砂時計   作:犬屋小鳥本部

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誰かの夢→怪奇オタク参上

ぐるぐるぐるぐる

視界が廻る

 

駅、じゃあな

校庭、後悔なんて

公園、約束だ

自宅、待っててね

道路、いくよ

病室、やっとか

 

ぐるぐるぐるぐる

世界が廻る

 

知ってる。僕、この人たちを知ってる。

コノヒトタチハ

 

僕の

 

ボクノ

 

トモダチ

 

ドウキュウセイ

 

大切な、タイセツナ

 

 

(ぶつん)

 

耳障りな雑音が(キキーーー、ドン)

鈍い音が(どす)

何かが潰れる音が(ぶしゃ)

高い電子音が(ピーーー)

 

嫌だ、聞きたくない

イヤだイヤだ、見たくない

こんなの

コンナ

 

トモダチのサイゴナンテ見たくない

 

「コレガ」

 

肩をトンと叩かれる。

一番近い場所で、ずっと知っていた声。

 

ボクノ

 

「サイゴダヨ」

 

こえ

 

はっと振り向くと、そこには

 

砂時計を顔の横に掲げる

 

頭半分が潰れ、血で真っ赤に染まる顔の横に砂時計を掲げる

 

僕がいた。

 

ボクノサイゴノコトバハ、

 

ボクノ、サイゴハ

 

(ぶつん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『緊急!緊急!

みんな集まってくれ!』

 

俺のスマホに切羽詰まったメールが入ったのは唐突だった。

俺は地元で小学校の教師をしている、仲間内では有名な怪奇現象オタクだ。

仕事は終わっていたのですぐにアプリを起動させる。

メールの送り主は、これまた地元就職組の警官である同級生だ。

グループラインが開くと、既に何人かが来ていた。

みんな、俺の同級生だ。

 

「にゃぁ」

すとん、と膝に重みがかかった。

「にゃんかあったみたいだにゃ?」

額に桜の花弁のような模様がある白い猫。彼女もれっきとした俺の同級生だ。

一緒に画面を見ながら会話に参加する。

 

『どした』

『緊急搬送された』

『誰が?』

『あいつだよ』

 

 

 

 

七不思議、三つ目の担当をしてる「眠りウサギ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ教室で過ごしていた時から眠ることの多かったそいつ。

ついたあだ名が「眠りウサギ」。

一時期は病気か?と疑ったこともあったけど、いたって健康だった。

でも、中学・高校と上がるに連れてそいつは変な夢を見るようになった。

今日はこんなだった。昨日はこんなだった。

俺はよく、そいつから夢の話を聞かされた。初めて変な夢を見た時も、真っ先に俺の方へ向かってきたそいつ。

 

俺たち同級生は仲がいいと思う。

他のとこがどんなかは知らないけど。

隠し事なんてあり得ないし、男女関係なく付き合いがあった。「いじめ」なんて言葉を知ったのは、進学でバラバラになって外に出た後のことだし、中には人ですらない同級生だっている。

事故で亡くなったやつの代わりに教室へ通い続けた猫。それがさくらだ。正式でないにしても、この猫は俺たちの同級生。

その関係は大人になっても続いている。中には同級生同士で婚約したやつらもいたし、地元に長い間帰ってこれないやつもいた。

でも、半分以上が地元に戻って就職するなりして外に出たやつらの帰りを待ってるんだ。俺は地元就職組の一人。

毎年、恩師の墓には大量の手紙と花が届く。

 

「また、みんなで集まろう」

そう俺たちは約束している。

誰も欠けることなく、また会えるんだ。

 

そんな「同級生」の中で何でそいつが俺に話を持ってくるかなんだけど。

単に俺が怪奇オタクだから。

UMAを信じてるやつとか、寺の家のやつとか、変なやつに好かれるやつとか。いろいろいるんだけど、怪奇現象全般に詳しいのは俺だな。

だから、大抵何が起こっても冷静に分析できるんだよ。あと、どんなはっちゃけたことでも信じる。

嘘だったら論破する自信はそこそこあるし、みんなからも何か変なことでわからなくなったらひとまず俺!ってくらい一目置かれてる。

 

だからだな。

そいつ「眠りウサギ」が俺に夢の話をしてたのは。

 

 

 

俺たちの地元にはさ。七不思議ってのがあるんだ。

あるきっかけがあって、その七不思議をクリアしよう。そう言い出したのは俺だった。

同級生に七不思議を割り振って、解明に乗り出したんだ。

 

バカだと思うだろ?

バカなんだよ。

バカみたいに信じた。

 

一つ目が「切り株」。

これは、母校の小学校に実際あったし、生徒の中でも話が有名だった。

さすが、一個目だよな。

この切り株は今でも学校にある。

ちゃんと探せば、古い文献も出てくるんだ。

 

二つ目が「バス停留所」。

これは、古い地図をもとに実際に回らないと話にならない。

大事なのは「地図」じゃなくて、「停留所」。辿る道のルートじゃなくてポイントさえ押さえればなんとかいけそうだった。

 

そして三つ目。

これが「砂時計」。

「眠りウサギ」が担当したやつだ。

 

 

 

さて、怪奇オタクの俺から「砂時計」の話をさせてもらうわけなんだけど、長くなるぜ?

 

あと、勘違いしないでくれよな。

この「砂時計」の話を解くのは眠りウサギであって、俺じゃない。

俺はただのヘルプなんだ。

 

本を漁って調べるのは簡単だ。でも、現実はその内容の通りとは限らない。

 

今、「砂時計」の七不思議を体験してるのはあいつなんだ。

 

それにさ。

俺の担当は七つ目なんだぜ?

 

 

 

 

じゃあ、始めるか。

 

 

 

『砂時計』

 

砂時計って知ってるか?

見たこと、あるか?

上と下に分かれていて、砂が落ちていくんだ。その時間が一定だから時計として使える。「時間を知る」というより、「時間を計る」時計だよな。

 

砂は上から下へ流れていく。

 

流れきった砂は、時計を逆さにすることでまた流れ始める。

 

砂時計っていうのはそういう物なんだ。

 

俺たちの町にある七不思議の「砂時計」の話、聞いてくれ。

これは、上書きされる前の七不思議だ。

 

七不思議、三つ目。

「砂時計」

この町のどこかにある池には砂時計が沈んでいる。

砂時計の中の砂は落ちきっている。だから、池から出して逆さにして欲しい。時間を進めて欲しい。

 

時間を進めてもらえたら、砂時計は何かお礼をしてくれるだろう。

 

そういう話が七不思議として残っていたんだ。

 

池の名前も場所もしっかり文献に示されていた、ちょっとファンタジー?な七不思議。

そんな印象を、始め俺は持っていた。

 

実際に体験したことのある人の手記やら何やらを調べた。

一つ目の「切り株」もそうだったけど、簡単な七不思議ほど体験談は多い。

 

それでわかったこと。

この「砂時計のお礼」っていうのは、未来予知らしいんだ。

ある人は自分の結婚する女性を。ある人は命の危険にさらされる事故を。ある人は人生で重要な影響を与える人との出会いを。

夢の中で見たらしい。

そして、それは的中する。

 

砂時計をひっくり返すだけでこんなお礼がもらえるんだったら、ラッキーだよな。

ただ、連続でこんな幸運は起こるはずないだろ?

まず、そもそも池があったとしても砂時計があるかは分からない。

沈んでる砂時計なんて見えねぇよ。

第一、砂時計って沈むほどの重さあるのか?

砂時計があったとしても、砂は落ちきっていないと「お礼」は発生しない。

そりゃそうだ。落ちている途中の砂時計は、いきなりひっくり返されても感謝しない。

運が良かったら更に運が良い「お礼」が手に入るんだろ。

そういうもんだ。

 

そういう七不思議だったんだ。

かつてはな。

 

悪意の全くない七不思議。

もし、砂時計を探そうと池に入って溺れても自己責任だ。七不思議は関係ない。

実際、そこそこ池での水難事故とかあったらしいけど欲を出した報いだ。

 

 

 

でも、今はそんな七不思議じゃない。

現に、眠りウサギはうなされて眠り続けている。体はげっそりと衰弱しているよ。

 

どうしてこんなことになったのかって?

この七不思議がこのままだったら問題なかったんだ。でも、変えられた。

 

 

 

池が埋め立てられたんだ。

砂時計は、もう時間を進められない。




『眠りウサギ』

眠れ眠れ夢を見ろ
誰かがどこかで死ぬ時の
誰かの中から夢を見ろ

最期の時間に何を言う?
最期の瞬間、何おもう?

墓場まで持っていく筈の欠片たち
夢に沈む砂時計

眠れ眠れ
最期の時まで眠るんだ

七不思議が三つ目、いざ参る
上書きで書き変えられた砂時計
真実はどこに眠る
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