転生したら、暗殺一家長男。   作:GON2929

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【②】

 

爺ちゃんに尋ねると、そういや昔、ルイが余りにも拷問訓練を嫌がるからそんな約束したわい、と白状してくれた。

父さんも母さんも知らなかったらしい。

母さんは発狂してたけど、爺ちゃんが血の誓いを交わしたから止める事は誓いを破ることになる。ゾルディックとしてそれは出来ん、とルイの自由にさせる事になった。

父さんも母さんもキルがいるから、そこまでルイに拘らないらしい。

 

本当に出ていくの、兄さん

 

そう尋ねると、ルイはたまに帰ってくるから、とオレの頭を撫でた。

昔はよく撫でられたが、最近はめっきりその回数も減っていた。

どうしてか胸が急に熱くなった。

風邪でも引いたかな。

 

 

 

 

刻一刻と、出立の日が近づいていた。

会話が無くなった少し前が嘘だったかのように、ルイとオレは色々話すようになった。

ルイは出立前に家族と思い出を作るみたいに、父さんと母さん、爺ちゃん、そしてミルとキルとも、ずっとしゃべっていた。

オレは仕事を増やしてもらってからあんまり家に帰れなかったけど、直ぐに終わらせて出来るだけルイと話す時間を作った。

 

仕事を終わらせて家に帰ると、ルイはほぼ自室に居らず、とある部屋に居た。

そこはルイの乳母に与えられた自室で、中にはルイと乳母がいる。

2人は時間が空けばここで談笑している事を知っていた。

 

ルイはその部屋でこの乳母に育てられた。

乳母としての役割が終わってからも、教育係としてずっとルイの側にいた女だ。

名前を確か、ココと言ったか。

40に差し掛かった彼女は、ルイの希望で未だにゾルディック家で使用人として働いていた。

彼女は何の力も持たない、一般人だ。

しかしルイが彼女を気に入っている事は周知の事実だった。

 

何がそこまで兄が気にいるのか、不思議に思って調べた事がある。

 

ココ・ヴェネット 41歳

ルイが産まれる為使用人を募集した際、若く健康だった為、見事乳母として採用されたらしい。

彼女はここが暗殺一家と知らずに応募して、知った時はさぞ驚いたようだ。

家族とは他界し、住み込みの働き先を探していただけの、何の変哲もない平凡な女。

たまたまルイに気に入られて、こうやってルイの時間をオレから奪っていく女。

 

あれ、何だろこの気持ち

どうしてこんなに、腹が立つのだろう

 

 

「あれイルミ?どうした、そんなドアの前に突っ立って」

 

談笑を止めて、オレに気づいたルイが話しかけてきた。

 

殺気でバレちゃったのかなぁ

 

なんか今すごいイライラしてるし

 

 

女はオレを見ると、スッとルイから一歩下がって頭を下げた。

使用人なのだからそれが当然なのだ。

 

 

「何を話してたの」

 

ルイはわざわざ女の方を見るとニコっと微笑んだ。

 

「俺、もう少しで家出るだろ?

ココさんにはこの家でずっとお世話になりっぱなしだし、

どうせならココさんも一緒にどうかなって」

 

「…どういうこと」

 

言っている意味が全然理解できない。

 

 

「...ルイ様が私を旅に誘ってくださったのですよ。私には大変勿体無きお言葉で…」

 

 

そう女がふふっと笑った瞬間、オレの目の前は真っ赤に染まった。

 

 

「...イルミ、おま...何して」

 

 

体中が女の返り血で染まる。

感情のまま肉体を操作した爪を振ったせいで、暗殺者としては最低レベルの死体が、そこに出来上がった……、

 

かの様に見えたが、寸でのところでルイが彼女を退かし、致命傷を避けられた。

彼女の左腕は、千切れて床に吹き飛んでいた。

何が起きたのかショックでマトモに話せないのか、震えた声でルイ様…と呟くとそのまま意識を失った。

 

 

「…ゴトー!!」

 

ルイはすぐさま使用人を呼び出して彼女の手当てを頼んだ。

 

お願いします、ココさんを助けてください

 

そう必死にお願いするルイ。

その間オレは一時もルイから視線を外さなかった。

 

 

 

 

喧騒が遠のき、オレとルイは血塗れの部屋に2人きりになった。

 

 

「…どうしたんだよ、イルミ」

 

ルイは怒るでもなく、泣きながらオレに理由を問いただした。

 

 

「兄さん、オレの事殺さないの?

オレ、兄さんが止めなかったら、確実に殺してたよ」

 

「違う、違うよ、そうじゃ無いんだよ」

 

「あーあ、兄さん

そんなに泣いたら暗殺者として失格だよ」

 

そう揶揄すると、ようやくルイは怒りを露わにした。

 

 

「ふざけるな!お前自分が何したか分かってんのか!!」

 

「兄さんの方こそ、自分が何したか分かってるの」

 

「何って、俺は何も」

 

ハッとして、まさかという顔をされた

 

 

「お前、俺がココさんと旅に出るって、それを聞いてから殺そうとしよな...そんなことで」

 

「そんなこと?そんなことって何。

何で家を出るって一人で決めたの?オレは許可してない。

許可なんかするはずも無い、だって家族でしょ?

ゾルディック家長男として、兄さんはククルーマウンテンから離れちゃダメだよ。

爺ちゃんと血の誓約したから?そんなのオレが許さないよ。

兄さんはここから離れられない」

 

 

あぁ、そっか

ムカついてたのは、ルイがオレから離れるって言ったからか

 

言いたい事をいい終えてスッキリしたから、ルイの方を見ると、酷く狼狽している様だった。

真っ青な顔は可哀想だけど、オレはとある考えを思いついて、ルイに止めを刺した。

 

 

 

「兄さん、街に友達いるよね」

 

「え…」

 

ルイは誰にも言ってない隠しごとがある。

たまに家を抜け出し街に降りると、暗殺者としてではなく、只の一般人として街の住民たちと馴染んでいた。

知ったのはつい最近だ。

ルイが暗殺業を抑え、街に降りる回数が増えたせいか、たまたま目撃した。

オレはなぜそんなことをしているのか不思議だった。

今ならわかる。

いつかゾルディックから解放された時、一般人に紛れ込めるように随分昔から計画していたのだ。

 

 

「そいつら、全員殺してくる」

 

「...そんなことをしたら、俺はお前を許さない」

 

ルイから殺気が漏れる。

それでもイルミを殺すと断定しないのは、ルイの優しすぎるからだ。

オレはルイみたく優しくないから、その優しさを利用する。

 

 

「兄さんが......ルイが、この家から離れないって誓ってくれるなら、オレは何もしないよ」

 

「…血の誓約ってことか?」

 

「うん」

 

昔爺ちゃんと誓った約束を、今度は違う形でオレと約束して

 

そうお願いすると、張っていた殺気を収めてくれた。

そして親指を噛みちぎるとこちらに向けた。

 

「約束しろイルミ。俺がこの家から出ない代わりに街のひとたちにも、ココさんにも手を出さないと、誓え!」

 

「約束する」

 

互いの親指を合わせ、ゾルディックの誓いは完了した。

 

 

ルイはオレの言葉を聞くと直ぐに部屋を飛び出した。

きっと女の元へ向かったのだろう。

 

「あー、兄さんが優しい人でよかった」

 

イルミはルイがの血がついた親指を舐めると、顔には出さずに安心した。

 

これで兄さんとずっと一緒だ。

 

 

 








自覚のない、病み
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