……ヤバい感じじゃない?」
隣にいる鈴鹿もそう言う。
『万華鏡写輪眼』を開眼する。
!?
目尻に刻まれた五芒星が反応した!?
「四、五、六、七―――」
痛ぇ……
俺は頭に手を当てる。
「刃?」
「何!?この霊気の乱れ!!」
俺は痛覚を遮断する。
「八、九……十」
このままだとヤバいな。
主に俺が。
仕方ない。
近くに大友はいるが関係ない。
「いい加減にしてくれないか?」
俺は須佐能乎を展開しながら多斬子に言う。
そして―――
「さっきからさ、すごい頭痛がするんだよ。その分だ……喰らっとけ。八坂ノ勾玉」
繋がった3つの勾玉を手裏剣のように多斬子に飛ばす。
そして着弾すると、頭痛が消える。
痛覚遮断してたの痛いなんてな……ありえない。
「刃くんやりすぎとちゃうか?しょうもないケンカはあかんでぇ」
「大友、俺は被害者だ。多斬子がな」
大友は多斬子の方を向く。
「君が相馬斬子くんか?大した腕前やなぁ。おまけに、随分おっかない式神連れ取るやないか」
多斬子の前に人が現れる。
まぁ『万華鏡写輪眼』を開眼した時にはもう見えてたけどね。
式神は多斬子の後ろに行く。
「刃様!!」
コンが出てきた。
「ん?あぁ、大丈夫だ。かなりの痛さだったけど……あの時に比べるとな」
あの時とは一度『神殺し』の能力を付与されたナイフで心臓を刺された時だ。
いやぁ、懐かしい。
なんせ『箱庭』での出来事だからな。
大友と多斬子は何かを話しているようだ。
多斬子はお辞儀をして去っていったが……何を話していたんだ?
「先生!!もう大丈夫なんですか?」
「もう髪いっそ染めたらどうですか?」
「てか、さぼりすぎ」
ボロクソに言われてる。
ちょっとだけ同情しよう。
「すまんすまん、堪忍やでぇ」
じゃがみこむ大友。
「いつからや?」
俺に訊いてんのか?
「いつから……しいて言うなら目黒のときか?でもコレには頼ってないし、勝手に作動するしな……」
「えらい活躍だって訊いたけどこの呪文」
「これか?コレは俺を見鬼にするために夏目がな」
「その呪術が原因なんですか?」
夏目が心配そうに大友に訊く。
「きっかけはコレかもしれん。でも……今の君の状態は不自然ゆうか、妙に人工的な気がすんやなぁ。また、こっそり封印解除してやるさかい、調べたってくれへんかな?」
「なんであたしが」
プイッとそっぽを向く鈴鹿。
「ついでに、刃くんの体、好きなようにいじってええでぇ」
「なっ!?」
鈴鹿とコンが真っ赤になる。
「ば、ば、ば、ばかじゃにゃいの!!」
かわいいねぇ。
「そう言えば、京子くんは?」
「こいつら仲たがいしているんです。結構深刻に」
「原因はなんやねん」
「夏目の正体がバレたからですよ」
あっさり言ったね冬児くん。
「ん?正体?」
あれ?
この反応は、まさか知らない?
俺は説明した。
夏目がしきたりで男のふりをしていたことを。
ものすごく驚いていた。
気づいていなかったらしい。
今、夏目は顔が真っ赤だ。
うんうん、何度見てもこの顔はいいねぇ。
「なるほど、乙種呪術ははまるとここまで強烈なもんなんやなぁ」
「京子のやつ、夏目が男だと信じてたからな……」
「京子くんは何て言うてた?」
大友が夏目に訊く。
それ訊いちゃいますか?
「嘘つきって……」
「そうか」
「私、どうすれば……」
「なぁ、夏目くん。僕は思うねん。大事な人に素直な気持ちを伝えることは決してあだになったりせぇへん。回りくどいことしたらアカン。謝り倒して来い!!京子くんを探し出して、今、すぐに!!」
夏目はしばらくの間呆けた……
だがすぐに―――
「はい!!」
そう言って呪練場を出て行った。
俺は大友に一言。
「俺さ、初めて大友が先生だなぁって思ったわ」
「そらないで、刃くん」
あはは、こんな覇気のない先生は初めてでな。
それよりも多斬子だ。
何か怪しいね。
でも、敵では……ないのか?
まだわからないな。
あぁ……本当に―――
面倒だ。
刃くん。面倒なことが大っ嫌い。