電車の中。満員とはいえないが、そこそこ人が乗車している。座席は空きがない。
俺は、僕は、吊革に捕まって出勤途中だ。今日もまた疲れる仕事になるのだろう。
『まもなくー、○○ー。○○でございまぁす』
車内のアナウンスが入る。よしよし、今日は遅れていないな。
聞いたことがない駅名だな。
駅に着く。
降りる。乗る。
発車する。
いつもの通勤作業。
学生が増えたな。
社会人は眠そうに欠伸を堪える。
がきんちょどもめ。元気余り過ぎだろ。少しは落ち着け。
若いっていいよね。暴走しなきゃいいけどさ。
今日の若者はテストか。真面目だねぇ。
あ、あの子将来美人になりそう。
駅に着く。
降りる。乗る。
発車する。
いつもの風景。
大人は疲れが残ってる。
学生はスマホを弄ってる。
あ、あの人イケメンだ!ラッキー!
あんな大人にはなりたくねぇなぁ。
ヤバイ、お姉さんエロすぎる…
マジしんどい、今日のテスト。
いつもと変わらない電車の中。
そのはずだった。
がたん、ごとん
いつもと同じように電車は走っていた。
しかし
「うわっ!?」
甲高い音を立てて急ブレーキがかかった。
体が揺れる。
「きゃっ!」
「なんだ?!」
「うぉ」
車体と一緒に人の体もガクガクと揺さぶられる。
ここで電車が止まればいい。
止まるはずなんだ。
だって、だって。
この先には急カーブがあるんだぞ?
カーブの向こうは、カーブの先は、
何があったっけ?
もし、もしも止まりきれなかったら、
僕はどうなる?
甲高いブレーキ音が鳴り続ける。
止まれるのか?
止まれよ。
止まれ!
もう、誰も立っていられなかった。
視界もぶれて、
止まってくれよ!
頼む、止まって
揺れとは別の震えが体をガクガクと揺さぶる。
もし、止まれなかったら
怖くて恐くて外の景色を見ることができない。
ブレーキ音が甲高く鳴り続ける。
そして、
一瞬の無音と、
衝撃が、
僕らを襲った。
乗っていた誰もが、その瞬間何が起こったのか理解できなかった。
鉄道事故。
その電車に乗っていた人には何が起こったのかわからない。
何が起こっているのかわからない。
だって、鉄の箱の中にいるから外が見えない。
多くを知るのは先頭に乗る車掌なのかもしれない。でも、その車掌も生きて話してくれるかわからない。
何が起きたか知らないまま、彼らは天国行きの電車へと乗り換えさせられる。
脱線事故?衝突事故?それとも人身事故?
「何が起きたのか、わかりませんでした」
彼らは、最期の瞬間さえ理解できずに電車に乗り続けたのだろうか。
イマ、ナニガオキタノ?