ありふれた無職が世界最強   作:夏影

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仕事の関係で遅れました。


第十六話 樹海の中で~亜人?魔法耐性持って出直してこい~

~蔵兎咲跋~

 

 俺達は、ハウリア族総勢63名と共に、ハルツィナ樹海を進んでいた。

 ハウリア族の首には、黒い首輪っぽいアクセサリーが付いている。

 

「しかし、跋殿のその、アビリティ、でしたかな?凄まじい効果ですな。ここまで一切魔物に会っておりませんぞ」

 

 カムがそう言って、周りを見渡す。樹海に入りしばらく経つが、こんな大所帯だというのに、まだ一度も魔物とエンカウントしていない。アビリティ『てきよけ』の効果だ。

 ちなみに『エンカウントなし』だと、下手したら目当ての連中にも会わなくなる可能性があるので、一応エンカウント自体はするこちらにしてある。強制エンカウントならどちらでも構わないんだが。

 

「まぁ、敵と出会うときは出会うんだがな…」

 

 と答えつつ、無造作に手裏剣を投げる。右奥の方で、こっちに向かってきていた猿っぽい魔物が即死した。

 

「こっちに近づかせなければ問題はない」

「…ハハハ、さすがですな」

 

 さすがのカムもドン引きしているようだ。

 

「そういえば、皆さんはなぜあそこにいたんですか?」

「ん?話して…なかったなそういえば」

 

 原作では出会った時点である程度会話してたけど、俺らノータイムでハウリア助けに行ったんだった。

 そういうわけで、簡単にこれまでの経緯を話しておいた。召喚、前世の記憶復活、訓練、大迷宮、裏切り、落下、脱出、糾弾、濡れ衣、決別、再突入、救出、攻略、訓練、旅立ち、出会い。『原作』についても触りだけ話しておいた。

 結果…

 

「ユエさんの境遇は同情しますし、私はすごく恵まれていたってことが分かりましたけど…跋さん達、正直な話、狙ってこの流れに持っていきませんでした?」

 

 原作のように号泣はせず、俺達の行動は狙ったんじゃないかと少しジト目だ。

 

「んやー、一応『原作』回避は狙ってたんだけどなぁ…普通に奈落に叩き落された挙句、生還したら裏切者扱い、までは予想できなかったぞ」

「ふむ、にわかには信じられない話ですが…事実、これまでは一応、その、前世の物語でしたかな、そのとおりにある程度流れてるわけですな」

「そうだな、間違いなく回避したと思ったハウリアとの邂逅があった辺り、世界の修正みたいなのもあながちありえない話じゃないのかもしれない、と思い始めてるところだ」

「…じゃあ、私を旅に連れて行ってくれますか?」

「ああ、旅に出たい理由も知ってるし、別に構わんよ。まぁ、今のままじゃ無理なんで、特訓はしてもらうけどな」

「え、あぁ、それはもちろんがんばりますが…『原作』じゃどんな特訓してたんですか?」

「内緒だし原作通りにする気もないぞ」

「ふむ、少々怖いですな」

 

などと話しながら数時間。魔物とは違う、無数の気配が俺達を取り囲んだ。どうやらおいでなすったようだ。

 カム達も忙しなくウサミミを動かして索敵し…相手に気づいたのか、苦虫を噛み潰したような顔になっている。

 

「お前達…なぜ人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 トラ模様の耳と尻尾をつけた、筋骨隆々の亜人が誰何の声を上げる。

 

「あ、あの私達は…」

 

 カムがなんとか誤魔化そうと…ん?あの虎、シアをみて目をかっぴらいてるけど…

 

「白い髪の兎人族…だと?貴様ら、忌み子を隠し続け、我らに報告が来る前に一族揃って逃げ出したハウリア族か!亜人の面汚し共め…その首輪、外で人間族に奴隷にされて、樹海の案内をさせられてるのか…ならば!ここで全員消してくれるわ!総員かかれ!!」

「話が長い」

 

 既に目の前の虎以外はスリプルで爆睡中である。俺は魔法剣スリプルがかかったブロードソードで軽く目の前の敵をぶん殴った。FFⅤのブロードソードは片刃なんだよな。峰打ちでござる。

 俺達は眠った亜人達を縄で縛って、ひとまとめに転がした上で、リーダーの虎を叩き起こした。

 

「う、む…一体何が…?」

「俺の勝ち!なんで負けたか、明日まで考えといてください。そしたらなにかが見えてくるはずです」

「なん…!?皆はどうした!?」

「後ろで寝てるぞ、全員」

 

 慌てて後ろを確認する虎。縛られてるってのに器用だなコイツ。

 

「これは…」

「全員俺の魔法でおねむだな。あんただけ効果がなかったんで、同じ魔法の効果を付与した剣でぶん殴って眠らせた。死んでないだけありがたいと思え」

「…我らを奴隷にする気か」

「奴隷なんていらんよ」

「だが、貴様らはハウリア族を奴隷にしているではないか」

「そりゃー、ハウリア族から『奴隷になるので我らを守護してくれ』と懇願されたからな」

 

 もちろん嘘である。

 ハウリア達も頷いてるが、顔がひきつっていたり目が無駄に泳いでいたりする人が多い。腹芸向かないなこの種族。

 俺は、樹海に入る直前のやり取りを思い出していた。

 

 

 

「奴隷…ですかな?」

 

 ハウリアの族長、カム・ハウリアが訝しげな顔で

問いかけてくる。

 

「ああ、と言っても、本気で隷属させるって訳じゃない。ちょっとした小細工、ってやつだ」

「小細工…どういう小細工か聞いても?」

「簡単にいえば、フェアベルゲンに誤解させて敵対する為」

 

 俺がそう言うと、ハウリア族の皆は驚いたり困惑したりと、ざわざわしだした。

 

「それは…なぜそのようなことを、と聞いてもいいですかな?」

「構わんよ、何も言わずにそんなこと言っても納得はできんだろうし。

 簡単にいえば、俺は本来知り得ない事を知ることができる」

「本来知り得ないこと…?」

「未来のこととかだな」

「!?…それは、シアの力と似たような…?」

「ちょっと違うな。まぁその説明は後でもいいだろう。

 それで、この先確定でありそうな揉め事の対処のため、ハウリア族は俺、ないしは俺達の奴隷って扱いのほうが面白…ゲフンゲフン、スムーズに事が運びそうでな」

 

 あと、個人的にフェアベルゲンが嫌いだからってのが大きいな。角が立たないようにする気は皆無だ。

 

「…今、面白いと…」

「んで、俺達の庇護を得るために、俺達へ隷属した、という設定でお芝居をしてほしくてな」

 

 カムさんの鋭いツッコミを意図的に無視して、俺はそんなお願いをハウリア族に伝える。

 

「ふむ…しかし、隷属の首輪はどうするのですかな?」

「それは、これでごまかせるんじゃないかね?」

 

 そう言って俺は一つの装備を取り出す。首装備『黒のチョーカー』だ。これなら飾り気も少ないし、隷属の首輪と誤認してくれるかもしれん。

 

「なるほど…見せてもらっても?」

「ほい」

 

 俺から黒のチョーカーを受け取ったカムさんは、じっくりとそれを見回し、おもむろにそれを自らの首に装着した。

 

「族長!?」

「大丈夫なのですか!?」

「…うむ、心配いらん。これはたしかに、単なる首飾りらしい」

「いや、まぁ、いいけどさ…」

 

 族長自ら実験台になるかよ普通…

 

「はっはっは、私は跋殿達を信頼しておりますからな!そも、だまし討ちをする理由がないではありませんか。あれだけの戦闘能力を有しておるのです、本気で隷属させたいのなら、力づくで幾らでも可能でしょう」

「そうだけどさ、カムさん族長なんだから…」

「呼び捨てで構いませんぞ。跋殿達は我らの命の恩人。それに建前上、我らの主人となるのですからな」

「…それならカム、と呼ぶけど…主人になる、ということは…」

「跋殿がそういうのであれば、恐らく何らかの理由はあるのでしょう。建前上、我らは庇護を求めて、跋殿たちに隷属した、ということにすればいいのですな?皆、それでいいか?」

 

 カムさん、いや、カムがハウリア族にそう問いかければ、全員なんの迷いもなく頷いた。本当にお人好しというかなんというか…人格改造するのが申し訳なくなってくるな。

 だけど、この性格は多少どうにかしないと、この先生きのこることはできないだろうしなぁ…彼らのためということで、心を鬼にしよう。

 

「ありがとう。じゃあ建前上、皆は俺達に命を助けられて、庇護を得るために自ら奴隷になることを希望した、ということで」

「分かりましたぞ」

「んじゃこれ、人数分の黒のチョーカーな(どさどさー)」

「!?」

 

 

 

 まぁこんな感じで、建前上、ハウリア族は全員俺の奴隷、ってことになってる。雫やハジメ達は奴隷持つ演技なんてできそうにないと辞退した。あ、今回全く会話に入ってこないけどちゃんといるぞ?中間とか後方で別のハウリア族達を護衛しながら談笑してるけどな。60人超えだから、俺らが一塊じゃ漏れが出る。

 

「…奴隷を欲していないのが事実だとして…ならばなぜ、この地へやってきた?」

「樹海の深部、大樹のもとに、な」

「大樹のもとへ…?一体何のために?」

 

 原作ではここであっさり大迷宮の話ししてたけど、ワンチャンフェアベルゲンスルーできるかな?

 

「俺達は異世界から召喚された勇者でな。ぶっちゃけていえば観光だよ。だから別に亜人に偏見もなにもないし、奴隷だってどうしてもって言われて建前上主人やってるだけだ」

 

 さてさて、この虎さんの判断やいかに?

 

「…それが本当だとしたら、お前は国や同胞には危害を加える気はない、のだな?」

「んにゃ、さっきみたいに襲われた場合はわからんよ。俺達は既に敵対した人間族も殺している。敵対した亜人族を殺さないでおく理由はない。今回は初回サービスと思ってくれ、次はないぞ」

「…本国に指示を仰ぎたい。伝令を出すことを許して貰いたい」

 

 んー、スルー無理かなー?しかし、原作と違って全員完膚なきまでに無力化されてるからか、完全に下手だなこの虎さん。

 

「しゃーないなー、んじゃその伝令だけ起こして縄をといてやるか。どいつだ?」

 

 原作でザムと呼ばれていた獣人を起こし、今までの話を伝え、縄をといて伝令に行かせる。これでしばらくは待ちだな。

 しばらく待っていると、眠らせていた獣人達が次々に目を覚ましていく。が、完膚無きまでに縛られてるせいで、こっちへの敵対行動はできないでいる。やがて、全員が目を覚ましたタイミングで、虎さんが、自分たちの負けと敵対行動の禁止を伝えた。

 その後俺達は、普通に雑談をしながら時間を潰し、約1時間位経った頃だろうか?流石にそろそろ飽きてきた頃に、森の奥から数人の亜人族が現れた。

 中央には初老の男。耳が尖ってるということは森人族。やはり来たのはコイツか。

 一緒についてきた亜人族が、縛られている同胞を見て、こちらを睨んでくる。が、一方的に無力化された話はちゃんと伝わっているらしく、助けようとしたり、こちらへ攻撃したりしてくる奴らはいないようだ。

 

「ふむ、お前さん達が問題の人間族かね?名はなんと言う?」

「俺らの世界じゃ、人に名を尋ねるときはまず自分から、ってのが常識なんだが、こっちの世界じゃ違うのかね?」

 

 俺のセリフに、周りの亜人族が殺気立つ、が、それを片手で制して、森人族の男が名乗りを上げる。

 

「ふむ、たしかにの。私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。して、改めて、お主の名は?」

 

 ふむ、名乗られたなら名乗り返さなきゃ今度はこっちが礼儀知らずだ。

 

「蔵兎咲跋。蔵兎咲が家名で跋が名前。すっぴんマスターだ」




…古戦場?なんのこったよ?(すっとぼけ

はい、というわけでどうにもこうにも筆が進まなかった、樹海内部です。いやー、ワンチャンフェアベルゲンスルーも考えたんですけどね、そうしたら前回の引きが完全に無駄になる。というわけで無理くりエンカウントです。
ハウリア族の総人数?適当です。
今回ちょっと整合性に自信がありませんね。どうも夏バテ気味で頭が回ってません。
次の日曜日は、投稿なかったら一回休むかも?


FF簡単解説
・スリプル
相手を眠らせる呪文。実はFFⅠ ではデフォルトで全体魔法。

・ブロードソード
幅広剣。弱めの剣であることが多い。今回使ったのはⅤバージョン。片刃。

・黒のチョーカー
首装備。黒いチョーカー。シンプルなデザインのやつ。

・峰打ち
普通に考えて、1キロ超えの金属の棒で胸部を全力殴打したら、肋骨くらい余裕で折れて肺に刺さると思う。不殺とか言ってるけど普通に死ぬと思う。アビリティじゃなくて普通の峰打ちの話。
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