張飛ガンダム改 https://www.youtube.com/watch?v=hs9bxOBeWnk
バルバトスルプス改 https://www.youtube.com/watch?v=8n997A2qF_k
『Congratulations is your victory!』
システム音声も、こころなしかノリがいい。
「よし! これでフォース戦20勝目!」
「ウェーイ!」
「ですわー!」
パーン!
頭上で手を打ち合わせる。
(順調順調)
実際、いい流れで来ていると思う。
今し方対戦した相手もキャリアやランクで言えば遥かに格上だったが、内容的には圧勝だった。
とにかくサカグチが加入したのが大きかった。
組んでみて改めて思ったが、彼女は滅茶苦茶強い。一見すると突飛なギミックの機体を変幻自在に操って、トリッキーに対戦相手を翻弄する。その実、正攻法で戦った時が一番実力を発揮する。
案外、リアルでは真面目なタイプなのかも知れない。
連勝を続けているおかげか対戦動画の再生数も着実に伸びている。本来の目的ではないが収益化も視野に入れてもいいかも知れない。
本来の目的と言えば、部員はまだ一人も増えていない。
ある意味当然だ。
チャンネル力的に再生される確率自体が低い、つまり同じ学校の生徒がたまたま開いた動画サイトの画面にたまたま表示されて、さらに動画視聴までいく可能性は、結構天文学的な低さなのだ。
だから校内で一度アナウンスして「見てもらう」必要があるが、その機会さえ持てればアピール力は十分以上にあると確信している。
さっきも思ったことだが、サカグチの存在が大きい。
地味な自分や初心者のリュウジに比べて、彼女の戦い方は派手で見栄えする。
何より面白い。
そういう意味では最早目的を達したと言っても過言ではない。
あとは少しでも結果を残して確率を上げておくだけだ。
そう思ってさらに格上の相手とのマッチメイクを模索したのが、果たして良かったのか? それとも悪かったのか?
『ワールド・ヒーローズ?』
「知ってるフォース?」
『名前だけですわ。かなり強いと聞いたことがありますの』
対戦が成立して戦闘エリアに転移してから、遅ればせながら確認する。
ベーシックな荒野風ステージ。
敵影は視認できない。レーダーにも反応無し。
接敵までの時間を利用して狙撃ポイントを確保しながら、通信で話す。
『女性ダイバー3人だけの少数精鋭だとか。それ以上のことは分かりませんわ』
『負けるとデレる系?』
『違うと思いますわ』
岩山の上に適当な大きさの窪みを見つけ伏射姿勢をとる。
下からは射角が取れず、こちらは一方的に狙える絶妙な地形だ。
他2人も各々の配置につく。
シュバルベグレイズは岩陰に隠れ、キマリスナイトはあえて遮蔽物の無い場所で仁王立ち。自分が囮になって敵を自陣に引き寄せる為にだ。
索敵強化しているジムスナのPPIスコープを注視しながら、タクヤは同時に目視警戒も忘れない。
この場合、いきなり遠距離攻撃でキマリスナイトを撃破されるのが、一番避けたい展開だ。
敵にも狙撃手がいたとしても、狙撃可能なポイントは限られる。射角の通る何箇所かを特に念入りに警戒する。
目視できる範囲に動き無し。
レーダーは……反応あり!
「10時方向、岩場の辺り、隠れて接近中!」
『了解!』
『了解ですわ!』
R4型ビームライフルの銃口を予想地点に向ける。
おそらく岩場の切れる距離1キロメートルの地形から飛び出してくるはずだ。
1キロというのは遠いようでモビルスーツの機動力なら数秒で踏破する。敵機体が遠距離タイプか近距離タイプか分からない以上、現れた瞬間を叩く。
画面上の光点が接近する。あと2秒、1秒……
「今だ!」
トリガーを引くようにボタンを叩く。
弾速強化された光弾が銃口と目標を一直線に結び、
「なっ⁉」
すり抜けた。
「くそっ!」
射撃モードをオートに切り替え、掃射する。蛇行する着弾痕を、それより速く蛇行して避ける敵影。
ガンダムバルバトスルプス。
実弾系にもビーム系にも高い耐性を誇るナノラミネートアーマーは、あくまでゲーム的なバランスを崩さない程度の防御補正として実装されているにすぎない。当たればダメージは入る。
単純に回避技術で避けられている。上手い。
『上等、ですわ!』
一瞬で切り込んできたルプスをキマリスナイトが迎撃する。上段から叩きつけるソードメイスを横殴りのハルバードで弾き返し、さらに反撃の一撃。それを打ち返して、2の撃、3の撃を重ねるバルバトスルプス。
目まぐるしく攻守と位置が入れ替わる。
こうなると援護射撃は難しい。下手に手を出すと味方に当たる。
「リュウジ、ルプスが離れたら射撃支援! それまでは残り2機を警戒!」
『了解!』
レーダーは……反応無し。
ただし、動体反応が無いだけだ。虎視眈々と狙われている気配は痛いほど感じる。
(どこだ? どこから来る?)
ルプスの飛び出して来た辺りに動きは無い。左、右、左。目視できる範囲には影も形も無い。
不意に、頭上に影が落ちる。
「上⁉」
その場で見上げる愚を犯さず、とっさに前転して離脱。
直後、背後から破砕音と、重量物の落下した振動が伝わってくる。
振り向きざま、膝立ちでライフルを照準。
同時に喉元に突き付けられる、ブレードの鋭利な切っ先。
『うわっ⁉』
リュウジの悲鳴。向こうも攻撃を受けたらしい。
が、よそ見する余裕は無い。
「うわっ⁉」
振り下ろされた矛を辛うじてライフルの銃身で受ける。
矛の持ち主の、小柄な体躯に似合わない膂力に、強固なはずのバレルがメキメキと音を立ててひん曲がっていく。
「うおおお!」
気勢を上げて、攻勢に出る。
左腰にマウントされたアックスを抜き放ちざまに叩き込む。
グリン。
斧刃を手元で受けた矛の柄が、吸い付くような滑らかさで回転する。
異様な手応え。バランスを崩されたシュバルベグレイズがたたらを踏む。そこへ。
『はっ!』
「ぐわっ!」
突きこまれる石突。
胸元にまともに食らったリュウジ機が吹っ飛ばされる。
ズザザー! 荒野に数10メートル電車道の跡を残して止まる。なんとか倒れるのだけは防いだ。
「……SD、ガンダム?」
そこで初めて、カンフーっぽい決めポーズをとる敵機体の姿が確認できた。
赤を基調にした中華風の甲冑。左肩の龍を模った意匠。小脇に抱えた矛。
SD三国豪傑伝、張飛ガンダムだった。
おそらくグリムゲルデの改造機。ただし原型は無い。
と、いうより、本体が見えない。
下を見ればつま先に短剣が。上を見れば頭頂部にも短剣。
その間、つまり全身が同じサイズ、同じ造りの実体剣に覆われている。
敵機体が手に持った、今まさに貫かれる寸前で止まっている短剣も同じデザインだ。
柄と刀身が一体化した細身の優美なエッジ。鍔は小さめ。ベースキットと相まって、どこか古代北欧の刀剣類を思わせる。
「……剣の乙女。ジークルーネ」
『当たり。よく分かったわね』
冷汗を垂らしながら思わず零れた呟きに、通信機越しにも涼やかな声が返る。
『フォース名DTS。初対戦のはずだけど印象だけで伝わった? だとしたら光栄だわ。それに……』
言葉の途中で短剣を突き込む。タクヤも反射的に発砲。
双方避けて距離をとる。
『……あなたにも興味が出てきた。わたしはミレイ。フォース「ワールド・ヒーローズ」のミレイよ』
「……フォース「DTS」のタクヤ」
『タクヤね、覚えたわ。それじゃ自己紹介も終わったところで……』
腕を振る。その動きだけで何本かの短剣が風を切って飛んでくる。
転がって避けながら3点バーストで応射。向こうも飛び退いて避ける。
『バトルを楽しみましょう!』
バルバトスルプスはいい機体だ。
絶妙なプロポーション。見栄えのする、かつバランスのとれたデザイン。
専用武器ソードメイスもいい。保持しやすい重量バランス。ポージングのやり易い武器は、GBNでも取り回しが楽で戦い易い。
ただ、基本的なコンセプトは野性的な、力で押す戦い方になる。
曲線的なショルダー・アーマーは傾斜装甲の効果を発揮し、ナノラミネートアーマーの防御補正も相まって多少の攻撃なら受け流してしまう。
重量武器を上から叩きつけるのが基本の攻撃手段になる鉄血の世界観だと、この効果は大きい。
ある程度被弾を気にせず突っ込んで、ソードメイスを思い切り叩きつける。このシンプルな戦術で最大限の破壊力を発揮する前提あっての機体デザイン(あくまで個人的な見解だが)
「つまり」
地面を割り砕いてソードメイスが半ばめり込む。
間一髪避けたキマリスナイトが瞬時に分離・変形、動きの止まったルプスを挟撃する。
「攻撃の直後、隙ができるのですわ!」
『……バルチェンジ! ルプス・トゥ・甲斐!』
「なっ⁉」
瞬間、ルプスがその姿を変える。
白を基調にしたトリコロールの外装が、赤を基調にした武者甲冑に。
それは日本史に名立たる戦国大名、俗に戦国最強と謳われる武田信玄の赤揃え。その拵えをモチーフにした追加アーマーだった。
ルプス、いや甲斐が腰の大太刀を居合抜きの形に構える。
先に動き出したキマリスナイトたちは止まれない。
甲斐が鯉口を切る。
キン!
抜く手も見せず一閃。納刀。
遅れて両断されるキマリスナイトたち。
『悪くない死合だった。わたしはユキ。フォース「ワールド・ヒーローズ」のユキよ、覚えておきなさい』
「くっ、このっ、ちょこまかと!」
アックスを振り回すシュバルベグレイズ。
その動きは荒く大振りで、小柄な張飛ガンダムにとっては容易く避けれるものだった。
ピョンピョンと飛び跳ねて背後に回る。リュウジ機が振り返る。いない。
「どこだ⁉」
左右を見渡す頭に、軽い衝撃。
「⁉」
頭頂部を蹴って2回ほどトンボを切った張飛ガンダムが着地する。
短い人差し指を立てて、チッチッチッと動かす。分かりやすく馬鹿にしたジェスチャーだ。
「~! この野郎!」
激昂して頭から突っ込んで行くシュバルベグレイズ。
ヒラリ。
突進を軽く避けた張飛ガンダムの武器が様子を変えていた。
真紅の蛇が描かれた波打つ穂先。大陸の長柄兵器、蛇矛。
振り上げる。
『……大爆裂』
振り下ろす!
『雷蛇!』
刃先から溢れ出す光。雷光。ジグザグに鋭角的な軌跡で蛇行する。まさに雷の蛇。
「……いや、こういう技ってありなの?」
その言葉を最後にシュバルベグレイズが雷光の濁流に飲み込まれる。そして轟音。
目のくらむような光が治まった後、そこには塵一つ残っていなかった。
『SD三国伝ならありなの。もう聞こえていないでしょうけど、お猿さん♪』
ガンvsソード。あるいはソードvsガン。
撃つ。突く。撃つ。斬る。
互角の一進一退が続く。
『思った通り! やるわね!』
上ずった響きのミレイの声。興奮している。戦闘狂一歩手前といった感じ。
対してタクヤの方は喋る余裕も無い。
(強い!)
実際は互角じゃ無い。
ジークルーネは外装を纏う代わりに、フレームに直接アーマーを兼ねた剣を装着した機体だ。
最低限守るべき場所だけを守った、その分徹底的に軽量化したモビルスーツ。防御を捨てた訳ではなく、ギリギリのバランスで攻撃力と機動性を追求したピーキーで超攻撃的な戦闘機械。
(それだけじゃない)
よく見れば全身に纏った短剣のひとつひとつに細かく、かつしっかりしたデティールのスラスターが造形されている。それが姿勢制御を、細かい戦闘機動を補助している。
(この人ダイバーとしてだけじゃない! ビルダーとしても凄い!)
タクヤのジムスナイパーカスタムも見た目以上に強化してある。
特に足回りはショックアブソーバーやシリンダーに、実際にスプリングを仕込んである。その効果で、かなり無理な機動にも追従してくれている。
それでも付いていくのがやっとだ。
そして、徐々について行けなくなりつつある。
ミレイは戦いが進めば進むほど、興奮すればするほど、動きが速くなっていく。
対してタクヤにそんな資質は無い。徐々に、その差は開いていく。
『……いい! いいわ、あなた!』
そして、限界が訪れる。
『これにも付いて来れる? ねえ! フラガラッハ展開!』
掛け声と同時に、ジークルーネの全身からブレードが飛び立つ。
「! まずい!」
宙をうねる短剣の群れが、まるで天翔ける龍の長躯のように閃く。
重力から解放されたかのような、フワリとした浮遊が一転、鋭角な3次元軌道を描き。
『切り刻め! ブレード・ストーム!』
(速すぎる⁉ 避けきれない!)
タクヤ機を一瞬で串刺しにした。
廃部まで残り1週間。
こうして……フォースDTSは初の敗戦を経験した。
「ライバル登場」終了。次話「子供の国」