第十四話 残念兎?との邂逅~普通に助けたら残念っぷりが消えたぞ?~
~蔵兎咲跋~
オスカー・オルクスの住処にたどり着いてから一ヶ月。クラスメイトと離れてからは…一ヶ月半くらいか?そう考えると、俺達二週間でオルクス攻略したのか…確か、原作で約一ヶ月でオルクス攻略、そこから二ヶ月かけて準備、だったはずだから…ほぼ半分の時間で出発か。確か脱出後は割とジェットコースターしてたよな。逆算して色々考えないとな。
「さて、これよりここを出て、大迷宮巡りに出発するんだが…」
「ん?バツ、どうしたの?」
「原作じゃ、ハジメとユエの物騒なやり取りがあったはずなんで、再現しようと思ったんだが…」
「物騒って…そういえば原作ではハジメくんって結構荒んでたんだっけ?それで?」
「…うん、細かい内容忘れた」
「…しまらない」
「うぐっ…ユエさん、君の一言って結構辛辣だよね…まぁいいや、ぶっちゃけ負ける気はしないが、油断だけはしないようにしよう!」
「一番油断しそうなのは貴方よ、バツ」
「アーアーキコエナーイ。とにかく、イクゾー」
デッデッデデデデ(カーン)デデデ(…カーン)
「…こないだも思ったんだけど、なんなのそれ?」
「この世界には存在しないゲームネタ」
そんな事を話しながら、魔法陣を起動。全員が光に包まれていく。
「めがぁぁぁぁ!!!めぇぇぇがぁぁぁぁ!!!」
「…何やってんだハジメ?」
「いやー、お約束かなーって」
「うん、まぁ、そうだろうけどさ。崩壊じゃなくて脱出だし微妙に違わないか?」
などとさらに無駄話をしつつ、光が収まるのを待つ。明らかに空気が変わり、少しづつ光が収まっていき、目を開けた俺達の視界に写ったものは…洞窟だった。
「なんでやねん」
ハジメが突っ込む。魔王化しなくてもやっぱり無条件に外だと信じるのかコイツは。
「…秘密の通路…隠すのが普通」
「まぁ、そうよね。外の目につくところに堂々と設置してたら、現れた瞬間を目撃されたりするでしょうし」
「ちょっと考えたらわかるかな?」
「なんか僕フルボッコですねぇ!?」
「いやぁ、原作再現おつかれさん」
「知ってたなら言ってくれても良かったんじゃないかなぁ!?」
「え、やだよ。俺が楽しくないじゃん」
「何だとこの野郎!?」
ハジメがキャラ崩壊してる。たーのしー(爆笑)
ハジメいじりもそこそこに、真っ暗な洞窟を、明かりを灯して進んでいく。原作と違って俺達は暗視は持っていないからな。松明大事。
トラップや封印された扉なんかも、オルクスの指輪の効果で完全スルーしつつ、ひたすら道なりに進んでいく。すると、前方に光が見えてきた。外の光だろう。
俺たちは顔を見合わせ…ユエがハジメの手を引いて駆け出していった。香織も、一瞬遅れて二人を追いかけて走っていく。俺と雫は、もう一度顔を見合わせ…お互い苦笑を浮かべると、三人を追って駆け出した。
なお、途中で余裕で三人を追い抜いたことをここに記しておく。速度特化の前衛と神様チート舐めんな。
そして、俺、雫、ユエ、ハジメ、香織の順で外に飛び出し、とりあえず深呼吸をした。空気が旨い。
「いやー、苦節一ヶ月半、ようやく地上に戻ってこれたな!」
「戻ろうと思えばいつでも戻れたけどね」
「んっーー!!」
「ユエちゃん、力強くなったね…」
「はぁ、はぁ、うぅ、私ももうちょっとフィジカル面鍛えようかなぁ…」
なおまともに喜んでるのはユエだけの模様。
さて、俺達の出てきた場所は『ライセン大峡谷』。ここでは魔法が使えず、強力生物が跋扈している、とされている。まぁ俺達にとってはたぶん雑魚だ。
ユエがハジメと香織に抱きついて、全身で喜びを表現している。俺と雫はそれを笑いながら見つめ…つつ、視線もむけずに近づいてくる魔物を屠り続けている。雫はひたすら斬撃飛ばし、俺はひたすら手裏剣投擲だ。途中試しにファイガを撃ってみたところ、何故か分解もされず、普段どおりに発動したところを見ると、魔力とMPは概念から別物らしい。そこからはひたすらデスを連発だ。素材美味しいです。
その後、俺と雫だけで魔物を殲滅したことに気がついたユエは、自分も役に立ちたかった、と頬を膨らませて抗議してきた。次があったらユエでも分解されずにFF魔法を使えるかを検証すると伝えて、ようやく機嫌が戻った。
「さて、こっからどうしようかねぇ…」
「ライセン迷宮に行くんじゃないの?」
「先にブルックの街を目指すんじゃなかったっけ?」
「それなんだが、先にグリューエン…」
「「準備無しで砂漠は嫌」」
「ん!」
「お、おう…」
「…バツの負けだよ。先にブルックを目指そう」
一月半も時間稼げたので、ハウリアが出てくるまでの間にグリューエンとメルジーネを攻略、戻ってきてからライセン攻略、4つの証と再生魔法を確保してからハルツィナ攻略、もありかなと思ったんだが…流石に準備無しで砂漠横断は女子メンバーは嫌らしい。そりゃそうか。
そして俺達は、アイテムボックスの中から、ハジメが作った四輪駆動のジープを取り出し、皆で乗り込んだ。一応八人乗りで作っている。運転席、助手席、三人がけの後部シート二列だ。動力は時の歯車。大事なものですら無限に使えるチートっぷりに戦慄を通り越していっそ笑えてくる。実際に無限にある形見の袋を見て気が遠くなったのも今では笑い話だ。
そんな事を考えつつ、魔物を殲滅しながら(どうやらユエもFF魔法なら通常効率で放てるらしい)ジープを走らせていると、前方に頭が二つあるティラノサウルスみたいな魔物が見えてきた。
まさかと思い、その足元を見ると、痴女みたいな格好した青みかかった白髮のウサミミ少女が逃げ回っていた。
「ウッソだろおい!まだ一月半猶予あるはずだろ!?」
「え、あれが?」
「シア・ハウリアだ!恐らく間違いない!ちっ、原作通りに行くとは思ってなかったけど、まさかこんな前倒しまであるとはな!!」
そう叫びつつ、ジープの速度を上げ、双頭ティラノとシアっぽいウサミミ少女の方へと急加速する。いくら残念兎だろうと、別に魔王化したわけじゃない俺らに、見捨てる理由はない。
「そこのウサミミ!そのまま走り抜けろ!!」
「っ!?」
俺の叫び声が聞こえたのか、一瞬驚いたような顔をしたウサミミ少女は、言われたとおりそのまま真っすぐ走り抜けていく。
「というわけで死んどけ!サンダガ!!」
手加減する理由はない。サンダガ一発で双頭ティラノ…双頭デ○ルドーみたいな仮名だな。確か正式名称はダイへドアだっけか?を消し炭に変える。しまった、素材がもったいなかった。
「きゃぁぁあああああ~!?」
サンダガの衝撃でウサミミ少女がふっとばされた。彼女なら多分平気だろうけど…
「レビテト」
自らにレビテトを掛け、空中で彼女をキャッチする。そのまま横抱きにしてジープのそばへと降りる。おっと雫さん、ちょっと目が怖いです。後でやってあげるから。…いてっ、照れ隠しに殴るなよ。
「うぅぅ…一体何が…!?そんな、ダイヘドアが…一撃で!?」
「おーい、とりあえず下ろして大丈夫か?」
「え?あ!?ひゃ、ひゃい!?大丈夫れす!!助けていただいてありがとうごじゃいましたぁ!!」
噛みっ噛みやな。流石に横抱き…通称お姫様抱っこは刺激が強すぎたかもしれない。
「さて、まずは自己紹介からか、それとも事情説明からか?」
「え、あっ!いけない!のんびりしてる時間はないんでした!助けていただいたばかりで図々しいのは承知ですが、わたしの仲間も助けていただけませんか!?」
「かまわんよ」
「そうですよね、そちらにも事情はありますよね…でも、そこを曲げてお願いします!どうか助けてください!」
「だからかまわんよって」
「助けていただけるのでしたら、貴方のお願いを何でも一つ聞きますので!お願いですから助け…え?」
「ん?今なんでもするって…」
「え、あ、はい。私にできることでしたら…」
「まぁ、それは後にするとして、別に助けるのは構わんよ。事情は移動しながら聞くから、とりあえず乗ってくれ」
「あ、はい」
そう言ってシアを後ろのシートに座らせる。雫、シア、俺の順だ。ちなみに中央座席に香織とユエ、運転がハジメだ。今は話を聞くことを優先して、助手席取り合いバトルは遠慮してもらった。
ジープを走らせながら、自己紹介を済ませ、話の本題に入る。やはり彼女はシア・ハウリアだった。
「さて、自己紹介も済んだところで、シア、なぜ君はこんなところに?」
「…皆さんは、私が未来を見ることができると言ったら、信じてくれますか?」
「ん?未来予知で何かを見たから、予定より早く樹海を出たのか…?」
「えっ」
シアのセリフから予想したことを思わず呟けば、シアが驚いたような顔でこちらを見た。
「どうした?」
「信じて、くれるんですか…?」
「まぁ、俺も似たようなことができるからな。ちなみに俺の予測では、シア、君が樹海から出るのは一ヶ月半後のことだった」
「ちなみに、魔力操作こそ持ってないけど、僕たちはみんな陣なしの魔法が使えるよ」
「私は、魔力操作も持ってる」
「…うっ…うぅっ」
俺達が自分のような力を持ってると知り、一人じゃなかったことに安堵したのか、静かに泣き出すシア。雫がその頭を優しく撫でている。
暫くして落ち着いたのか、泣き止んだ彼女は静かに語り始めた。
彼女が語ったことは原作とそこまで変わりない。魔力を持たないはずの亜人なのに、シアは魔力を持って生まれた事。更に未来予知の固有魔法まで持っていた事。魔力持ちの亜人は忌み子として処刑される事。シアの部族は仲間同士の絆が強く、忌み子であるシアを隠して育てることにした事。ここまでは変わりがなかった。だが、ここからはちょっと変わってくる。どうも、ハウリアの一族が樹海を出たのはフェアベルゲンにバレたからではなく、このタイミングで出ないと一族が滅びかねないという予知をシアが見たかららしい。
なるほど、バレてから樹海を出た場合、俺達とすれ違っていた可能性があったのか。しかも、シアの命が脅かされるレベルの高確率で。
そして、樹海を出たのはいいが、予知によれば、俺達と出会うのはなんとこのライセン大峡谷らしいではないか。最初からそれがわかっていれば少数で来たものを、いずれフェアベルゲンにバレて追われるくらいなら、と一族総出で出てきてしまった。仕方なく、大多数は樹海の入口付近に隠れてもらって、少数精鋭で峽谷に入ったところ、即魔物に見つかり、命からがら逃げ出して現在に至る、と。
「私達を見つけた魔物はさっきのダイヘドアだけだったので、今はまだ他の家族は安全だと思いますけど…はやくしないとこのままでは全滅してしまいます。お願いします、家族を助けてください」
「了承(一秒)」
そう答えつつ、俺は前方に見えてきた、何かに群がっているワイバーンっぽい魔物に、無造作に手裏剣を投げたのだった。
あの残念さが消えたのはちょっと寂しいですが…跋達がシアを助けない理由がないんですよねぇ…さっさと助けるせいであの残念さ滲む必死の懇願がなくなる、と。
今回から第二章です。よくもまぁここまで続いたもんですね我ながら…
FF簡単解説
・松明
ひかよんには普通にアイテムとして松明があるらしいですよ?やったこと無いんでよく知りませんけど。
・手裏剣
投擲武器。消耗品。FFⅢでは忍者の最強武器。もちろん消耗品。上位に風魔手裏剣等がある。
・時の歯車
永久機関と言われてる箱。反物質がどうのという説明がゲーム中にある。本当なら恐ろしすぎるアイテムである。
・形見の袋
たぶんバッツの親父さんの遺骨。ひそひ草は無限にあるのにこの辺のアイテムはないとかありえないと思った結果、大変残念な感じに…もちろん何の使い道もない第1~4の石版やネプトの目なんかも無限にあります。
・了承(一秒)
謎ジャムは許してください。