3歳になりました、ルイです。
相変わらず死ぬほどキツい修行は続いているが、誓いのおかげか俺はそこまで鬱々としてない。
そして今俺の隣には、産まれたばかりの赤子がいる。
「うーん」
イルミなのか?この子
まだ顔の判別もはっきりつかない赤子を見て、俺は思案する。
朝から何やら騒がしいと思ったら、母キキョウは二人目の出産をしていたらしい。
ココさんから妊娠してるとは聞いていたが、気づけばもうそんなに時が経っていたのか。
毎日修行と軟禁まがいな事をされている為、外の情報どころか家の情報すら全く入ってこない。
「イルミ様という名前になったそうですよ」
「お帰りココさん」
ガチャリと開いたドアから俺の乳母兼、現在は家庭教師のココさんがやってきた。
その手には見たことがあるミルクの哺乳瓶セットが用意されていた。
赤子は予想通りイルミだったらしい。
俺とは違い薄らと黒髪が生え、母親似なことがわかる。
「母さんは?」
「キキョウ様は今は落ちついてらっしゃいますが、また仕事に戻られるそうです」
そういや俺が産まれたばかりの頃も、すぐに暗殺業に復帰したと聞いた。
滅多に会えない様子を察するに、シルバもキキョウもうちの家族は暗殺業が忙しいらしい。
理由なだけに繁盛していると喜ぶべきなのか微妙なところだ。
ココさんの手ずからミルクを飲む赤子を見て、この子が将来あのイルミになるなんて到底思えなかった。
「可愛いね、ココさん」
「はい、可愛いですね」
慈愛に満ちた彼女の表情を見ていると、キキョウとココさん、どちらが本当の母親なのか疑わしくなる。
まぁ俺にとってのこの世界の母は、間違いなくココさんなのだが。
「またココさんが乳母になるの?」
「そうなると思ったのですが、私はルイ様の家庭教師でもありますし、明日からはイルミ様専用の乳母がつきます」
ココさんが乳母ならイルミも人格捻じ曲がらないんじゃと考えたが、そう上手くはいかないな。
俺的にはイルミが才能を遺憾無く発揮してくれた方が、跡継ぎ候補から外されるため嬉しいが。
そのためにはイルミに俺より強くなって貰わなければ。
ミルクを必死に飲む手持ち無沙汰なイルミの掌に、思わず自分の指を握らせる。
小さな自分の手よりもっと小さいイルミにギュッと握られ、俺の頬は緩んだ。
そういや俺、前世では一人っ子で、ずっと歳の近い兄弟に憧れてたんだ。
この子も一年経てば、俺と同じく地獄の修行が始まる。
原作イルミは俺と同じく、長男としての責務を果たせと、幼い時より何の疑問も持たずに言われてきたのだろう。
イルミも長男じゃなく、俺の弟としてなら、あんな風にならないかもしれない。
この子の人格形成に良い影響を与えれたらいいな。
そう、ルイは少しばかり願った。