砂時計   作:犬屋小鳥本部

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怪奇オタクは語る

まずは、眠りウサギから聞いていた夢の話からだな。

 

あいつの「変な夢」の始まりは、今考えるとまんまその七不思議だったんだ。

池の中に沈む砂時計を手に取る夢。

それを皮切りに、誰かの死ぬ時の夢を見始めた。それも、その死ぬ人の視点でだ。

 

なんでその「変な夢」が「誰かの死ぬ時の夢」かわかったかなんだけどさ。

ある時の夢の中であいつ、夢の中だと違う人なんだけど、同級生の名前を呼んだらしいんだ。そりゃ、知ってる奴の名前くらい夢の中でも呼ぶだろうさ。でも、夢が夢だったからその名前の奴に確認したんだと。

当時、俺たちは小学生。

名前の奴は、近場で亡くなった人はいないって言った。

名前を呼んだ声は、しゃがれた爺さんの声だったんだと。

確かに両隣の家にそれぞれ爺さんと婆さんが住んでいるけど、まだまだ元気だぜ?そうそいつは言っていた。

 

数年後、その両隣の家の爺さん婆さんが亡くなった。

 

たまたまだろ。俺たちはそう思った。

たまたま爺さんの夢と婆さんの夢を見た。それが本人たちかは分からないけど。

それでおしまい。

 

とはいかなかったんだな。これが。

 

「変な夢」が「誰かの死ぬ時の夢」だと断言する理由はその後にあるんだ。いや、実際は死ぬ瞬間の夢じゃなかったんだけどさ。

 

きっかけは大雨続きの末に起こった土砂崩れ。

名前を呼ばれた奴、「両隣の家」の奴な、そいつの家の一帯が土砂崩れに呑まれたんだ。

マジか!ってそいつの家だっただろう所へ行ったら変なことになってた。三軒続きのそいつの家。爺さん、そいつ、婆さんっていう風に家が横に並んでたはずなんだ。

土砂崩れってこんなだっけ?って笑うくらいの状況だった。

婆さんの家だけ綺麗に土砂に呑まれてて、他の二軒は無傷。な?笑えるだろ?こんなのあり得ねぇって。

 

ふざけて俺はそいつに言ったんだ。

「お前、なんか憑いているんじゃね?」

そいつは同級生の家の寺に行ったとき「憑いてますね」って言われたそうだ。泣いてたぜ、そいつ。

で、何が憑いていたかというと、隣に住んでいた爺さん。もう亡くなってた爺さんだ。

「え、憑かれるくらい親しかったのか?」って俺は聞いた。そしたらさ。そいつは逆だって言ったんだ。自分に対してずっと雷おやじだった、ってさ。いつもキツく厳しく当たられてたって。

 

でもおかしいよな。土砂崩れで無傷なのはその爺さんのせい以外考えられねぇじゃん?

 

それで思い出したんだよな。「変な夢」。夢の中で爺さんはそいつの名前を呼んで謝ってたらしいんだ。

こじつけかもだけど、その爺さん、最期に後悔してたんじゃないのか?

 

それともう一つ。その土砂崩れが起こって片付けるまで誰もしらなかった事実。

両隣の家のもう片方に住んでた婆さんなんだけどさ。床下に事故で先立った旦那さんと愛犬の骨を埋めてたそうなんだ。まさに「真実は墓場まで」ってな。

 

その婆さんが死んでも隠した、本人の意思で隠していたかは分からないけど、「骨を床下に埋めた」という事実。土砂崩れで家が崩壊するまで誰も知らなかったし、気づきもしなかったそうだ。

 

でも、ただ一人。いや、婆さん本人ともう一人と言うか。

知ってた奴がいるんだ。

 

そう。眠りウサギだ。

 

爺さんの夢とは別にあいつは、婆さんの「床下に骨を埋める」夢を見ていたんだ。

 

亡くなった本人以外知らないはずのことを夢に見た。

俺は、それを理由に断言した。

 

お前が見ている「変な夢」は、実際の瞬間かは別として「誰かが死ぬ時の夢」だ。

 

これがよくなかったのかもしれない。

あいつ自身が「これは誰かが死ぬ時の夢だ」って自覚しちまったんだ。

しかも、話だと夢の中じゃ「誰か」は「自分」。何回も何回も自分が死ぬ夢を見てるのと変わりないだろ?

しかも、夢を見る度にその「変な夢」を見るらしいんだ。

夢の相談をされたの、10や20じゃ納まらない。

 

あいつのあだ名。

「眠りウサギ」な。

学生の頃に付けられた名前なんだけど、その理由がこれなんだ。

 

熟睡できないんだよ。あいつ。

毎回そんな夢を見るんじゃしょうがないよな。だから、いつも時間があれば眠ってた。というよりも、あれは意識を失ってたの方が正しいかもな。

始めはまだまし、夢の内容も回数も、だったけど、段々ヒートアップしてきてさ。高校卒業は辛うじてできたけど、受験に受かった大学は中退した。

中退するって相談をそいつから受けたとき、目の下には濃い隈があって睡眠薬を常用しているって聞いた。眠っているのに眠れていなかったんだよ、そいつ。

週に数回だった相談が毎日になって、日に一度だったものが数回になって。

その度にそいつは、夢の中で死んでるんだよ。俺だったら耐えられない。

 

それでさ。

最近、妙なことを言い出した。

夢の中で君に会った。

同級生~さんと会った。

あれはきっと~くんだ。

 

その「変な夢」に俺たちが出てくる。

眠りウサギはそう言い出したんだ。

どういうことかわかるか?

夢の中で「同級生と会う」、「夢の中で自分が同級生になる」ってことの意味。

 

同級生の死ぬ時を見るって、そいつは言い出したんだ。

 

眠りウサギはな。俺たちのクラスの中でも気が弱いんだ。すぐに何かあると「どうしようどうしよう」「大丈夫かな」「こわいこわい」。すぐプルプル震えてさ。まさに弱虫ウサギ。でも、誰よりも俺たち同級生のことを大切に思ってくれてる。そんなやつなんだ。

そんなやつが俺たちの最期を見る。

そんなの耐えられるわけねぇよ。

 

やつれたあいつから話が来たとき、第一声から「どうしよう」だぜ?こっちが「どうしよう」だよ。話の最後になってくると、もう、泣いてた。

どうしよう、みんながあんな終わり方を迎えてしまう。どうしよう、僕には何もできない。

 

俺にもさ。何にも解決策はなかったんだ。

ただ、やつれていくあいつを見ていることしかできなかった。

 

どうしてそんな夢を見るのか。

俺には分からなかったんだ。

だって、当時の俺は、七不思議の三つ目がこんなことになるなんて予想もしていなかった。

池も砂時計も、まだちゃんと残っている。

そう思っていたんだ。

 

ちゃんと調べておけばよかった。

そうすれば、少なくともこんな風にあいつを苦しめなくて済んだのかもしれない。

 

 

 

 

話は現在。

あいつが緊急搬送された病院の、病室の前。

俺と、すぐに集まれた同級生たちが頭を抱えていた。

 

「どうすればいいんだよ」

「これって七不思議なんでしょ?」

「このままじゃあいつ」

 

決まってる。

 

「やるしかないぜ」

 

みんなの視線が俺に向けられる。

 

「この七不思議を解明する」

今起こっている、この七不思議を解明するしか眠りウサギを救う方法はない。

 

あいつは、俺たち同級生の最期を見てしまった。

耐えきれずに持っていた睡眠薬をありったけ飲んだんだ。全部終わらせよう、って。自殺未遂を起こしたんだよ。

 

これを招いたのは七不思議なんかじゃない。

俺たちの甘さだ。

なんとかなるだろうと甘く見たから、あいつを苦しめた。

 

ごめんな。

 

「これが七不思議の一つだったら、解明するしかないだろ。

俺たちの手で解明するんだ」

 

どうか、どうか、ひとつの願いのもとに集まった仲間たちよ。

 

「みんな、力を貸してくれ」

 

その場にいた全員が頷いた。

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