「少々の休憩をはさみましたが、ついに始まります、天下一武道会第二回戦!! 第5試合は、ソシルミ選手対プリカ選手です!」
近年稀に見る粒ぞろいの天下一武道会!
観客の興奮はここにきてピークに達し、アナウンスに呼応する観客たちの歓声はまるでライブ会場のように高まっていた。
「よろしく、プリカ」
「ああ……ん?」
小麦色の肌に、赤茶けた短髪、黄色のシンプルな袈裟を片方はだけた、筋骨隆々、しかし容姿端麗の少年、ソシルミが合掌の礼を行う。
握手かと伸ばした手を遠慮がちにひっこめたのは、赤いジャージに、黒いボサついた髪、13歳にしては幼げな少女、プリカだ。
「なんだ、握手しておくか?」
「いらん」
プリカは少々気恥ずかしくなり、顔ごと目をそらした。
「確か、お二人は修行仲間だとか、仲がよろしいようですが、試合はまじめに行ってくださいね?」
「俺は、こいつと共にいた8ヶ月、この日だけを待って鍛錬に励んできた」
アナウンサーは、いらぬ詮索を恥じ、ソシルミに小さく謝罪をする。
いくらかの観客は選手たちの関係に感じるものがあったのか、ああだこうだとヤジを飛ばしたり、友人とあれは出来ているだのいないだのわあわあと騒ぎ始めた。
(いや、まさか……しかし、やつも色を知る歳、齢14の男女が一つ屋根の下修行に励むとなれば……いや、考えるべきは……)
「へえ! あいつらが一緒にきたえたなら、あんときよりもっとずっと強いってことか!」
「オレはもう体験済みだけどな……」
「あやつ、見込みのある武道家だと思っとったら、あんな歳でいい思いしおって……!」
……わあわあと言っているのは、観客だけではなかった。
「……さわがれるのはきらいだ」
ついでに、勘違いされるのも。
そうプリカは脳内で付け足したが、それを口にすることそのものが気恥ずかしかった。
「俺は、ヤツらが想像してるのよりずっと強くお前に焦がれてきたんだがな」
「あっそ」
プリカは少し頬を掻き、目を逸らしたが、すぐに眼を鋭く尖らせ、まっすぐソシルミを見つめなおす。
対するソシルミもまた、戦いの始まりの気配を、強く感じ取った。
これは単に、楽しむためのものでも、勝利を得るためのものでもない、これは……相手を見極めるための戦いになる。
互いに、そう確信していた。
「アナウンサー、そろそろ頼む」
「はい、それでは第5試合……はじめっ!!」
(そうだ、見極めるべきは、あやつらが如何なる仲か、ではない、自ら選んで8ヶ月も修行場を共にした戦友との間に、皮一枚、距離があるのか――――!)
銅鑼の音と共に、まるで両方から引きちぎれるギリギリの力で引っ張ったゴム紐のように、二人が激突する!
「カァァッッ!!」
「があぁ!!」
観客だけではない、多くの武道家にすら、一瞬、武舞台の中心が炸裂したように見えた。
「いいパワーだッ! 無駄もないじゃないかッッ!!」
「ぐが!! 教えたのは、おまえだっ!」
「どういたしましてッッ!!」
初撃は互いに渾身の右パンチ。
試すように放たれた、しかし、必殺の一撃の威力を完全に相殺し、次弾を装填する二人!
「ぬんッッ!!」
「ぐぐああ!!」
「両者、ほとんど足を止めての打ち合いです! 武舞台の外にいるわたしにまで、圧力が伝わってきています! すさまじい威力!」
放たれる拳、肘、腕!
間髪入れずに挟まれる膝、足、脚、だが、この二人、目の前に或る敵が放つ一切を、奇襲とは見做さぬ気概と気迫がある!
「なんてやつらだ……! あの時より、断然ウデを上げてやがる!」
「オレと戦った時もまだ本気じゃなかったのか……!」
「プリカってやつ、前はもっと別な戦い方だった気がすんだよなぁ……」
「ほう、前はどんな戦い方だった?」
一瞬、悟空の目に戦闘知性の輝きが灯ったのを、ジャッキー・チュンは見逃さなかった。
「あいつ、前はもっとゆらゆらぴょんぴょんする奴だったんだけど、今はどっちかっつーと、オラのじいちゃんみてえな戦い方なんだ」
「……つまり、おぬしら亀仙流と同じか」
「んー、そうかもしんねえ」
一瞬、ヤムチャの目が疑念に揺らぐ、だが、武舞台の向こうに、見知った禿げ頭を発見したことによって、彼の脳から『ジャッキー・チュン=亀仙人』の図式は消え去ることになった(実際に彼が目撃したのはナム演じる偽亀仙人である)。
――――試合が動いたのは、その直後である。
(やはり、プリカと正面から殴り合うには技量が足りない)
人知の及ばぬ領域での差し合いの中、ソシルミは静かに焦っていた。
自分が育てた少女は、予想通りの強敵に仕上がり……予想通り、自分よりも遥かに強い。
「があ!! ぐが!! だぁ!!」
「――――ッッッ!!!」
振り下ろされるクローの手首を弾き、フックを躱し、抜き手の脅しで回し蹴りの初動を潰す。
そこに寸分の狂いもない、自ら自負する、存在すら怪しい『範馬の血』を裏切らぬ才能に、飽くなき鍛錬と実戦で築き上げた経験が力を与えているのだ。
……だが、そこにも限界はあった。
「ッッアァァ!!! チェリアァッッ!!」
「ごぶっ……ぐがあ!!!」
ソシルミの反撃が突き刺さるも、跳ね起きる勢いのままに、攻撃を再開するプリカ。
そこには一切、息をつく暇すらもがない、それは両者同じ……いや、本来、連続して攻勢を掛け続けているプリカこそ、疲弊して然るべきところだ。
「グッ……ヌゥッッ!!」
「だぁっ!!!」
「ソシルミ選手、汗が垂れてきたか! 一方のプリカ選手はまだまだ元気! 跳ね返されても次々と技を繰り出してゆくー!」
――――が、ここに、種族の差が現れる。
(圧倒的な体力をバックボーンにした、地球人の速攻戦術よりも更に激しい攻め手、これを無限に続けられては、俺の体力が持たなくなる……!)
「どあっ!! ぐあ!!」
「よ、よくは見えませんが、ソシルミ選手ほとんど防戦一方です! プリカ選手の凄まじい攻撃に、ソシルミ選手追い込まれていくー!」
圧倒的な体力、頑健性、代謝能力、心肺能力、脳内分泌物!
戦闘民族サイヤ人と地球人の違いが力の差以上にソシルミを追い詰める!
そして、一瞬、0コンマ一秒にも満たぬ一瞬、ソシルミの防御が緩む瞬間が、ついにやってきた。
「ぐ……ぬぅッッ……!!」
「っ!! がぁ!!!」
一瞬を見逃さぬことこそが卓越した戦闘者の条件である、プリカはその一瞬に向け腕を伸ばし――――
「――――待っていたァッッ!」
「えっ……!?」
獣の反射神経、ソシルミにそれ以上を語る時間と精神の余裕が残っていたならば、そう語っていたであろう。
範馬を名乗る者が持つ、達人の技巧にも勝る究極の力!
それだけはサイヤ人にも届きうる、ソシルミの確信は、真実であった!
「おーっと、ソシルミ選手、プリカ選手の服を掴んだ! 掴みました、これは……」
服を掴み、勢いをそのままに引き込む。
足を払いながら、自分も後方に倒れ込み、慣性と位置エネルギーを活かして、敵を放り投げる、その技は。
「……巴投げだぁっ! 巴投げです! プリカ選手場外へ飛んでゆく!!」
(やつは入門当時から力や技で勝る相手を倒すのが得意だった……これは勝負ありか?)
もっとも、力でも技でも、数年もすればやつに敵う者はいなくなったが。
チャパ王はそう心中で続けながら、ソシルミが力で勝るライバルを手にしたことに深く安堵し、自らがその世界に及ばぬことに歯噛みしていた。
「く、くぉぉ……ぐがあ!!!」
一方、巴投げを受けたプリカは、空中で猫のように回転して無理やり姿勢を立て直し、エネルギー弾を地面に発射。
その爆風で武舞台への復帰を図る!
「…………そう、うまくは行かんかッッ!!」
「ぅあっ!?」
「ソシルミ選手、戻ろうとするプリカ選手に容赦ない追い打ちです、しかし、今のかめはめは波のような技は一体……!?」
武舞台に飛来するプリカに向けて、ソシルミは追い打ちの回し蹴りを叩き込もうとする。
が、プリカはその瞬間、ソシルミに向け両手を突き出す。
突き出した両手は、親指と人差指、中指を突き合わせ、ダイヤ型に隙間を開いた――――
「――――きこうほ――――」
「ッッッッ!?」
馬鹿な、ありえない、あの技は、しかし、貯めが、時期が、違う、撃てない!
ゼロコンマ一秒の戦いの中で、更に細切れになった一瞬の思考を言葉に直すならばこうであろうか。
一瞬躊躇したソシルミは、すぐにそれを――――何故行われたのかすら理解せぬまま――――牽制と看破し、技を再開する。
「
「どがあっ!!!!」
技に合わせて放たれるエネルギー弾!
ソシルミはすんでの所で防御体勢を取る……が、エネルギーはそのまま武舞台に激突し爆散する。
その激しい爆裂を前に一瞬、アナウンサーはひるんで隠れ、観客たちの視界も塞がれた。
「プリカ選手、煙幕です、技で煙幕を張りました、全く見えません!!」
「目くらましか、こすい手だ、お前の本分でもないだろう」
「こっちのせりふだ、男らしいふうで、ゆだんもすきもない!」
ソシルミにとっては意外なことに、対戦相手は正面から現れた!
プリカは両手を繰り出す、軽く広げた両手は、これを掴め、そして力比べをしろ、という挑発行為に他ならない。
明らかに力で勝る相手の挑戦を前に、ソシルミは一瞬も躊躇することなく、その両手にまっすぐ手をかざし、掴んだ。
「男らしさを見せろと、いいとも!」
(やっぱり、こいつは試合じゃ勝ちに来るけど、挑発……いや、挑戦されたら乗ってくる)
プリカは考える。
難しい精神構造だが気のいいこの男は、しかし、自分や世界に対して多大な脅威をもたらす存在だ。
「おまえ、さっきのわざ、なんだか分かったんだろ」
「……ああ」
「あのわざを知ってるおまえは、このせかいをどうする気なんだ」
プリカが、決死の思いで口にした、その言葉。
余りにも迂遠なその言葉選びには、果てしのない恐怖と躊躇が詰まっている。
誤っていたら、自分がもっとも危惧していた事態を招きかねない、逆に、正しくても、その後どうするべきなのか皆目検討もつかない。
その言葉を前に……ソシルミは、笑った。
「とっくにご存じなんだろ?」
「っ!」
「俺はこの世界で範馬になる、宇宙最強の男になる、ただそれだけだ」
笑み、意識されたその笑みは、唇を歪め、口角を持ち上げた、まさに範馬の笑みであった。
「て、てめぇ!」
「男と産まれたからには、ってなッッ!!」
あまりに能天気、あまりに軽率な戦闘狂!
怒るプリカが罵声を放とうとするのと同時に、ソシルミは掴んだ腕を起点に柔の技を仕掛ける!
「っぁあ゛っ! くそっ!!」
「チッ、そう上手くは行かねえかッ!」
プリカは強引に体をねじり、ソシルミから距離を取る。
心中は、穏やかではない。
「く、くそ、……なんでわらってる!」
「楽しいからだ、それ以上あるか!」
「オレはたのしくない!」
輝きがプリカの両手に現れる。
ソシルミにとっては幾度となく受けた技……しかし、いつも、手加減で守られていた技だ。
更なる笑みが浮かぶ。
「け、煙が晴れて参りました……プリカ選手、力を溜めております!! ソシルミ選手、まさか再び正面から受けるつもりかー!?」
「ご明察ですッッ!!」
「ぐっがああ!!!」
数メートルの距離を置き、二人が激突する!
一撃でも戦車を跡形もなく破壊できる威力のエネルギー弾の連射を前に、ただひたすらに腕を交差させ、繰り返される衝撃に耐えるソシルミ。
「グ……ヌゥッ!!」
一撃ごとに皮膚が焦げ、裂け、張り詰めた肉に痛みが走り、骨がきしむ。
……だが、耐えられる。
耐えられるのであれば進む、進んでライバルを掴み、今度こそ武舞台の外に投げ飛ばしてやる、いや、もっと凄まじい技を使ってもいい、思いつかないが。
ソシルミは能天気であり、戦闘狂であった。
「プリカ選手、かめはめ波に勝るとも劣らない凄まじいパワーの攻撃です!! しかし、ソシルミ選手突き進む! 怯みません!」
「…………ッ!!」
「ぐがぐぎぐげ……!!」
滴る血も蒸発させながら、迫るソシルミ。
初めて生きた相手に向け全力で撃ち込む連続のエネルギー弾に、プリカの理性もまた揺るがされつつあった。
ソシルミに向けて殺到する攻撃が、一瞬止まる。
「むッ、なんだプリカ、もう………ッッ!?」
「……っっ!!! があっ!!!」
留まった半秒分のエネルギー、数倍の直径に育ったそれが、ソシルミに突きつけられていた。
(これは……かめはめ波以上かッ! まずこのままでは防げん! 防げたとしても次はない、かくなる上は……ッッ!)
「ソシルミ選手、手を前にかざします、おーっと、手が光り始めました、ソシルミ選手もああいった技を使うのでしょうかーっ!」
「むぅ……あのような技はワシも見たことが……」
ジャッキー・チュンが小さく唸る。
「ぐあっ!!!」
突き出された輝く両手に、エネルギー弾が激突!
その瞬間、エネルギーの炸裂は、武舞台に命中した時のそれを遥かに上回り、観客席にまで激しい閃光と爆風を吹き荒らした!
「凄まじい爆発ですっ! プリカ選手の大技が、ソシルミ選手に命中しました! ソシルミ選手、大丈夫ですかーっ!」
爆炎の中から2つの影が現れる、一つは、エネルギーを放ったままの姿勢で硬直したプリカだ。
目は見開かれ、自分が放った技の威力に驚嘆するような、慟哭するような、それでいて、一種恍惚感を匂わせる表情のプリカが煙から現れた。
そしてもうひとつ……ソシルミは、命中地点から数メートル後退し、腕をだらりとぶら下げていた。
(……未完成の技、プリカの全力にどこまで通用するか試してみるつもりだったが、まだまだ不安定……か!)
「オ、オレのかめはめ波でも無事だったソシルミが、あんな……!」
「でも、ミソシルはまだまだやる気だぞ! 全然リキが収まってねえ!」
ソシルミの目はらんらんと輝き、被弾のショックが収まらぬ腕の制御をなんとか取り戻そうとしている。
足のすくみを武者震いに責任転嫁し、ソシルミは武舞台を踏みしめ、まっすぐ前を、プリカを見据える。
「さあ、
「……なんで、そこまでやろうとするんだ」
尚も不敵に笑い続けるソシルミに、プリカが問いかける。
これ以上、友を傷つけたくない、これ以上、暴力を振るいたくない。
そう叫ぶ心の声が、誰の耳にも聞こえそうな、悲痛なつぶやきだった。
「とんでもなく楽しくて、しかも更なる強さを俺に与えてくれる、そんな戦いを途中で辞める意味が、むしろ存在しない」
「それで、うちゅうがほろんでもか」
「滅びない、俺達が一緒に戦えばいい、仲間たちと切磋琢磨し、敵に立ち向かうんだ」
一瞬、プリカの脳裏に、もっとも幸福と言えるそのビジョンがよぎり……それが、精神のもっとも奥深くに潜む、鬱屈した感情の源泉に触れた。
「ソシルミっ!!!」
「な、なんだッ!」
「ぐ、が、があああああああ――――」
雄叫びのままに大口を開けるプリカ、その喉奥には、とてつもないエネルギーの収束が起こりつつあった!
(サイヤ人お得意の口ビームか! 威力はあの大玉とは比べ物になるまい、直撃すれば死ぬ、受けきれないか、俺が避ければ観客が死ぬ、なんて技を使うんだ、こいつ、正気を失っているのか!?)
プリカは正気を失ってはいない、だが、狂っていた、怒り狂っている。
口からのエネルギー波、それは、彼女がこの地球に降り立ってからの10年近くの間、ずっと側に、心の片隅に感じていた技だった。
(ソシルミめ、なぜ怒りを買ったのかは皆目見当も付かぬが……やっかいな女を友に選んだものよ)
それを使わせたのは、その10年、溜りに溜まり続けた、留めに留め続けた、彼女自身の激情の爆発、そしてそれを誘発したソシルミに他ならない。
「い、いかん! あのお嬢ちゃん、観客ごとふっとばすつもりか!」
「ま、まさか、そんな威力の攻撃なのですか!? ひ、避難! 避難してください!!」
「ミソシルもやる気だ!」
逃げ惑う射線上の観客、それに武舞台の影に隠れるアナウンサーをよそに、対面する二人の時間だけは、穏やかに、そして激しく経過してゆく。
プリカのエネルギーの高まりに呼応するように、ボワ、とエネルギーがソシルミの腕を包み……腕の痺れが和らぐ。
(こうしているうちは少しだけだが、マシってところか……! 気が生命のエネルギーならば、ダメージを受けた場所に回せば治療効果も見込める……なんてのは、都合が良すぎか)
大方、集中力の高まりでコントロール力が上がっているのだろう。
ソシルミはそうアタリを付け、少し動く腕を、先程よりも薄れた輝きを携えて、プリカを見据える!
「……盤面この一手だ、俺に下がる選択はねえ」
「――――ぐぁが!!!!」
閃光!
それが、観客が感じたすべて、そして、ソシルミが最初の一瞬に感じた情報であった。
次の瞬間、ゼロコンマ、ゼロ、ゼロ、ゼロ一秒を満たすか満たさぬかの瞬間、極限まで高まった集中と戦闘知性が生み出した幻覚かも知れぬその一瞬に見えたのは、光の束!
収束したエネルギーが、口腔の奥、遥か丹田から生み出される奔流によって、猛烈に吐き飛ばされるその瞬間を、ソシルミの意識はたしかに目撃した!
(あの一撃で、俺の頭は冷えた、そして……新たな力もまた、俺の前に現れた!)
前に構えた腕を、閃光に向けて差し出す。
その動きは、迅速でありながらも、極めてゆったりと緩慢で……あらゆる精密機械よりもなお滑らかであった。
「
「がっ……!?」
だが、2つの光が衝突する瞬間、あらゆる穏やかさは消え失せた!!
もっとも偉大なる僧の合掌よりもなお穏やかな腕の動きは、一瞬にしてジェットエンジンより激烈な回転へと変ずる、その目的は一つ!
「す、すごい光です! 何も見えません!」
「ソシルミめ! やりおったわ!!」
観客が見たたった一つの閃光、それは、プリカがエネルギー波を発射する瞬間の閃光……そして、ソシルミが、その技を打ち破り、粉砕し、かき消した閃光であった!!
「あ、あやつ、
「な……なるほど! ジャッキー選手によると、ソシルミ選手は光を使った回し受けで、あの技に対抗したようです! なんという技の応酬でしょうか!!」
愉快そうに笑うチャパ王、その才と度胸に戦くジャッキー・チュン。
観客に、たまらず控室から飛び出した武道家たち、彼らは閃光に目を焼かれながらも、この戦いの行く末をなんとしても見届けようとしていた。
「ブッハァ……!! ……ァアッッ!!!」
「ぐっ!」
自身ですら、試合前には想像だにしていなかった最大の技を放った選手二人!
ソシルミには最早、得意の軽口を叩く余裕すらもない、プリカもまた、限界まで追い詰められつつあった!
技の余韻も残心も投げ捨て、突撃するソシルミ!
「―――ッ!!」
「げがあっ!!」
だが、プリカは怒りに狂わされた中で、覚えていた、目の前の男が、この馬鹿が土壇場で奇跡を見せる男であることを。
消えかかった理性と引き換えに極限まで研ぎ澄まされた戦闘知性がその事実を捨て置くことはない!
「――があ!!」
「ッ!?」
エネルギー弾、最後の一発は手の中に握り込み、最後の奇跡を打ち破るために。
「……………
「あっ……!?」
次に驚くのは、プリカだった。
ソシルミの腕もまた、光を携えたまま、握り込まれた拳は、まさしく必殺の威力。
「激突!! 二人が激突!! 吹き飛んだのは――――」
「が…………」
衝突音から数秒遅れて、落下音。
飛距離に対してごく軽いその落下物のシルエットは、シッポの生えた少女。
エネルギーの塊を、エネルギーと拳が貫いたのだ。
(一つの要素だけで勝負しなきゃならんなんてことは、元からない、腕力も、気も、技も、全て使えばいい、手にしたすべての合算が、まじりっけなしの、俺の力だ)
「プリカ選手場外! プリカ選手場外!! 天下一武道会、第5試合、勝者はソシルミ選手です!!」
殴り抜けたままのポーズで、ソシルミの体がゆっくりと崩れ落ち、片膝を付いて荒く息をつく。
「俺も、気くらいは、使ってやる」
→つづく
お待たせしました。
難産……というかは、どちらかと言うと図体が大きいので育つのに時間がかかった、みたいな感じです。
だから、相応のクォリティに……なってるといいなぁ。
それでは次回まで、御機嫌よう。