前略。多由也に転生したけど、人生の詰将棋をしている気分です。   作:N-SUGAR

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お待たせしました。vs芸コン編 まだまだ続くよ!

お楽しみください。

注意事項・今回一話がくそ長いです。文章量が三話分ありやがります。あまり長く読むのは辛いという方は区切りの良いところで休み休み読むのが作者的にはおすすめです。

ここで自分に向けて一言。
「まさかオリキャラの紹介にこんなに文量とられるとは…」




第二十三話 旧世代の怪物達。

「モンザエモンという男は、元々街角で一般市民を相手に人形劇を演じる一介の大道芸人だった」

 

 数日前のこと。私はアジトから少し離れた森の中で、生け贄用クローンを使って扉間様セレクションの穢土転生を作る作業をしていた。その背後には扉間様が立っていて、万が一にも暴走が起こらないように、注意深く穢土転生作成の様子を見守っていた。

 

 扉間様は言った。穢土転生の戦術を組み立てるためには、本人から引き出す情報だけでなく、その人物が周囲から見てどういう人物であったのか、客観的な視点からも情報を得ることが大切だと。

 

 だから私は穢土転生を作る傍ら、扉間様が講義する扉間様世代の忍の情報を聞いて、コレクションの理解に努めた。

 

 現在、私はサソリの繰り出した『百機の操演』を穢土転生で迎え撃ちながら、扉間様の話を思い出していた。私の扱う忍の、客観的な人となりを想起する。

 

 今回の戦闘の要。10体の穢土転生を操る初代傀儡操演者、モンザエモン。

 

「戦乱の世がモンザエモンの暮らしていた風の国にまで広まり、自身も戦火に巻き込まれたことで、奴は自分の在り方に方向転換を強いられることになった。そうして、試行錯誤の結果誕生したのが、人を殺すための道具、忍具としての傀儡だ。これが後に、『傀儡の術』と呼ばれる忍術の始まりだと伝えられている」

 

 扉間様の人物紹介。それは、今の忍が中々知ることのできない、近代忍界史の黎明期を語るものだった。私は『NARUTO』オタクとして非常に興味深いそのお話に、是非ともすべての作業を中断してでも集中したかったが、時間が限られているからと扉間様にながら作業を強いられ、忸怩たる思いで穢土転生制作をつづけていた。

 

「ここで忘れてはいけないのは、モンザエモンの傀儡操作のそもそもが人形による演劇を原点としている点だ。モンザエモンは傀儡操者である前に一人の役者なのだ。故に、奴の操る傀儡には、他の傀儡使いにはないある特徴がある」

 

 私は扉間様の言葉を頭の中で反芻しながら、目の前の光景に目を向ける。モンザエモンが操る穢土転生達に起こった「異変」を前に、扉間様の言葉を実感として咀嚼する。

 

「蒸して、溶かして、沈める。いつもの作業だ。下らない。人間が相手でないだけ、まだマシか?」

 

「ウワハハ! 相変わらず拗ねてやがるなお前は! オレたちゃただの軍人よ。与えられた任務をこなすのが仕事なんだ。だったら楽しくやらにゃあ、人生の損ってもんだぜ!」

 

「うざい。うるさい……。作業だ仕事だと言うなら、余計な口を開かずにクールにできないのですか。その口、氷漬けにしますよ」

 

 霧隠れの忍。照美ヨウが陰気な影を顔に刻み、鬼灯秋月がそれを豪快に笑い、雪麗が眉をひそめて苦言を呈する。

 

「よっしゃ3匹目! ちょこまか動いて気持ちワリィ相手だが、やっぱりオレの敵じゃねェな! 瞬殺だぜ瞬殺!」

 

「たかが3匹で調子に乗るな兄上。オレはもう5匹目だ。つまりオレの方が凄い」

 

「あァ!? クロイてめぇ、そりゃあ、喧嘩を売ってるってことで良いのか? なら、どちらが多く狩れるのか勝負と行くか?」

 

 雲隠れの忍。夜月ワルイが傀儡人形を粉砕して勝ち誇り、夜月クロイが傀儡人形を吹き飛ばして自分の兄を挑発する。

 

「あぁ! ごめんなさい! 美しいお人形さんがまたグズグズに! ごめんなさいごめんなさい! アタイ、どうしてもきれいに壊すってことができなくて!」

 

「そんなことにこだわる必要もなかろう。ほれ。敵の動きを封じたぞ。さっさと止めを刺せい」

 

 岩隠れの忍。フヨウが傀儡人形を触れた端から腐らせ嘆いているのを、シカヌマが嗜めながら傀儡にセメントを吹き掛ける。

 

「四弘誓願。心なき傀儡を成仏させてやるには、果たしてどのような法理を用いればよろしいのでしょうな?」

 

 砂隠れの忍。舜静が身体を砂へと変化し、敵の攻撃をすり抜けながら熱で水分を蒸発させ、人傀儡をミイラへと変えていく。

 

「張り合いのねェガラクタどもだ。大国相手にドンパチやったときの興奮はもう、味わえないのかねぇ?」

 

「そうかな? 中々面白い戦だと思うのだが。武骨な機械仕掛けに仕組まれた様々なカラクリ。その造形の深さには感嘆するばかりだ。少なくとも私は、この戦いを楽しめているとも」

 

「テメェはそうだろうよ。チマチマチマチマ戦いやがって。芸術鑑賞会じゃねェんだぞ。もっと派手にぶっとばせ!」

 

 滝隠れの忍、レップウが水遁で形作られた武骨な刀で傀儡を豪快に吹き飛ばし、鉄の国の侍ササキは、次々と迫る傀儡の仕込み絡繰を優雅に受け流しながら、的確にチャクラ糸を斬って傀儡の行動を止めていく。

 

 全員が全員、己の言葉を喋り、実に表情豊かに敵と対峙していた。その全員が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「モンザエモンの操る傀儡には魂が宿ると言われているが、モンザエモンの戦闘は文字通りの演劇だ。奴の操演は完全に「役」を演じきる。傀儡一体一体に固有の役があり、設定がある。傀儡の一体一体に意思があり、考えがあり、癖がある。そういう「役」を、奴は表現する。モンザエモンの真に恐ろしいところは()()だ。何人もの人格を同時に演じ分けるモンザエモンの傀儡操作は非常に癖が掴みにくい。傀儡に人格があるということは、行動にムラがあるということだからな。『傀儡の術』に熟達した忍であってもモンザエモンの手の内や行動パターンを掴むことは不可能だ。奴の傀儡が同じ動きをすることはまずない。複数の傀儡を組み合わせるなら尚更だ」

 

 傀儡使いの原点は人形劇にある。創始者であるモンザエモンの戦闘は、それ自体が一つの演目なのだ。人形にはそれぞれの「役」があり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 傍目から見れば、穢土転生の本人達が自分で喋っているようにしか見えない。だけどそれは違うのだ。その証拠にあの人形達は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人格も行動も完全に生前をトレースしているが、彼らはあくまでもモンザエモンが演じ分ける「役」に過ぎないのだ。プロの演者は、別人の「役」を10役同時に、完璧に演じ分けることを可能にした。

 

 今、私の目の前では10体の穢土転生たちが100体を超える人傀儡を相手に大立ち回りを演じている。文字通り、魂を縛られたはずの人形達に、再び魂が宿ったかのように。

 

 演技による再現だとはいえ、過去に生きた古強者達の戦いがこの目で間近に見られるまたとない機会だ。私は笛を吹いてモンザエモンに演劇を続ける指示を飛ばす傍ら、扉間様の講義を思い出しながら、一人一人の様子をじっくりと観察することにした。

 

 演劇観賞を、するとしよう。

 

 

 


 

 

 

 霧隠れの忍。照美ヨウは、小柄な体躯をした青年だった。

 

 ヨウの目の前には現在、6機の人傀儡が立ち塞がっている。

 

「照美一族は様々な有力一族との婚姻を繰り返し、代々血筋の質を高めてきた霧隠れ有数の名家だ。その中でも照美ヨウは、当時の照美家が産み出した血統の最高傑作だった」

 

 扉間様は、照美ヨウについてそんな風に語っていた。

 

 照美ヨウは火遁、土遁、水遁の三つの性質変化を持つ忍だ。彼はその三つの性質変化を混ぜ合わせ、溶遁、沸遁、そして泥遁の、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。彼の得意とする戦術は、その三つの血継限界の合体技だ。高温の熱を持った蒸気が人体のあらゆる感覚を塞ぎ、蒸気に紛れた酸が身体を溶かす。その上足元は泥で覆われ移動も困難。逃げ場のない戦場形成は広範囲に及び、戦時中は数々の忍軍が彼一人を相手に壊滅させられたらしい。岩を溶かし木を溶かし、起伏を泥で均す彼の前にはあらゆる地形効果が無意味になり、彼の通った後には有機物無機物問わずあらゆるすべてが泥の底に溶けて沈んだという。しかも後に残った泥は溶遁の酸に犯され、ヨウ自身が泥を除去しない限り土地の再利用もままならない始末だったとか。そんな術を地図単位で行使できた照美ヨウは、第一次大戦当時まだ誕生したばかりであった霧隠れの里における、焦土作戦の要だった。

 

 照美ヨウ。その名前から考えるに、彼は明らかに五代目水影である照美メイの先祖か親戚筋に当たる人物だ。そう思って良く見れば、中性的な顔立ちや髪の色なんかに、彼女の面影を感じないこともない。基本性質の得意分野はメイと同じ様だが、ヨウの場合は扱える血継限界がなんだかひとつ多かった。その上扱う術は戦略規模。モンザエモンにしろコイツにしろ、一人で戦争できる忍というのは扉間様セレクションの必須項目かなにかなのだろうかと、その話を聞いた当時私は訝しんだ。この時点で私は、若干この先の話を聞くのが既に怖くなっていたような気がする。

 

「蒸して、溶かして、沈める。蒸して、溶かして、沈める。いつもいつも、ボクはそれだけをやらされる。いい加減飽きてきたよ。どいつもこいつも簡単に溶けやがって。どうせ傀儡なんだから、ボディを溶けにくくするとかできなかったのか?」

 

 フゥー……と、小柄な青年の口から吹き出される蒸気によって、彼に向かって押し寄せる傀儡人形達が軒並みドロリと溶け始め、地面に墜落した端から泥と化した砂漠の底に沈んでいく。目の前の人傀儡六体は一瞬にして溶け落ち、酸の泥の中でわずかに残った原型すらも消失させて行く。これでは後から傀儡を回収することすら不可能だ。照美ヨウは、サソリの傀儡の完全無力化に成功していた。

 

「大体、こんなのボク一人いればそれで十分じゃないか。なんで10人編成なんだよ。味方を溶かさないように術の範囲を制限しなきゃいけないなんてナンセンスもいいとこだ。仲間なんて邪魔なだけなんだよ本当。全部溶けて消えてしまえばいいのに」

 

 グチグチとヨウが文句を垂れる。えっと……。あのさぁ。それ、誰に向かって言ってんの? もしかして私? 10体も無駄に穢土転生を召喚した私に向かって言ってんの? だとしたらそれはすみませんねぇ! 人選が雑で! 何しろ私、お前らみたいな化け物集団は今回初めて使うもんだからさぁ! 

 

 あくまでもモンザエモンが無意識に演じているだけの筈なのに、本当にヨウがそう思っているのではないかという錯覚を覚える。というか、これを操って演じているモンザエモンって、これ本当に意識ないの? 意識ない状態で、こんなことできんの? 私が笛を吹きながら自分の術に疑問を覚えていると、

 

「ガッハッハ! そう言うな照美の小僧。たまには仲間と共に戦うというのも良いものだ。戦争には戦友が付き物なんだぜ? お前、もしかして今までボッチだったのか? 可哀想に」

 

 バン! と、ヨウの背中におもいっきり張り手を食らわせながら、穢土転生の一体である大柄なおじいちゃんが、豪快に笑い飛ばす様子が目に入る。

 

 あの老人は、確か──。

 

 

 


 

 

 

 

 霧隠れの忍。鬼灯秋月は、ちょび髭眉無しが特徴的な大柄な老人だった。

 

 現在彼の目の前には、3機の人傀儡が立ちはだかっている。

 

「鬼灯一族は、霧隠れの里で最も強大な勢力を持つ名門一族だ。奴等は強力な水遁系忍術や陰遁を操る。木ノ葉で言うところのうちは一族に近い連中だな。中でも戦乱の世において鬼灯一族の当主を務めていた鬼灯秋月は、後に一族の秘伝忍術となる『水化の術』を発明した忍だった」

 

 再び扉間様の講義が想起される。鬼灯秋月。鬼灯水月や鬼灯満月の曾祖父世代にあたる忍で、二代目水影鬼灯幻月の実の父親にあたる人物だ。彼は戦国時代において、初代水影白蓮に次ぐ実力を誇っていたと言われている。

 

「直接戦闘において有名な逸話は特にないが、統率力とカリスマ性、それに作戦立案能力においては当時奴の右に出る者は霧隠れにいなかった。白蓮が自分の護衛に就けていた男を二代目にしようと決めていたところを、奴の一言でいつの間にか自分の息子である幻月を二代目に就任させていたなんてエピソードは笑い話として五影の間でよく話題になっていたものだ。というか、幻月が五影会談で話題に困ると大抵この話をしていた」

 

 何だその面白エピソード。霧隠れって初代の頃から割と秘密主義だった筈なんですけど、どうしてそんな面白エピソードだけ広めちゃうのかなあのおっさん。まぁ、あのおっさんならそんなこともするか。親である秋月もなんだか気さくな感じだし、どう考えても霧隠れの里に性格が合ってないんだよなぁ。鬼灯親子。

 

 私が向けている目線の先では、秋月がヨウだけでなく、雪麗までも巻き込んで、二人の肩を叩きながら自分の後輩に言葉を投げ掛けていた。

 

「ヨウも麗も、もう少し人付き合いってのを学ぶべきだな。そうすりゃ人生もちったぁ楽しくなる! ほれ、ヨウ。あの傀儡見てみろよ。けっこう美人じゃないかアレ? お前、どの女がタイプとかあんの? 麗は男のタイプとか発表しちゃう?」

 

「どうでもいい。大体ボクには妻が三人いるんだ。優秀な血筋を掛け合わせるとかなんとかいうお家の事情でね。女とか色恋とか結婚とか、もう懲り懲りなんだよ」

 

「下品極まりませんね。老害は老害らしくさっさと口を閉じて死んでくださいな。なんなら私がお手伝いしますよ?」

 

「ははぁ。おめーらさては仲良くなる気が微塵もないな? はぁ……。気の使い甲斐のねぇ奴等だこと」

 

 本当に霧隠れの忍らしくない明るい性格だ。だけどその性格は、残り二人の霧隠れ仲間には全く受け入れられていないようだった。辛辣な言葉を浴びせられかけて、大柄なおじいちゃんがどんよりと肩を落とす。

 

 だが、明朗闊達なジジイにとってそんなことは日常茶飯事だったようで、秋月はすぐに気を取り直すと、何事もなかったかのように二人に再び話しかけた。

 

「ところでお前さん等、一度シカヌマのジジイのところで『軽重岩の術』を掛けてきてもらった方がいいぞ。あの術スゲー便利だからな。何がスゲーってほら、この通り」

 

 フワリ、と、秋月の身体が浮き上がる。どうやらあのジジイ、戦闘のどさくさに紛れて既に岩隠れの忍であるシカヌマから術を掛けて貰っていたらしい。

 

「相手の傀儡はチャクラ糸やら仕込み絡繰やらで空を飛んで制空権取ってきやがるからな。お前ら二人は最強と最悪に優秀だが、機動力ってやつがねェ。せっかく今回はそれを補える手段があるんだから、積極的に使っていかねーと」

 

 秋月は空中で『水鉄砲の術』を発射し、一発の弾丸で目の前の3機の傀儡を一度に撃ち落としながらアドバイスをする。ふざけているように見えて、老人の実力は普通に凄まじい。繰り出すアドバイスも、実に的確なものだった。

 

 だが、当の言われた二人は取りつく島もなかった。

 

「そんなの要るわけないでしょう。ボクが本気を出せばここら一帯は酸の霧で覆えるんです。いざともなればそれで敵味方全員溶かし尽くすんでお構い無く」

 

「アナタ、クソザコ白蓮以下の実力しかない癖に私に指図する気ですか? 空中にいる敵などこのように──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 雪麗が何気ない様子で()()()()を結ぶと、次の瞬間、彼女の脇に巨大な氷柱が出現する。20メートル以上の上空を飛び回っていた傀儡人形達が、()()()1()3()()()()()()()()()()()()()()

 

 その光景を前に、流石の秋月も苦笑いを浮かべて言葉を失い、照美ヨウは眉をひそめ、面白くなさそうな様子で氷柱を見上げる。

 

 彼女の氷遁は、どうやら同時代を生きた二人の忍から見ても、一目置かざるを得ない力を持っているようだった──。

 

 

 


 

 

 

 霧隠れの忍。雪麗は、白髪を肩まで伸ばした妙齢の女性だった。

 

 彼女の前には現在、3機の人傀儡が新たに出現していた。

 

「雪麗は、霧隠れ史上最悪の抜け忍として、忍界の歴史から抹消されたくのいちだ」

 

 扉間様の言葉が脳裏に甦る。霧隠れ史上最悪の抜け忍。儚げな顔立ちをした彼女からは、そんな肩書きを全く想像することはできない。だけど、扉間様は確かに、彼女を指してそう言った。

 

 第一次大戦当時、氷遁の血継限界を操る雪一族の中でも最強と謳われ、同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 彼女の実力を端的に現す言葉として扉間様が私に伝えた彼女のエピソードは、私の理解の範疇を飛び越えていた。

 

「この女に止めを刺したのはマダラの奴だ。忍界全体において危険視されていた奴の討伐にマダラが赴き、最終的に山三つと町二つを地図から消し去る大激突の末、こやつはその生涯を閉じることになる」

 

 うん。何度思い返しても、ちょっと理解が追い付かない。何で二人の忍が戦った結果、山三つと町二つが地図から消えることになるんだよ。いちいち規模がでかすぎるんだよ。当時この世界には一体何が起こってたんだよ。

 

「奴の氷遁は雪一族の中でも飛び抜けて強力だった。事情を知った今から思えば、大筒木一族から受け継がれてきた血筋が先祖返りでも起こしてたのかもしれないな。奴は行動も思想も、実力に比例するかのように凶悪だった。何しろマダラによって討伐されるまでに、三つの国が奴の手によって氷漬けにされたのだからな。しかもその理由は「周りを氷漬けにしないと落ち着かないから」等という理解不能な動機だったという。忍界全体で利害問わず、奴が全ての国や里から指名手配されたのも、頷ける話だろう」

 

 頷けるっつーか。扉間様の話す彼女の行動に、何一つ頷けるところがない。「落ち着かないから」で国が三つも滅ぼされちゃ、流石に滅ぼされる側もたまったもんじゃない。しかも散り際に更に一つ国を跡形もなく滅ぼしているなら尚更だ。最後の一つは、もしかしたらマダラのせいかもしれないけれど。

 

 雪一族きっての異端児であり、霧隠れの里に「雪一族は危険だ」という認識を植え付けた恐怖の象徴。雪麗。雪一族らしからぬ白髪を腰まで伸ばした、どこか神秘的で美麗な見た目とは裏腹に、彼女の内面には、あまりにも凶暴な怪物が存在していたようである。

 

「はぁ……。どうして私の生きる世界というものは、何処も彼処も騒々しいのでしょう」

 

 ため息をつく麗の前に迫る三体の人傀儡が、口から一斉に火遁の術を吹き出す。どうやらサソリは彼女が氷遁を使うのを見るや否や、氷遁と相性の良い火遁の傀儡を彼女の元に回したようだ。

 

「鬱陶しい」

 

 だが、麗が軽く手を振り払うと、氷の波が押し寄せ炎を覆い尽くす。人傀儡の放つ火遁は並の上忍のそれを遥かに上回るものだったが、そのレベルの火遁三つでも、彼女の氷を止めるには至らなかった。

 

「チッ。術の範囲が広すぎるな。オレにまで届きかねねェ……!」

 

 傀儡どころか自分にまで迫りかねない氷の波を前にしたサソリは、超スピードで糸を操り、更に3機の傀儡を呼び寄せ風遁を重ねがけする。それによって炎の勢いが更に増し、氷の波が漸く傀儡達の目の前で停止する。

 

「はぁ……。忍の質が落ちましたね。私が最後に戦ったうちはナンチャラは、一人の炎で私の氷と張り合って見せましたのに」

 

『氷遁・氷塊崩し』

 

 麗がここに来て始めて、()()()()()()()。大きく吸い込み吐き出した息は吹雪となり、氷の大きさをみるみる巨大化させていく。

 

 やがてちょっとした氷山と見紛うばかりに巨大化した氷塊は、自らの重さに耐えきれず崩壊を始める。岩雪崩のように降り注ぐ巨大な氷の雨は傀儡の火遁で溶かすこともできず、傀儡達を生き埋めにする。

 

 氷山に押し潰された傀儡達は、その後ピクリとも動かなくなった。

 

「あぁ。これで少しは静かになりました。やはり、こ五月蝿いハエは氷漬けにするに限りますね。飛び回るハエなど気持ち悪いだけですが、動かないと分かっていれば、少しくらい観賞しようとする気にもなれるというものです。お人形なら尚の事、動かない方がずっと素敵ですのに……」

 

 傀儡使いの生き様を全否定するようなことを言いながら、麗はため息を吐く。

 

 彼女は静寂を何よりも愛する忍だった。自分の周囲で動き回るものが我慢できず、全て氷漬けにして動きを停止させないと気が済まない。動かないものは永遠の静寂を保ち続ける。動かないものに煩わされることなど有りはしない。余計な情動やしがらみを全て排除した洗練の美学。彼女の美学は、見方によっては、一つの芸術として十分成立しうるものだった。だが、彼女の美学は人間社会とは全く相容れない。自身の美学を周囲に押し付ける力を持っていた彼女は、世間からすれば危険人物以外の何者でもなかった。誰にも理解されず、周囲から孤立した。()()()()()()()()()()()()()()()()、遂には当時最強の一角であったうちはマダラによって打倒されることになる。

 

 モンザエモンは彼女の情報を元に彼女の性格をトレースしているが、彼女の行動までトレースしているわけではない。私が思うに、彼女の性格を考慮するなら彼女の行動は、もっと過激なものであってもおかしくない。もし彼女が完全な自由意思で行動していたなら、今頃周囲の現状や仲間などお構い無しに、砂漠全土を氷漬けにしていたに違いない。他の連中にしても同じことが言えるが、モンザエモンのトレースが優秀であればあるほど、その性格と言動には違和感が生じることになる。人の心を縛った上で人の心を演じることは、ここまで不自然な行為なのかと、私は彼女の戦いぶりを見て感じ取る。私がそう感じ取れてしまうくらい、彼女は感情と行動の解離が大きな個体だった。

 

 だけど、それとは逆に、現状に対して一切の違和感を感じない個体も存在する。雲隠れの二人の忍は、まさにそれだった。彼らは言動があまりにも自然すぎて、穢土転生であるということをともすれば忘れそうになる。モンザエモンの演技であるということもそうだ。あまりにも自然。感情と行動が完璧に一致した人形は、人に演技であることを意識させないのだ。

 

 

 


 

 

 

 雲隠れの忍。夜月ワルイと夜月クロイの兄弟は、金髪褐色が印象的な、忍者という存在に付属する日本人的な印象からは少し外れた容姿をした青年達だった。

 

 7機の人傀儡が、彼らの周囲を取り囲んでいた。

 

「夜月ワルイと夜月クロイの二人は、金角部隊の追跡班で活躍していた忍だ。手練れ揃いの金角部隊の中でも、奴等は有数の実力を誇っていた」

 

 雲隠れの伝統的な血筋である夜月一族であるワルイとクロイの兄弟は、そのあまりの執拗さから『蝮』の異名で知れ渡るほどの、追跡と捕縛のプロだったと言われている。二人共が感知タイプの忍で、同時に雷遁の性質変化を極め、雷遁チャクラモードによる高速移動を得意としていた。彼らの追跡を逃れることのできる忍は当時の目線から見てもそう多くはなかったという。

 

「その上、夜月一族の秘伝忍術の中には、我々にとって非常に厄介な術があった」

 

 扉間様は少しだけ苦々しさを滲ませた表情で二人の忍について語る。それもそのはず。ワルイとクロイの兄弟が所属していた『金角部隊』と言えば、扉間様が亡くなる直接の原因になった忍部隊である。第二次忍界大戦の少し前、雲隠れの里と同盟を結ぼうと扉間様が赴いた雲隠れでクーデターを起こし、二代目雷影を暗殺し、扉間様を瀕死に追い込んだ忍部隊。主な実行班は金銀兄弟だったらしいが、部隊の追跡力の要であったワルイとクロイの兄弟は、扉間様を追い詰めるのにかなり大きな一役を買っていたらしい。

 

()()()()()()()。基本的には空間断裂系の時空間干渉系忍術か、対象の感知や術式演算を妨害する『邪民具の術』の類いのことを指す。あの二人の場合は、雷遁系の『邪民具の術』による電波妨害で敵の感知を撹乱し、同時に時空間忍術発動の妨害を行うことができた。我々の小隊が持つ緊急避難用の長距離『飛雷神』には、繊細なチャクラコントロールと感知による空間演算が必要不可欠だった。クーデター直後の戦闘でチャクラの大半を失っていた我々は、奴等の術から逃れることもできずに逃げ道を失うことになった」

 

 その時の話は私でも知っている。猿飛ヒルゼン、志村ダンゾウ、うたたねコハル、水戸門ホムラ、秋道トリフ、うちはカガミ。追い詰められた扉間様は、部下六名を逃がすために自らを囮とし、金角部隊を一人で引き付けることで小隊の皆を逃がしたのだ。猿飛ヒルゼンが三代目火影として指名されたのもその時のこと。扉間様は20名の手練れで構成された金角部隊を一人で引き付け、瀕死の重症を追うも、仲間を逃がした上で自身も逃げ帰ることに成功している。扉間様によれば里に帰ってすぐに力尽きてしまったという話だったが、それでもあの二人を擁する金角部隊から部下を逃がした上で一人で逃げ切ったのは素直に凄いことだと思う。

 

 何しろ、

 

「おい。クロイ」

 

「分かっているさ兄上」

 

 7体の傀儡に囲まれたワルイとクロイは互いに呼び合って、作戦を確認することもなく二人別々の印を結ぶ。

 

『秘術・雲隠れの術』

 

『秘術・電波邪民具』

 

 ワルイが口からモクモクと吐き出した雲が周囲を覆いつくし、サソリの視界から二人が隠れる。その上、クロイの出した雷遁の妨害電波が二人の気配を完全に断ち、チャクラ感知を妨げる。

 

 ワルイクロイ兄弟の代表的な得意戦術。『クロイワルイ考の陣』。文字通り二人が考案した戦術で、敵の視界を塞ぎ、チャクラ感知を塞ぎ、しかして自分からは一方的に感知を行って敵を攻撃できるという必殺の陣形だ。どんな状況からでも有利に持ち込むことができ、相手を撹乱、確殺できる。特に雷遁チャクラモードを自在に操る二人がこの戦術を取ると、勝負は本当に一瞬でついてしまうと言われている。扉間様が満身創痍の状態からどうやって金銀兄弟とこの二人の追撃から逃れたのか、不思議で不思議で仕方がない。

 

 雲が晴れ、再び姿を現した二人の周囲には、7体の人形が無惨に打ち砕かれ転がっていた。

 

「3匹! またもや瞬殺してしまったな。やはりオレは天才か……」

 

「たかが3匹で調子に乗るな兄上。オレは4匹だ。つまり合計9匹。兄上は合計6匹。明らかにオレの方が凄い」

 

「まーたお前はそうやって兄を挑発する! 良いとも! その喧嘩買ってやる! まだ敵はいるんだ。逆転の余地は十分にあるんだからな!」

 

「しつこいぞ兄上。もはや勝負は見えている。兄弟勝負の通算ではまだ兄上が勝っていただろう。今回は素直に敗けを認め、オレに酒の一杯でも奢るのが兄としての威厳というものでは?」

 

「はっはー! 執拗すぎて兄弟揃って『蝮』の異名を取ったっつーのに、勝利を諦めるわけねーだろうが。ほら! 次だ次! どんどん行くぞ! オレ達の牙から逃れられる奴などいやしねぇってことを知らしめてやろうぜ!」

 

「当然だ。金角様銀角様を除いて我等兄弟に敵う者などなし。やるのならどんな雑魚相手でも徹底的に、だ」

 

 兄弟はそう言って、他の穢土転生と戦闘を続けている傀儡に狙いを定めて走り出す。性格と行動に一切の矛盾なく、実に生き生きとした演技だった。こういった場において、やはり一番順応しやすいのは純粋な戦闘狂キャラということなのだろか。本編を思い返しても、戦闘狂のキャラは穢土転生されても状況に戸惑うことなく、素直に戦争に順応していた。言ってはなんだが、ワルイとクロイの兄弟は単純戦闘馬鹿だ。術を応用し作戦を組み立てる頭の良さはあるが、根っこのところでは今も生前も、恐らく戦闘を純粋に楽しんでいたであろうタイプであることに違いはない。そういった人間は、戦闘と言った舞台で演じるには非常に都合の良いキャラクター性であるのかもしれなかった。個人的な憂いや強いこだわりを抱えた雪麗と比較すると、余計にそういった印象が強くなる。そういった面から考えると、この二人は穢土転生として、意識を奪わずとも扱えるタイプの忍の気がしないでもない。

 

 この二人の演技は完璧だった。観客として、一切違和感を感じる所がない。戦闘好きが戦闘を行う。ごく自然な行為であり、行動を過度に制限されているようにも見えなかった。

 

 そんな風に、役どころによって演技の精度に差が生まれるモンザエモンの人形劇であったが、その中でも演技が異彩を放っている忍が存在した。

 

 単純に戦闘狂であればこの場に馴染むというだけの話では収まらない人形も、存在する。

 

 岩隠れのくのいち。彼女は、そんな忍の一人であった。彼女の演技には違和感こそなかったが、しかし、明らかに何かがおかしかった。

 

 

 


 

 

 

 岩隠れの忍。フヨウは、少しくせっ毛な黒髪をボーイッシュなショートカットにした中性的な少女だったが、表情と態度が常に申し訳なさで溢れたナヨナヨとした性格をしていた。

 

 常にオドオドとした彼女に向かって、三機の人傀儡が一斉に仕込み刀を叩き込む。だが、三本の刀が彼女の身体に触れた瞬間、刀はぐずぐずになってボロボロと刃を崩壊させてしまう。それどころか、崩壊は進行し、刀の柄から傀儡本体へと広まって、傀儡を崩壊させていく。

 

「あぁ! ごめんなさい! つい防御してしまったばかりにまた高そうなお人形さんがグズグズに! アタイったら、どうやって弁償すればいいのか……」

 

「襲ってきた相手に弁償もクソもあるかよ。いい加減今やってんのが殺し合いだってことの自覚をしてほしいものなのじゃがなぁ」

 

 眉を八の字にして謝り続けるフヨウに、側で戦っているシカヌマが苦言を呈する。二人の忍は、シカヌマの施した『軽重岩の術』によって宙を浮遊しながら戦っていた。

 

 フヨウは申し訳無さでいっぱいの顔でオロオロと空中を飛び回る。見るからに危なっかしく、その態度だけなら、下忍の新人と思われても仕方の無いような無様な有り様だった。

 

 私には彼女が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「フヨウという忍は当時岩隠れにおいて、()()()()()()()()()()秘伝忍術の実験体の一人にして、その唯一の成功例だった」

 

 私は扉間様の言葉を思い出す。兄者。つまりは千手柱間。あの見るからに気弱そうな岩隠れの少女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、扉間様は言った。

 

 初代火影千手柱間。当時最強の忍として各国から恐れられた扉間様の兄上であるが、恐れられたからと言ってそのままなんの対策も講じないでは、他国はむざむざ戦争に負けてしまうことになる。各国の隠れ里は、柱間の木遁忍術になんとか対抗できないものかと日夜対策を考え、研究していた。その研究は岩隠れの里でも行われており、その結果岩隠れの里が導き出した一つの解答が彼女なのだという。

 

「兄者の木遁は膨大な生命エネルギーの塊だ。威力甚大、変幻自在、範囲広大、効果無数、堅牢頑強、超速再生、チャクラに対する絶対的耐性等々。どの側面から見ても強大無比と表現する他なく、当時の兄者の存在は、敵対者からすれば悪夢以外の何物でもなかった。出会ってしまったらその戦場は諦めろと、いくつもの里が全く同じ触れ書きを出すほどに人々は戦場の兄者を恐れた。当然様々な対策が各里で講じられたが、その殆どが上手く行かないままに終わってしまった」

 

 扉間様の語る兄上の実力は圧倒的だった。元々チートだということは十分理解していたが、一から説明されると本当に頭がどうかしているとしか思えない性能だった。当時の敵対者達には本当に同情するしかないし、角都はどうして逃げ切れたんだという疑問がますます強くなる。だけど、話の本題はそこではない。

 

「砂隠れは古くから砂の守鶴を手中に納めてきたが、それでも戦力が足りずに木ノ葉との明確な敵対を避ける道を選んだ。霧隠れが保護した雪一族による凍土作戦は惜しいところまで行っていたが、肝心の雪一族最強が里抜けし、稀代の大犯罪者となったことで計画が頓挫した。雲隠れは九尾を手中に納めることで対抗しようとしたが、実行部隊の金角銀角は九尾の捕獲に失敗した」

 

 話の本筋。扉間様の語る各里の千手柱間対策はどれもこれもどこかで聞いたことあるようなものばかりだったが、しかしどれもこれもがうまく行かないものばかりだったという。

 

 だが、岩隠れは違った。彼の里は、柱間の木遁に対して一定の対策を施すことに成功していた。

 

 それも、二つも。

 

「一つ目の成功は、なんと言っても塵遁の開発だろう。二代目土影無によって作り出された血継淘汰。それを受け継いだ両天秤のオオノキ。基本五属性のみを用いた中では初の血継淘汰である塵遁は、兄者の木遁であろうと、術が命中すれば容易く消し飛ばすことが可能だった。チャクラ消費が激しく長期戦に向かない、同じ理由から術範囲が限られる等といった弱点さえなければ、兄者に正面から対抗できた当時の数少ない真っ当な木遁対策であったと言える。兄者の木遁と違い、血統にすら縛られず先に繋げられたというのも大きいな。才能が途絶えれば終わるとは言え、転生事情の絡んだ一代限りの突然変異である木遁よりも余程戦力として安定している。全盛期の無やオオノキなどは、兄者が死んだ後など止められる者は誰もいないとまで言わしめるほどの無双ぶりだった。それだけ塵遁の性質変化は強大だったのだ」

 

 だが、先程扉間様が言ったように、塵遁にはチャクラ消費が激しいという致命的な弱点があった。

 

 継戦能力の欠如。命中精度の不安定さ。塵遁が慢性的に抱えることになるこれらの諸問題を補おうとして岩隠れが研究していた術こそが、フヨウの持つ秘伝忍術『腐蝕の術』だったのだという。

 

 フヨウは、岩隠れの里に伝わる蜂を使役する秘伝忍術を持った、上水流一族の系譜に属する忍だ。ただし彼女は蜂を使役することはない。彼女は、上水流一族の宿敵であった木ノ葉の油目一族が持つ蟲の使役術を踏襲することで、体内に数百種類もの特殊なバクテリアを飼い慣らすことに成功した。彼女のバクテリアはチャクラによって活性化させることで、有機物無機物問わず全てを一瞬で腐敗させる。チャクラを食らって活性・増殖を繰り返すバクテリアは広範囲に侵食し、敵のチャクラをも食らって無限に活動し続ける。千手柱間の木遁が形ある生命であり、そして何よりチャクラの塊であるという性質を逆手にとった対応策。少ないチャクラで塵遁並みの破壊を。塵遁以上の攻撃範囲と継戦能力を。そうした思想のもとで開発が進められた『腐蝕の術』は、フヨウというくのいちの誕生によって、一つの実を結ぶ事になった。

 

「だが、結局『腐蝕の術』は、秘伝忍術としての開発には失敗していた」

 

『腐蝕の術』は、現代の岩隠れには存在していない。初代土影が記したとされる禁術の巻物に情報としては存在するが、術を継承している人間は誰一人として存在しない。数百種類に及ぶ腐蝕作用を持ったバクテリアに耐性を持つような忍は、結局フヨウ以外に現れることがなかったからだ。『腐蝕の術』は術としてこの上なく有能だったが、秘伝忍術としてこの上なく欠陥品だった。

 

「『腐蝕の術』が兄者の木遁と正面からぶつかることは一度もなかった。兄者の木遁に強いなどと豪語するような術をわざわざ兄者とぶつける必要を感じなかったからな。故にフヨウはワシが倒した。ワシの水遁ならば腐ろうがどうなろうが関係ない。金属の刃が通ることはなくとも、流動する水の刃を防ぐ術は奴にはない。相手の術を分析するために少し時間は要したが、最終的には水断波の一発で勝負は決まった。術には相性というものがある。奴は兄者に対しては少し強く出れたやも知れんが、ワシからすれば弱点の塊だったという訳だな」

 

 こうして、『腐蝕の術』は後世に残されることなく途絶える事となった。伝承されない秘伝忍術に脅威はない。フヨウ以外の忍が実行すれば、軒並み術者自身が身体を腐らせ即死してしまう術など欠陥品もいいところ。禁術指定され封印されたこの術は、ある意味では木遁に近しい存在だったのだとも言えた。

 

「とは言え、術自体は強力だし、穢土転生なら水断波の一発で死ぬようなこともない。あらゆる封印手段を瞬時に腐蝕劣化させる奴ならば、生半可な術では封印されるといったこともない。穢土転生としての奴は、中々どうして強力な忍になる事だろう」

 

 最後に扉間様はそう言って話を纏めた。自らの手で瞬殺しておきながらも、術としての有用性にはちゃんと目をつけている辺りこの人の目線は公平だ。常に客観的な視点を意識していて、過大や過小な評価を行うことがほとんど無い。

 

「ごめんなさいごめんなさい。なんの役目も果たせなかったアタイみたいな欠陥品が、完成された秘伝の芸術をこんな一発芸で完封してしまって、本当にごめんなさい!」

 

「何だってそんなに卑屈になっとるんだお主は……。前に戦場を共にしたときは、かなり調子に乗ってブイブイ言わせておっただろうに。「サイキョー忍者とはアタイのことだ!」とかなんとか言って」

 

「ひぃ! 黒歴史を掘り返さないでください! 扉間様に完封され諭され、アタイは気付いてしまったのです……。「一代限りの術など所詮は一発芸。一人を倒せば終わる忍術など脅威でもなんでもない。何の成果も残せないのなら尚更だ」。ぐうの音もでない正論とはまさにこの事! アタイは自身の無能さに絶望しました。アタイは二度と調子に乗ることなどありません! だから、もう言葉責めはやめて! どうかアタイを許してください扉間様!」

 

 だから、扉間様のそんな評価を知る私からすれば、フヨウは己の力量を些か過小評価しすぎているきらいがあった。どうやら扉間様に相当のトラウマを植え付けられたようだが、一体彼女の最後に何があったと言うのだろうか……。

 

「何故敵だった忍に敬称を付ける……。いや、まぁ、大体の事情は理解した。千手扉間得意の精神攻撃にでも引っ掛かってトラウマを植え付けられたか。哀れな。若い者に有りがちなPTSDよな。肥大化した自尊心はちょっとした挫折ですぐに根腐れを起こす。大体そんなこと言ったらあ奴の兄などその最たるものだろうに。それは、そこまで気にする程のことなのかのう?」

 

 シカヌマは老獪な忍らしい現実的な評価と考察を下す。しかし扉間様、精神攻撃得意だったんだ……。いや、それが有効な戦術であればあの人は何の迷いもなく実行しそうではあるけどね。穢土転生とか、ぶっちゃけ精神攻撃の最たるものだし。

 

「柱間義兄様(おにいさま)は戦場で大活躍しておられた上に、扉間様によって後々に残る様々な術の下地となられたので立派に役目を果たしておられます。それに比べてアタイときたら、大した手柄も挙げないまま戦死してしまった、何の価値も残せなかった碌でなし……。後世の人達に後ろ指を指され、嘲笑されるのがお似合いの女……」

 

「なぁ。挫折で腐っとるのはまぁ許容するとして、それ以前にもなんかおかしい気がするんじゃよなぁワシ。気のせいだったらいいんじゃけど、致命的に違和感感じるんじゃよ。オニイサマって何よ? 別にお主の兄じゃないじゃろ。千手柱間は」

 

「? だから、義理の兄様(おにいさま)と言ってるじゃないですか」

 

「……分かんない。ワシにはお主の言ってることが全く分かんない! 何? 若者の間では他所様の兄にそーゆー呼び方するのが流行ってるのかの!?」

 

「別に流行ってませんが。あの、頭、大丈夫ですか?」

 

「ワシか!? ワシがおかしいのかこれ!?」

 

 なんだか岩隠れの二人組の会話がおかしな方向に脱線し始めた。モンザエモンの演技がバグったのかと思ったが、そもそも本人から引き出した生前の情報を下地にしてるんだからプロの役者であるモンザエモンが役どころを間違えるはずがない。彼女の意味不明な言動にも何らかの根拠があるはずだ。というか、モンザエモンが演じている以上、本人がああであることはほぼ確実なのだ。

 

 じゃあなんだ? 何が彼女の言動をあそこまでおかしくさせている? 

 

 私の疑問は、彼女によってすぐに明かされることになる。

 

「忍の生き様はその最後の姿によって決まる。アタイは何の成果も残さずに忍としては無意味に死にました。なら、アタイは何のために生きていたのでしょうか。その答えをアタイは、人生の最後に理解しました……」

 

 目を伏せ、胸に手を当てて、感慨に更けるように彼女は呟く。

 

「最後に生き方がはっきりするというのなら間違いない。アタイは、扉間様に心臓を撃ち抜かれて死んだのです。ならばアタイは、()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「「……はぁ?」」

 

 シカヌマのおじいちゃんと私の心の声がシンクロする。ただし、その意味合いを少し違えて。

 

 シカヌマのそれが、話をまるで理解できていない第三者の疑問の声であるのに対して、私のそれは、ある意味では同類として、大方の想像がついてしまったが故に発せられた困惑の声だった。

 

 えぇ……。この子、マジで言ってるのか? 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! なら、こうしてこの世にアタイが甦ったのなら、やることは一つ! 扉間様を見つけ出し、アタイの人生観を180度ひっくり返した責任を取って貰う! 死んだ後になって生きる目的ができるなんてアタイらしい惨めな間抜けさだけど、死んだ後復活できたなら、まだ挽回のチャンスは残されているはずです!」

 

「……ダメだ。わからん。イシカワのダジャレよりも意味不明だ。最近の若者の話にはついていけそうにない」

 

 シカヌマは頭を抱えて考えることを放棄した。確かに意味がわからない。この女、普通自分を殺した相手にそんな感情抱くものか? 

 

 私は理解する。この女間違いない。

 

 岩隠れのくのいちフヨウは、扉間様の夢女子だった。厳密には夢女子の定義とは少し違う気がするが、そう表現するしかない有り様だった。

 

 シュルシュルシュル! と、傀儡が三機、封印術を施した布、鎖、土塊を一斉にフヨウに巻き付け纏わせる。だが、それらの封印はフヨウに触れた先から腐っていき、ボロボロと崩れ落ちる。

 

「フフ……。いいんです別に、アタイの気持ちなど理解してもらわなくても。むしろ理解してほしくないです。アタイの全てを奪い去った扉間様、アタイの価値を地の底にまで貶めた扉間様……。あの時の衝撃は忘れようもない……」

 

 更にはボロボロと、直接触れてもいない三機の傀儡が腐り落ち始める。空気中を漂うバクテリアが傀儡へと流れ着き、傀儡のチャクラを食らって活性・増殖を繰り返し、触れてもいない物体を腐らせていく。

 

「言葉と実戦の両面からガラガラと価値観を崩されたあの時は、屈辱の極みでした。至極冷静に私の術を分析され丸裸にされ否定され……。もう止めて欲しいと何度も思いました。実際言いましたし、今でも同じことを言うでしょう。だけど戦いながら言い争っているうちに、何だかだんだん扉間様の冷静な罵倒が気持ちよくなってきて……最後心臓を撃ち抜かれたときなんか、もう終わってしまうのかと悲しくなって……。あんな感覚、はじめてだった……」

 

 ほう……。と、頬を染めたフヨウがため息を吐く。それを見ながら、私は素直にドン引きした。あの人、本当に何をやってんだろうか。うら若き乙女の性癖が壊れまくって原型が残ってないじゃないか。

 

 シカヌマは理解できないことの連続で顔から血の気が引いている。死体のくせにこれ以上どこに引く血の気が有るのかと思うが、気持ちは理解できなくもない。あれは幾らなんでも拗らせすぎだ。自分も夢女子の気質があるからギリギリ理解の範疇なのがなんとも複雑な気分にさせてくれるが、それでもこんな事ってあるのかよと思ってしまう。

 

 理解はできるが共感はできない。だって、私Mじゃないもん。

 

 呆然とするしかない有り様だったが、しかし同時に理性が語りかける。

 

 戦闘狂ではない。戦争向きの性格でもない。だけどコイツ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? そんなことを囁く自分が現れるのを自覚する。

 

 衝撃発言を受けた割に、私は思ったよりも冷静だった。個性の塊共と接し続けたせいで耐性ができたのだろうか。まあ、そんなことを思考する意味は特にないだろう。私は、頭に浮かんだ先程の考えを検討する。

 

 態々こちらで縛り付けなくても協力的に動いてくれる穢土転生がいてくれると、戦力的にも私のキャパシティー的にも非常に助かるのだが、あの子、扉間様を生け贄に捧げれば交渉次第でこちら側についてくれそうな気配がある。というか、普通に扉間様と会わせたら面白そうだ。扉間様の苦虫を噛み潰したような顔が目に浮かぶようじゃないか。

 

 私は吹き出しそうになるのをなんとかこらえて笛を吹き続ける。あの子は扉間様に詰られることに快感を見出だしてしまったど変態なようだが、私の性癖はどちらかと言えば彼女の真逆なのだ。そしてこのど変態が素で扉間様と相見えたとき、十中八九私好みな状況が作り出されるであろう事は必至である。

 

 後の楽しみが一つできたことを喜びながら、私はこれ以上笑って演奏に支障を来さぬように、フヨウを注目の的から外すのだった。

 

 

 


 

 

 

 岩隠れの忍。シカヌマは、白髪を腰まで伸ばし、二股に別れた特徴的な顎髭を生やした老人だった。

 

 フヨウの衝撃発言から回復しきれていないシカヌマに、四機の人傀儡が迫る。

 

「あ、ああ……。そうじゃった。今は戦闘中じゃった……」

 

 高速で迫る人傀儡達の攻撃を、シカヌマは空中を自由飛行しながらひょいひょいと避けていき、同時に印を結ぶ。

 

『熔遁・石灰凝の術』

 

 ドロリとした泥のような液体が空中から雨のように散布され、傀儡人形達に降りかかる。すると降りかかった液体はすぐに固形化し、石となって固まって傀儡人形の動きを止めてしまった。

 

 シカヌマは初代土影イシカワの同期の忍であり、二代目土影無の師匠筋にあたる男である。彼は熔遁の血継限界を操る忍だ。また、土遁にも精通していて、岩隠れの秘伝忍術である『軽重岩の術』と『加重岩の術』を駆使した戦いを彼は得意としていた。

 

「シカヌマは岩隠れの奇襲部隊で活躍した忍だ。『軽重岩の術』で空を飛び、『迷彩隠れの術』で姿を隠し、上空から一方的に、完全な不意打ちで攻撃を仕掛ける。そういった基本戦術を徹底して行っていた奴の部隊は、大戦初期において無類の奇襲性を誇り、数々の戦果を挙げていた。部隊に最低一人は感知タイプの忍を組み込むという暗黙の了解ができたのは、奴の奇襲部隊対策に端を発すると言っても過言ではないだろう」

 

 扉間様の語る彼の得意戦術がその通りなら、今回私が彼に対して行っている運用方法は明らかに噛み合っていない。

 

 奇襲戦術を得意とする忍を真っ向から敵と対峙させるなんてアホなのかと自分でも思うが、ただ、運用方法としてこの使い方が必ずしも間違っていると言うと、それはそうでもない。

 

 この人はキャリア約60年の大ベテランだ。イシカワに譲り渡しているとはいえ、初代土影の候補の一人であった事もあるほどの忍である。あくまで得意戦術が奇襲というだけで、この人の場合そうでなくともある程度戦える。どんな状況でも一定の戦力になれるからこそ、彼はベテランとなるまで生き残れたのだ。

 

 グサリと、『石灰凝の術』をくぐり抜けた傀儡の一機が刀をシカヌマに突き刺すと、そこから呪印が広がり封印術が発動する。封印の方法にも色んなものがあるもんだと、私は感心しながら見ているが、余裕を失ったりはしない。そもそもシカヌマは()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ボロリと、呪印が全身を覆ったシカヌマの姿が崩れ落ち、ただの土塊になる。

 

 土分身。シカヌマの基本戦術は自身の姿を隠すことだ。どんな状況であろうとも、彼が己を晒して戦うことなど有りはしない。

 

 ドロリと、何処からともなく湧き出したセメントが封印術を使ってきた傀儡を覆い、固まる。分身の彼はいっそ目立つくらいによく喋るが、彼の本体が戦闘中に言葉を発することはない。どころか音の一つすらも、彼は戦闘中に発することがない。

 

 ベテランの忍はその挙動に一切の無駄なく、敵を一人一人確実に無力化していく。

 

 感知の術を持たぬ者に、彼の『迷彩隠れの術』を暴くことはできないのだ。

 

 

 


 

 

 

 砂隠れの忍。舜静は、頭を丸め、質素な袈裟を着た仏僧のような格好をした忍だった。

 

 舜静の周りでは、10機もの人傀儡達が空を飛び、彼の隙を伺っていた。

 

「煩悩無量誓願断。あらゆる煩悩を断ち切ることは衆生の全てを断ち切るに等しい。衆生無辺誓願度。しかして我々は衆生全てに等しく救済を与えなければならない。仏道無上誓願成。どんな手を使ってでも我々は成仏を果たす。法門無尽誓願智。あらゆる法理摂理を学び知れば、それもまた不可能ではなく……」

 

 呟きながら彼は印を結ぶ。チャクラが溢れ、舜静の周囲に熱風が吹き荒れる。

 

 舜静は砂隠れのとある寺院に所属する修行僧でありながら、同時に砂隠れの忍として活躍した人物でもある。法門無尽誓願智。無尽に存在する全ての法門を知り尽くすという、菩薩が仏道を求める際に、最初に立てるとされる四つの誓願の一つ。彼はその誓願を拡大解釈し、悟りの道を歩む手段の一つを忍宗に求めた。結果として彼は、煩悩無量誓願断、衆生無辺誓願度、仏道無上誓願成という残り三つの誓願を達成したと豪語するに至る。

 

「煩悩無量誓願断。無量に存在する煩悩を断ち切るには、拙僧自身が煩悩を感じぬ身になるしかない。故に、拙僧は自身を砂と化した」

 

 さらさらと、舜静の身体が無数の粒に散らばり消える。砂隠れの極一部にのみ伝わる秘術、『砂化の術』。二代目風影政権下の砂隠れが推し進めた人柱力開発に利用された術でもある。だが術発動中、分散する砂と共に本人の意識までもが薄れるため、守鶴の制御には向かないとして、この術の人柱力開発への利用は中止されてしまい、そのまま現在に至っている。意識が薄れるという悪条件の中、それでも術を意のままに使用できた忍は、後にも先にも舜静ただ一人だった。

 

「衆生無辺誓願度。衆生に分け隔てなく救いをもたらし、そして仏道無上誓願成。無上の仏道を駆け上がり、何をしてでも成仏へと辿り着く。衆生全てに成仏の道を歩ませるのならば、やはり即身仏が一番でありましょう」

 

 即身仏。特定の手順を踏むことで、土中の石室の中でじわじわと自身をミイラ化させていき、身体を腐敗させることなく「生入定」と呼ばれる永遠の瞑想状態に入る瞑想修行の一種。現身のまま仏になろうという即身成仏の試みの一つである。教義上の定義では即身仏となった彼らはあくまでも死んでおらず、生死の境を超え弥勒菩薩出世の時まで、衆生救済を目的として永遠の瞑想に入るのだと考えられている。

 

 私達の世界では、あくまでも日本の民間信仰の一つでしかない即身仏であるが、この世界にも同様の概念はあったらしい。ただ、舜静の考える即身仏は、その中でも更に異端を極めていた。

 

「ミイラです。ミイラになることで、我々は全員が即身成仏の手順を踏み得るのです。全員が平等に瞑想を行い、不死存在へと昇華した上で衆生救済の道へと歩を進める。素晴らしいことではありませんか。土中と砂中という違いこそありますが、なぁに、大した違いでもありません。傀儡となってしまった哀れな衆生の皆々様方も、ミイラとなれば仏です。拙僧の中で一切皆苦を悟り、四苦八苦から解き放たれましょう」

 

 砂化した舜静のそのひと粒ひと粒には、灼遁のチャクラが練り込まれている。薄く広く拡がる舜静の砂に触れた物は、触れた先から水分を蒸発させる。

 

『千人菩薩の舜静』。その昔、危険思想から風の国を追われ、各地を放浪し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「奴は敬虔なる仏僧だ。四弘誓願。すなわち自身に衆生を救済するための菩薩としての役割を課し、至極真面目に自身の教義を広め回った。奴は大量の無辜の民を殺したが、本人には最後まで己が殺生をしているなどという自覚は無かっただろう」

 

 扉間様は当時を思い返すかのように天を見上げて語っていた。

 

「時代も悪かった。野放図に広がる戦火。巻き込まれる農村や田畑。飢饉の発生。巻き込まれた一般民の間には、既に末法思想が広まっていた。もはやこの世に仏法なし。救済は穢土に存在せず。そんな最中の舜静という菩薩の出現だ。各地の民たちは喜び勇んで舜静を祭り上げた。後に『成身宗』と呼ばれることになる舜静の立ち上げた教義は瞬く間に世界に広がり、各地で農民の大量集団自殺が次々と起こるようになる。戦争の見直し、ルールの制定が大国間において急務になったのに、奴の存在が全く影響しないと言えば嘘になってしまうだろうな」

 

 舜静が成仏させた人間の数はおよそ千人と言われているが、成身宗の教義に魅せられ、自身を成仏させた人間の数は少なく見積もっても八千人は下らないと言われている。その思想はついには一部の忍一族や、有力貴族の間にすら広まり、世の中を混乱の渦に叩き落とした。

 

「第一次大戦終戦後、現在の湯隠れ近辺にアジトを構えていた成身宗の一派を木ノ葉と砂が合同で討伐し、五大国共同で各地に禁教令を布き、信者を駆逐することで成身宗はこの世界から消し去られた。一時は宗教戦争一歩手前まで発展しかけた大事件だったが、教義そのものを歴史の闇に葬り去ることで、我々はそれを回避した訳だ」

 

 舜静に止めを刺した人物は、扉間様だという話だ。舜静のオリジナル忍術『灼遁・砂蒸殺』の術を捉える術は少ない。『砂化の術』であれば水遁の術で固めてしまえば良いが、ただの水遁では灼遁によって蒸発してしまう。舜静の灼遁を覆い尽くすレベルの水遁を操ることのできるであろう忍は、当時の目線から見てもそう多くはなかったのだという。

 

「痛みを感じてください。苦しんでください。永遠など無いと理解してください。我々が常にしがらみの中に在ることを承知してください。そして、それらを乗り越えた先に人々の未来は有るのです。一切皆苦。諸行無常。諸法無我。痛みを乗り越え、無常を乗り越え、無我の境地に至る。ええ! それでこそ! 涅槃寂静というものです! そして涅槃などというものはこの現世には有りません! 涅槃とは浄土に有り! 故に、拙僧達が即身成仏するには、生と死の境界の狭間に立たねばならぬのです! ええ! ですから共に参りましょう! 即身仏の境地に!」

 

 寂静からは程遠いハイテンションで砂漠を駆ける灼熱の砂嵐は、逃げ惑う人傀儡たちを容赦なく巻き込みミイラ化させていく。

 

 はてさて彼らは無事に成仏できたのだろうか? しわくちゃに顔が歪み、どう見ても苦悶の表情にしか映らない人傀儡の成れの果てから目を背けながら、私は静かに笛を吹き続けた。

 

 

 


 

 

 

 滝隠れの忍。レップウは、浅黒い肌の筋肉質な身体を鎧で固めた戦士風の忍だった。

 

 そんな彼の下に、六機の人傀儡達がそれぞれの武器を携えて迫り来る。

 

「おぅ……らァ!!」

 

 レップウは、滝隠れの里に伝わる水遁忍術である『滝隠れ流・水切りの刃』で大剣を作り出しそれを振るって攻撃としている。彼が豪快に大剣を振るうと、その斬撃は『風遁・鎌いたちの術』となって傀儡たちを吹き飛ばす。水切りの刃はそれ自体が水遁の術であることに加えて、上から別のチャクラ性質を付与することができる滝隠れの持つ奥義の一つだった。

 

「あぁ! クソ! やっぱり全盛期からは程遠いな!! 重明がいないんじゃァ、それも仕方ねェが」

 

 イライラと悔しがるレップウは、懐から瓢箪を取り出すと、その瓢箪の中身をぐびぐびと飲み干す。

 

「……んあー。よぅし、調子が出てきやがった……!」

 

 レップウの身体から、膨大な量のチャクラが漏れ出す。元々レップウのチャクラ量はこの10人の中でも雪麗の次くらいに高かったのだが、瓢箪の中身を飲み干すことによって、彼のチャクラ総量が元の倍近い量に膨れ上がる。

 

「レップウは滝隠れにおいて、初代里長であったと同時に、七尾の初代人柱力を勤め上げた男でもある」

 

 私は扉間様の解説を思い出す。滝隠れの初代里長にして、七尾の元人柱力であった忍レップウ。彼は、ある特殊な才能をもった忍として当時各里から一目置かれていたのだという。

 

「奴は水の中に己のチャクラを練り込み貯めるという、特殊な術を扱うことができた。チャクラを貯める。つまりは、チャクラの保存だ。しかもかなり強い濃度でチャクラを貯めておくことが可能で、平均的な忍であれば一口飲むだけでもチャクラの総量を一時的に10倍まで引き上げることが出来るほどだったと言われている」

 

 後に『英雄の水』と呼ばれる、滝隠れに伝わるチャクラを増強する秘薬。飲むと大量のチャクラが流れることで経絡系が磨耗し寿命が縮んでしまうが、その代わり、英雄の水のチャクラは誰のチャクラにも適合し、その総量を引き上げることができると言われている。

 

「誰のチャクラ性質にも適合するチャクラ。レップウだけが持つ特殊なチャクラ性質であり、それを保存する能力は、滝隠れの大幅な戦力増強を引き起こした。水を飲むだけという、ドーピング法の中でも一際手軽な手段だ。寿命が縮むという副作用が有るとはいえ、戦争中にそんなことを気にする忍はいない。滝隠れは英雄の水一つで強大な兵団をいくつも作り上げた」

 

 さらに、滝隠れは英雄の水という道具に合った術も開発した。『秘術・地怨虞』。膨大なチャクラを一度に流すことで経絡系が磨耗し、寿命を縮めてしまう英雄の水を幾ら飲んでも大丈夫なように、敵の心臓を奪うことで新しい経絡系を継ぎ足す術が開発されたのだ。こうして、膨大なチャクラ量を誇る優秀な忍を何人も輩出した滝隠れは、五大国に属さぬ小国の隠れ里でありながら、初代火影の所有していた七尾の管理を任される程の実力評価を受けることになる。

 

「戦後、滝隠れの秘術は非人道的過ぎるという理由で禁術指定されたが、英雄の水はその後も生産され続けた。特にレップウが七尾の人柱力となった後の英雄の水は、その価値を飛躍的に高めることになる。なにしろ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 尾獣チャクラを保存し分け与える水。そんなものがあるのならば、確かに強大な兵力が誕生することになるだろう。実際に一次大戦終了後、英雄の水は様々な小競り合いで使用され、滝隠れに莫大な利益をもたらした。

 

「だが、個人の能力に依存した軍事力など、そう長く続くものではない。一次大戦から10年経った頃、雨隠れの里で頭角を現し始めた半蔵という忍がレップウを打倒することで、滝隠れの情勢は大きな変化を強いられることになる。尾獣自体は何とか死守したものの、英雄の水の生産はその時点で停止。滝隠れの戦力は年々減少の一途を辿ることになる」

 

 扉間様の話を思い出し、私はレップウを見遣る。彼の身体に、最早七尾は存在しない。しかし、彼が携帯していた英雄の水には、七尾のチャクラが今もなお含まれている。

 

 レップウの身体をチャクラが覆う。七尾の性質を宿したチャクラはレップウの背に四枚の翅を作り、レップウの巨体を宙へと舞い上がらせる。尾獣チャクラモード。その尾を四本目まで、彼は英雄の水を用いて現出させた。

 

「チョコマカと動き回るんじゃあ、ねぇよ!」

 

 キラキラと背中の四枚の羽から鱗粉が撒き散らされ、周囲の傀儡達に降り注ぐ。

 

『秘術・鱗粉縛りの術』

 

 本来は鱗粉を吸い込んだ敵を、鱗粉の毒で痺れされる術なのだが、術を応用すれば傀儡相手にも効かないことはない。磁遁の砂鉄と同じ要領で鱗粉が傀儡の関節に入り込み、ギチギチと、傀儡の動きを鈍らせていく。

 

「おぅし。そのままじっとしてろよ。そして、吹っ飛べ!!」

 

 ブオン! と、彼が水の大剣を振ると、その刃から複数の水の斬撃が降り注ぎ、動きの鈍った傀儡たちを次々と斬り裂いていく。

 

「やっぱり、歯応えってもんがねぇな。レベルが落ちたんじゃねぇのか? それとも、所詮は人形遊びってことなのかな?」

 

「……」

 

 レップウの挑発に対して、サソリは無言のまま新たな傀儡を差し向けることで応える。先程私の三代目風影を縛ったうずまき一族の人傀儡だ。傀儡の腹が開き、その中から無数の鎖が溢れ出る。

 

「なんだそんなもん。全部吹き飛ばして終わりだろうが」

 

 レップウは大量の鎖に対して、大剣を振り上げ大風を巻き起こすことでその全てを傀儡ごと吹き飛ばした。

 

 だが、

 

「油断しすぎだ。間抜け」

 

 サソリが呟くのと同時に、レップウの背後から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。『傀儡縛りの術』、傀儡の中に敵を押し込め、更にその中でチャクラ糸を用いて敵の手足を拘束する傀儡使いの基本操演術。どうやら拘束用の人傀儡が、レップウの背後に『迷彩隠れの術』を用いて隠れて接近していたらしい。うずまき一族の傀儡は、本命の接近を気付かれないようにするための囮だったようだ。

 

「先ずは一体。いや、三代目風影と合わせると二体目か。これが後11体もいるのかと思うと、流石に恐ろしいな」

 

 サソリはそんなことを言いながらも口角をつり上げる。モンザエモンの操る穢土転生の一体を封じたことで、僅かながらも希望を見出だしたらしい。

 

()()()()()()()()()()

 

 スパッ! と、空気の切れるような軽い音をたて、レップウを封じ込めていた傀儡が真っ二つに斬り裂かれた。

 

 傀儡と、中でレップウを縛り付けていたチャクラ糸がバラバラと地面に落ちていく。中にいたレップウ自身も当然真っ二つであるが、穢土転生であるレップウの身体は、塵同士がくっつき合うことですぐに元通りに復活する。

 

「……テメェ。誰が助けてくれと頼んだよ。しかもオレごと真っ二つにしやがって」

 

「済まぬな。余計なお節介であったか。手前も未だ未熟な腕故、あのような出しゃばり方しかできなんだ。だがまぁ、どうせ出られるのであれば手を下した人間が誰かなど些末な問題だろう? 私も別に、こんなものを貸しにしよう等とは考えておらぬよ」

 

 脱出早々、イライラを隠そうともせずに嫌みを言うレップウを、傀儡を斬った張本人は飄々とした態度で受け流す。

 

 距離の離れた空中の傀儡を遠くから、中の人間ごと斬り裂いた人物は、更に言葉を続けた。

 

「それにどちらにせよ、戦いはもう終わりのようだぞ?」

 

 

 


 

 

 

 鉄の国の侍。ササキは、長髪を総髪にしてまとめた優男じみた青年だった。彼の腰に下げる刀は、備前長船長光。三尺(約1メートル)にもわたる長い刃を持つ珍しい名刀だ。

 

 私が目を向けた時には既に、彼の周囲に人傀儡はいなかった。有るのは、人傀儡だった成れの果てばかりであった。

 

「実に楽しい一時であった。また機会があれば、是非他の傀儡とも試合ってみたいものだ」

 

 ニコニコと微笑む彼には一切の殺気も邪気も感じられない。先程まで戦闘していたといった風情では明らかになく、実に自然体そのものである。

 

 だが、彼の周囲に転がる傀儡の数は、他のどの穢土転生たちの討伐数をも上回っていた。

 

「鉄の国は基本的に中立国家だ。何処とも利害関係を結んでおらず、一次大戦終戦後は忍が手を出してはならぬ決まりも作られた。三狼と呼ばれる三つの険しい山々によって形成された鉄の国は、領土争いに巻き込まれる機会も少ない。故に鉄の国の侍が戦争に参加することは、一部の浪人が国の外で雇われになるでもしなければほとんど無いと言っていい」

 

 扉間様の語る鉄の国の事情は、現在でも変わらない。地理的な断絶。政治的な断絶。鎖国国家でこそないものの、殆どそれに近い状態を維持し続ける鉄の国は、時に「眠れる狼の巣」と表現されることもある。

 

 眠れる狼とは、鉄の国の軍事力を一手に担う「侍」と呼ばれる戦闘集団を指して付けられた呼称だ。刀を主な武器とし、チャクラを刀に纏わせる戦法を得意とする武士集団。彼らはその全員が対忍特化の戦闘訓練を積んでおり、国の正規兵である「旗本」や「御家人」と呼ばれる侍達は、一度戦闘になればその強さは並みの忍ではまず歯が立たないほどの猛者ばかりだと言われている。だが、第一次忍界大戦時に起こった岩隠れによる鉄の国への侵攻作戦以降、鉄の国が戦争に積極介入したという記録は驚くほどに少ない。せいぜい第二次大戦中に雨隠れと小競り合いを起こしたという記録があるくらいで、本国直属の侍による戦闘記録は実際のところ皆無に等しいのだ。故に、侍の実力に関しては、噂が一人歩きしているのではないかという声も少なくない。眠れる狼は、既に年老いてヨボヨボなのではないかと、そう噂する者も多い。原作を読んでいる私の目線から見ても、侍にそこまで強い印象は持ち合わせていないので、案外その噂も間違ってはいないんじゃないかなんて思っていたりする。

 

 しかし、ササキは第一次忍界大戦時代、つまり、侍が最も活躍した全盛の時代の人物である。ササキは一体どんな活躍をしたのか、確か彼の話が気になった私は、この時自分から扉間様に尋ねたのだったか。

 

「まず始めに言っておくと、ササキは鉄の国の正規兵ではなく浪人だ。農民と言ってもいいかもしれん。奴はこれといって戦争に参加することもなく、三狼三山の山奥で一人修行に明け暮れていた一介の侍だった」

 

 しかし、扉間様の口からササキの武勲が語られることはなかった。というより、ササキにはこれと言って武勲が無いと言った方が正しいのかもしれない。

 

「ワシがササキのことを知ったのは、個人的な事情からワシが一人三狼三山の山奥に訪れた時の事だ。奴は山奥で一人、燕を斬るための修行を10年近くただひたすらに行っていた」

 

「ツバメ? ツバメってあの、燕ですか?」

 

 スズメ目ツバメ科ツバメ属の渡り鳥。体重約18グラム、体長約17センチの、日本では縁起の良い鳥として古くから親しまれている、あの? 

 

「その燕で、まぁ、間違ってはいない」

 

 私の問いに、扉間様は歯切れの悪い返事を返す。

 

 燕。冬と春の季節に2000~3000㎞もの距離を旅する渡り鳥で、その平均飛翔速度は時速40~50km。外敵から逃げる時に限れば、最大速度は時速200㎞にも及ぶとされる高速飛行の達人のような鳥である。確かに意識的に捕らえるのは中々難しい相手ではあるが、正直、斬れと言われて斬れないかと言えば、頑張れば何回かのチャレンジで斬れるんじゃないかと思えてしまう。前世の私だったら絶対に無理だが、現世の私は忍としてそれなりに動体視力に自信がある。手裏剣を当てろと言われたら、一発でとは言わずとも、5回以内に当てられる自信はある。

 

 まあ、進んで当てようとも思わないが、とにかく、その燕を斬るのに10年? それは、なんというか、少し時間をかけすぎじゃなかろうか。私は訝しんだ。

 

「……そもそもワシが三狼三山を訪れたのも、その燕を訪ねてのことでな。寒冷地であり、一年中雪が降るような鉄の国は、そもそも燕の生息域から外れているのだ。にも関わらずその燕は鉄の国に住み着き、渡りさえせずに三狼の山々を飛び回っておったのだ。ワシが訪れた時点で、かれこれ50年も」

 

「はぁ!?」

 

 恐ろしく意味不明な発言が飛び出し、私は頓狂な声を漏らす。

 

 燕の平均寿命は1.5年だ。天敵に食べられたりすることの多い燕の寿命はかなり短い。もし天敵や病気・事故の心配がない環境で一生を過ごせば10年以上は生きるし、最長では16年生きたという記録もあるが、それでも50年というのはいくらなんでも盛り過ぎだ。種族の限界を超えている。しかも、50年というのはあくまで姿が確認されてから50年という話なので、その燕は実際それより遥かに長い年月を生きていることになる。

 

 ただの燕がそんなに長生きするわけがない。ということは、その燕には、特別な何かがあったということだ。そう考えてみれば、この世界には摩訶不思議な生態を持つ生物が割りと多いので、納得できないことはない。その燕は、燕であって燕でない、別の生き物に違いあるまい。

 

「何かの拍子に自然と一体化する術を身に付けたらしいその燕は、仙人化を果たして寿命の枷から解き放たれていた。その上奴は、いくつかの仙術すら習得していた。鉄の国で『仙燕』と呼ばれるその燕は、聞くところによると、音を置き去りにする超高速移動飛行を当然のように行い、分身の術はおろか、時空間系の仙術による空間断裂、空間跳躍、果ては時間遡行らしき現象まで引き起こせたという事例が確認されている」

 

 扉間様の説明を聞いて、私は確信する。うん。それ、燕じゃねーわ。たとえ生物学上は燕だったとしても、そんな化け物、最早燕と呼べる代物ではない。

 

 扉間様の話によると、その燕は仙人化することで余分な知恵を得て、人間に悪さをするようになったらしい。時空転移で遠くの土地に人を連れ去ったり、時間遡行術で大人を赤ん坊に戻したりとやりたい放題だったそうだ。鉄の国の大名はその燕に1億両の懸賞金を掛けたそうだが、誰一人としてその燕を捕まえられた者はいなかったという。

 

「第一次大戦が終了して、確か三年くらいの時分だったか。当時のワシは仙術についての研究を行っていた。森の千手一族は代々湿骨林の場所を口伝で受け継いできた歴史があるので最初はそっちの線から当たろうと思ったのだが、あそこの仙人は兄者以外の修行をつける気がまるでなかった。その上兄者に聞こうにも、兄者の解説は才能とセンスに頼りすぎていてちっとも参考にならない。仕方ないから独学で何とかしようと、ワシは『仙燕』の噂に目をつけ、単身鉄の国へと赴いたのだ」

 

 そうして、扉間様は自身の思い出話を語った。鉄の国に生息する、摩訶不思議な燕の仙人のエピソードを。

 

「結論から言うと、ワシが『仙燕』から仙術のいろはを学ぶことはできなかった。学ぶ前に殺されてしまったからな。しかしその代わり、ワシは、表舞台に一切姿を現さないままその生涯を終えることになる大剣豪と相見えることになった。それが、ササキという侍とワシとの出会いだ」

 

 扉間様は、ササキが『仙燕』を刀の錆にするまさにその瞬間を目撃したのだという。分身、超高速移動、空間跳躍、時間遡行の仙術を操る体長17センチの化け物をその刀身に捉えた、前代未聞の大剣豪の誕生の瞬間を。

 

 私は彼の編み出した秘剣を未だに見たことがない。というより、()()()()()()()()()()()()。ササキが刀を振りかぶったと思ったら、次の瞬間には敵が斬り裂かれて倒れ伏している。彼の秘剣は、少なくとも私レベルではその軌道を視認することすらできないし、たとえ視認できたとしても、扉間様いわく彼の間合いに入ってしまったら決して防ぐことも逃れることもできない必殺の剣撃なのだという。

 

「長年『仙燕』を斬るためだけに刀を振り続けたササキの剣は、時空間忍術の究極に至っていた。対時空間用忍術。先程語ったもののもう一つの手段。空間断裂系の時空間干渉忍術だ。いや、剣術か。円弧を描く3つの軌跡と、愛用する太刀の長さから生み出される不可避の剣技。限定的ながら多重次元屈折現象すら引き起こし、並列世界から呼び込まれる3つの異なる剣筋が僅かな時差もなく同時に相手を襲う。『秘剣・燕返し』。ワシも手合わせをしてみたが、『飛雷神斬り』が正面から打ち破られたときには、これは本物だと確信したものよ」

 

 剣撃の性質上、時空間が屈折するため間合いに入ってしまった敵は時空間忍術で逃れることができなくなる。その上3方向からの剣撃が物理的な逃げ道を奪い去る。全く別々の3方向からの攻撃すべてに一度に対応できなければ、防御すらままならない。しかもササキの剣術は基本的にどの技も斬鉄の威力を持つため生半可な鎧ではいとも簡単に斬り裂かれてしまう。生涯を『仙燕』を斬ることに捧げたササキだからこそ成し得た究極の技、『燕返し』。忍術ではなく剣術。鉄の国の山奥で、人知れず誕生したその秘剣は、結局世に知られることの無いまま失伝することになる。

 

「ササキは強き者と試合いたいという欲はあったものの、浮き世の政に進んで関るような男でもなかった。故に、ササキは表舞台に姿を見せぬままその生涯を終えた。その腕を生前活用できなかったのは悔やまれるが、そうした偶然の出会いというのが役に立つときもある」

 

 役に立つというか、人の尊厳もろもろを無視して無理やり役に立たせているの間違いだと思うのだが、取り敢えず、扉間様はササキの説明を最後にして、自身の集めた穢土転生たちの解説講義を終えた。

 

 実際は、扉間様は他にも穢土転生用のDNAマップを集めているし、そいつらの解説も同様に行われているのだが、それを思い出すのは、また次の機会ということにしておこう。ともあれ、モンザエモンに操らせた10体の穢土転生。扉間様の世代に生きた猛者どもは、こうしてサソリの繰り出した『百機の操演』、その全ての傀儡の無力化に成功したのだった。

 

 

 


 

 

 

 長々と語ってしまったが、思い返せば、それは、わずか5分にも満たない束の間の出来事だった。

 

 圧倒的。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。

 

『百機の操演』とは言うものの、実際は100機以上の傀儡がいた気がするし、今もなお、三代目風影の傀儡はこちら側の三代目を封印し続けている。とはいえ、彼の傀儡は同じ磁遁を操る彼自身の封印から手が離せないし、実質無力化されているも同然。後からどうとでもなるし、現在相手方の動ける戦力はサソリ自身だけだ。

 

 私はこの戦闘の勝敗を確信する。もう、殆ど確定的に勝負はついた。

 

 あとは、サソリを拘束して幻術を掛けるだけだ。『人形音傀儡の術』の幻術効果は受けていないみたいだが、意識を失わせれば、サソリにも幻術の一つくらい掛けられるだろう。

 

 いや、本当に掛けられるか? サソリって、自分自身を人傀儡化してるけど、幻術効くよな? チャクラは流れてるはずだし、音も聞こえるみたいだし……。

 

 私が少し今後の流れに不安を覚えていると、百機以上もの傀儡を一斉に失ったサソリが、顔に手を当てて哄笑する。

 

「フ……ハハ! 笑いが込み上げてくるな、まさか、ここまで一方的な勝負になっちまうとは」

 

「あ? なんだ? 余りの実力差を前に気でも狂ったか?」

 

 私は天を仰いで笑い続けるサソリに挑発的な言葉を投げ返す。だが、サソリの笑い声は止まらなかった。

 

「ああ、そうだな。確かに、傀儡の性能、操作術、それに演技力。どれをとっても一級品以上。流石は初代傀儡操演者。天才の所業としか言いようがねぇな」

 

 サソリは、顔から手を下ろし、口角をつり上げた表情のまま、こちらに十本の指を向ける。

 

 何をするつもりだ? と、私が訝しむと、サソリは言った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()。歴代最強の称号。ここで貰い受けるぜ小娘。お前が証人だ」

 

「あ?」

 

 本気で気が狂ったのか? この現状でどこをどう見りゃお前が勝ってるように見えるんだ。私がサソリに対してそんなことを思い、口に出そうとしたその時。

 

 ガクン! と、1()0()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ……!?」

 

 それだけじゃない! 笛を吹いても、モンザエモンの身体が動いていない!? 動かそうという気配は感じられるが、身体が何かに縛られたかのように上手く動かない……! 

 

「傀儡操作術は確かに凄まじい。流石はゼロから傀儡の術を確立した天才モンザエモンだ。オレも相当の自負は持っていたが、それでも、傀儡操作の一点にかけてはモンザエモンに未だ敵わないと素直に認めよう」

 

 サソリは、クイッと、十本の指を動かす。そして、その指の動きに連動して、1()0()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。初代操演者の弱点ってやつを教えてやろうか。初代操演者ってのはな。自分が初めての術者であるが故に、()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、こんな単純な手にいとも容易く引っ掛かる」

 

 穢土転生たちが乗っ取られた? よく見れば、モンザエモンを含む 11体の穢土転生たちに、見えるか見えないかくらいの超極細のチャクラ糸が絡み付いている。だが、戦闘時にあんな糸は視認できなかった。おそらく、今はチャクラを強めに通しているからなんとか視認できるが、糸を付着させたときには、目に見えないほどの極細の糸だったのだろう。どうやら戦闘のどさくさに紛れて付着させられたらしい。百機の傀儡は全て囮で、本命はバトルの合間に私の穢土転生たちを支配することだった?だが、傀儡の専門家であるモンザエモンが、それに気付かないなんてことが有るのか? 私は疑問を覚えたが、同時に、サソリの先程の言葉を思い返して、ある事実に思い至る。

 

 そして、

 

「『赤秘技・裏切の操演』。敵の傀儡や敵自身のチャクラ糸にこちらのチャクラ糸を絡ませて糸を入れ替え、傀儡と敵自身の操作権をこちらの物にする術だ。傀儡の術の発展と共に誕生した、()()()()()()()。チヨバアなんかには通用しないような、傀儡の術としては基礎の基礎でしかないありふれた技術だ。だが、今でこそありふれているそんな技術も、()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。技術っつーのは、時代のニーズと共に形を変えるもんだ。モンザエモンがいくら希代の天才だろーが、一人じゃ辿り着けない領域ってもんがある。分かるか小娘。過去の豪傑ってのは、所詮時代遅れの老兵にすぎない。どれだけ強かろうと、進歩した技術を知らなければ近代戦闘に対応なんてできねェのさ」

 

 サソリの言葉によって、私の気付きは確信へと変化する。過去の英雄は過去のパラダイムで思考する。故に、いきなり現代で戦争を行っても時代の波に取り残された過去の遺物は生き残ることができない。例えば、ハンニバル・バルカがいくら現代でも通用する優秀すぎる戦術を考え出した天才軍師だったとしても、近代兵器を知らなければ近代の戦争に付いていくことはできないだろう。歴史の壁。パラダイムシフト。それは、どんなに才能溢れる天才だったとしても容易に越えることのできない絶対の城壁だ。サソリとモンザエモンのどちらが傀儡使いとして優秀かと問われれば、それは間違いなくモンザエモンだ。サソリ本人も認めざるを得ない程、その実力は隔絶している。だが、実力の壁を塗り変える絶対の壁が、そもそもサソリとモンザエモンの間には立ち塞がっていた。

 

 おいおい。まさか、この戦力差で、負けるのか? 私が? 

 

 技術革新とその知識。穢土転生の弱点は、歴史の変容に対応できないこと? 

 

 そんな弱点があったなんて知らなかった。いや、こんなもの、本来ならば弱点とも言えないものだ。いくら穢土転生した過去の英雄が歴史の流れから切り離された過去の遺物であろうと、操り手は現代を生きるこの私である。私が現代のことを知っていれば、それだけでこの問題は対処可能なのだ。

 

 私の知識不足。私の敗因は、ただその一言に尽きる。

 

「……は。ハハ!」

 

 思わず笑いが込み上げる。そうか! 負けたのか! 私は! この戦力差で! 

 

 可笑しいったらありゃしない! 

 

「どうした? 余りの実力差を前に気でも狂ったか?」

 

 サソリがニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべて、私と全く同じ挑発を投げ返してくる。

 

 気が狂った? いいや、違うね。私は正気に戻ったんだ。

 

 初代傀儡操演者と、彼が操る10体の英雄豪傑達。

 

 認めよう。私は調子にのっていた。

 

 気を付けよう気を付けようと思ってはいたけれど。それでもこんな戦力を持たされて、調子に乗るなと言うのは無理な話だ。私は舞い上がって、油断していた。

 

 冗談じゃない。相手は『暁』の、赤砂のサソリだぞ? 

 

 たとえ隔絶した戦力差があったって、私程度が油断していい相手じゃないだろ。

 

 穢土転生でいくら戦力を底上げしたところで、私自身が強くなった訳じゃない。

 

 私は両手で頬を叩く。うん。痛い。だけど、お陰で目が覚めた。

 

「オレの実力を充分に理解したところで、絶望して死ね。小娘」

 

 サソリが指を動かすと、私自慢の10体の穢土転生たちが、一斉に私に牙を向く。モンザエモンの傀儡操作で学習しやがったのか、ご丁寧に彼らの術までそっくりそのまま使用してくる有り様だ。

 

 普通に死ねる。が、まだ、負けと決めつけるには判断が早すぎる。

 

「やっぱり、最後に信用できるのは自分の使いなれた技だけか」

 

 私は呟き、再び笛を口に咥えた。

 

 ああ。可笑しかった。傑作だ。まさか、こんなどんでん返しを食らわされるなんて予想だにもしていなかった。驚きだ。こんなに驚かされるんだから、傀儡の演目としては最高に近い。モンザエモンの時代から脈々と受け継がれ進化した芸術の歴史。その重みは存分に受け取らせてもらった。是非とも、今後の参考にしていきたい所存だ。

 

 お礼と言ってはなんだが、今度はウチが、一族が脈々と受け継いできた魔笛の曲を、披露してやるよ。

 

 私は口に咥えた笛から、音楽を奏で、紡ぎ出す。

 

 傀儡使いとしての勝負は、私の敗けだ。認めよう。

 

 だけどなサソリ。私は本来、傀儡使いじゃなくて音楽家なんだよ。

 

 傀儡使いとしての私にはもはや勝ちの目は残されてない。だけど、音楽家としての私なら話は別だ。

 

 勝ちの目はまだ、充分に残されている。

 

 

 

 ▼次回につづく。

 

 




あとがき。

まさか、三話分の文量書いてオリキャラの説明で終わるとは思いませんでした。キャラが濃すぎるんだよなぁアイツら…。

とはいえ、書きたいもんはしょうがないので、長々と書かせていただいた次第です。せめて二話くらいに分けようかとも思いましたが、話の構成上どうしても一話に纏めたかったのでこんな有り様になってしまいました。お楽しみいただけたなら、幸いです。

とはいえ、せっかくのオリキャラ紹介回でしたので、あとがきではオリキャラの説明でもしようかと思います。まぁ、説明は殆ど本編でしたのですが、本編では語れない舞台裏を少しばかり。

私が二次創作でオリキャラを作るときにはいくつか考えのパターンがあります。それは、

①死んでも一向に構わないモブや実力者。

②原作の穴を埋めるキャラクター。

③原作の流れとは別に、こんなやつがいてもいいよね?と、妄想したキャラクター。

④別作品の丸パクりキャラ。(リスペクトと言え!)

といったような具合です。大体はこの内のどれか、またはその組み合わせによって構成されるのが、私の作るオリキャラです。例えばずいぶん前に登場した草隠れの上忍や、ジャシン教の教団長は、①のパターンに含まれるわけですね。もしかしたら、教団長の方には②や③も含まれてるかもしれませんけどね。感想で指摘されてましたけれど、私、原作愛が強すぎて原作キャラを中々殺せないんですよね。ええ。まったくその通り。死ぬ予定のキャラなら殺せると思うんですけど、それすらもたまに殺せなくなりますし。だから①みたいな、遠慮なくぶっ殺せるオリキャラは非常に便利なのです。というか、話の展開を左右するような重要なオリキャラは、基本的にぶっ殺しておかないと原作に響くので、ほとんどの場合お亡くなりになる運命にあります。今回出てきた奴等なんか、登場時点で死んでますしね。

それを踏まえて、今回登場した10人をちょっと見ていきましょう。

・照美ヨウ。②と③。
霧隠れの忍。もしかしたら、照美メイ様のおじいちゃんかもしれない人がこの人。先祖の癖にメイ様より血継限界がひとつ多いです。ズルい。キャラを作る上では、メイ様が妙齢の美人なのに男日照りだった逆をついて、妻が三人もいるショタっぽい青年にしてみました。メイ様が複数の血継限界を持っている理由を、複数の血統のハイブリットを目指す一族だと曲解してみて出来上がったのがこの人です。羨ましいぞコノヤロウ。

・鬼灯秋月。②
霧隠れの忍。二代目水影鬼灯幻月おじさんのお父さん。この人が出来上がった経緯は凄く単純で、旧五影会談のとき、他の里の人たちは護衛の人が二代目影を就任していたのに、霧隠れだけ護衛が二代目じゃなくて三代目だったのは何で?という疑問を解消したいがためだけに生まれました。他はおまけ。

・雪麗。②と③
霧隠れの忍。今回のオリキャラ10人衆最強は誰かと聞かれたら間違いなくコイツ。霧隠れで雪一族が戦力として利用されていたにも関わらず迫害されてたのって何で?という疑問に答えるキャラ。生前からチャクラ量が人柱力並かそれ以上のクソチート。発想元は、大筒木カグヤの召喚した氷の世界。あれと同様の現象が起こせるキャラを作りたかった。雪一族は大筒木の子孫だっていうし、こんなこともあるかなーって。

・夜月ワルイ、夜月クロイ。②
雲隠れの忍。兄弟。ワルイが金角。クロイが銀角の副官を勤めていたという設定。金角部隊程度に扉間様が囮になる必要あったの?飛雷神で逃げりゃよくね?という疑問に答えるためのキャラ。飛雷神封じ。金角部隊は追跡力が高いという扉間様の談を補強するための存在。飛雷神の難易度の高さを物語る存在でもある。名付けかたは雲隠れ特有の感じで、由来は某作家。クロイワルイ考。マムシのほにゃらら。特に理由のない至極てきとーな名付け。

・フヨウ。③
岩隠れの忍。オリキャラ10人衆の中で一番性格が拗れてるやつ。一番性格が危険なやつが雪麗なので、女性陣二人がとにかくヤベー。というか、使う術もヤバい。雪麗には勝てないけど、厄介さではこっちの方が上かもしれない。上水流一族はアニオリから。油目一族みたいなのがいるならこんなのがいてもいいよねってキャラ。殺人バクテリアとか金属腐らせるバクテリアとか、めっちゃ使ってくる。他人のチャクラも使えるのでチャクラの効率がすこぶる良い。触れてもヤバいし触れなくてもヤバい。殺された相手の追っかけになるという心理は私にはちょっと理解できない。何でバクテリアで本人が腐らないのかは謎。作者の人、そこまで考えてないと思う。発想元は『めだかボックス』の某マイナスちゃん。

・シカヌマ。③
岩隠れの忍。ベテラン。二代目土影の師匠筋らしい。塵遁は使えないけど、岩隠れの忍の基本的な所は全部押さえてくる使い勝手のいい人。基本的に戦闘中は分身を出してて、喋るのはもっぱら分身。本体は常に息を潜めて隠れてる。こういうキャラが一番厄介。敵にはしたくない。

・舜静。③
砂隠れの忍。どっかの寺の坊主。性格は実はそんなにヤバくないが、思想が一番ヤベーやつ。善意で人を殺しにかかるタイプ。しかも殺人の自覚がない。テーマ「仏教の教えをできうる限り最大限危険な方向に曲解させてみた」を妄想しながら制作。仏教に詳しいわけではないので解釈が間違っていても作者は責任を負いません。みたいな。どうしてこうなった。「水化の術」が有るなら「砂化の術」もあっていいよねと思って出してみた。気分で灼遁と融合。大分ヤバいのができる。発想元は『ONE PIECE』のクロコボーイ。成身宗…。湯隠れ…。湯隠れって、カルト宗教が集まる呪いでもあるの?

・レップウ。②と③
滝隠れの忍。『英雄の水』はアニオリ。寿命と引き換えに一時的にチャクラ量を増やすらしい。どういう経緯であの水が生まれたのかを考えてみた。まさかのレップウ汁。みんなこぞって飲んだ。『秘術・地怨虞』と関連させてみたが、角都とはそんなに関係ない。ただ、初代火影暗殺の命を下したのは十中八九彼。ただし角都が殺したのは自身を陥れた直属の上司という設定。なんか色々ドラマがありそう。七尾の元人柱力。英雄の水と合わせるとかなり脅威。もしかしたらフウちゃんの祖先かもしれない。ルーキー時代の半蔵に殺される。全盛期の半蔵が強すぎる。
 
・ササキ。③と④
鉄の国の侍。「眠れる狼の巣」ってなんだ。(そんな国の呼び名は原作に)ないです。発想元は日清戦争前の中国(眠れる獅子)。三狼なんていう山があるからそんな発想が出てくる。漢字変換の最初の候補が「三浪」だったのも発想を手助けしてしまった。侍のキャラは某型月作品からほぼそのまま輸入してきた期待のベテラン。燕を切るために第二魔法もどきを習得した某変態。そもそも歴史上(?)の人物なんだから似たような設定になるって!と、開き直ってほとんどそのまま素材の味。まぁ、あそこのお宅の佐々木さんは佐々木さん本人じゃないんですけどねー。とにかく燕がヤバい。名刀物干し竿には、実はまだ語られていない設定が隠されている。そう。パクりはパクりでも、この人は、二重のパクリでできていた!一体誰をパクったどんな設定なのかは、後々のお楽しみに。伏線みたいな描写は実は少しだけある。二次創作なんだから何でもありですよ。ホント。


てなわけで、オリキャラ10人衆の紹介でした。強キャラの連続投入は噛ませ犬フラグの法則。サソリ、やるじゃん。そんなかんじの23話でした。次回は絶対にvs芸コン編終わらせる。ていうか、絶対に終わる。こちとらまだ穢土転生あと一体残してるんだからね!

長々とお付き合いいただきありがとうございました。次回をお楽しみに!

前書きの一言に対する自問自答。
「二度とやりたくない」


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