【完結】千景ェ!生きルォ!   作:ローグ5

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どうでもいい事なんですが執筆中「EAT KILL ALL」と「キボウノツボミ」を交互に聞いてるとなんかテンションが変な事になりますね


CHEAP HEAL ALL 転

 

そろそろ夜になる6時前頃、長瀬と千景は父親と住んでいるマンションについた。

 外見はごく普通の賃貸物件と言う感じだが、千景が父親と暮らしている部屋は────ハッキリ言って汚かった。

 流石にゴミ屋敷とまではいかないが長瀬が困惑の目を向ける程には汚かった。

 

「……千景ェ」

「しょ、しょうがないでしょう……あの人はやらないし、私も家事は得意じゃないもの。……スマホあった」

「かと言ってももう少し掃除機だけでもかけた方がいいぞ。流石にキノコは生えてねえけど。あ、カビ生えとる」

 

 そう言いながらも千景は自分の部屋に入り自分のスマホを見つけて手に取った。

 スマホの画面にはやはり友奈からの連絡がびっしりと表示されている。

 千景に何かあったのか心配しているのが分かる必死な文面に千景は表情を曇らせる。

 

(高嶋さん……やっぱり心配していくてくれたんだ)

 

 何時も千景を大切にしてくれる友奈の事だ。

 この二日近くどれ程自分は友奈に心配をかけていたのだろうか。

 

「とりあえず連絡を取って見ろよ。まだ夜も早いし今日会えるかもしんねえーぞ」

「うん……」

 

 千景は友奈と使っているSNSに文字を打ち込むと数十秒で既読のアイコンが付き、続いて電話がかかってきた。

 長瀬はためらう千景にとるように促す。

 

「もしもし高嶋さん」

『ぐんちゃん!? ぐんちゃんは大丈夫なの!?』

「うん……大丈夫だから心配しないで。心配かけてごめんなさい……」

 

(何とかなりそうな感じ、か? にしても高嶋って奴はよっぽどいいやつなんだな。こっから声聞いただけで分かる。こいつは友達を大切にする奴だ)

 

 長瀬が千景の反応を見た感じ電話の相手は二日も連絡が取れなかった事に怒っておらず、純粋に千景の身に何かあったのかと心配していたようだ。

 友達、友達か。タクとケンタとは確かに友達と言える関係だったけど、それは同じような境遇の者たちが集まったいわば群れのような物であり、千景と友奈の関係のそれとはだいぶ違う。

 

(男子高校生と女子中学生の違いなのかこれ? どうなんだろなー)

 

「……会ってくれるの? ん、ありがとう高嶋さん。すぐに行くから」

 

 なんてことを長瀬が考えているとどうやら千景の電話は終わったようだ。

 二日ぶりに友達と会ったからか少しだけど彼女の表情は明るくなっている気がする。

 

「高嶋さんは私に……会ってくれてるって。この先の公園で」

「ああここに来る時にあった公園な。ここから大体歩いて5分くらいか。なら待たしちゃ悪いしさっさと行こうぜ」

 

 長瀬の言葉に千景が答える前にガチャリと鍵が開く音が響き、千景は僅かにびくりと身を震わせた。

 くたびれた溜息と共に扉を開けて入ってくるのは中年の男性だ。

 中年の男性は長瀬の存在に一瞬驚いたようだが、傍らに千景がいると眉根を寄せた。

 

(……このおっさんが千景の父親か。何つーか分かっていたけど)

 

「……誰だそいつは」

 

(父親って感じが全然しねぇな。普通こういう場合だと真っ先に娘を心配すんだろ)

 

 ここで千景と長瀬、両者の外見を見比べてみよう。

 千景はこの年代の少女にしては背が高いがそれでも図抜けた方ではなく、対して長瀬は体格がいい男性で髪は茶髪だ。

 その上にどちらかというと千景はおとなしそう(実際はどうかは置いておいて)であり、長瀬は前に比べればだいぶ抑えられた物のオラついた不良感にあふれている。

 

 ハッキリ言って二人で歩いていれば長瀬が千景を脅して無理やり面回していると勘違いされかねず、長瀬は警察官に職務質問されても何らおかしくない。

 にも拘らずこの男は千景を心配するそぶりを全く見せなかった。

 

「千景? わりいけど先行っててくれるか? 俺はこのおっさんと話があるから」

「……わかった」

「お、おい俺の話を────」

 

 狼狽する父親の通り抜けて千景は玄関で靴を履いて外へ出ていく。

 背後の喧噪を背に階段を駆け下り、一心に友達の元を目指す。

 長瀬に、そしてほんの少しだけ父親に悪い様な気もしたが早く友奈に会いたかった。

 

 

 

 街灯の下、千景は以前良く話していた公園のベンチで1分2分3分と待つ。するとすぐに千景にも聞き覚えがある足音が聞こえてくる。

 このリズムは間違いない、千景の親友の足音だ。

 

「ぐんちゃん……」

「高嶋さん……あの……わぷっ」

 

 何を言えばわからないと戸惑う千景が言葉を発するよりも早く、友奈は千景に飛びつくようにしてただただ抱きしめた。

 

「私っ…怖かったよぉ……あの人たちのせいで、ぐんちゃんがどっかに行っちゃって、もう二度と会えないんじゃないかって本当に怖かった……」

「高嶋さん……知っちゃったのね。あいつらがあなたにも酷い事を言ったの?」

 

 千景は少し怖く感じながらも聞くと友奈は少し暗い表情で答えた。

 

「……ううん。そうじゃないけどあの人たち酷いこと言ってぐんちゃんを馬鹿にしてたから。それにぐんちゃん前から私が髪を触ろうとしたら怖がったりしてたから、前住んでいた所で何か嫌な事があったんじゃないかなっていうのはずっと思ってた」

 

 ごめんね私なにも出来なくてと消沈した面持ちで告げる友奈に、千景は少し恥ずかしくそして申し訳ない気持ちになる。

 自分では何とか過去の事を隠し通したはずだったが、友奈にはお見通しだったあたり傍から見ればなぜそれで隠し通せるのかと思うくらいぎこちない動きだったのだろう。

 そしてそれと同時に改めて自分はどれほど友奈に心配をかけていたのだとも。

 

「私……あなたに心配ばかりかけていたのね……でも、私はあなたにだけはあんな過去知られたくなんてなかった……! あんな惨めなだけの過去なんて……!」

「辛かったねぐんちゃん。でも私はぐんちゃんが惨めだなんて思わない。ぐんちゃんは私の大切な友達だよ。私もね実は引越しの時不安だったんだ」

 

 千景は友奈の事を聖人とすら思っているがその実友奈は優しく愛にあふれた人間であるとはいえ、意外なほどに普通な感性をしている。

 生まれ育った奈良県から初めての引越しで香川県に来た時は当然ながら何もかも初めてで不安だった。

 

 これまでの友達と別れて一から新しい土地で生活していく事、それは誰にだって大変な事であり、まだ小学生だった当時の友奈も新生活に不安を感じなかったと言えば嘘になる。

 

 新しく友達出来るかな? ────そんな不安を感じていた友奈の前に現れたのが千景だった。

 

「私ぐんちゃんと友達になれて嬉しかった。これから色んな思い出を作って笑いあえる友達が出来てとっても嬉しかったんだよ。だからね……ぐんちゃん。酷い人たちに嫌な事を言われたからって自分を否定しないで、ずっと私と友達でいて。お願いだから」

「高嶋さん……ありがとう」

 

 友奈も千景もほんの少しだけ涙を流しながら互いを抱きしめあった。

 千景が求めていた忌まわしい過去も関係なく、自分を友達として大切にしてくれる人。

 暗い過去も関係なく互いが互いを思いやって大切にすることができる友達同士の関係。

 心の何処かに合った凝りが解けていくのを千景は感じる。

 

 香川県の夜の公園で今日からが本当の友達になった二人。

 そんな二人がこれからも友達でいられるといい。

 

(やべぇ俺も感動しそう……二人共幸せにな)

 

 ────────と、木陰から、見守る長瀬は思っていた。

 

「うわあっ!? だ、誰だれだれっ!?」

「……あなた……何時からいたの……?」

 

 ガサツな長瀬はすぐに木の陰に居た長瀬はすぐに友奈に気づかれてしまった。

 驚く友奈とじとっと湿った目の千景で見られて長瀬は狼狽する。

 

「えーあー大体最初から……?」

「……趣味が悪いわね、趣味が悪い……」

「そもそもぐんちゃん誰なのこの人?」

「どこからともなく現れた謎の不良よ……一応、たぶん、もしかしたら、恐らく私の恩、人?」

「何でそんな疑問形なんだ千景ェ!?」

 

 疑問形が多すぎる千景の言葉に長瀬は思わず声を上げた。

 そんな長瀬をあきれ顔で見る千景と友奈は少し長瀬が鼻血を出している事に気づく。

 

「あなた鼻血出てるけどそれはどうしたの……?」

「ん? ああこれか? お前の親父があまりにもひでーこと言うから"親が子供を否定すんじゃねえっ! "つったら"赤の他人に俺の気持ちが分かるか! "って一発殴られた。一応一発やり返してたから心配しなくていいぞ」

「「ええ……?」」

 

 野郎意外といい右持ってやがったなーと頬をさする長瀬に友奈と千景はあきれる。

 千景を心配してくれるのは確かだが、性格や男女の差を除いてもどうもなんというか世界観が違う気がする男である。

 千景は何をやっているのアナタはという表情を作り、友奈は持ち前の切り替えの早さもあり、とりあえずこの人はぐんちゃんの味方なんだなと長瀬に対して直観的にプラスの印象を抱いた。

 

「えーととりあえず、私の友達のぐんちゃんを助けてくれてありがとうございました」

「おお、いいってことよ。でもあのクソ親父ぶん殴ったのはまずかったか? 今日帰っても気まずいよなぁ」

「だったらぐんちゃん、私の家に泊まろうよ! 色々話したいこともあるし」

「え、いいの?」

「うん! 私はぐんちゃん大歓迎だよ!」

 

 長瀬は二人の様子を見て内心安堵する。

 最初に自暴自棄を起こした千景を見た時はどうなる事やらと思ったものの最終的には雨降って地固まるといったところか。

 後はこの二人は見た所問題ないだろう。むしろこれから大変なのは長瀬だ。

 何せこの世界から元の世界へ帰る方法が全く思い浮かばない。

 

(これがゲームとかならなーこの時点で何か都合よく元の世界に変えれるんだが特になんもねえな。いや待てよまさか────まだ誰か会ったり、何かしてやる奴がいるのか?)

 

 長瀬には全く思い浮かばないがもしかしたらまだこの世界にやり残した事があるのかもしれない。

 が、一瞬後にはすぐにあっさりと判断を変えた。

 

(まぁ考えていても仕方ねえな。この世界に来たのがそもそも何か理由があるかもわかんねえし今日寝る所探さねえと。JCのヒモになるわけにはいかねえし)

 

「とりあえず俺はお前ら送ったらどっか宿でも取るわ。あまり夜遅くまでうろついてると不良扱いされっから早く行こうぜ」

「……そうね、行きましょう高嶋さん」

「行こう行こう!」

 

 長瀬についていくようにして友奈と千景がついていくようにして公園の外へと歩き出そうとする。

 その時、まさにその瞬間だった。

 彼らが向かおうとしていた公園の出口にどさりと重い物が降ってきた、否、正確には降りてきた。

 

それは異形。一体のこの世の物とは思えない白い異形が彼らの目の前に降りてきた。

 

「は?」

 

 長瀬が間抜けな声を上げたのは突然の事もあるが、何よりも周囲にビルもない公園の空中から足をたわめて衝撃を吸収する事もなく降り立ったそれの、場違いなまでの存在そのものが異常にすぎるからだ。

 不快な白い肌に焼き印のような文様を刻み、剥き出しの歯を備えた口のみの頭部の異形は無言で長瀬たちを見据えた。

 

 長瀬は本能的に直感した。これは長瀬がかつてめぐり合った人食いの怪物アマゾンよりもやばい存在だと。

 

「高嶋、千景逃げろぉ!」

 

 長瀬の判断は的確だった。

 異形に持っていたヘルメットを全力で投げつけると千景と友奈を押し出すようにして逃がし、長瀬もまた逃げ出す。

 前の時のように相手に組み付いて千景たち二人を逃がすわけにはいかない。

 そんな直観はおそらくは正しかったはずだ。

 あれはアマゾンとは違う。もっと無機的に長瀬達を殺そうとする話し合いの余地がない敵だと感じた。

 

 三人は人気のない公園を息せき切って走る。

 夜の公園を三人は異形から逃れようと逃げていくが、道を塞ぐように何体もの異形が沸き出してくる。

 

「くそっ! 今度はこっちかよ!」

「ぐんちゃんまだ走れる!?」

「はぁ……はぁ……まだ大丈夫」

 

 無言で追いかけてくる異形達。それらが追いかけるスピードは速くない。

 が、逃げ道にそれらが現れる度に進路変更をしなくてはならず、異形が道を塞ぐたびに逃げ道は絞られていく。

 その動きに長瀬は寒気がした。

 

(こいつらまるで────―俺たちを狩っているみたいじゃねえか)

 

 そう、異形達は明らかに条理に反する存在のくせして長瀬たちに追い付けるほどに速くない。

 それゆえなんとか逃げられている現状とは逆に長瀬は異形達の動きに戦慄した。

 長瀬は一時期とはいえタクとケンタや千翼とTeam Xiss(チーム キス)なるチームを組み、アマゾンを狩っていた。

 それは千翼の武力を頼みにした物だがそれでもアマゾンを挑発し狩りを行っていた長瀬はこんな動きに見覚えがある。

 

 程々の完全に離れない程度の速度で相手を誘導して、そこに思い通りの場所、すなわち獲物をしとめる狩人が待ち構えていて。

 

「やべっあぶねえっっ!!」

「きゃあっ!?」「うわぁ!」

 

 公園外れの雑木林の近く、完全に開けた橋につながる道路に出る前に千景と友奈を無理やり押しとどめた。

 二人分の身体がぶつかる衝撃を感じながらも長瀬は必死に踏ん張るが、背後から来た衝撃が三人をまとめて吹き飛ばす。

 

「づうぁっ! お前らけがはねえか!?」

「大丈夫……」

「無事です」

「そりゃよかった……って何だこれ……」

 

 長瀬は衝撃の襲い来た背後を見て呆然とする。

 先程まであったはずの道路は無数の針に似た矢によってズタズタにされて用をなさなくなっている。

 それどころかあまりにも多くの矢が突き刺さっているせいで視界に入るのはほとんど矢で路面すらわずかにしか見えない。

 本来市街地では使えないような代物がぶつかり合う人と人外の戦いを見てきた長瀬からしても過剰なまでの火力だった。

 

 大破壊を成したのは長瀬たちに歩み寄る一体の異形。

 他とは異なる不気味な青の混じった体色と右腕の弓のような機構が特徴的な指揮官型の異形、さしずめサジタリウスと呼ぶべき個体は王者の様に悠然と歩み寄る。

 

 サジタリウスたちは恐らく長瀬を、千景や友奈を殺そうとしているのだろう。

 

 「クソっやるしかねえか……!」

 

 長い杭を槍の様に掲げるサジタリウスに対して長瀬は一瞬の時間稼ぎにしかならないと知りながらもなんとか相手を押しとどめようとするが、故に気づかなかった。

 背の高い木を利用して彼らの斜め上から降り立ち、友奈を手にかけようとする一体の醜悪な異形に。

 

(高嶋、さん──────!)

 

 奇しくも友奈も長瀬と同じことを考えていて前のめりになっていた為か、空中から襲来する異形に気づいたのは千景だけだ。

 だから千景は迷うことなく友奈を突き飛ばした。

 ただただ、自分の人生で唯一と言っていい大切な友達を守る為に。

 

「ぐん、ちゃん……?」

「高嶋さん、どうか」

 

 生きて。千景がそう言い終わる前に何かが突き刺さる音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────そもそも長瀬をこの世界に移動させた灰色のオーロラとは如何なる物なのか? 

 

 巻き込まれた者を他世界へ移動させるこのオーロラは、発祥や由来、さらに或る程度制御して扱える者も存在するが非常に限られている為に不明な事が非常に多い。

 だが驚くべき事に扱う者によっては、世界だけでなく時間すら移動できるという。

 

 時と空間と言うこの世の絶対的な存在を飛び越えるオーロラ。

 そんな神秘的なオーロラの性質を知ればこう思う者もいるだろう。

 このオーロラの使い方によってはすでに死んだ者すらも、生者として呼び寄せる事が出来るのではないかと。

 

 その推測は当たっている。

 まだ死者が生きている過去、死の運命を超えて生存したIF、そしてそんな単純な尺度では計り知れない根本的に異なる別の世界。

 それらのどこからか灰色のオーロラは死んだ人間を呼び寄せることができる。

 

 つまるところこのオーロラは可能性そのものなのだ。

 物語が終わったはずの死者がまだ終わらず、何かを成し遂げることができる可能性、その物の体現。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ゥゥゥゥゥ゛ッ゛ア゛マ゛ゾ゛ン゛ッ゛!!!」

 

 

 

 風のように灰色のオーロラがその場を通り抜けると同時に、固い何かが肉体に突き刺さり、貫いたような音がした。

 

「…………あっ……え?」

 

 千景は恐る恐る目を開けた。

 恐れていた自分の身体を引き裂く痛みはやってこない。

 代わりに目に入ったのは宙づりにされた異形と、異形の肉体を貫く青い腕だ。

 

「ウ゛アアッ!」

 

 野性的な叫び声と共に蒼い腕はそのまま振り抜かれて、腕に沿って生える鋭利なヒレが異形をあべこべに切断する。

 半ばから断ち切られて地面に転がり動かない異形。

 そして千景は見た。青い腕の持ち主を。

 

「怪我は……ない、か?」

「あ、はい……」

「ぐんちゃんっ!」

 

 千景を救ったのは先程の異形と全く異なる存在だ。

 青い腕と同色の全身に何処か拘束具を思わせる鈍色の装甲が装着されており、両腕に装備された武骨な兵器と共に兵器的な印象を強めている。

 更に黄色い目を中心に流血のような赤がアクセントで足されている、血涙を流す化け物のような印象がある顔。

 全体的に無機的なようで有機的、死と生、化け物と人間の折衷。そんな相反する要素を内包した印象を受ける姿だった。

 

 それは仮面ライダーアマゾンネオ。千翼と言う少年であり、かつて長瀬の関わった悲劇の中心にいた存在だ。

 

「……ヒロ、キ?」

「千……翼?」

 

 異形達が警戒し、千景と友奈が身を寄せ合う中千翼と長瀬の目線があった。

 

 長瀬は知らない。死んだはずの千翼が何故ここにいるのか。

 

 千翼は知らない。一体如何なる経緯で自分がここに来て、長瀬達は何故化け物に襲われているのか。

 

 全く二人にとってこの世は分からないことだらけだ。

 だがそれでも千翼は長瀬達をかばうようにして前に立ち、サジタリウスを旗頭に続々と集結する異形達に対して獣のように低く構えた。

 

「……なあ千翼。正直状況俺もよく分かんねえけど、後頼むわ。あいつら全員ぶっ殺してくれ」

「分かった。……俺は人殺しの化け物だけど今日くらいは────」

 

 この世界は無常だと千翼は思う。

 自分の人生も、本来異形の化け物とかかわらず生きていけるはずだった人もこんなはずじゃなかった事ばかりだ。

 後悔と悲しみと自責は今この瞬間を千翼を苛んでいる。

 

 けれども同時に千翼は嬉しく思っている。

 長瀬は友達とは言えなかったけど、それでも自分の為に何かをしてくれた数少ない人間だ。

 そんな相手に、自分がしてもらった事を返す事が出来る。

 そんなまるで友達同士のような、当たり前だけど千翼が欲してやまなかった事が出来るのが嬉しかった。

 

「ヒロキにしてもらった事を返すことができる!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アッ゛!!」

 

 本能を喰らいつくす慟哭を上げて、千翼は異形の化け物達に突っ込み、異形と"仮面ライダー"の死闘が幕を開けた。

 

 

 




次回最終回、異形の化け物vs仮面ライダーアマゾンネオ

後以前1話の方で言っていたこの小説を書いた理由のもう一つなんですが
仮面ライダーとしての千翼を描きたかったというのもあります
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