A級1位になればモテるって聞いた   作:あたらんて

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みかんは旨い

 

冬と言えば。

 

 

「やっぱこたつにみかんですよね」

 

「い~ね~」

 

 

今日、ついに作戦室にこたつが登場した。早速こたつを国近先輩と俺で試験運用し、出水がみんなで食べる用に箱で買っているみかんを二人で食べる。

 

 

「国近先輩ゲームしましょゲーム」

 

「お?やる気あるね~。でもこのこたつから私は出れないのだよ~」

 

 

ゲーム機は確かにこたつから地味に距離がある。これではこたつに入ったままでは届かない。

 

 

「クソッ…!どうにかならないのか!」

 

「諦めなよ、木村~。この世にはどうしようもないことだってあるんだよ」

 

 

確かにもう俺はこたつから出ることは不可能だ。しかし、それなら別の方法を用いればいい!

ギリ届く範囲にあった携帯電話を何とか手繰り寄せて、電話をかける。

 

 

「あ、もしもし~?うん、うん。今大ピンチなんだわ。うん、うん。ヤバい。至急太刀川隊の隊室まで。うん。うん、それじゃ」

 

「こんなしょうもないことで人呼ぶとか木村ひどいね~」

 

「まあ弟子ですから。弧月の振り方を教えてやった対価ってやつですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「木村先輩!無事ですか!!」

 

「お、黒江。そこのプ○ステ取ってくれ」

 

 

電話してからの対応が早い。流石は黒江、3分とかからずに来た。えらく息を切らせて飛び込んできたが何でそんなに急いで来たのだろうか。

 

 

「…え?木村先輩、ピンチっていうのは…」

 

「ああ、このままじゃこたつから出ないとゲーム出来ないからさ」

 

「……」

 

「うわあ…」

 

 

何か黒江が動かない。必死に息を整えて体を震わせている。いつもの黒江のキャラが崩れているし、一体どうしたんだろうか。

 

 

「ふざけてるんですか!?先輩がピンチだっていうから作戦室から飛んできたんですよ!?それをこたつから出たくないとか意味わかんない理由で…!」

 

「おお、俺のためにそんなに急いで来てくれたのか」

 

「なっ…!」

 

 

可愛い弟子だ。まあ中1はちょっとロリコン呼ばわりされるので師弟の関係を越えることはないが。

 

 

「いや、ただこれから弧月を教えてもらう人がいなくなると困るからで…別に、その…」

 

「まあまあ、とりあえず一緒にゲームやろうぜ。ほら、みかんもあるぞ?黒江みかん好きだったよな」

 

「あ、はい…」

 

 

ここまで来ればお手の物だ。上手く丸め込んでプ○ステを持って来させる。

 

 

「木村、黒江ちゃんの扱い上手いね~」

 

 

結構長い間黒江の師匠をやってきたのだ。これくらいなんてことはない。

 

 

「あ、でも私走ってきて暑いのでこたつには入りません。木村先輩もこたつから出てください。じゃないとコンセント刺しません」

 

「え゛っ…」

 

 

冗談じゃない。それでは何のために黒江を呼んだのか。

 

 

「おいおい、嫌に決まってるだろ。早く刺すんだ。じゃないとこのみかんあげないぞ」

 

「関係ないです」

 

 

そう言うと一瞬で黒江が俺の手からみかんを奪い取る。

 

 

「なにっ!」

 

「先輩のためにトリオン体に換装して急いで来たんです。これでみかんは私のものです。さあ、早くこたつから出て下さい」

 

 

くそっ…これでは、外に出るしかないのか…?少しだけ体を外に出してみると冷たい空気が俺の肌に触れる。

 

 

「無理っ!寒過ぎだろ!こたつがあるから薄着でいんのに外に出れるわけないだろ!」

 

 

ちょびっと外に出たからこそわかるこの寒さ。こたつのぬくもりを知ってしまったからには逃れられない…!

 

 

「無理ー!絶対に無理ー!黒江がそう来るなら俺もトリガー使うぞ!」

 

「大人気なーい」

 

 

国近先輩にも黒江にも呆れられているが俺は断じてこたつという天国から出ない。

黒江も流石に困ったのか悩んでいるような表情を見せるが、しばらく黙り込んだ後に何か思いついたかのように口を開く。

 

 

「じゃあ、私が木村先輩の上に座って暖めます」

 

「よし、それでいこう!…って、へ?」

 

「私走って来たんで体温高いですから…ほら」

 

「あ、え?あ、うん…」

 

「はい、あぐらかいて下さい。ほら、プ○ステ起動しましたから」

 

 

 

結局その後あぐらをかいた俺の上に黒江が座り、国近先輩と格ゲーを黒江と交代でやったが全く集中できずにボコボコにされた。年下とはいえ女子が密着しててまともにプレイできる訳ないだろ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と、いう訳でみかんいっぱい食べてお腹いっぱいなんで俺の分あげますね堤さん」

 

「いやいや木村くん、若いんだからいっぱい食べなきゃだめだよ。それに散々良い思いをしたんだろう?今更逃がしはしないよ」

 

 

黒江を帰らせる時についでのように加古隊のところまで着いて行くんじゃなかった。今すぐ過去の俺をぶん殴ってやりたい。

 

 

「大体何だいみかんをおすそ分けって。喜々として加古ちゃんがキッチンに持って行ったじゃないか」

 

「そうだぞ木村。お前は何回この炒飯を経験したんだ。加古隊の隊室に食材を持って来るなんて初心者か」

 

「すいません、ちょっと気が動転してて…」

 

 

太刀川さんと堤さんと俺が今回の加古さん炒飯の被害者候補だ。黒江は何故か普通に食べるし俺の分も食べてもらえないだろうか。堤さんがいる時点でハズレの確率が相当高い。

というか元々は普通だったところを俺のみかんで余計な発想をさせてしまった可能性が高いのだ。

 

 

「…よし、それでこれを一振り…」

 

 

うっすらと聞こえてくる加古さんの声が恐怖を煽る。今すぐ逃げ出して国近先輩と格ゲーの続きをやりたい。例え運良くボコボコにしてしまって国近先輩が暴れ出したとしても今の状況よりはマシだ。

 

 

「はい、お待たせー。完成したわ」

 

 

恐怖に身を震わせていると遂に加古さんが炒飯を携えてやって来た。

俺のサイドエフェクトが言っている、これは絶対に食べてはダメなやつだ―――!

 

 

「みかんクリーム炒飯よ。召し上がれ」

 

「ヒッ…!」

 

 

スプーンを持つ手が震えている。普段はトリガーを振るっているこの腕が、ちっぽけなスプーンも持ち上げられない。カタカタと机をスプーンが鳴らす。

 

 

「あら?どうしたの、皆手が進んでないわね。じゃあ食べさせてあげるわ。まずは太刀川くん。あーん」

 

「ひぁっ…あ、あああああ!!!」

 

 

普段と全く違う様子の太刀川さんが口に炒飯を突っ込まれると同時に体を跳ね上げる。

 

 

「あ…逃げ、ろ…」

 

「ひぃぃっ!!」

 

 

倒れ伏す太刀川さん。震える俺と堤さん。その隣で黙々と食べ続ける黒江。自分のしでかした事を理解しているのかいないのか、笑っている加古さん。

 

 

「あら…美味しすぎて倒れちゃったのかしら。また起きたら食べさせてあげましょう。じゃあ次は堤くんね」

 

「あ…木村くん、た、助けて、くれ…!」

 

 

恐怖にすくみ上がる俺と堤さん。しかし、助けを求められても俺にはどうにもできないのだ…。この事態を招いたのは自分だというのに、不甲斐ない…!

 

 

「はい、あーん」

 

「あ、あ、あー…あ゛っ」

 

「堤さああああああんっっ!!!」

 

 

堤さんが倒れ伏す。あの耐性が付いて来て、ある程度の炒飯力の炒飯なら耐えられる堤さんが一撃だなんて…!

 

 

「あら、皆そんな反応ばっかりね。あまり面白くないけど…まあいいわ。それだけ美味しいってことだもの。それじゃあ最後は木村くんね」

 

「ひっ…!」

 

 

遂にやって来てしまった。しかし、俺にはまだ秘策がある。伊達に俺もボーダーに長いこと所属していない。俺も対策を用意している。それこそ、「味わわない」である。

まずは鼻呼吸を止め匂いを消す。その次に舌を全力で動かし炒飯から回避する。そして噛まずに飲み込む。これによって一切味わうことなく食すことができるのだ。加古さん炒飯、破れたり――!

 

 

「はい、あーん」

 

 

差し出された炒飯を口の中に含む。それと同時にクリームが口全体に広、がっ、て…みかんの、酸っぱさと…クリームの、甘さ、が…。

 

 

「あら、木村くんも倒れちゃったわね…皆が起きるのを待つしかないかしら」

 

「そうですね。特に木村先輩には絶対に完食してもらいましょう。食べきれなかったら入隊してもらうとかでどうですか?」

 

「それはいいわね。でも、喜んで完食しちゃうと思うのだけれど…」

 

「あ、そうですか…まあ、起きてからの楽しみですね」

 

 

 

 

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