ありふれた無職が世界最強   作:夏影

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テンパったバツ君の致命的な一言。少女は誤解している。


第十二話 封印されし少女を助けよう~ついでに誤解も解いとこう~

~封印されている少女~

 

 私が封印されてから数百年間、光を閉ざし続けてた扉が開いた。誰かが入ってきたらしい。逆光でよく見えないけど…四人、だろうか?

 彼ら?彼女ら?は、キョロキョロと部屋の中を見回す。私は、僅かな希望が生まれたことを自覚しつつ、声をかけることにした。

 

「…だれ?」

 

 数百年間出さなかった声は、掠れきっていた。それでも、彼らには聞こえたらしく、一斉にこっちを向いた。

 目が光に慣れ、四人の姿も多少見えるようになってきた。男二人に女二人らしい。彼らは驚愕した表情でこちらを見て…男が一人、慌ててる…?

 

「すみません。間違えました」

 

 慌てていた方の男がそう言って、扉を閉めようとする。

 まって!ここで彼らに行かれてしまったら…私は必死に言葉を絞り出した。

 

「ま、まって…!…お願い、助けて…」

「え、あ、はい…」

「すいません、少々お待ち下さい」

 

 もう一人の男が私の言葉に肯定をするが、最初に言葉を発した男のほうは気にせずに扉を閉めようとする。少々お待ち下さいって、次は何百年待てばいいの!?

 

「い、いや…もう、何百年も…もう、一人はやだ…お願い、何でもするから…だから…」

 

 私の言葉が聞こえてないかのように閉まりゆく扉。他の三人も男を説得してるようだが、一貫して、いいからちょっとまっててくれとしか返さない男。

 

「待って、お願い…私は何も…私は…」

 

 もうわずかしか開いていない扉。私は今出せる全力の声で訴えかけた。

 

「裏切られただけ!!」

 

 …扉は、止まらなかった。

 

 一度抱いた希望があっさり消えた。再び真の暗闇に閉ざされた部屋の中で、私の心に絶望が広がっていく。もう、諦めよう。私はここで、朽ち果てるだけ…もう魔力も底をつきかけてる。この魔力がなくなった時、ようやく私は死ねる…

 そう、諦めかけたその時、再び扉が開いていく。先程閉じてから十分も経っていない。…本当に、少々お待ち下さい、だったの?

 扉を開いて入ってくるのは、さっきの四人。男二人が、女二人に手を引かれる格好で入って…あれ?男達の顔に、さっきはなかったものが…あれは…

 

 目隠し?

 

 

 

~蔵兎座跋~

 

 目の前で扉が閉じる。見捨てられると思ったのか、封印少女は悲痛な叫びを上げていた。少々お待ち下さいって言ったじゃないか…いや、一言目の間違えましたが原因か。助けた後謝ろう。

 

「ちょっとバツ、なんで助けないの!」

「そうだよ、彼女を助けるためにここまで来たんだろ?」

「慌てるな、ちょっと思い出したことがあったからな。とりあえずハジメはこれつけろ」

 

 目隠しを二つ取り出し、ハジメに手渡す。…なんで俺が目隠しをもっているのか?

FF14のヘッドバンテージだよ。

 

「なにこれ?」

「ヘッドバンテージって装備だ。端的に言えば目隠しだな」

「なんで目隠しなんて…」

「まぁ、したくないなら構わんが…あの子全裸だぞ?」

「今すぐその目隠しをしなさい」

「なんなら私達がつけてあげる」

「「アッハイ」」

 

 俺が一旦引いて、目隠しを取り出した理由を聞いた女子二人が、ぱぱっと俺達に目隠しをする。

 そしてそのまま、二人に誘導されながら、再び扉を開け、部屋の中に入る。そのまま中央付近に進んでいるようだ。

 封印の解き方は事前に伝えてある。まぁ、ハジメくん、錬成で頑張れ!である。

 そのまま待機していると、しばらくバチバチ言う音がして、静かになり、衣擦れの音がして…

 

「二人とも、いいわよ」

 

 雫の声でヘッドバンテージを外す俺とハジメ。目の前には黒のローブを身に着け、呆然としている少女…いやまぁ、実年齢は知ってるが…見た目少女がいた。

 

「…なん…で…?」

 

 彼女がボソリとつぶやく。なんで、ねぇ?

 

「それは、どれに対しての、なんで?かね」

「…全部」

「ふむ?ここにいる理由、助けた理由、くらいしか思い浮かばないぞ」

「一度…見捨てようとしたのに、戻ってきた理由…」

「そもそも見捨てようと思ってなかったからな。ああそうだ、ちょっとテンパってたせいで間違えましたとか言っちまってたな。誤解させて悪かった、すまん」

「そうよ、私達まで誤解したんだからね?」

「一瞬、せっかく来たのに見捨てるのかと思っちゃったよ…」

 

 俺の謝罪に雫と香織もぷりぷり怒ってる。ハジメは俺の気持ちもわかるのか複雑な表情だ。

 

「…誤解…じゃあ、目隠しの理由は…」

「お前さんが全裸なのを思い出したからな。野郎に裸見られたかないだろ。そのために一度引いて、目隠しして戻ってきたんだよ」

「…えっち」

 

 彼女がジト目でこっちを睨む。ちょっと頬が赤い気がする。

 

「いやまて流石に理不尽だろ」

「そういえばなんで全裸って知ってたのかしら?」

 

 雫がニヤニヤしながらこっちに問いかけてくる。原作知識だよ馬鹿野郎。

 

「やっぱり…えっち…」

 

 ちくしょう理不尽だ。この怒りは八つ当たりするまで晴れることはない!

 

「っつー訳で食らっとけ!身の盾なるは心の盾とならざるなり!油断大敵! 強甲破点突き!」

 

 上から降ってきたサソリモドキに強甲破点突きをぶちかます。これは胴装備、鎧などを破壊する技だ。つまり…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ハジメ!」

「錬成!!」

 

 続けてハジメが落下地点に岩石の錐を作り出す。するとどうなるか…

 

「ギィヤァァァァァァァ!?!?!?!?」

 

 まぁ、刺さる。哀れ、中ボスサソリモドキ君。毒液も針飛ばしもしないまま、出オチ気味に瞬殺される。ぶっちゃけ、原作知識プラスチート持ちで苦戦する相手ではない。

 少女はぽかんとしている。何が起こったかわかってないようだ。雫と香織は苦笑している。まぁ、少女の出番を奪ったに等しいからな…だがタネを知ってるのにわざわざ苦戦してやる気はない。

 

「さって、んじゃ移動して事情聞こうかな?彼女はこんなところに居たくないだろうしな。俺はこのサソリモドキをどうにかしてから行くから、先に拠点に戻っておいてくれ」

「了解、早く来なさいよ?」

「おう」

 

 少女に肩を貸して歩いていく雫と、反対側で少女を支える香織。後ろから警戒しつつ付いて行くハジメ。ハジメも成長したなぁ。

 

「さて…と」

 

俺は少女が封印された石があった場所を見た。うまくいくといいんだけどな…

 

 

~キンクリ~

 

 

 俺が拠点に戻るとちょうど少女が身の上話を終わらせたところだったらしい。香織が少女の頭をなでている。雫も「よく頑張ったわね」と少し涙ぐんでいる。ハジメが頭を抑えてるのは…多分300歳云々を口に出して、雫あたりに殴られたんだな。

 

「お~う、戻ったぞ」

「あら、おかえりなさい」

「ん…そういえば、名前、なに?」

「あぁ?お前ら、自己紹介してなかったのか?」

「そういえば忘れてたわね。私は雫。八重樫 雫よ。雫でいいわ」

「私は白崎 香織だよ、よろしくね」

「僕は南雲 ハジメ。よろしく」

「俺は跋。蔵兎座 跋だ」

 

 自己紹介を終えると、少女は刻み込むように俺達の名を呟いている。…気のせいか、ハジメの名前がいちばん大切そうだな。香織もそれに気づいたのか、少し笑顔がひきつってるようにも見えるな。フラグ乙、頑張れ香織。雫は少し安堵の表情を浮かべてるな。俺に来なかったからか。ハジメ?全く気づいてないよこの鈍感野郎は。

 

「…名前、つけて」

「ん?なんで?」

「前の名前、忘れちゃったのかな?」

「もう、前の名前はいらない…ハジ…皆のつけた名前がいい」

「そうはいっても…ん?今僕名指しかけた?」

 

 おおっと、出すならここかな。

 

「ちょいまちお姫様。その前にこれをプレゼントだ」

「…え?バツ、さっきいなかったのになんで…これは?」

「まぁ、使ってみな」

「ん…」

 

 俺は封印部屋で見つけたアーティファクト…彼女の叔父の残した記録用アーティファクトを彼女に手渡した。

 彼女がそれを使用すると、彼女の叔父らしき人物の姿が映された。

 

「おじ…さま…?」

 

 

~詳しくは原作を読んでね(手抜き)~

 

 

 彼女…いや、アレーティアは記録用アーティファクトを胸に抱いて号泣している。しばらくそっとしておこうという事で、ハジメだけを残してこっそり三人でその場を離れた。なお香織はフグみたいに膨れている。

 

「バツくん、フラグ強化なんてひどいかな?」

「はっはっは、シェア覚悟してたんじゃなかったのか?」

「そんなことより、アレどうしたのよ?メッセージの内容的に、他の大迷宮をクリアしていないと手に入らないものなんじゃないの?」

 

 雫が入手方法を聞いてくる。

 

「まぁ、俺もうまくいくとは思ってなかったんだけどな…これを使った」

 

 そう言って俺が取り出したのは一本の鍵。魔法の鍵と言われる、使い捨てのアイテムだ。

 鍵がかかった扉なら、特殊なもの以外全てを開けることのできる鍵であり、正直迷宮の証で封印されているギミックには使えないかな、と思っていたが…この世界の神代の魔法より、FFシリーズの魔法のほうが上だったらしい。

 というような答えを簡潔に二人に伝える。

 

「ふーん、じゃあバツがあの子の名前を教えてくれなかったのも…」

「もし、これがうまくいって、この時点で彼女が叔父の真意を知ったなら、名前を捨てない可能性もあるかな、と思ってな。実際幾つかの二次創作では、彼女はアレーティアを名乗っているし。それに、俺達四人いるのに原作と同じ名前をつけることになるとも限らんだろ?俺に話を振られた場合は原作通りの名前を提案する予定ではあったけど」

「なるほど…じゃあアレーティアちゃん、になるのかな?」

「どうだろうな…お、落ち着いたようだな。戻るか」

 

 ハジメが手招きしている。俺たちが戻ると…

 

「私は、私の名前は、ユエ。今日から、ユエ」

 

 そう、自己紹介をしてきた。そうか、アレーティアの名は名乗らないか。そしてハジメのネーミングは原作通り、と。

 

「前の名前は大事に胸にしまっておくんだって。三人が離れてたから僕がつけることになっちゃったけど…」

「ユエ…中国語で月、だったかしら?」

「確かに…えっと、ユエちゃん、月みたいで綺麗だったよね」

「…それでいいのか?」

 

 俺がそう聞くと、胸に手を当てて…違うな、記録用アーティファクトを胸に抱いてるのか。そうして、彼女は言った。

 

「アレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール…この名前は…大事な人だけが知る名前。それでいい…それが、いい」

「真名みたいな感じか。俺達は知ってていいのか?」

「皆は私を助けてくれた、大事な人たち。だから、むしろ知っていてほしい」

「…そうか、改めてよろしくな、ユエ姫様」

「姫様はやめて…そういえば、バツは私の話の時、いなかった。なのになんで姫って…」

 

 そうだな、次は俺達の身の上話、そして俺の秘密を話す番かな?

 そして俺達は、新たな仲間に語った。理不尽に召喚されたこと。平和な世界に生きた俺達には過酷だった訓練。クラスメイトの裏切りで奈落に落ちかけ、生還したこと。勇者と決定的に敵対したこと。そして、このオルクス大迷宮を攻略する理由。

 

「ここに来た理由は…私を…助けるため?」

「ああ、そうだ」

「なんで…300年前の封印、しかもおじ…お父様は、私は死んだことにしていたはず…」

「それが俺の秘密だ。ユエは、輪廻転生って概念は知っているか?死んだ命が、別の命として蘇る、ということなんだが」

「…何となく、わかる」

 

 なんとなくでも、わかるなら好都合だな。

 

「なら話は簡単だ。俺は転生者だ。前世の記憶を持っている。そして、俺の前世の世界は、俺達の世界でも、ここトータスでもない」

「…じゃあ、どこ?」

「俺達の世界にある、物語の世界だ。そして…その世界では、このトータスでのハジメたちの冒険こそが、物語になっていたんだ」

「…じゃあ」

「ああ、完全に一致するとは流石に思ってないし、この世界は紛れもない現実だと思ってる。だけど、その物語通りのことも存在するだろう。そのうちの一つが、君の存在だよ、ユエ」

 

 俺のカミングアウトに、ユエは、しばらく言葉を発することができなかった…




というわけで、ユエちゃん、真名アレーティアが仲間になりました。原作知識持ちなら叔父さんのビデオレタースルーはありえないよなぁ?というわけで彼女の叔父への誤解は解けました。が、うちのユエちゃんはあえてその名は封印するようです。理由は…そのうち出す機会があれば。
叔父のビデオレターは全カット。だって文章そのままもってくるしかない上に無駄に長いし。

FF簡単解説
・ヘッドバンデージ
FF14にある頭装備。目隠しっぽいFF装備あるかなと検索してて見つけた。14はやってないので詳細はしりません。

・黒のローブ
いろんなFFシリーズにある黒いローブ。総じて黒魔が強化される性能であることが多い。白魔強化の『白のローブ』と対になってることが多い気がする。

・強甲破点突き
FFTバージョン。相手の胴装備を100%の確率で破壊する。モンスターに通るのはPSPバージョンだったかな?やったことないので覚えてません。

・魔法の鍵
FFⅢにある消耗品。鍵がかかった扉を開けることができる。これと光の四戦士のすべてのかぎどっちにしようか悩んだけど、どっちでもいいやと思って知名度高いこっちにしました。
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