「にいさん」
「はーいお兄ちゃんですよ〜」
どうも、弟との数少ない触れ合いを堪能しているルイです。
ゾルディックに産まれて五年が経ちました。
相変わらず無茶苦茶な拷問訓練と暗殺業の修行は続いてますが、何とか耐えてます。
そして本日はシルバとお出かけなので、そろそろイルミと離れないといけません。
出来るなら行きたくない。
数ヶ月前からシルバの暗殺業に同行することになりました。
と言っても横で気配消して見てるだけだが。
まだまだ暗殺者として未熟な俺に人を殺せない。
人が死ぬ瞬間なんて本当に見たくなかった。
シルバは一滴の血も流さず声も上げさせず、静かに暗殺する事に長けていたのは良かった。
お陰で目を背けて怒られる事も無く、今日も無事仕事が完了した。
「ありがとうございます、彼の仇がとれました......!」
涙ながらにお礼を言う依頼者に、シルバは言葉少なに対応する。
今回のターゲットは、依頼者女性の彼氏を殺した男だった。
とどのつまり、復讐の為に依頼されたのだ。
ゾルディック家の暗殺依頼は裏組織の顧客が殆どだが、金になるなら一般人の暗殺依頼も受けることがある。
シルバは口座に支払われた大金を確認すると、直ぐに依頼者の元を去った。
俺は帰り際にチラりと依頼者の方を確認した。
彼女は泣きながら、でもどこか達成感に満ち溢れた表情で、こちらを見送った。
ゾルディックは金のためならどんな暗殺業も引き受ける。
しかし、地元では名家と慕われているという話を聞いたことがある。
それは自らの趣向で人を殺しているのでは無く、あくまでも仕事として殺しを生業にしているからであって
快楽殺人鬼とは別物だからだ。
人間とは不思議なもんで、時間が経てば環境に順応していく。
俺はいつしかそこまで暗殺業という仕事に抵抗を抱かなくなった。
そら前世の論理観からしたら嫌なもんは嫌だが、仕事としてなら引き受けてもいいんじゃないか、という結論に至った。
それはいずれゾルディックから解放される、という思いを占めているのが理由であろう。
「ルイ、イルミはどうだ?」
仕事に同行するようになってからは、シルバと話をする機会が増えた。
最近はもっぱら、拷問訓練を始めたイルミに関する話題が多い。
「すごいよ、まだ二歳なのに200ボルトの電流を余裕で流されてるんだ」
イルミはたまに逃亡していた俺とは違い、真面目に訓練を受けていた。
その甲斐あってか尋常ではないスピードで拷問訓練から体術に至るまで、教育課程をこなしている。
俺はさらにイルミに注目が行くべく、イルミがどれだけ凄いのかをアピールした。
イルミには申し訳ないけど、ゾルディックからの解放を期待してのことだ。
「そうか。
ルイは体術はそこそこだが、拷問に関しては余り成長が見られない様だな」
「......拷問は苦手だよ」
人が死ぬ量の電流流されたり、鞭でぶったたかれたり、好んでする方がおかしいって。
俺はMじゃない。
そんな事は言えないのが、このゾルディック家だ。
「この後は家族で食事をしよう」
「げ、母さん帰ってくるの?」
母親、キキョウは最初から変わらず微妙な印象が続いている。
元々流星街出身の彼女は、個人で暗殺業を商いしていたところをシルバに見込まれ、スカウトされゾルディック家に嫁いだ、とゼノに教えてもらった。
基本的に過度な殺生はしないゼノやシルバとは違い、キキョウの殺しはサイコ的なやり方が多いので、俺は彼女を好きになる事はないであろう。
「相変わらず、キキョウが苦手だな」
シルバは呆れたように言うと俺の手を引き、待機させていた使用人が運転する車に乗り込んだ。