前略。多由也に転生したけど、人生の詰将棋をしている気分です。   作:N-SUGAR

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おら!三話連続投稿とこれのことよ!後は仕上げをごろうじろ!

ここで作者に向けて一言。

「お前は実に馬鹿だな」




第十九話 vs不死コンビ(後編)

「うおおおおおおおおおおおお!! あっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 私が叫びながら飛び退ると、次の瞬間私のいた木に電撃が降り注ぎ、樹木が真っ黒焦げに焼き尽くされる。

 

 『雷遁・偽暗』。雷遁の仮面によって繰り出された雷撃を紙一重で避けた私は取り敢えずほっと胸を撫で下ろす。

 

 が。

 

「そこか」

 

 角都の目線が動き、同時に仮面の怪物たちの照準が一斉に私へと絞られる。

 

「げ」

 

 火遁と風遁の面が再び口を開き、炎と風を私へ向かって吐き出してくる。私は再び翼を広げて空へと待避し、今回もギリギリ『外留愚々』を回避することに成功した。

 

「貴様は何がしたかったのだ?」

 

 角都が首をかしげながら私に問いかける。確かに、私の行動は角都から見たら意味不明な無駄な行動が多かったかもしれない。

 

 『霧隠れの術』で濃い霧を発生させ森の中へと着地した私は、木の影に隠れて色々と術のための細工を施そうと企んだ。

 

 しばらくは霧で時間を稼げるかなと考えた私だったが、角都は思ったよりも大分スムーズに霧に対策を施してきた。

 

 というより、風遁の面が出した暴風があっという間に霧を薙ぎ払ってしまったのだ。なんだか私の術って風遁に対策され過ぎじゃないかと思ったが、深く考えるより前に雷遁の面が辺りの木々に雷撃を撃ち込み始め、こりゃやべぇと思って木の下から離れたところで、私は現在へと至っている。

 

「うるせえ! ウチはウチでやるべきことがあったんだよ! テメーの対策が早すぎるのが悪い!」

 

 私はキレ気味に角都に反論する。完全なる逆ギレだったが、そんなことを一々気にするような間柄でもない。好きに言わせてもらう。

 

「ふむ。ということは、貴様の目論見は失敗に終わったということか? ……それとも」

 

 角都はそう言うと拳を振りかぶって、地面に拳を叩きつけた。

 

「『土遁・土流瑪廬(どるめる)』」

 

 地面に拳が突き刺さり、次の瞬間、角都の周辺の大地が無数の地割れを引き起こした。

 

 私はドン引きしながらその光景を空から眺める。なまじ俯瞰風景で地割れの様子を観察してしまったから、規模の大きさをまざまざと見せつけられて絶望感を余計に煽られることになる。

 

 て言うか、あの野郎『土矛』以外の土遁の術を使いやがった。つーことはだよ? つまりこの瞬間、私が特に根拠もなく信じ込んでいた「1つの性質変化につき1つの術しか使えない」という角都の制限みたいな法則が脆くも崩れ去ったということになる。

 

 嫌だなー。知りたくなかったなーその事実。

 

 本格的に、角都が何をしてくるのかの推測ができなくなり始めた。

 

「フム。わざわざ一回地面に下りたということは、地面の下に何か細工をしたのかと思ったが、特に異常は無さそうだな」

 

 このクソジジイ。どんだけチートを詰め合わせれば気がすむんだ。どれもこれも広範囲の破壊技ばっかり使いやがって。あと何個そういう術を使いやがる。予め教えておいてくれよ頼むから! 

 

 その上角都は、長年の経験から学んだであろう勘も中々のものだ。地面の下に細工を施すという考え。それは私も一瞬考えていた。考えた上で、より確実な方法を取るためにその案は却下したのだ。

 

 私は角都と仮面の化け物達に注意を払いながら笛を取り出し口に咥える。

 

「また何かをやるつもりだな? させるものかよ」

 

 角都はそう言うと、肩から水遁の仮面を出現させ、同時に雷遁の仮面の口を開く。

 

「『水遁・窮流(ぐうる)』、『雷遁・白嗣(はくじ)』」

 

 放射状に展開される無数の水遁と雷遁の弾幕射撃が私を撃ち落とそうと迫り来る。私は空中を忙しく飛び回り次から次へと砲弾を避け、切羽詰まりながらもなんとか笛を吹き始めた。

 

『魔笛・人形音傀儡の術』

 

 術が発動した瞬間、ピクリと角都が一瞬動きを止め、水遁の術が止まる。角都が水遁の仮面を幻術返しに使い始めた証拠だ。雷遁の術は相変わらずこちらに撃ち続けられるが、さっきよりは大分ましな弾幕になった。

 

 私は空中を動きながら術を掛け続ける。

 

 この術は私が以前使用した『魔笛・失意の舞』と『魔笛・心想操響曲』を足し合わせたような幻術だ。意識の有無に関わらず人を操る術だが、意識の有る人間への拘束効果はあんまり無い。意識が無ければ無いほど操る効果が強くなる。そんな幻術だ。『失意の舞』に限りなく近いが、一応意識の有る人間にも多少効果を見込めるので、厳密に区別されるべき術である。

 

「無駄だ。どれだけ幻術を掛けようともオレには効かん。さっき説明したことを忘れたのか?」

 

 角都が私を見上げながら言う。もちろん、そんなことは分かっている。角都に私の幻術は効かない。角都の出す仮面の化け物にも当然幻術は効かない。

 

 だから私が幻術を掛けるのは、()()()()()()()()()()()()

 

 本当に、さっきの地面の下への警戒は惜しいところを突いていた。私がそういう作戦を立てていたら、間違いなく不意討つ前に術が露見していた。だけど、私はそうはしなかった。ナイス判断。私は私を褒めてやりたい。

 

 それもこれも、私の下準備がとても良い結果を残していたからこそのこの現状だ。角都を倒すのにちょうど良い材料を、私は手に入れることができていた。

 

 扉間様から提案された、二つの術の、二つ目。

 

 使い方としては、基本的に『魔笛・幻惑香華』で相手の動きを止めた後の止めとして使う予定だった術ではあるが、この術に関して言えば、究極使うタイミングはいつでも良い。最後の止めに使っても良ければ最初から使っても良い。どんな状況でも一定以上の成果を上げる。この術は、そんな術だ。

 

 角都。お前はもう、詰んでいる。

 

 その証拠に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 

 

「────ぐぁ……!?」

 

 バチッ!! と、電気の爆ぜる音が私の耳に届く。

 

 音の正体を目で確認し、私はニヤリとほくそ笑む。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「か……影分身か!? いや、それより貴様……! 雷遁の性質変化を……!?」

 

()()()? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 異変は、それだけでは収まらない。

 

 ドボン! と、火遁と風遁の合体した怪物の足元がいきなり泥状に崩れ、怪物の足場が消失する。同時に泥の沼から幾本もの腕が伸びて怪物を絡め取り、沼から伸びた槍状の泥が、火遁の仮面を打ち砕く! 

 

 しかし、瞬時に火遁の仮面を足場にして分離した風遁の仮面は泥から逃れ、沼から逃げ出した。泥の槍が風遁の仮面を追いかけるが、風遁の仮面は暴風を出して泥の槍を吹き飛ばす。

 

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。風遁の仮面は最終的に真っ黒焦げの塵となり、風に乗って消え去っていく……。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何が……、何が起こっている!!」

 

 角都は力ずくで雷遁の腕から逃れ、地面を転がり、残された雷遁の仮面が、辺り一帯に電撃を放つ。

 

 起こっている出来事に一切の理解が及ばずやけくそ気味に放った雷撃だったのだろうが、偶然にもこの雷撃が謎の攻撃の正体を角都の目の前に曝け出した。

 

「こ……これは……!!」

 

 雷遁の放電によって姿を現した()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 


 

 

 

 

 一週間ほど前のこと、扉間様は性質変化の術を一通り覚えた私に、今度は別の術を覚えてみるかと提案してきた。詳しく聞けばなんと扉間様は、私に合った新術を開発し、私だけの武器を増やそうと提案してきたのである。

 

 新術開発。言うは易し行うは難しの典型みたいな活動だが、しかしそれを提案したのは二代目火影千手扉間。生前無数の忍術を考案し、影分身を始めとする有用な術や、穢土転生を始めとする数々の禁術を手掛けた新術開発のエキスパートである。生前の功績に偽りなく、扉間様は早速私の音を使った秘伝忍術の話を聞いてすぐに『魔笛・幻惑香華』をその場の思い付きで提案し、術式を即興で練り上げて見せた。

 

 そしてその後に、扉間様は私に訊いた。何か、こんな術をやってみたいとかはないのか? と。

 

 私は少し考えて、そう言えばと1つの術を思い出す。

 

「音を使って人形を操る術を使いたいです」

 

 私は扉間様に説明する。原作において多由也が使っていた口寄せの人型傀儡。死体人形のようなものを操るあの術は、確か私の血継限界に基づく特殊な効果が有ったのだった。

 

「物質化霊?」

 

 扉間様は、私の説明した言葉を繰り返す。

 

「そうです。操る三体の人形から、精神エネルギーを主体とする特別なチャクラで形作られた物質化霊を出現させるといった術です。障害物をすり抜けつつ敵から身体エネルギーを奪い取り、敵がチャクラを練れないようにさせるという秘伝忍術を、ウチは使えるはずなんです」

 

 身ぶり手振りを交えて僅かな記憶を頼りに私は術の概要を説明する。

 

 口寄せ人形なんてものを私はついぞ持ったためしが今までないが、『物質化霊の術』は草笛一族の秘伝忍術として魔笛の術とは別の巻物に記されていた。陰のチャクラ性質を利用したこの秘伝忍術は、分類としては奈良一族の影真似の術や山中一族の心転身の術と同類項に分類される術だ。ただ、この忍術は陰のチャクラとして完全にはチャクラを練り込まず、敢えて不安定な状態でチャクラを現出させる。そうして不安定な状態のまま外に飛び出した物質化霊は、安定を得ようと足りない身体エネルギーを探し回り、敵に向かって一直線に襲いかかってその身体エネルギーを食らいつくす。

 

 物質化霊の作り方自体は音隠れに来る前からとっくの昔にマスターしていたのだが、音隠れに来てからその術のことを思い出しても人形を何処で手に入れるのかのあてがいまいち思い付かず、大蛇丸様に言おうか言うまいか迷っているうちに色んなごたごたが起こり、放置された状態で現在まで至ってしまっていた。

 

 扉間様が新術開発を行ってくれるというならせっかくだ。扉間様の協力の下この術を完成させてもらおうと、私は思い立った。

 

「成程な。確かに少しは使えそうな術だ」

 

 扉間様は頷いて、少しの間考える仕種をする。扉間様のことだ。ただ術式を考えるだけでなく何らかの改善を加えた形で術を提案してくれるだろう。

 

 どんな術が飛び出してくるのかワクワクして待ち構えていると、やがて扉間様は顔を上げて言った。

 

 

 

 

「ならばその口寄せ人形は、穢土転生で代用するのが良いだろう」

 

 

 

 

「…………………………………………は?」

 

 ごめん。ちょっとよく聞こえなかった。え? この人今何て言った? 何を何で代用するって? 

 

 なんだかとんでもない暴挙が行われようとしている予感がして無意識に理解を拒む私に、扉間様は容赦なく現実を叩き込む。

 

「穢土転生で代用すると言った。お前が笛で穢土転生を操り敵を攻撃する。穢土転生した死人の身体に細工をして、物質化霊を出せるようにしておけば良いだろう。穢土転生を使えばそれ以外にも様々な術をその人形で行うことができる。便利で良いだろう?」

 

 いや、便利とかそういう問題じゃないんだけど、え? 何? 何がしたいのこの人。言ってることが無茶苦茶すぎて怖いんだけど。

 

「あ……あのう。穢土転生を私がわざわざ笛の音で操るメリットはなんでしょうか」

 

 私が恐る恐る質問すると、扉間様はスラスラと説明を開始する。

 

「メリットは勿論ある。まず前提として、穢土転生を大蛇丸のようなやり方で使用する際の弱点を言ってみろ」

 

 えっと、穢土転生の弱点といえばそれは……。

 

「術が破られると制御不能の怪物が生まれるという点でしょうか……。穢土転生は精度が高すぎると、死人の制御が難しくなるという弱点が有ります」

 

「そうだ。穢土転生の一番のネックは拘束力だ。死人の意識があまりはっきりし過ぎると容易く契約を解除されたり成仏されたりする危険を常に孕むことになる。精度が低ければ可能性も低くなるがその代わり戦闘力が落ちる。具体的に言うとこうも言える。穢土転生した死人は、意識を縛らない状態で戦わせれば応用力のある強力な働きを見せるが、その代わり言うことを聞かない可能性がある。意識を予め縛った状態なら反乱の危険も無いが、その代わりワンパターンな攻撃しか繰り出せず、戦闘力は大幅に下がることになる。これらの問題を解決し、穢土転生のポテンシャルをフルに使用できる術の使い方こそが、ワシがこれから提案する『魔笛・口寄せ人形音傀儡の術』だ」

 

 『口寄せ人形音傀儡の術』。文字通り、口寄せした人形を音で操り傀儡にする術であり、幻術という形で人形を操作する術でもある。

 

 それを扉間様は、穢土転生でやれという。

 

「手順はこうだ。まず、死人を穢土転生させたら最初から意識を縛っておいて、その忍の使う忍術の情報と生前の主な術の使用例を洗いざらい吐き出させる。そうして穢土転生を集めていき、貴様は状況に応じて穢土転生を召喚し、穢土転生の拘束の上から更に音の幻術で拘束して、意識を縛った状態のまま貴様が操り術を使う。予め術を把握した貴様が穢土転生を操ることによって、その状況に合わせた戦法を貴様自身が行うのだ。そうすれば複数召喚を行っても貴様を司令塔としたチームワークを発揮することができる。貴様の拘束力ならばまぁ、一度に操れるのは三体といったところだろうな。使うチャクラは口寄せと幻術の分だけで良い。死人が使う術は穢土転生体自身のチャクラで行うし、死人に手を加えれば物質化霊も死人のチャクラで代用できる。貴様は死人をちょっと操るだけで、大規模忍術であろうと血継限界であろうと関係なく様々な術を扱えるようになる。拘束を重ねがけしたこの術ならば精度が高くとも制御が効かなくなることはまず無い。完全体に近くなりすぎると意識が奪えなくなる兄者や術式を知り尽くしているワシ、幻術を内から重ね掛けできるマダラのような例外でない限りまず拘束は解かれん。使用する前にワシが厳選しておけば、更に安全性は高まるだろう」

 

 なるほどぉ。それなら確かに安心だ! とっても使える忍術だし、是非身に付けないとね! 

 

 って、なると思ってんのかこのクソジジイ。

 

「あの、この術、大蛇丸様の前とかではとてもじゃないけど使えないと思うのですけど……」

 

 私が反論すると、しかし扉間様はその意見を否定する。

 

「積極的に使う必要はないが最悪バレても問題の無い術ではある。多由也。お前は自分の現在の状態を分かっているのか?」

 

 自分の状態? 

 

 と、いうと? 

 

「貴様の今の状態。つまり、大蛇丸の禁書庫から穢土転生の術式を写し取り、ワシのDNA情報と生け贄の実験体一名を盗み出しているという現在の状態よ。貴様、このことが大蛇丸にバレたらどう言い逃れをするつもりだ?」

 

「そ……それは……」

 

 確かに、言い逃れできない。バレないようにこっそりやってはいるが、それでも万が一バレた場合、穢土転生を使用したであろうことは確実にバレる訳だし、何のために使ったのかと問われても上手い言い訳が思い付かない。

 

 そう思った私に、扉間様は言った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()。禁書庫で見つけた穢土転生の術を使用して自分に合った形で新術にしてみましたとでも言い訳すれば、それは立派な理由になる。術の完成度が高いからそこでひとまず大蛇丸の追求は止まるし、術本来の使い方とは程遠い上に大蛇丸の想定した使い方のままなので不利益な情報が向こうに渡ることもない。なんなら大蛇丸からしてみれば拘束の重ねがけなど、術そのもののロマンはあっても無駄なものとして映るはずだ。未熟さの演出にもなる。少しばかり伝え方には注意が必要だがな」

 

「と、言いますと?」

 

「まず、穢土転生の死体から情報を聞き出すくだりは伝えてはならん。そして、大蛇丸の監視が届く場所で術を使用する場合は、死体は大蛇丸の実験体のみを利用しろ。そうすれば、大蛇丸の資料や本人の生前から術の情報を聞き出したと言い訳ができるからな。それに大蛇丸の実験体を殺して利用すれば、敵の戦力を減らしつつこちらの戦力を増やすことにもなる。一石二鳥だ。実に効率が良い。この術を使うことの注意とメリットは大体こんなところだ。分かったか?」

 

 分かんない。アンタの発想はぶっ飛びすぎてて全然理解が及ばない。効率が良いのは認めるが、流石にその戦術は人間を辞めすぎてはいないだろうか。

 

 私が青ざめた顔を向けると、扉間様は流石にばつの悪そうな顔をして頬を掻く。

 

「いいか多由也。これは戦争なのだ。しかもこちらは戦力が圧倒的に足りていない。であれば、手段を選り好みする余裕など無いのだ。使えるものなら何でも使わなければならん。それに貴様の場合、ワシを召喚している時点で今さらだろう」

 

 それを言われてしまうと確かにそうだ。私に扉間様の戦術をドン引きする権利は無い。私もすでに、生存戦略という形でそういった罪を犯している身の上だ。その上、忍としての生活が長く続いたせいで「敵」を殺すことに関して私は何の躊躇いも覚えない。そして私にとって音隠れは「敵」なのだ。ならば、「敵」を殺すことに、私は葛藤を覚えるべきではない。

 

 大体、アジトの実験体を好きに使って良いと言ったのは大蛇丸様なのだ。ならば遠慮なく、好きに使わせて貰うことにしよう。

 

 最後に扉間様は私の前に、十数本の巻物を並べた。

 

「? ……なんですこれは?」

 

「ワシが世界を廻るついでに収集した有望な忍の遺伝子情報だ。貴様の話に出てこなかった忍の内、ワシが生前目をつけていた血継限界や秘伝忍術を持つ忍を集めてみた。大蛇丸の目の届くところでは使えんが、何かの役には立つだろう。取っておけ」

 

 いや、扉間様。アンタ何やってんだよ。世界を好き勝手放浪して何してんのかと思ったら、墓荒らしなんてしてたの? 

 

 もう、突っ込む気力すら湧いてこない。この人本当に好き勝手やりすぎだよ……。やることが完全に悪役のそれだ。

 

 この男が原作主人公の味方側の人間だという事実が本当に恐ろしい。そんな理不尽があって良いのだろうか。そもそも少年誌に載せて良い人間じゃないよ? この人。

 

 そんなことを思っていた私は、とうとう我慢ができなくなって、ボソリとつぶやいた。

 

「……そんなんだから卑劣様とか呼ばれるんですよ」

 

「一体誰がワシのことをそう呼んでいるというのだ?」

 

 

 

 


 

 

 

 

 と、言うわけで。

 

 雷撃によってその姿を現した、イカれたメンバーを紹介するぜ! 

 

 半ばやけくそ気味にテンションを上げながら、私は眼下で角都を追い詰める三人の忍に目を向ける。

 

 光明セン。雲隠れに伝わる光明一族の末裔で、雷遁と水遁を組み合わせた血継限界である『光遁』を操る忍。系統としては嵐遁の亜種に属する血継限界であり、嵐遁と似たようなレーザービームを放つことができる。そして嵐遁との違いとして、光学迷彩による隠形を行うこともできるのがこの血継限界の特徴だ。自分や他人の姿を自在に消すことができ、三人の穢土転生の姿を隠していたのもこの術によるものだ。ただしこの隠形は、術の元となっている雷遁か水遁のチャクラ性質を過剰に浴びると解けてしまうという弱点がある。雷遁で角都を貫いたときに腕だけ迷彩が解けたり、角都の雷遁で術が解けたのはそのせいだ。

 

 水掛綿飴。湯隠れの里近くに伝わる水掛一族の末裔で、土遁と水遁を組み合わせた血継限界である『泥遁』を操るくノ一。土遁と水遁の組み合わせである血継限界本来の姿がこの泥遁なのだが、有名な千手一族の『木遁』の出来損ないとして迫害された歴史があり、一族は衰退の一途を辿っている。地形を広範囲で泥状に変化させる術や、形態変化の応用がしやすい硬度変化の自在な泥を扱うことに長けていて、しかもこの泥は熱に強い耐性を持つ。火遁の面を絡め取ったのはこの忍の技によるものだ。

 

 篝火ボイラ。砂隠れに伝わる篝火一族の末裔で、火遁と風遁を組み合わせた血継限界である『灼遁』を操る忍。高熱を帯びた炎の球体を自在に操り、対象の水分を蒸発させミイラ化するというのが本来の灼遁だが、この男の灼遁は特に熱が強く、ミイラ化の先である炭化にまで至ってしまうほどの術の威力を誇っている。砂隠れの上役を殺して里を抜けた抜け忍であり、砂隠れの手配書では4000万両の賞金が懸けられていた。風遁の面を炭化させたのはこの忍の術によるものだ。

 

 以上三人。この三人は私の暮らしている音隠れ南アジトで収容されていた実験体の中でも、特に優秀な血継限界を持っていた忍達だ。原作でもさっぱり見覚えがなかったし、いてもいなくても問題ないだろうと思ってきゅっとしてきた私の穢土転生コレクション最初の三人だ。今日までにこいつらとあと四人ほど適当なのを見繕ったので、生け贄と合わせて十四人実験体をやっちゃったことになる。うーん。私も随分と極悪非道になっちまったもんだなー。まぁ、どうでもいいんだけど。

 

 穢土転生の傀儡人形。私は霧隠れの術を発動し、木の影に隠れた瞬間にこの三人を口寄せして直ぐに光遁の忍の光学迷彩で姿を隠すと、角都の術が届かなそうな距離まで後退させ、その後チャンスが来るまで待機させていた。この術の便利なところは、笛の音で操らないと精密な動きはできないが、単純な命令だけなら穢土転生本来の拘束でも十分実行可能だという点だ。お陰で私は角都に一切バレることなく、仕掛けを用意することができたというわけだ。

 

 光学迷彩による不意打ちは魅力的だが、前述の通りこの光学迷彩は雷遁と水遁によって解けてしまうため、仕掛けを確実に発動するためにはこの二つの仮面が他所を狙っている時に三人を動かす必要があった。

 

 そうして、再び空に飛び上がった私に角都が注目した瞬間、私は笛を取り出し、水遁と雷遁の仮面がこちらを狙ってきたのを見計らい、これ幸いと笛の音で三人を操り効率の良さそうな位置に移動。一番隙が多い水遁の面と、超高範囲攻撃が厄介な火遁、風遁の面を優先的に狙わせてもらった。

 

 これで、角都の心臓は残り二つ。雷遁の面と、土遁の本体。雷遁の面は良いとして、問題は本体の方だ。原作でカカシ先生が千鳥で心臓部分を貫いていたのに水遁の面しか破壊されていなかったところを見るに、本体の心臓がちゃんと本来の位置に収まっているとは考えにくい。むしろ、角都の場合当然の用心として心臓の位置を変えている可能性が高く、その場合、一転集中の突きでは心臓を正確に貫くのは難しい。『土遁・土矛』が基本的に雷遁でしか貫けず雷遁の最大攻撃力を発揮する戦法が突き攻撃であることを考えると、その点においても角都は防御面において隙なく気を配っていると言える。ナルトの『風遁・螺旋手裏剣』は、あの時角都を唯一全身死滅させることのできた例外中の例外忍術だったのである。

 

 だが、現状は圧倒的にこちらが有利だ。私の笛の音『魔笛・人形音傀儡』は、穢土転生を操ることを前提に、()()()()()()()()()()()()()()。角都の場合さっきまでは体内にもう一匹の化け物がいたから楽に幻術返しができていたが、今はそうは行かない。幻術返しはできていても、常に幻術返しに気を配らなければならない現状では土遁の術をそううまく使うことはできないだろう。つまり現在、角都が万全に動かせる戦力は雷遁の化物だけだ。

 

 雷遁の攻撃は光遁使いの雷遁で受け止めることができるし、灼遁使いは風遁の性質変化を併せ持つから、雷遁に対して相性がいい。泥遁使いで角都本体を足止めしつつ先に雷遁の化物を潰し、後からじっくり角都本体の心臓を探っていけば良い。

 

 間違いなく、王手だ。

 

 私が勝利を確信し手に汗を握ると、角都は天を仰ぎ見て、私を睨み付け、そして言う。

 

「降参だ。撤退する」

 

「あ?」

 

 降参? 撤退? 今そう言ったか? 

 

 冗談じゃねぇ。今いいとこなんだ。こんな中途半端なところで勝負を捨てられて堪るかよ。

 

 いや、でも良いのか? 角都が撤退すると言っているなら、それはそれで良いようにも思える。

 

 勝負は退き時が肝心だ。正直、私は角都を殺したい訳ではないのだ。歴史はそんなに変わらない方がこちらにとってメリットが大きい。

 

 そう思っていると、雷遁の化物が素早い動きで角都の方へと動き、角都と融合する。

 

「本当に、割に合わん。500万両と心臓三つではとてもではないが釣り合わん。残りの二つも奪われるとなっては尚更だ。ここは、逃げさせてもらう」

 

「逃げられると、思ってんのか?」

 

 私の笛の音と共に、三人の血継限界の忍が印を結ぶ。例え雷遁の化物が角都の体内に逃げたとしても、角都が詰んでいるという事実は変わらない。

 

 逃げられるものなら逃げてもらおうじゃないか。

 

 ただし、私の全力から逃げられるのならな。

 

「逃げるさ。オレは、撤退戦を得意としていたから今日まで生きてこれたのだ」

 

 バチッ! と、角都の全身に雷遁のチャクラ性質が宿る。

 

 あれは、『雷遁チャクラモード』!? 

 

 雲隠れの雷影、エーが代々得意とする移動性能と攻撃性能と防御性能を同時に高める身体強化! 

 

 三代目雷影はあの術によって最強の矛と盾を体現し一人で尾獣と戦えるとまで伝えられ、四代目雷影はあの術によって、忍の中でもトップクラスの瞬身を操ることができたと言われている。

 

 あんなものまで使えるのかよ! どんだけ技のレパートリーが豊富なんだ! 

 

『光遁・励挫尾射舞(レイザービーム)

 

『泥遁・泥底無』

 

『灼遁・過蒸殺』

 

 

 三人の忍が一斉に術を発動する。角都へと光線が発射され、泥が足元を浸食し、複数の灼熱の球体が次々に全身を焼き殺そうと囲み、迫る。

 

 角都は、その全ての攻撃に対応した。

 

 口から大量の触手を噴き出して光線を受け止め、泥が侵食する前に地面から超スピードで飛び上がり、迫り来る灼遁の球体を飛び越える。

 

 そしてそのまま、角都は森の中へと突き進んでいく。

 

「逃がすか!」

 

 私は風遁のチャクラを翼から放出し、角都に負けじと高速度で飛翔する。しかし、それでも角都のスピードは目で追い切れない程に速く、差が開いていく。

 

 やがて角都は森の中で倒れ伏す飛段を見つけると、瞬時にその身体を拾い上げてさっさと走り去ってしまう。後を追いかけようと思ったが、飛段が倒れていた場所の側で木の幹に寄り掛かっていた君麻呂を見つけ、私は追跡を諦めて君麻呂の前に着地した。

 

「ああ、多由也……。無事だったんだね。良かった」

 

「大丈夫か君麻呂!? どこか怪我は!?」

 

「はは。大丈夫だよ。ただのチャクラ切れさ。多由也の方こそ大きな怪我も無いようで、良かった」

 

 力無い声で君麻呂が笑う。どこからも血が出ている様子はないし、どうやら本当にチャクラが切れ掛かっているだけのようだ。

 

 本当に、飛段を完封したのか。

 

 少ないチャクラで一体どうやったのか是非とも聞いてみたいところだが、どうやら今はそれどころでは無さそうだ。私はぐったりとしている君麻呂をお姫様だっこの要領で持ち上げて、翼を広げる。

 

「多由也。これ、少し恥ずかしい」

 

「文句言うなよ。これが一番手っ取り早いんだから」

 

 私は君麻呂を抱えたまま空に飛び上がり、アジトへと帰還するのだった。

 

 『暁』のメンバーを正面から打倒したという、圧倒的な戦果を持ち帰りながら。

 

 

 

 だからだろうか、それから二週間後に、私達があの任務に参加させられたのは。

 

 『暁』に対抗できたという事実が、大蛇丸様の中の私達の評価を鰻登りに増加させ、同時に大蛇丸様自身のやる気を急激に高めたお陰で、とうとうあの事件が起きる。

 

 君麻呂が復調し、私がまたもや扉間様との修行をほっぽって君麻呂との戦闘訓練に興じている時に、その知らせは届いた。

 

 伝書用の忍鷹が私の下へと飛来し、私は君麻呂との訓練を一時的に中断してその足に括り付けられていた連絡を受け取る。

 

 その連絡の内容は、任務の伝達書だった。

 

 カブトさんの筆跡で暗号化されたその文章を君麻呂と二人で読み解くと、そこにはこう書いてあった。

 

 

『大蛇丸様がうちはイタチの確保に失敗。『暁』による追っ手を撒くために君麻呂、多由也の両名は至急任務に参加されたし。決戦の場所は風の国。東の大砂丘』

 

 

 

 どうやら遂に、大蛇丸様が『暁』から脱退する時が来たようだった。

 

 予想外にも、その一連のいざこざに、私達を巻き込みながら。

 

 

 

 

 

 ▼次回につづく

 

 

 




ワイは!これが!ずっとやりたかったんだ!!!

と、言うわけで、とうとう多由也が実戦で穢土転生を使い始めてしまいました。怖い。私は卑劣様が怖い。

次回に不穏な空気も有りますし、早速書きたいところなのですが、残念ながら諸事情によって一週間くらい執筆できそうにありません。だから、一週間分まとめて書いてみました(←馬鹿)。

穢土転生された皆さんは全員オリキャラ&オリジナル設定です。特に光遁は存在そのものがオリジナル。そんなに珍しい設定でも無いですけどね。と、言うわけで、vs不死コンビ編でした。メデタシメデタシ。え?角都が強すぎ?良いんですよ。オリジナルオリジナル。

次回!vs○○コンビ!!

地味にアニメとゲームで出来事がごっちゃになってますが、オリジナル時系列ということでお楽しみください。


前書きの一言に対する自問自答。

「うるせー!オレはやりたいようにやるだけだー!」
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