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プロローグ~ぶっちゃけよくある異世界召喚の風景~
「ごめんミスって君死んじゃったわ詫び転生」
「おk把握チートあり?」
「詫びだし3つ願いを言うがいい」
「あれとこれとそれ、ギャルのパンティーおくれー!!」
「4つじゃないか最後のは無効な、それじゃいい転生ライフを」
「ちょ足元、うわぁぁぁぁぁぁぁ」
「という夢を見たんだ」
「テンプレ乙」
「お前が杏ちゃんとか烏滸がましいにも程がある」
「うわぁ辛辣ぅ」
とある月曜日の朝、欠伸を噛み殺しつつ、雑談しながら通学路を進む男子高校生が3人。
優しげな顔をしながらテンプレ展開を容赦なくバッサリ叩き切った少年、南雲ハジメ。
ネタを逃さずキッチリとツッコミを入れたソバカス顔の少年、清水幸利。
そしてまんまテンプレな夢を見た事を話のネタにあげた、ツンツンと尖った茶髪の少年、
ちなみにこの奇天烈な名字は、祖父のヴォルフガング・クラウザーが、日本好きの異母兄弟に影響を受けて日本国籍を得たときに考えた当て字らしい。
そのままつらつらダラダラと無駄話をしつつ、始業チャイム5分前に教室へたどり着いた俺たち。
三人揃って眠そうな顔を晒しながら教室へ入ると、いかにも不良です!と大声で叫んでるような4人組が絡んできた。
「よぉ、キモオタ共!また仲良く、徹夜でゲームか?どうせエロゲーでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモいじゃん~」
4人の不良はそう言って、何が面白いのかゲラゲラ笑っている。名前は…いいか、所詮三下の小物だ。
その声に苦笑を浮かべつつ、自分の席に移動するハジメ、眉をしかめつつ、ロッカーへ移動するトシ(幸利の愛称)。
そして俺は…
「えっ、なんで知ってんだ?」
そう答えてやる。
「えっ」
「俺たちは先週、新発売のオンライン狩猟ゲームの話題一色だったし、週末もこれをやり込もうって話しかしていなかった。
つまり、今日俺たちが寝不足で登校してきたとしても、普通に考えたら夜ふかししてコイツをやり込んでいたという発想になるはず。
なのにお前たちは、何故か『徹夜で』『エロゲーを』やっていたと言い当ててみせた」
「えっ、は?」
「金、土は確かに狩猟ゲーをやり込んでいたのに、昨日に限ってエロゲーをやったのは間違いない、だがそれを知ってるのは誰もいないはず。なぜならあいつらにも言ってないからだ。
なのにお前らがそれを知ってるってことは…まさか、俺の事ストーカーでもしてんのか?」
「は、ちょ、ふざけ」
「すまん、別に俺にそういう偏見はないが、俺自身がヤンホモストーカーに好かれるってのはちょっと勘弁願いたい。
あと、俺はノーマルだから、お前らの気持ちには答えられない、すまん。
というわけで、できれば以降そういう行為は控えてくれると助かる」
それだけを一方的にまくしたてると、少々早足で、ぽかんとしている4人組から離れる俺。
すると、一人の美少女が声をかけてきた。
「おはよう、南雲くん、バツくん。ねぇバツくん、今の話は本当なのかな?」
「あ、おはよう白崎さん」
「おう、おはよう香織。ありゃあいつらにヤンホモストーカーのレッテル貼るためのでまかせだよ」
彼女の名前は白崎香織。二大女神とも言われるほどのほんわか美少女である。
周りからの殺意混じりの視線がいっそ心地良いレベルで突き刺さる。いや待て、俺は別にドMじゃない。
「あ、バツくん。今日の放課後、時間あるかな?」
「あ?んー…ああ、問題ないぜ」
「良かった。じゃあ二人でお出かけしない?」
「二人か…ハジメやトシも一緒じゃだめか?」
「できれば二人がいいかな」
「そっか…おっけ、問題無いぜ」
周りからの殺意のレベルが跳ね上がる。超絶美少女の香織は男子から非常にモテているため、こんな会話ができる俺への嫉妬が天元突破しているのだ。
そう、香織は実は俺の彼女…というわけではない。彼女の想い人は実はハジメである。
ではなぜ俺がこんな会話をしてるかというと…ハジメへヘイトを向けないためだ。
高校一年の頃、香織の好意がハジメに向いてることに気づいた俺は、同時に男子の嫉妬がハジメに集中してることにも気づいた。
これそのうち大事になるんじゃないかと思った俺は、ハジメと香織、ついでに香織の親友とトシ、トシの彼女(実は彼女持ちだ)を巻き込んでOHANASHIを敢行した。
その時の話し合いの末、ハジメと香織がお付き合いする事になったり、香織の親友が中学進学で離れ離れになった俺の幼馴染だということが判明したり、勢いでその幼馴染に告白されて、俺もお付き合いするようになったりと色々あったが、それはまぁトシと彼女さんの馴れ初めと一緒に横においておく。
そのときに決めたのが、自衛手段の乏しいハジメからヘイトをそらし、ある程度戦闘力のある俺が矢面に立つ方法、すなわちカエダーマ大作戦(杏Pのトシ命名)である。
実はさっきの会話、香織は俺に喋ってるように見せかけて、その実後ろでボケっとしていたハジメに話しかけていたのだ。そして、俺は考えるフリをしながら、予め決めていたブロックサインをハジメから受け取り、それをそのまま香織に伝える事により、俺にヘイトを集めつつ二人のデートの約束を整えてやったのだ。
ちなみに、傍から見ると、俺と香織が完全に彼氏彼女に見えることもあり、嫉妬に狂った男子から闇討ちされて返り討ちにした人数は、すでに両手の指では足りない回数である。
プラス、
「おはよう、南雲くん、バツ。朝から大変ね」
「香織、また彼らの世話を焼いてるのか?本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、こんなやる気のない奴らにゃ何言っても無駄だと思うけどなぁ」
逆ハーっぽい3人組が近づいてきてこちらに話しかけてくる。話しかけてくる、だ。挨拶してるのは一人しかいない。
唯一挨拶してきた逆ハーヒロインっぽいのは八重樫雫。ごめん嘘ついた、そんなふわふわした女の子じゃない。パッと見完全に女侍な凛とした少女、二大女神のもうひとりである。
香織の親友であり、すなわち俺の幼馴染であり、現彼女。ただしカエダーマ大作戦のために一切公表はしていない。雫も納得済みだ。
逆ハーの王子様枠っぽいキラキラした優男は天之河光輝。自分の中の正義こそが唯一絶対であり、彼の正義と違うものはすべて悪であるという思想に凝り固まった、ご都合解釈の権化である。
ちなみに俺に暴力男のレッテルを貼った
逆ハーの脳筋騎士枠っぽい筋肉ダルマは坂上龍太郎。見たままの脳筋で光輝の腰巾着である。
「あ、うんおはよう三人とも」
「おうおはよう雫。大変って何の話だ?香織と話すのは大変だって言いたいのか?いくら親友とはいえそいつは言いすぎだと思うが」
ハジメは律儀に3人に挨拶を返すが、俺はあえて雫のみに声をかける。周りの殺気が増した。いやぁごめんよ、ホントはコイツが俺の彼女なんだわHAHAHA!
「蔵兎咲、朝の挨拶くらいちゃんと返したらどうだい?人としての基本だろう。
いつまでも香織の優しさに甘えてないで、ちゃんとしないと。香織だっていつまでも君にかまってはいられないんだから」
いや、挨拶返せって俺お前に挨拶された覚えないんだが。
「だから挨拶してきた雫にはちゃんと挨拶返しただろ?お前ら二人、香織に話しかけただけで、俺らに挨拶なんて一言もしてないじゃないか。
むしろお前ら、ちゃんと挨拶したハジメに挨拶返せよ、人としての基本なんだろ?
それに、別に俺は香織に甘えてるわけじゃない。香織が俺に甘えてるんだ」
「そうだよ?私が話したいからバツくんと話してるの、むしろ私のわがままなんだよ?」
ざわりと教室が騒がしくなる。まぁ嘘はいってない。ハジメに害意が行かないようにと風よけになっている俺の好意に甘えてる形ではあるからな。別に押し付けてるわけじゃないぞ、提案したときにお願いしますと頭を下げてきたのは香織の方だ。
「え?
……ああ、ほんと、香織は優しいよな」
どうやら天之河の中では香織の発言は俺に気を使ったと解釈されたらしい。一度真面目にこいつの頭かち割って中身を見てみたい。
「ごめんなさいね?悪気はない…はず…なんだけど」
「いやこの場合悪気がないほうが厄介なパターンだと思うんだが」
「…まぁ、そうね」
「雫、そろそろお前もアレ、見限ったほうがいいんじゃないか?」
「……前向きに検討するわ」
雫と言葉をかわしていると予鈴がなったので、各々席に戻っていく。ちなみにハジメはすでに夢の中、トシは我関せずと隣の席の彼女とお喋り中だ。
ハジメは既に高校卒業後の進路が決まっており、俺に関しては色々あって既に高校レベルの課程は修了している。故に高校の授業を受ける理由はなかったりする。ハジメはともかく、俺がこの高校に通ってる理由に関してはそのうち話す機会もあるかもしれない。
さて、俺も寝るか…。
~キンクリ~
午前の授業が終わり昼休み、目を覚ました俺とハジメは、10秒チャージを済ませて再び夢の世界に旅立とうとしていた。
が、そこに弁当を携え、女神が二柱御降臨あそばした。
「南雲くん、バツくん、お弁当一緒に食べない?」
「というかどうせ二人して10秒チャージで済ましてるでしょ?
私達のお弁当分けてあげるからちゃんと食べなさい」
まぁ、断る理由もないし、メインヘイトが俺ってだけでハジメも俺のおこぼれに与る形で香織や雫と親しい(と思われてる)以上、少々のヘイトはあるわけだ。この程度は甘んじて受けてもらおう。
そう思ってハジメと目配せ、向こうもその程度の覚悟はあるらしく頷いたので返事をしようと口を開きかけた時。
「香織、雫。こっちで一緒に食べよう。南雲も蔵兎咲もまだ寝たりないみたいだしさ。
せっかくの香織の美味しい手料理を寝ぼけたまま食べるなんて俺が許さないよ?」
大丈夫か?マジで頭湧いてんじゃないのかコイツ?
俺が本気でそう心配していると。
「え?なんで光輝くんの許しがいるの?」
「香織の、って、私の手料理は美味しくないって言いたいわけ?」
素で聞き返す香織と額に青筋を浮かべた雫。俺とハジメは思わず吹き出した。
さて、とりあえず頭湧いてるキラキラ王子様を排除するかと腰を浮かして…
凍りついた。
俺の目の前、天之河の足元に輝く円環が現れている。中には幾何学模様が書かれている…これは魔法陣?
隣のハジメも気づいたらしく、動きが止まっている。魔法陣らしきものはどんどん輝きを増していき…唐突に教室全体に広がった。
その様子に、教室に残って女子生徒とお喋りをしていた先生が「皆!教室から出て!」と叫ぶ。同時に俺とハジメの金縛りも解けた。
「雫!」
「香織さん!」
咄嗟の事にカエダーマ大作戦のことも忘れ、お互いの大事な人を守るように抱きしめる。と同時に、魔法陣の輝きが、爆発したかのように教室に広がり、俺の視界と意識がホワイトアウトしていった。
カエダーマ大作戦って歌詞に入るのかな?入らないよな