転生したら、暗殺一家長男。   作:GON2929

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念の開花

 

ハンターハンターの世界で重要な力、念能力。

最近の俺は、座禅を組みオーラの流れを読み取る努力をしていた。

 

まだシルバたちが念を教えないのは、俺の身体が未完成だからだと思う。

キルアも12歳すぎてやっと自分で辿り着いたぐらいだし。

 

来るべき日に備えて、ゆっくり精孔を開くことを目標に、俺は一人で修行を開始した。

 

瞑想をはじめ一年になるが、未だに俺にはオーラのオの字も分からない。

ゾルディックの血を引いてる分血統は申し分ないのだが、そう一筋縄ではいかないか。

 

面倒なので家族には念を知らないふりしつつ、淡々と訓練をこなし戦闘スキルを上げていった。

 

 

その日、ルイはゼノに同行していた。

今日は暗殺ではなく、ゼノの古くからの知り合いに要人警護の依頼をされた。

裏組織との繋がりがあると、稀にこういった依頼もこなさんといかんとゼノは語った。

 

依頼者はマフィアのボスだ。

パーティーに出席する予定だが、とある筋から暗殺対象にされていると情報が入った。

 

「食事には手をつけるなと警告したから毒殺は出来ん。

必ず対象の近くに寄ってくる、もしくは離れた位置からの銃殺じゃ。

まぁワシがいるから無理だがな」

 

 

ゼノは依頼者の側で護衛する為いつもの服装は止め、スーツ姿で会場に潜り込んだ。

俺は指示された通り会場外の茂みで気配を消し、暗殺者の姿を探した。

 

一応目の届く範囲に依頼者がいる位置に潜み、不審な点は無いか注意深く探る。

ゼノが側にいる限り依頼が失敗する事は無いが、警戒は怠らない様にした。

そうして二時間が経とうとしていた。

 

 

 

「あれー、こんな所で何してるの?」

 

「...ッ」

 

 

突然背後から聞こえた声に一気に緊張が走る。

 

 

すぐに距離を取り振り返ると、見たことがない20半ばぐらいの男がその場に立っていた。

答える間も与えず男は話を続ける。

 

 

「あぁそっか、キミも銀髪のおっさんと同じ警備員さんってわけ?」

 

十中八九ゼノの事を言っているのだろう。

 

間違いない、こいつ同業者だ。

 

 

「怪しいよキミ、こんな所で気配消して隠れて。

 

まるで、暗殺者みたい」

 

 

獲物を見定めるようにゆっくり舌舐めずりされる。

瞬間体中から汗が吹き出した。

じっとりとルイの身体に纏わり付く不快感、これは...念か。

 

自慢じゃないが、俺は修行の成果で気配を断つことに自信をもっていた。

俺が見つかった理由は念の応用技、円(エン)に違いない。

 

 

「あのおっさん隙が無さすぎて、ターゲット諦めたんだよね。

多分オレより強そうだし。

 

依頼失敗、違約金高いだろうな〜」

 

 

「だからさ、キミで憂さ晴らしさせてよ」

 

 

「ッぅあ!!」

 

ルイでは到底追いつけないスピードになす術もなく、顔面に強烈な右ストレートをいれられた。

 

 

「キミいくつなんだろ?8歳くらい?

 

オレね、キミみたいな将来有望そうな子の未来奪うの、だーいすき」

 

 

 

初めての戦闘、しかも相手は自らの実力を理解し、冷静に暗殺を諦めた念能力者。

間違いなく今の俺では勝てない。

それでも戦わなければ、殺されてしまう。

 

 

 

「へぇ、驚いた。その歳でそんな高度な技術が使えるんだ」

 

 

肢曲(しきょく)。足運びに緩急をつけ残像を生じさせ、何人にも見える様に見せる技術。

ゼノも常に円を張っているはずだ、この事態に既に気づいているだろう。

これで時間稼ぎし、ゼノが来るまで持ち堪えるしかない。

 

 

「でも残念でした〜」

 

男が腕をバッと広げると、ルイの周囲に風が巻き起こった。

咄嗟に目をつむる。

足下の砂利が風で舞い上がる感覚がした。

 

「複数居ても、全部まとめて薙ぎ払えば一緒だよ、ね!」

 

右腕を大きく振ると、一斉に砂利や砂が意思を持ちルイに襲いかかった。

ルイは数メートル吹っ飛ばされ、木に激突した。

男の念能力をまともにくらい、ルイの意識は朦朧とした。

男が腕をもう一度振り上げた姿をみて、これから来る衝撃に備えた。

 

 

「ぁ...え...?」

 

「無事か?ルイ」

 

 

目を開けると、男の心臓を手に持ちこちらを窺い見るゼノの姿があった。

茫然と立っている男の目の前で心臓を握りしめると、男は事切れた。

 

良かった、間に合った。

 

ほっと息を吐いた時、己の身に異変が起きていることに気付いた。

全身から迸るエネルギーが自らの身体から出て行くのを感じた。

 

 

「ルイ、お主...」

 

目を細めたゼノに、ルイも思い当たった。

念を浴びせられ、精孔が開いたのだ。

先ほど受けた風圧は、念のオーラで作り出されたものだったのだろう。

このまま全身を迸るオーラを放置すれば、俺はそのうちオーラ不足で死ぬ。

 

 

「今すぐそれを収めねばいかん。ルイ、今からワシがいうことをよく聞け」

 

ゼノに言われるまでもなく、ルイは集中するために目を瞑った。

 

「血液の流れを意識するのじゃ」

 

頭から爪先まで血液が全身を巡るイメージ。

普段の瞑想が役に立った。

程なくしてルイの身体にピタリとオーラが張り付くのを感じた。

 

「やはり、お主はゾルディックの血を引いておる。

血の誓約は無効だろうな」

 

「勘弁してよ...」

 

ルイは一言言い残すと、その場に倒れ込んだ。

 

 

 


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