【予告】転生地球人が転生地球人と戦うまで
【特報】
「『時の部屋』に異常……ですか」
「うむ……」
地球の神とソシルミがつかつかと、緩やかに曲がった神殿の通路を小走りに突き進む。
「時の部屋はこの星の時間を管理する施設、問題があるなら見逃せません……ですが、なぜ私に?」
「今回の異常はどうやら、時の部屋の向こう……この星の時間流にあるようなのだ、そこへ入らねば調査も修正もままならん」
「ではなおさら、神様ご自身が向かわれるのが確実では」
「時間の流れに抗い、乗りこなすには神の技と強き力、そして高い純粋さを保った善の気、すべてが必要じゃ、今の地球でそれを兼ね備えた者は……」
「……善の気云々はともかく、私にしか適性がないのであれば、仕方ありません」
神は小さくうなずき――――
「いや……」
冷や汗とともに、言葉をつないだ。
「これはまるで、おぬしを招いているようだ」
神が一つの小部屋の前で立ち止まる。
大小種類様々な時計盤に包まれた部屋――――深淵なる神の秘術によって作られた空間。
「これよりおぬしは時間の旅をすることになる、くれぐれも迷うなよ、迷えば、時の亡者に……」
「分かっております、神様」
勇む愛弟子を前に、神は小さくほほえみ、その背に触れた。
白衣を着た範馬が、じろりと俺を睨む。
視線の高さは全くの同じ、否……その赤い瞳が持つ、虹彩のパターンまでも。
「偏袒右肩の……なるほど、お前はアエ家を追放された後、チャパ王に師事した世界の私といったところか」
「……パラレルワールド、フューが飛び出してきたりしないよな」
「なに、やることは一つだ」
目の前の範馬、そう、おそらくは『アエ・ソシルミ』が、忌々しげにほくそ笑んだ。
その笑みの意味を問う前に、白衣の俺は両脚両腕を誇示するように広げる。
「情報によれば、並行世界の融合を防ぐためには、すなわち、その起点である我々を削減せねばならんということらしい」
そして、その範馬は、背ではなく――――
「――――『変身』」
自らの全てを、鬼へと変じさせた。
「……ただの情報を鵜呑みとは、科学的じゃないな」
「どうだっていいさ、科学より大事なものが、俺達にはあるだろう?」
「ありゃあ、範馬は範馬でもジャックハンマーってとこか……、なあ? 師匠のお姉ちゃんのお弟子さんよ」
「妙な言い方をするな」
「つまんない、……でも面白い、俺でも魔法使いになれば、お高く止まるんだな」
亀甲を背負った範馬と、水晶玉にあぐらを組んだ範馬が隣り合って戦場を見る。
争う鬼と、鬼を背負った男を見ながら……。
「名だたる科学者に師事し、ついには自らを改造した俺……本来俺が志したあり方からはかけ離れていると言わざるをえんな、魔法使いの俺が言うのもなんだが」
「ほんとだよ」
「…………」
上の重量を失った水晶玉が軽く浮き上がるのと、巨大な音を立てて亀甲が地面を割るのは、ほぼ同時だった。
【転生地球人が転生地球人と戦うまで】
銀河パトロール官給の光線銃をくるくると弄びながら、ソシルミがつぶやく。
「パラレルワールドの『アエ・ソシルミ』を集め、潰し合わせる……なんだか、どこかで聞いたような話だ」
答えて、ゆらりと『界』の黒布が動く。
「では、どこかで聞いたような結末が用意されているだろうな」
『界』のソシルミは、指輪の嵌った手を構え、じっとりと虚空を睨んだ。
「なあ……秘密をそっと聞かせてくれ、……『本当の俺』よ」
近日公開。
「全艦、ワープ『C』発令、超高次元跳躍を開始する」
白い軍服の、ソシルミではない男が、肉の艦橋で静かに命じた。
→はじめる
「必要な分は見せたということだ、これ以上は見せぬ」
はい、エイプリルフールでした、いつぞや活動報告に投げたブツの続きのテイで。
とりや……桐山先生からプロット情報もらって作った劇場版、みたいな感じ。
最後は当然、全員和解して、7人の連撃からの鬼哭パンチで真のラスボスをぶちころします。
現在執筆中の48話が死ぬほど重いので、かるーく箸休めということで、楽しんでいただけたなら幸いです。
追伸:刃牙展、めちゃくちゃよかったです、このクソ忙しい中東京に駆けつけるだけの価値はあった……。