東京レイヴンズ~二天龍を従えし者~【本編完結】 作:眠らずの夜想曲
第1話~これから~
―――陰陽塾。
「これが陰陽塾か……」
俺の目の前には大きいビルが建っている。
これで塾……あぁ、なんか魔術と科学が交差する世界の塾もビルだったような気がするな。
それにしても……デカいなぁ。
「中身は最新設備らしい。陰陽師を目指す、エリートが集まるんだもんなぁ」
「……エリート、ねぇ」
それにしてもこの制服はうっとおしい。
袖が長い。
あ、そうだ。
創ればいいじゃないか。
早速俺は袖の無い制服を創った。
「なかなかいい塩梅だ」
「おいおいいいのかよ、改造して」
「ま、いいでしょ」
そんな会話をしつつ、俺たちは玄関に入る。
おぉう、自動ドア。
そこには二体の式神がいた。
狛犬か?
「土御門刃に阿刀冬児だな」
式神が声をかけてくる。
「我らは高等人造式、アルファとオメガ」
「汝らの霊気を確認、登録した。良き陰陽師となるべく、精進するがよい」
なんだ式神のくせに偉そうな。
それに俺は『結界師』だっての。
まぁ陰陽術も使えるけどね。
式神・破軍とかね。
俺たちが、過ぎ去ろうとした時だった。
「土御門刃、汝の式神もともに登録した」
あぁ、多分親父からもらったやつだろうな。
朱蓮と白は探知されるわけがないし。
先に進むと、一番初めに目に入るのは独特な形の時計だ。
そして、猫だ。
猫?
「ようこそ陰陽塾へ、まずは塾長室へどうぞ」
猫が次の行動の指示を出してきた。
とりあえず、俺たちはそれに従った。
―――塾長室。
やはり、と言うべきなのか。
塾長は婆さんだった。
でもこの婆さんは只者ではない。
かなりの実力者だ。
でもまぁ、ヴィヴィオにすら勝てないな。
「私が塾長の倉橋美代です。貴方たちが、夏目くん『飛車丸』と『角行鬼』というわけね」
なに言ってんだこの婆さん。
まぁ、俺自身は夏目の式神だけどな。
「あの噂は知っていますね。夏目さんが、土御門夜光の生まれ変わりだという噂。夏目さんの特別な『カンシン』は、あなたたちにも向けられることでしょう。私達も相談に乗りますが、早くそう言うことに慣れてほしいと思います。夏目さんのように」
この婆さん……いやババア。
腹の中真っ黒黒助だ。
と言うよりもまず……
「ババア、夏目は夜光の生まれ変わりじゃねぇよ」
「……ババアの件は不問にしておきましょう。なぜそうお思いに?」
「んー?それにしては記憶の継続も全くと言っていいほどに認められないし、それにな……夜光は……」
ここから先は言えなかった。
否、言わなかった。
だって面倒なことになりそうだったから。
「夜光はなんですか?」
「それ以上は今は言えない」
「そうですか……まぁいいでしょう。お二人は夜光についてどんなイメージを抱いていますか?」
夜光ねぇ……正直、土御門家のことはあまり興味がない。
だって、ねぇ?
すぐに破門されるしさ、いい思い出がない。
「あれだな、どうでもいい人間。別に死のうが生きていようが全く持って俺には関係ないそんなイメージ。つーかイメージって言えるのかこれ」
「あなたは?」
ババアは冬児の方を向く。
「戦時中、軍部の要請で、現代陰陽術の元となる『帝国式陰陽術』を生み出すも、敗戦直前に、呪術儀式に失敗。東京で多発する霊災の原因を創った人物。功罪共に大きすぎて言い表しにくいが、天才、でしょ」
ババアは一度顔をうつむかせる。
そして、一言。
「将棋がね、好きだったんですよ。でも弱くてね、弱いのに好きでやろうやろうって。そのくせ負けるとすねるもんだから、み~んな迷惑していましたよ」
「あったことあるんですか?」
冬児が焦ったように訊く。
俺?
俺は別にどうでもいいから。
「まだ私が、ほんの子供の頃ですけど。夜光だって、貴方がたを同じ、普通の人間だったんですよ。でも、それがわからない人たちもいるのです。夜光の人格を無視し、盲目的に祀り上げる、夜光信者の人たちとか、ね。彼らは、夏目さんにも接触しようと試みていました。イメージというのは一種の呪術なの。噂だって同じ。人に作用し、人を惑わすわ」
……夏目に何かあったさ、『神使』の出番かもな。
そんなことを考え得ているときだった。
コンコン
扉がノックされる。
「塾長~、失礼~します~」
関西弁の男が入ってきた。
右足は義足か……何かあったな。
それに……結構な実力者だ。
「いい加減時間押してますけど~」
「ごめんなさい、今終わりましたよ」
「ん?これか?かっちょえぇやろ。僕も陰陽師の端くれやさかいなぁ、こんくらいはったりきかせんと」
なるほど、その時の傷ってことね。
「大友陣先生です。あなたたちの担任です」
おぅ……マジか。
でもラッキーかもな。
実力者の授業を受けれるなんて。
―――教室。
……誰一人と声を出さない。
ただひたすらジーっと俺たちのことを見てくる。
「ほら、二人とも。あいさつ」
仕方ねぇ、なるようになるか。
「神浄刃だ」
「阿刀冬児です」
「あれ?刃くんは土御門とちゃうの?」
「あぁ、破門されたんですよ。特に何もしてなかったんですけどねぇ」
「へぇ……それと、もっとアピールしぃや」
だりぃな……面倒だなぁ。
ふと、教室を見回すと夏目と目があう。
ニコッっと笑っていくれた。
だから俺も笑い返す。
「二人はみんなより半年遅れなわけやからぁ、いろいろ教えたってやぁ」
「先生!!」
先生の発言に声を上げる生徒がいる。
女の子か。
ふぅん……かわいいじゃん。ってあいつ、ガキのときに会ったことがあるな。
「京子くんかぁ、なんやぁ?」
「おかしくありませんか?この時期に突然編入なんて、本来なら来季まで待つはずでしょ?彼が、土御門の人間だからですか?納得できません」
あー……いるよねぇ。こういうさ、身の程知らずのガキってさ。
バンッ!!
夏目?
珍しいな、夏目が怒るなんて。
でもまぁ……
「言いがかりm「夏目、騒ぐな」…なっ!?刃はいいのか?あんなこと言われて黙っているのか?」
「はぁ……いちいちガキの我がままに付き合う必要はねぇ。言わせとけ」
「な!?ガキですって!!」
「それにさ、誰がおまえごときに従うんだ?だいたい俺と冬児の編入になんでおまえが納得しないといけないんだ?なぁ?おまえはそこまで偉いのか?なぁ、なぁなぁなぁ!!」
「ぐっ……」
ハイ論破ハイ論破ハイ論破ハイ論破ハイ論破ァ!!
「じゃ、先生。これからよろしく」
―――休み時間。
「さっきのことは気にしなくていいから。刃は堂々としてて」
「そだな、てか相手にしてねぇし」
「あの京子ってのは、いつもあぁなのか?」
冬児が夏目に訊く。
「んー……でも今日みたいなことは珍しいかな」
そうか……あれだな?
調子乗っちゃったのかな?
「夏目くん!!担当の人、来てるよ」
男の子が呼びかけてきた。
「僕行かなきゃ、今特別なカリキュラムを受けているんだ」
これは嘘だな。
「おい……あいつには気を付けろ。あいつは夜光信者だ」
「あはは、そんな訳ないよ。じゃあね」
夏目は途中まで歩いてこっちを向く。
「刃、冬児。これから一緒に頑張ろう!!」
ニコッと笑って言ってきた。
かわいいやつめ。
「おう」「あぁ」
「さてと、一緒に来い」
冬児が立ち上がる。
そして、さっきの男の子のところに行く。
もちろん俺もついて行く。
「さっきはど~も~」
「え?」
「ちょっと、クラスのこととか教えてくれないか?えぇ~っと」
「はい、百枝です。百枝天馬」
「俺もよろしく頼む」
なるほど、これが狙いだったのね。
「田舎で陰陽師が暴れた事件があっただろう?俺たち、あれに巻き込まれてさ。
「えぇ!?あの事件!?そんな事情が……大変だったね」
正直に言おう。
俺、空気じゃね?
今も二人でどんどん話を進めていってる。
結局、俺は何を話しているか最後までわからなかった。
―――放課後。
「この……バカ刃!!」
机にあるのは0点のテスト。
いやぁ、寝てたらいつの間にか終わってたし。
「バカだバカだと思っていたけど……まさかここまでだなんて!!」
「だって眠かったし……」
「眠かった?たったそれだけで何も書かないでテストを出したのかい!?」
睡眠は大切です。
「まぁ、本気出せばこんなの全部解けるよ。ほら」
「ほ、本当だ……全部あっている……」
「じゃあ、そう言うことで~」
俺はそそくさと教室を後にした。
―――俺の部屋。
そう言えば親父からもらった式神をまだ試していなかったっけかな。
「こい」
ボン
おぉう、獣耳の幼女だ!!
ヒャッハー!!
さすが親父だぜ!!
「お、お、おおおおおおおお初にお目持ちいたしまする。わわわ私、コンと申します」
「あいよ、よろしく。そんじゃ、寝ようか」
俺はコンを抱き上げる。
そしてそのままベットへイン。
「zzz~」
「ひゃうぅぅぅぅ」
コンコン
「刃~入るよ~」
何も言っていないのに入ってくる夏目。
そしてベットに視線を向ける。
「なにやってるのかなぁ?刃ぁ」
「zzz~~~」
「あ、あれ?寝てるの?しょうがないな~」
そう言って夏目は俺の部屋を後にした。
―――翌日、教室。
「便利やろぉ、独立封魔官クラスになるとフェイズ2くらいなら一殺や」
「俺なんかあくびしててもできるぜ」
「なにぼうっとしておるんや?刃くん。気ぃが抜けとるんやないか?」
「なに言ってんだ先生。気どころかなにもかもが抜けてるぜ」
俺は胸を張って応える。
冬児はヤレヤレといった顔でこちらをみてくる。
「先生、授業を進めてください。送れている自覚のない人の為に、時間を無駄にしたくありません」
京子か……
いちいちイラつく話し方だな。
「なに言ってんだおまえ。このくらい俺が五歳の時でもわかってたぜ」
「嘘つけぇ!!」
「あのさぁ……座学ばっかの甘ちゃんがよォ、生言ってんじゃねェぞ!!」
俺は殺気を開放する。
そりゃもちろん全員冷や汗ダラダラでガタガタ振るえてますよ。
先生と冬児は別みたいだが。
「ほら?なんか言ったらどうだ?優等生。底辺のやつにビビてんじゃねぇぞ!!」
「ぐぅ……」
パンパン
「そこまでや、ここはひとつ、式神勝負と行こうか」
いいねいいね、最ッ高だねェ!!
やっとおもしろくなってきたぜ!!
―――???。
とりあえず、先生に連れられていた。
ここは鍛練場みたいだな。
「さて、式神勝負だったよな?」
「そうよ!!まぁあなたにはその子しかいないだろうけどね!!」
向こうが構える。
それを確認して、俺も構える……わけがないだろう。
「始め!!」
さて、俺も本気で相手をしてやろう。
「朱蓮!!白!!」
『いいぜ!!』『久しぶりだね~』
ガァァァァァァァァァァ!!
ギャァァァァァァァァァ!!
「りゅ、龍!?なんであんたが龍を……」
「なんで?だって俺は『二天龍を従えし者』だから。赤龍帝、白龍皇。この二体を表現するのが天龍……だから二天龍。まぁ、そんなことはそうでもいい。おまえら遊んできていいぞ」
俺は終わるまでコンを愛でていますか。
「コン、おいで」
「はい!!」
俺は膝の上にコンを乗せる。
そして撫でる。
さぁ、お遊びの始まりだ。