東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
―――上空。
式神の雪風に乗って俺たちは祭壇に向かっていた。
俺は荷物をかなり持たされた。
重くないけどさ……箱の角が体にあたってちょっと痛い。
祭壇が見えてきた。
「装甲鬼兵!!」
夏目が言う。
土蜘蛛ね……
雪風が降りようとする。
だが……
バチィ!!
「きゃっ!!祭壇に近づけない!!」
「結界か……ひとまず下に降りてくれ」
「はい!!」
下に降りる。
しばらく土蜘蛛と睨みあう。
それも長くは続かない。
「来るぞ!!」
夏目は雪風を走らせる。
土蜘蛛はそれを追いかけてくる。
ドオォン!!
ドオォォン!!
ズドォォォン!!
危ない……もう少しで当たるところだったぞ!!
「夏目、上に」
「はい!!」
さて、どうしましょうか
とりあえず、説得か。
「もうやめろよ!!」
「アタシの命の使い方はアタシの勝手だろ!!アタシは……お兄ちゃんを生き返らせてみせる!!」
会話のキャッチボールがッ!!
成り立たない!!
クソッ!!これだから最近のガキは!!
「そんなことは不可能です!!」
夏目が叫ぶ。
そうだとも、人間には不可能だ。
それもかなり時間がたってるしな。
俺にも出来るか分からねぇ。
魂がどこかに飛んじまってるからな。
探すのが大変だ。
「いえ、試すべきではないんです!!魂の呪術が禁じられているのは……そもそも人が手を出すべきではないからです!!それはかつて、人々に理屈抜きの信仰心があった時代に成立した呪法、今を生きているものが、形だけマネをしていいものではないのです!!」
「『泰山府君祭』を祭ってきたのも……復活させたのも土御門だけ。自分たいはよくってアタシはダメってわけ?ふざけんなァ!!」
あいつ、『阿修羅』まで出しやがった。
「雪風、下へ!!」
おいおい、下には土蜘蛛がいるんだぞ!!
「よせ!!したには土蜘蛛がいる!!挟み撃ちだ!!」
土蜘蛛が俺に向かって攻撃してくる。
「結!!」
それを俺は結界で防ぐ。
あーあ、見られちまった。
「今のは結界!?一体どうやって……それにどこでそれを!!」
「今はいいから!!集中しろ!!ほら!!結!!」
『阿修羅』が攻撃してきた。
あー、面倒だなチクショウ。
「夏目!!お前も応戦しろ!!」
「い、今話しかけないでください!!」
い、意外に修羅場に弱い……
「さ、祭祀を初めt「夏目!!」…」
夏目が雪風を巧みに操る。
爪を避けて、炎を避ける。
雪風は垂直に空に向かって飛ぶ。
そう垂直に。
手綱を握っている夏目はともかく俺は落ちるに決まっている。
「あーあ……」
「お願い!!北斗!!」
出てきたのは金色の龍だ。
蛇みたいなものか。
東洋のだな。
「ふぅん……なかなかの龍だ。でもティアには劣る」
「その龍は私の切り札です!!代々の当主に仕えてきた使役式、土御門家の守護獣、数少ない本物の龍です!!」
「なんで最初から使わなかったの?」
「まだ御しきれてないんです!!」
「そうか……なら!!朱蓮!!」
『ひっさいぶり~』
「出してやる、暴れてもいいぞ!!」
『ひゃっほ~い!!』
俺は『赤龍帝の龍刀』と出現させる。
それを空高く投げる。
「解!!」
そこには、赤いドラゴンがいた。
それは、北斗と比べものにならない龍の気を放っていた。
ガアァァァァァァァァァァ!!!
「りゅ、龍!?なんで刃くんが龍を!?それよりなんですかあの龍は!!」
う~む、どうしましょう。
神滅具なんて言ってもしょうがないしね。
そうだ、式神って事にしよう。そうしよう、それがいい。
「俺の式神だ。どうだ?すごいだろ!!」
「それより、こっちに飛び移ってください!!」
「その必要はない!!朱蓮!!来い!!」
朱蓮はこっちに近づいてくる。
そして俺は朱蓮に飛び移る。
「『阿修羅』は北斗に任せるぞ。俺たちは土蜘蛛だ!!」
俺と夏目は下に降りる。
さて、どう料理してやるか。
「とりあえず朱蓮は戻れ」
『はぁ~い』
朱蓮が刀に戻る。
この世界では『結界師』として生きると決めたしな……人間の時は。
よし、今回は結界の実戦だ。
簡単に壊れるなよ。
「結!!」
一気に6本の槍状の結界は土蜘蛛を貫く。
だが土蜘蛛は止まらない。
やはり、核を壊さないといけないのか
なら、一気に壊す!!
「方位!!上訴!!」
今回はめっさ強力なので行くぜ!!
「結………滅!!」
バリィィィン!!
結界が壊れた時には、そこには何もなかった。
うーん、いいねぇ。
結界で装甲鬼兵は倒せるんだ。
ま、俺だからだろうけど。
「刃くん!!結界が解けました!!」
「うし!!行くぞ!!」
「はい!!」
雪風を走らせる。
速度はかなりのものだ。
それでも俺が走った方が速い。
突如、式神がものすごい勢いで俺たちに向かって飛んできた。
「チィ!!結!!」
気づかれないように、俺と夏目の体を覆うように薄く結界を張る。
「呪符か……」
「抜け出せない!!」
しかしこの呪符……すべて血で書かれている。
この量を全て血で。
ものすごい決意だと思う。
けれど、無駄なことをしたな。
「陰陽師、大連寺鈴鹿。謹んで―――」
鈴鹿が何かを読み上げている。
すると、夏目の霊力を吸い取った蜂が鈴鹿の兄貴の肉体らしきものに吸い込まれていく。
鈴鹿が紙を上に投げ、手を叩く。
すると、紙が燃え上がる。
その瞬間、ものすごい光が空に向かってほとばしる。
すると、それをたどってドス黒い何かが降りてくる。
あれは!?おいおい……嘘だろ……
この感じ……
「こ、こんなの神様なんかじゃぁ……」
夏目が怯えながら言う。
あぁ、そうかもな。
でもな、感じが似ているんだよ。
誰だかは忘れたが……
「はぁ……」
鈴鹿が膝をつく。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん……」
ピクピクと指が動く。
「ふぁ!!」
ムクリと不自然な起き上がり方をする。
まずい!!あれは肉体と魂があっていない!!
それにあの魂は―――
邪悪すぎる!!
「お兄ちゃん!!」
クソ!!
もう、なりふり構っていられない!!
「散!!」
俺たちを包んでいた結界を外側に向かって散開させる。
すると、呪符も一緒に吹き飛んで行った。
「鈴……鹿」
兄貴がしゃべった。
その声を聴いて鈴鹿は目に涙を浮かべる。
「お兄ちゃん!!」
そして、そのまま抱きしめる。
おいおい……死にてぇのか?
「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!あ……がぁ……」
鈴鹿が首を絞められている。
「足りない……」
「離れろ!!鈴鹿!!そいつはおまえの兄貴じゃねぇ!!」
「う……るさ……い……今、上げるからね……私の……命」
もう……ダメだ。
抑えらんねェ。
「黙れよ……おまえの兄貴の肉体にはな……おまえの兄貴の魂はいねェ。いるのはな、もっと邪悪なものだ。そう、俺は知っているはずだ……でも思い出せねぇ。幸い意識はねぇ。なら!!」
俺は『写輪眼』を開眼する。
あれか!!
兄貴の背中から流れ出てる力を確認する。
『写輪眼』を『万華鏡写輪眼』に変える。
まだ須佐能乎は見せられねぇ。
だから、十拳剣だけだ!!
「十拳剣!!オラァァァァァ!!」
それを勢いよく叩きつける。
ビシィィィィィィィィ!!
これでも一気に決まらない!?
どんだけだよ!!
「―――――――」
夏目が何かを唱えている。
「五行連環!!喼急如律令(オーダー)!!」
唱え終わった時だった。夏目が俺の元に駆け寄ってきたのだ。
そして押し倒される。
「上を向いてはダメぇ!!見たら、魂を持って行かれます!!」
とりあえず、目でも瞑るか。
しばらくたつと、風が止んだ。
終わったのだ。
「どうして……どうして……お兄ちゃん……」
鈴鹿は泣きながらつぶやいていた。
俺は立ち上がる。
そして、鈴鹿に近づく。
一言。
「兄貴に会いたいか?」
「……会いたいわよ!!でも、でも!!」
「十分だ、それ以上は無理だからな」
「な、何を言ってるの?」
俺は神滅具を取り出す。
今回の神滅具は『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』だ。
これを邪龍を復活させたときみたいに使う。
だから十分までだ。
それ以上は面倒だ。
俺は『幽世の聖杯』を発動させる。
そして魂を肉体に引き寄せる。
実際、あまり使い方が分からない。
不便だ。
「ここは……どこ?」
「お、お兄ちゃん!?」
「鈴鹿?どうしたの?」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!」
さて、ここからは十分間だけ二人の時間だ。
夏目の所に戻ると、夏目はジト目でにらんできた。
「なんだ?」
「なんだ?じゃないよ!!なんで成功してるのさ!!人間には無理だってさっき言ってたじゃないか!!」
「あぁ、そう言うこと。よし、あらためて自己紹介しようか」
「自己紹介?そんなのは関係n「いいから」…わかったよ」
俺は夏目を落ち着かせる。
はぁ……これからどうなるんだろうな。
でも、楽しみだ。
「俺は神をも浄化する刃、神浄刃。万能なだけの人外さ」
「人外?何言ってるの?あぁ、刃は私の式神だもんね」
そ、そういう意味で言ったわけじゃないんだけどな……
まぁ、いいか。
「ちなみにお前も人間やないからな」
「えぇ!?だって私は式神じゃ……あー!!も、もしかして……」
「そうだ。『神使』は人間ではなく、『神使』という一つの種族だ。
ガクッとうなだれる夏目。
すこし涙目だ。
そんなにいやだったのか?
おっと、そろそろ時間か……
俺は鈴鹿たちの元に行く。
「もう時間だ」
「そう……ゴメンね、お兄ちゃん。もうお別れなの」
「ううん、気にしないで。元気でね、鈴鹿。そしてありがとうございました」
俺におじぎをしてくる兄貴。
なかなか礼儀正しいねぇ。
さて、本格的にまずいからやるか。
俺は『幽世の聖杯』で魂を元に戻す。
「じゃあな、お兄ちゃん……」
泣きながら、でも嬉しそうに兄貴を送り出す鈴鹿。
よし、これで完了だ。
「兄貴さ、ちゃんと埋葬してやれよ」
「うん……ありがとね」ボソ
「なんか言ったか?」
「何も言ってないわよ!!」
勿論聞こえたけどな。
そんじゃまぁ……
「帰りますか」
「そうですね!!」
あとは呪捜官に任せることにした。
―――翌日、学校、屋上。
あの後は大変だった。
あの結界はなんだ?
あの龍はなんだ?
あの杯はなんだ?
質問の嵐だった。
まぁ、全部ぼやかしたけど。
「とんでもねぇ嵐だったな」
「あぁ、とんでもなかったな」
なんか久しぶりに冬児の顔を見た気がしてしょうがない。
「しっかし、北斗の奴が式神だったとはなぁ」
「まぁ、俺は知ってたけど」
「そうか」
「驚かないんだな」
「だって刃だからな」
ここに来てもなのか……だって刃だからですまされてしまうのか!!
まぁ、いいんだけどね。
「あのさ、俺……東京に行くわ」
―――東京、ハチ公前。
ここで夏目と待ち合わせをしている。
なぜ東京に来たか?
その理由は
「式神は常に主のそばにいるものです。一日も早く、陰陽塾に入塾してください」
って言われちまったからだ。
でも楽しみだ。
これからどんな貴重な体験ができるか……はぁ、さんざん今まで体験してきたか。
「バカ刃」
この声は……夏目か。
声の方に振り返る。
そこには、男物の制服を着た夏目がいた。
「久しぶり……ぼ、僕もちょっと踏ん切りがつかなくて……待たせちゃった?」
「……大変だな、しきたりも」
「……わかってくれて、なによりだよ」
そうだ、この際俺も本当の刃の姿に戻るか?
「なぁ、ちょっと後ろ向いててくれ」
「え?わ、分かったよ……」
渋々後ろを向く夏目。
そのうちに俺はバスタオルを頭に被り、頭を元の姿に創造しなおす。
だが左の目じりにある五芒星は消さない。
「よし、もういいぞ」
「もう!!なんだよ急……に……誰?」
「アハハ、俺だよ刃だよ」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?なんで髪色が黒に?それに後ろ髪長いね!!って違う!!顔もすっかり変わって……そ、そのかっこよくなったな///」
おぅう、予想の右斜め上の反応ありがとう。
「そうだ、夏目……いや、北斗」
「わ、わかってたの!?」
「おまえ……驚きっぱなしだな」
「そんなことより、いつ分かったの!!」
「最初からだけど。だいたい人間と式神じゃあ気配が違う。それになんとなく夏目の気配がしたんだよ」
夏目はさっきから顔を真っ赤にしている。
余程恥ずかしかったんだろう。
「お、冬児。もう用事はいいのか?」
「あぁ、あいさつだけだしな」
「こいつが例の幼馴染に夏目。そんでもって俺の嫁」
「ふぇ!?よ、嫁!?」
「へぇ、こいつが刃の嫁ねぇ……刃のこと、よろしく頼む」
「えぇぇぇぇぇ!!」
「ははは、冗談だ冗談」
は?
何言ってんだ冬児。
「何言ってんだ?大マジだぞ?」
「「え?」」
「だって夏目は『神使』になった。それは俺と一生を過ごすということだ。つまり―――」
「そういうことか」
「ふぇ、ふぇぇぇぇぇぇぇ///」
なんだかんだ言ってうれしそうだな、おい。
冬児をニヤニヤしてるし。
「そ、そ、そ、それはもいいけど……なんで冬児がここにいるんだ!!」
「それは陰陽塾に一緒に入るからだ。安心しろ、冬児は『見鬼』だからな。ちなみにバレてるから」
「うっ……」
視線を俺から冬児に移す夏目。
そこにはニヤニヤしている冬児がいる。
突然バッ!!と顔を上げる夏目。
「二人とも!!陰陽塾じゃ後輩だからな!!覚悟しとけよ!!」
それだけ言ってスタスタと先に歩いて行ってしまった。
「かわいいやつめ」
「本当だな」
「さっさとこい!!バカ刃」
まったく……こいつめ。
「へいへい、マイハニー」
「ぶっ!!」
「ククク、刃最高だな!!」
さぁ、始まるぞ。
陰陽塾での生活が。
この先は何が起きるんだろう?
楽しみだ……楽しみで仕方がない!!