あ、誤字報告ありがとうございます。
~蔵兎咲跋~
俺が転生者であることをカミングアウトした日から、二週間の時が過ぎた。
あの後、協力してくれると約束してくれた皆に、これからの物語の流れや起こることへの対策などを話し、更にちょっとした道具をいくつか渡してある。
その後は、各自訓練に勤しんだり、図書館で調べ物をしたりと、各自生き残るための活動を始めている。
香織や雫は勇者パーティーとして訓練の日々、トシと恵理も一応戦闘班として魔法の訓練、俺とハジメは後方支援組として、最低限の自衛の訓練の後は、ハジメの錬成の訓練、図書室で図鑑を読み漁っての知識の収集等。
その後、俺だけは夜中にすっぴんマスタースキルや最終幻想スキルに内包されてるものの確認をしたりしていた。
その結果わかったことは、俺のステータスはFF準拠であり、オール99のステータスはこっちの世界の99とは全く違う、相当高いステータスだということが判明した。これは、レベルが上がり敏捷が100を超えた雫と短距離走をしてわかったことだ。端的に言えば、雫をぶっちぎってゴールした。
後は、俺はこの世界の魔法の適性は皆無だということが判明した。これはハジメもだが、おかげで魔法を使うときは巨大な魔法陣が必要になるので、魔法系は現実的ではない、という結論に達した、のだが…FFの魔法なら普通に使えることもわかっている。
何をどう解釈したのか、最終幻想の中にパーティーシステムとジョブチェンジシステムが内包されていたので、五人をパーティーとして認識、ジョブチェンジで転職させたら、何故か俺が所持してる魔法や技能を使うことができたのだ。ついでにステータス表示もFF準拠の一桁台に下がっていて、皆かなり凹んでいたようだが。もちろん、魔法使っても威力はお察しだった。
なお、すっぴんに戻せばトータス準拠のステータスに戻るらしく、このことが他にバレることはなかった。
ついでに、アイテムボックス機能もパーティー共有化ができた上に、FF由来アイテムは、いくら使っても消耗しないことも判明した。ラストエリクサー使いたい放題とか、神水いらないんじゃないかな?
というわけで、なんとハジメが錬成で銃を作り出す意味がなくなってしまった。だって散弾銃とか普通に入ってるし。まぁ一応カモフラージュのために作れるように努力はしてもらっているけどな。FFの銃器ってなぜか筋力(攻撃力互換か?)依存で威力上がるからハジメが撃ってもカスダメしか出ないし。
とまぁ、他にも色々内包してそうな最終幻想スキルであるが、主だった機能はこんなものである。すっぴんマスターに関しては、すっぴんマスターだったとしか言いようがなかったな。全武器種を十全に使えたり、全魔法等を十全に使えたり。
それはともかく、二週間である。おそらくそろそろあのイベントが起こるはずだ。そう、小悪党組によるハジメリンチである。
一応皆にも、そういう事が起こるかもしれないことは伝えてある。警戒していて損はないだろうからな。
そんな事を考えつつ、訓練所に向かっていると、背中に何かが当たる感覚があった。疑問符を浮かべながら振り向くと、小悪党組がいた。ああ、こっちにちょっかい出す流れか。そう言えば香織と仲がいいのは俺ってことになってたな。
「よぉ、蔵兎咲。なにしてんの?お前が訓練に出ても意味ないだろが。マジ無職なんだしよぉ~」
「ちょっ、檜山言い過ぎ!いくら本当だからってさぁ、ギャハハハ!」
「なんで毎回訓練に出てくるわけ?俺なら恥ずかしくて無理だわ!ヒヒヒ!」
「なぁ、大介。コイツさぁ、なんかもう哀れだから、俺らで稽古つけてやんね?」
なんでってそんなの、メルド団長から「自衛手段ぐらい身につけとけ」と出てくるように言われてるからだ。それがなけりゃこんな無意味な訓練、出る価値はないぞ。
そんなことを思いながら、俺は奴らに聞こえないくらいの小声で、幾つかの単語をつぶやいた。
「あぁ?おいおい信治、お前マジ優しすぎじゃね?まぁ、俺も優しいし?稽古つけてやってもいいけどさ~」
「おお、いいじゃん。俺ら超優しいじゃん。無職のために時間使ってやるとかさ~。蔵兎咲~感謝しろよ~?」
そんなことを言いながら馴れ馴れしく肩を組み人目につかない方へ連行していく檜山たち。肩組んでんじゃねぇ気持ちわりぃ。
その様子に気づいたクラスメイトが何人かいたようだが、檜山たちが怖いのか、見て見ぬ振りをするようだ。まぁ原作ハジメほどじゃないが俺もわりとヘイト稼いでたからな、しゃーないな。
「いや、さすがにヤンホモストーカーに人目につかないところに連れ込まれるのは身の危険感じるんで遠慮したいんだが」
肩に組まれた手を外しながら、そう言ってみる。ちなみにいままでも割とヤンホモストーカーネタをぶっこんだりしてるので、未だに噂は風化していない。
「はぁ!?だから俺はそんなんじゃねぇって言ってるだろうが!てめぇいい加減にしとけよコラァ!」
そう言いながら、脇腹を殴ってくる檜山。コイツ暴力にためらいがなくなってきてやがるな。
しかし、必中の距離で放たれた拳は、何故か俺に当たることなく空を切った。
「どうした?俺を殴るんじゃなかったのか?この距離で、しかもパンチを外すとか、むしろお前が稽古つけてもらうべきじゃないか?」
そう煽れば、小悪党組4人が俺を囲むように散開した。
「あまり調子乗ってんじゃねぇぞ!」
そう叫びながら、近藤が背後から剣の鞘で殴りかかる。しかし、俺は冷静に振り向き、両手で鞘を掴み取る。
「てめぇ、ざけんなよ!ここに焼撃を望む――――火球!」
「その状態じゃ避けることもできねぇだろ!ここに風撃を望む――――風球!」
中野と斎藤が魔法を放つ、が、それも既に対策済みだ。
「な!?」
「反射された!?」
俺の方に迫ってきた魔法二つは、俺に触れる直前で反射され、術者へと返っていく。弾速自体はそこまで速くない魔法のため、ギリギリでかわすことができたようだ。
「てめぇ、何したか知らねぇけどあまり調子に乗ってんじゃねぇぞ!おい、魔法は使うな!直接ぶん殴ってやれ!」
そう言いながら殴ってくる檜山。他三人も直接殴りかかってきた。が、俺はそれをかわし、受け止め、一切ダメージを受けずにやり過ごしていく。
そうやってしばらく檜山たちで遊んでいたが、流石に飽きてきた。そろそろ反撃するとしようか。
「なぁ、稽古ってことは、俺が反撃してもいいんだよな?」
「あぁ!?避けることしかできねぇお前が反撃だぁ!?おもしれぇ、やってみやがれ!」
「オーケー、言質は取った」
そう言って俺は、一つの力を行使する。
「『ぜんぎり』」
その瞬間、俺の拳から不可視の衝撃波が発生し、小悪党組をふっとばした。その瞬間…
「何をやっているんだ!」
その声に、顔をしかめる俺。なぜなら…
「蔵兎咲!お前、なぜ檜山たちに暴力をふるったんだ!俺達は仲間だろう!仲間にそんなことをするやつは最低だ!しかも檜山たちはこの世界の人達のために努力しているんだ!それを後方に逃げたお前がこんなひどいことを…」
ご都合主義の塊、こと天之河であった。ほんとコイツは一体何考えて生きてるんだろうか…
「おい馬鹿之河」
「な、誰が馬鹿だ!」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ!」
「かみまみた。まぁそんなこたぁどうでもいいんだよ。まずこれを見ろ。それからもう一回さっきのセリフを言ってみろ」
俺はポケットに仕込んでいたスマホを天之河に渡す。充電?充電器ごとポケットに突っ込んでたから問題はないな。流石にそろそろどちらも使えなくなりそうだが。
ちなみにレンズが出るように仕込んで、動画を撮ってある。仕込んだのは最初に背中をド突かれた時だ。オタクのスマホ操作の速度をなめんなよ?
「これは…」
「まぁ、そういうことだ」
「檜山たちはお前に訓練をつけてくれようとしてただけじゃないか!だというのにお前はそんな四人の好意を無にして一方的にふっとばした!」
「は?」
「なぜこんなひどいことをしたんだ!納得の行く説明をするんだ!!」
「 」
唖然とするとはこのことだろうな…ちなみにちゃんと最後(天之河の乱入)まで動画を再生しての発言である。こいつらの言動は明らかに訓練をつける人間のものではないし、1対4で対峙し、魔法まで放っている。しかもその後、4人がかりで俺へと攻撃し続けている上に、訓練という建前上で反撃した俺の言動まで映っているのだ。
どう考えても、俺の反撃は訓練上でのことだと言い切れるだろう。
「まぁ、とりあえず、訓練だっていうから反撃しただけだが、それの何が問題なんだ?と返しておこうか」
「訓練!?ふざけるな!!檜山たちが完全に気を失っているじゃないか!やりすぎだ!」
「四人がかりで殴りかかってくるのはやりすぎじゃないのか?魔法なんて怪我じゃ済まない可能性もあるぞ?」
「訓練なんだからそのくらい普通だろう!厳しくない訓練なんて意味がない!」
だれかたすけてぇー、こいつかいわがつうじないよー。
俺が内心頭を抱えていると、救世主がやってきた。
「バツくん!」
「バツ!」
「バツ、光輝」
香織と雫、それにメルド団長がこちらへやってきた。メルド団長は厳しい表情だ。
「香織、雫!それにメルド団長も!」
「光輝、何があったかは知らんが、この件は俺が預かる」
「メルド団長、でも!」
「気にするな、俺はお前らの保護者であり教育係だ。揉め事の仲裁も俺の義務の一つだ。
バツと大介たちの件は俺が預かる。お前は訓練に戻れ、いいな?」
「…わかりました」
そう言って、こちらを睨みながらもおとなしく訓練に戻る天之河…間違えた、馬鹿之河。
メルド団長は厳しい顔をしながら俺に話しかけてきた。
「この二人に言われて、しばらく前からそこの影でお前らの会話を聞いていたが…俺にもその、どうが?とやらを見せてもらっても構わないか?」
断る理由もないのでメルド団長にもその動画を見せる。こいつは今日明日で電池切れだろうなぁ…
「…これを見た上での、あいつのあの言動か…」
「天之河は昔から、自分の正義が絶対だと信じています。なので、現実を自分の正義に沿うように捻じ曲げて解釈する悪癖があります」
「それも、こっちに来てから悪化している節がありますね」
俺と雫のセリフに唸るメルド団長。香織も苦笑いを浮かべてるだけで、否定はしない。
「わかった、この件は…」
「俺に実害はないので穏便に処理してもらっていいですよ」
「そうか。しかしお前、よく無傷で避けきれたな?」
「まぁ、後方組ってことで回避重点に訓練してますからね」
嘘である。
この超回避のタネは、これも最終幻想スキルにある。FFシリーズでは、装備が外見に影響を及ぼすシリーズは少ない。故に、鎧を着ようが盾を持とうが普段の服装のままに見えるのだ。
そこで、背中をド突かれた段階で、マインゴーシュ、源氏の盾、エルフのマントを装備していたのだ。更にアビリティにて白刃取りを起動、これで物理攻撃を9割弱回避することが可能になる。
ちなみに残り一割の命中した攻撃に関しては、あいつらが防御を抜けずに、ダメージはゼロだっただけである。少しくらいは怪我する覚悟はしてたんだがな。
なお、魔法に関してはこっそりリフレクを唱えていただけである。ほら、小声でブツブツ言ってたあれだ。
「…まぁ、そういうことにしておこう。とりあえず訓練に戻るぞ。すまんがその四人を起こしてくれんか?」
バレテーラ。まぁ当たり前だよな。
メルド団長に頼まれた香織は、嫌そうに四人に回復魔法をかけていく。やがて、目を覚ました四人は、逃げるように訓練に戻っていき、俺も後方組用の訓練をこなして、その日の訓練は終了した。
訓練終了後、メルド団長が皆を引き止めて、野太い声で告げた。
「明日から、実地訓練の一環として『オルクス大迷宮』へ遠征に行く」
天之河くん、ちょっと頭が春すぎるか?
でも自分の中ではこんなイメージだしなぁ…
FFシリーズ簡単解説
・マインゴーシュ(FFⅤ)
25%の確率で相手の物理攻撃を受け止める短剣
・源氏の盾(FFⅤ)
50%の確率で物理攻撃を回避する盾
・エルフのマント(FFⅤ)
33%の確率で相手の物理攻撃を回避できるようになるアクセサリ
・白刃取り(FFⅤ)
25%の確率で物理攻撃を回避するアビリティ
これらを同時に装備した時、物理回避率は実に87.3%という数値を叩き出す。
他シリーズだともっと物理回避高くなる組み合わせあるかもしれませんが、まともに覚えてるのがFFⅤだけだったのでこれを採用
・リフレク
呪文を反射するバリアを張る呪文。一部除いた回復呪文なども反射するようになってしまうので、運用時は気をつけましょう