~蔵兎咲跋~
イシュタルのクソジジイの話を聞いた翌日、俺達は訓練所でメルド団長から話を聞いていた。
…天道?謁見?晩餐会?
「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化してくれるものだ。最も信頼できる身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
などなど、お決まりの説明をするメルド団長の話を聞き流しつつ、俺は渡された針で指先を突き、血を魔法陣に擦り付ける。
「ステータスオープン」
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蔵兎咲跋 17歳 男 レベル:99
天職:
筋力:99
体力:99
耐性:99
敏捷:99
魔力:99
耐魔:99
技能:すっぴんマスター・最終幻想・言語理解
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これは…ある意味予想通り、ある意味予想外だな…
「全員見れたか?説明するぞ、まず最初にレベルがあるだろう?それは各ステータスの上昇とともに上がり、上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在地を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力をすべて発揮した極地ということだからな、そんな奴はそうそういない」
俺、極地一歩手前ですが何か?
「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」
正直俺はいらない。何なら最悪素手でもいい。
「次に、天職ってのがあるだろう?それは言うなれば才能だ。末尾にある技能と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少なく、戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」
俺、天職ないみたいですね。理由はわかってるけど。なぜなら俺は「すっぴんマスター」だからな。
「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
単純計算でレベル1での全ステータス1だぞ俺…いや流石に毎レベル1づつ上昇とかないだろうけど。
で、お決まりの流れでステータスオール100のチート(笑)勇者、天之川光輝がメルド団長に褒められ、全員が戦闘系天職を獲得している中、我らが
「ん?…見間違いか?」
いいえ見間違いではありません、彼は錬成師、生産職です。
「あぁーその…なんだ。錬成師というのは言ってみれば鍛冶職の事だ。鍛冶するときに便利だとか…」
非常に歯切れ悪く、そう説明するメルド団長。その言葉に調子に乗るのはいつもの小悪党共。香織と仲がいい事に変わりのないハジメへの好感度は普通に低い。
「おいおい、南雲ってもしかして非戦系かぁ?鍛冶職でどうやって戦うんだよ?」
「いや戦う必要ないだろ」
お決まりの流れになりそうだったのでサクッとインターセプト。
「ハジメが生産職で、戦う力がないなら、普通に後方支援に回せばいい。俺がなんのために志願制にしたと思ってんだ?これだけ人数がいて、全員が全員戦闘チートである保証があると思うか?
知識チート系が戦場に引きずり出されないように、戦いたくないヤツが無理やり戦わせられないようにって事であの条件を認めさせたんだ、ハジメは後方配置でいいだろ」
「そうです、先生だって非戦系?とかいう天職ですし、ステータスもほぼ平均的ですからね、落ち込む必要はありませんよ!」
そう言ってステータスプレートをハジメに見せる畑山先生。ハジメの目が死んだ!この人でなし!
「あー…先生?それガッツリ食料生産チートですからね?あとハジメも、お前の知識があれば最終的に銃くらい生産できるんじゃないか?」
「そういうお前のステータスはどうなんだ?あー、バツ、といったか」
メルド団長に言われて、俺もステータスプレートを渡す。それからのメルド団長の百面相はなかなか面白いものがあったな。
まず目に入ったであろうオール99のステータスを見て嬉しそうな顔をし、レベルを見て驚愕、のち怪訝な顔、天職欄を見てあからさまにがっかりした顔をした後、技能欄を見て顔中に疑問符を貼り付けていた。
「えー、あー、その、なんだ…ステータスは高い。高いが…お前なんでレベルが既に99なんだ?レベル99でこれは…正直低いぞ…?」
「高いけど低いって矛盾してませんかね?」
「で、天職なんだが…確かに、確かに天職なしは珍しいことではない。が、召喚されてきた者たちで天職なしは流石に予想外だったぞ」
「そんな事言われましても…まぁ俺は戦闘も生産もできない、地頭勝負の軍師でいくしかないってことですかねぇ?」
「で、この技能なんだが…何だこの技能?2つとも見たことがないぞ?すっぴんマスターと、最終幻想?」
まぁこんな会話をしていたら黙っていないのが、おなじみ小悪党組である。
「ぎゃはははは!なんだよ蔵兎咲、お前さんざん偉そうなこと言っておきながら非戦系天職すら持ってねぇのかよ!」
「今はお前のほうがステータス高いらしいけど、お前もうレベル99で頭打ちらしいじゃねぇか、すぐに追い抜いてやるぜ」
「すっぴんマスターってなんだよ?化粧しなくても顔きれいってか?ぎゃはははは」
「おう、頑張ってくれ。ぶっちゃけ俺が前線参加するって明言しなかったのは、こういう可能性を見越してだからな」
「は?」
「俺は後方組に参加するってことだよ。逆に聞くが、これで前線について行けると思うか?今でこそ天之河と互角だが、レベル的に1週間もしないうちにハジメと先生以外の全員に抜かされるぞ?」
「バツ、今僕を引き合いに出す必要あった…?」
「流れでつい、反省も後悔もしていない」
「しろよ」
まさか全肯定されるとは思っていなかったらしく、ぽかんとしている小悪党組をよそに、ハジメと漫才を始める俺。ちなみにこの間、勇者(笑)様はなにやらトリップしていた模様。おおかた自分が勇者として活躍する場面でも夢想していたのだろう。このイジメシーンで割り込みが発生しない理由ってこういうことだったんだな。
「あー、まぁ、とりあえず今日は解散ってことでいいか。明日から座学と訓練だ。後方組も一応自衛できるだけの戦闘力はほしいからな、訓練も参加してくれ。では解散!」
その夜、俺達は俺の部屋に集まっていた。メンツは俺、ハジメ、香織、雫、清水幸利ことトシ、そして
「さて、皆に集まってもらったのは他でもない。昨日伝えていた『俺の考え』がまとまったからだ」
「バツ、昨日もそうだったけど、なんかこっちに来てからあなた少し様子がおかしいわよ?」
雫は俺の様子がおかしいことに気づいてたらしい。やっぱり彼女だからか?よく俺のことを見てくれているようだ。
「まぁそうだな、そのあたりも含めていまから説明しようと思う。時にお前ら、神様転生って知ってるか?」
俺の質問に、全員が首をひねりながらも肯定する。
「それはまぁ、仮にも幸利くんの彼女やってるし、ボクでもそのくらい知ってるけど…」
「というか今朝、お前自身そんな夢見たって話してたじゃないか。それがどうした?」
「まぁそうだな。結論からいえば、今朝の話、あれ夢じゃない。俺は神様転生でこの世界に転生してきた転生者だ」
恵理とトシの疑問に端的に答えると、全員がぽかんとした表情をしていた。いや、ハジメだけは何やら難しい顔をして考え込んでいる。
「まぁ、少しばかり長くなるが、ここに至るまでの話をしよう。あれは今から…」
「シャダイはいいから早く説明」
雫に怒られたので普通に説明を開始する。
俺は前世ではごく普通の高校生だった。名前?正直覚えてないな。まぁ、それは今は関係ないから端折るぞ。
といっても、テンプレ通りに子供を助けてトラックに跳ねられ、本来死ぬ予定のなかった俺が死んでしまった、というよくあるパターンだったけどな。唯一の救いは、その子が無傷で助かる予定だったのが怪我をした、ってわけではなく、半身不随になる予定だったのがかすり傷ですんだ、ってことだったから完全な無駄死にではなかったってことくらいか。
んで、白い部屋で神様とご対面、ってわけだ。前世の俺も重度のオタクだったから、順応は早かったと思う。
以下、その時の俺と神様のやりとりだ。
「というわけで、お主は本来死ぬ予定のなかった魂であり、あの世での居場所が存在せんのじゃよ」
「見事にテンプレど真ん中ですね…で、転生と」
「そうじゃな。まぁ実はこういうケースは今までにも何度かあっての、ヒトがしばしば運命を覆すということを知っておきながら、未だに改善しようとしないこちらの落ち度でもあるし、そのてんぷら、とやらに沿って、ちーと?とか言うものを3つ与えて他の世界へ転生させることにしておるのじゃよ」
「その世界というのは、いわゆる剣と魔法の中世ファンタジー的な?」
「いや、基本的にはお主らの世界の並行世界的な場所じゃ。もちろんその世界で異世界召喚に巻き込まれた、なんてこともあり得るじゃろう。実はお主の周りも割とファンタジーしておったのじゃぞ?」
「なるほど、逆に言えばなんの事件もない普通な世界の可能性もあるってことですか」
「うむ。その場合、今の記憶は邪魔にしかならぬじゃろうから、封印することも選べるぞい。大きな事件に巻き込まれた時、自動で封印が解けるような措置じゃな」
「じゃあそれでお願いします」
「あいわかった、それではほしい能力を言うが良い」
「ではまずは、ファイナルファンタジーシリーズの全技能、魔法、アイテムを無制限に使える能力を。次に、それを十全に扱えるように、すっぴんマスターの能力を。最後に、すっぴんマスターの制限解除を」
「制限解除、とな?」
「すっぴんマスターだけでは、一度に使える技能、アビリティが2種類までですからね。前線で戦いながら様々な魔法を駆使するためには制限解除は必須です」
「なるほどのう…アイテム無制限に関しては、持ち運びはどうするつもりじゃ?」
「え?FFシリーズのアイテムの仕様を見る限り、PTメンバーで共有可能なアイテムボックス的技能が標準装備なのは明白じゃないですか?おそらく射出などはできずに手元に出すだけでしょうけど」
「ふむ…お主の想像しているシーンを見る限り、その通りのようじゃな。あいわかった、それで付与しておくぞ」
「ありがとうございます。あ、そうだ、最後に一ついいですか?」
「なんじゃ?既に転送は開始しておるのでな、手短に頼むぞい」
「では端的に。ギャルのパンティーおくれーっ!!」
「いいぞい」
「は?」
「例のアイテムボックスに入れておいてやるからの。まぁお主も男じゃな」
「え、ちょ、ただのネタ…」
「では、さらばじゃ」
「アッー!!!」
とまぁこんな会話があり、俺はこの世界に転生、勇者召喚という大事件に巻き込まれた時点で俺の記憶の封印が解けたってわけだ。まぁ流石に一気に流れ込んできたせいでかなり頭が痛かったけどな。
…ん?どうじた香織、雫?え、ギャルのパンティー?ボックスに入ってたぞ。お前らの想像とは全く別のものだろうけどな。ほれ。幻惑属性追加ダメージ付きの投擲武器、ギャルのパンティーだ。
いや、なにそれって言われてもなぁ…ギャルのパンティーはギャルのパンティーとしか言いようがないぞ。こっちの世界には存在しないネタだし。
「…ねぇ、バツ」
俺の前世のことを一通り話したあと、ずっと何かを考えながら聞いていたハジメが俺に声をかけてきた。
「おう、ハジメ、どうした?」
「バツの話を聞いたときからずっと疑問に思っていたことがあるんだ」
「おう、何だ?」
「バツ…」
一瞬ためらった後、ハジメは真剣な目でこちらを見つめながら、こう問いかけてきた。
「この世界は、物語の中の世界なのか?」
俺とハジメ以外の全員が、息を呑んだ。
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