「いつぶりかのぉ、家族全員で夕食を
「もう!!ルイちゃんったら何で私が選んだお洋服を着てくれないの!!」
...静かにせぃ、キキョウ」
ゼノの言葉は発狂した美女によって遮られた。
顔もスタイルも申し分ないのに、何故中身はこんなに残念なんだ。
「母さん、俺はゾルディック家の男だよ?一流の暗殺者に女装は似合わないよ」
そう申し訳なさそうに言うとキキョウはあっさり引いた。
彼女は暗殺者になる為といったら大体の事は納得してくれる。
その場で納得するだけでまた後日違う衣装が送られてくるのだが。
てか男に女物の着物を用意するな。
「ルイちゃんに似合うと思ったのに......」
「そのぐらいにしておけ」
家長のシルバが言うと、キキョウはそれ以上何も言わなかった。
今日はシルバ、キキョウ、ゼノ、イル、俺、更にひい爺ちゃんマハと、作中未登場のゼノの奥さん"ボタン"と総勢7人での晩餐会だ。
何でもない日にこれだけのメンバーが集まるのは初めてかもしれない。
席列は上座のシルバから始まり向き合うようゼノとマハ、キキョウとボタン、俺とイルミが座った。
向かいのイルはまだ二歳なのに落ち着いて席についている。
むしろボタン・ゾルディックの登場に俺の方が興奮していた。
そしてキキョウの隣は成り行きで俺だ。
イルミの隣が良かった...
軽い挨拶を済ませるとそれぞれ食事を行う。
毒入りスープを一口飲み、ほっと一息つく。
イルを見るとスプーンとフォークを駆使して上手に専用の毒入り幼児食を口に運んでいた。
うんうん、見てないうちに何でもできるようになったんだな、偉いぞイル。
誇らしげにイルを見ていると、視線に気付いたイルミがこてん、と可愛らしく首を傾げた。
きゃわわー!
親バカの気持ちがわかる!
緊張していた晩餐会も、イルミという天使のおかげで無事に乗り切った。
最後までマハとボタンが話すことは無かった。
解散して俺は真っ先にイルミの側に寄った。
少し話がしたいので部屋へと誘う。
「イル、ちょっと俺の部屋に来ないか?」
「いく」
二つ返事で了承したイルミ。
「兄弟仲が良いのはいいのぉ」
ゼノが微笑ましそうに二人を眺める。
俺たちは手を繋ぎ部屋へと帰った。
ベッドに向かい合い、イルミの顔をジッと覗く。
原作イルミとは違い二歳のイルは、黒目がちなぱっちりとしたお目めが愛らしいキュートボーイだ。
その瞳に陰りは見当たらず、ほっと息を撫で下ろす。
「にいさん、どうかしたの?」
「えっと、今日はイルとおはなしがしたいんだ」
目的はずばり、イルミの身辺調査。
ゾルディックは暗殺一家とは言っても案外普通の家庭だ。
原作イルミはゾルディックの中でも、性格の捻じ曲がりっぷりが異常に思える。
どこかで歪んだ原因や、イルミに心理的ストレスを与える要因があるのかもしれない。
せっかく俺が長男になったのだから、イルミを良い方向に導いて行けたら、と考えていた。
ということで、イルミといっぱいお話ししようの会はじまり〜
「最近なにか楽しいことはあった?」
「たのしいこと...うーん、あ!
ゼノじいに、じんたいのきゅうしょ、をおしえてもらったよ」
「へ、へぇ〜すごいね〜」
人体の急所って。
そりゃ勿論ゾルディックにいる限りは習うことだけど、それが楽しい事なのか......
忘れてたけど、俺もイルミもほぼ家に軟禁状態だった。
普通の子みたいに遊びに行った事が一度もない。
敷地が山一体だから敷地内でなら遊んだことはあるけど、見張りの使用人と一緒だ。
家で毎日訓練と拷問と勉強。
こんな環境ならイルミの性格が曲がるのも無理なくね?
根本から悪いことに俺はようやく気づき、頭を抱えた。
「にいさん、あたまわるいの?」
イルミ君、心配してくれるのは嬉しいけどそれじゃあ俺の頭が悪いみたいだよ。
話を変えることにする。
「イルミ、今の生活は楽しいか?」
「うん、たのしいよ」
「そうか...」
そうなのか...これ俺が見ない間にイルミの洗脳教育完了してないか。
イルミは俺に近寄ると服の袖をつかみこちらを見上げた。
「にいさんといっぱいはなせるのが、たのしい」
ーーッ!!
この天使は俺を萌え殺す気らしい。
「うん、イル、そのままいい子に育ってくれよ」
「?」
「あ、でも俺よりは強くなれよ」
これは俺が解放される為の希望だが、イルミの生存確率を上げる為でもある。
今後原作通りの展開だと旅団とか蟻とか危険が俺たちの周りに渦巻くだろう。
厳しいハンターハンターの世界で生き抜くためには、原作イルミといかないまでも確固たる強さを手に入れなければ。
ちなみに変態とイルミが関わる可能性は俺が潰す。
何としてでも潰すぞ。
そうして俺たちは寝るまで話をすると、イルミを彼の使用人の所まで送った。
あ、身辺調査忘れてた。
ボタン•ゾルディックはゼノの奥さんでオリキャラですが、今後出てくる事はほぼ無いです。
名前も適当です。