転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第十二話:転生地球人が現地サイヤ人と戦うまで

 「きみたちの実力を証明するため、そこにいるブルー将軍を倒してくれたまえ」

 

 レッドリボン軍基地の一室にて、レッド総帥とブラック補佐による、俺たちの『試し割り』が行われようとしていた。

 

 「またおまえがやるのか」

 

 「やりたくってウズウズしてるなら代わるぞ」

 

 「だれが!」

 

 ブルー将軍。

 レッドリボン軍でも随一の実力者で、ドラゴンボール世界における『超能力戦士』の走りともいえる存在である。

 

 「あなた、ちょっといい顔してるからって調子に乗りすぎじゃない……!?」

 

 「色目をつかうのはやめろ、俺にそういう趣味はない、あっても手加減はせんがな」

 

 「つれないのね、まあいいわ……それはわたしも同じだもの!」

 

 仕掛けてきた!

 初手は飛び上がっての蹴り込み、上方からの攻撃は手と足の筋力差を中心とした様々なメリットを持つ。

 その有利は、上昇、対空、着地時に払う隙を多くの状況で上回っているが……!

 

 「()ッッ!!」

 

 「れれっ!?」

 

 「ブルー将軍より高く飛びおった!!」

 

 天井に縛られた遅いジャンプを捕らえることなど容易い。

 俺はブルーより素早く、そして半回転しながら飛び――――

 

 「て、天井に張り付いた!?」

 

 「これが軽功ってやつだッ!」

 

 実際はヨガのしなやかさで天井に粘りつくように着地しただけだが、俺の有利は絶大!

 そのまま頭を掴み、立ち上がる勢いで強烈な頭突きを叩き込む!

 

 「がっ……!」

 

 「素手ではこんなところか、軍人なんだろ、武器でも使ったらどうだ?」

 

 無論、ただの挑発だ。

 ブルーは素手での格闘に自信を持っている、それは多分、自らの美意識を満足させるほど磨き上げた体への信仰だ、武器など使いはしない。

 着地してしばし頭を押さえていたブルーは、起き上がって啖呵を切った。

 

 「ナメるんじゃないわよっ!!」

 

 「では見せてもらおうかッッ!!」

 

 俺はあえてブルーを注視する……と、来た!!

 ブルーの目が小さく煌めくと、俺の目を通じて『力』が流れ込み――――

 

 「――――なるほど、『これ』でいいんだな」

 

 「あ……あれぇ!?」

 

 「総統、まさかやつはブルー将軍の超能力を!?」

 

 「鶴仙流には超能力者も居ると聞いた覚えがある、対処は知っているということか……」

 

 当たらずとも遠からず。

 これはチャオズ戦を参考にして編み出した『輝く手』の応用……『光るめだま』とでも言ったところか。

 

 「わ、わたしの超能力が……!」

 

 「(シャ)ッッッ!!!」

 

 俺は動揺するブルーをドアの外に向け激しく蹴り飛ばした。

 この世界の特殊能力は実力差が大きすぎる相手には通用しない。

 そして、その特性は、おそらく気の干渉によってもたらされるものだ。

 ならば、気を高めることによって超能力を無力化することも可能ということだろう。

 

 「ブ、ブルー将軍をいとも簡単に……」

 

 「よろしい! ブルーに止めをさしてしまえ!」

 

 手応えはあった、ブルーは最早動けまい。

 元の歴史では、ブルー将軍は作戦失敗の罪で死刑判決を受けた後、助命と引き換えに受けた桃白白との試合で敗死したが、この歴史では俺がその役目を担ったことになる。

 ……このまま適当に煙に巻けば、俺達が殺さずともよいのだが……必然的に、そのままブルーは処刑されるだろう、それではつまらん。

 

 「プリカ、追撃は任せた」

 

 「……わかった」

 

 ブルーは窓の外、かの有名な『柱』に、抱きつくようにめり込んだままケイレンしている。

 

 「ずいぶん可愛らしいが、あれで大丈夫なのかね?」

 

 「侮るなかれ、奴は膂力の一点においては私以上でございます」

 

 「ほう……、それは楽しみだわい」

 

 プリカはゆっくりと柱に近づくと、そのままぞんざいに柱を蹴り砕き、ブルーのめり込んだ部位だけを取り外した。

 そして、槍投げの構えを取り――――

 

 「――――があっ!!!」

 

 「おおっ!」

 

 「な、なんとっ!」

 

 俺の期待通り、ブルーの乗った柱を地平線の果てにぶん投げた。

 

 「……十分な力があると、お分かり頂けましたか?」

 

 「あ、ああ……」

 

 「もちろんだ、きみたちには、ドラゴンボール獲得の邪魔をしているこの子供を殺し、持っているオレンジ色の玉を奪ってもらいたい」

 

 「承知しました……吉報をお待ちください」

 

 

 

 一時間後、俺達はレッドリボン軍基地から聖地カリンに向け、ジェットを飛ばしていた。

 既にカリン塔が見え始めて久しいが……その先端は常に空の果てにあり、神殿はおろか塔の頂上すら見えない。

 

 「さて、ここまでは計画通りだな」

 

 「ブルーしょうぐんを投げ捨てるのはけいかくになかったぞ」

 

 「やってくれたのはお前じゃないか」

 

 「……おまえがやらせたんだろ、しんでてもしらないけどな」

 

 あそこまでお膳立てすれば分かるか……でも、やってくれたのはプリカの厚意だ。

 ブルー将軍は元の歴史でも相当タフな人物だったが、悟空が強化されてなお、元の歴史と同じルートを通れるほどタフなら……まあ、アレで生きていても不思議はない。

 

 「死んだならそれまでだ、アイツもそれだけのことはやってたんだし……まあ、ありがとな」

 

 「……おまえ、なんでもそれですますつもりじゃないだろうな」

 

 「そのようなことがあろうはずがございません!」

 

 「はぁ……」

 

 ため息をつかれた。

 ともあれ、そろそろカリン塔だ。

 俺達は機体を塔からほど近い、墜落したレッドリボン軍機が作った森の裂け目に着陸し、徒歩で塔へ向かうことにした。

 

 「手筈を確認するぞ、まず、俺が悟空に喧嘩を売る、適当にぶつかってから後は流れで、カリン塔での修行を提案する、これでいいな?」

 

 「……ちょっとムシがよすぎる気がする」

 

 「この世界ではこれくらいが適正じゃないか?」

 

 「まあ、だいぶおおらかみたいだけど……おまえ、悟空と戦いたいだけだろ」

 

 俺がわざとらしく目を逸らすと、プリカはまた小言を言い出した。

 

 「オレもまあ……戦いたいってのはわかるけど、悟空をへたにいじったらなにがおこることやら」

 

 「だからこそワクワクするだろ、あのパワーッ! みなぎる活力ッ!」

 

 「……やる気はともかく、パワーはあれ、たぶんオレの方がつよいぞ」

 

 「妬いてるのか?」

 

 「はいはい、それでいいが、あんまりやりすぎないようにな」

 

 天下一武道会で暴れ倒して満足したのか?

 そうこう話しているうちに、ウパとボラのテントが見えてきた。

 ……三人、悟空、ウパ、ボラが並んで、何やら話しているが……まあ内容はいい、さっさと作戦を進めてしまおう。

 

 「よう悟空、久しぶりだな」

 

 「ミソシル! おめえもこっちに来てたんか!?」

 

 「おう、だが……うーむ、参ったことになってな」

 

 ボラが立ち上がり、一歩前に出た。

 

 「ミソシルとやら、お前から強い殺気を感じる、一体この聖地カリンに何をしに来たのだ?」

 

 「俺の名はソシルミ、悟空が勘違いして覚えているだけだ」

 

 「そ、そうか、すまない……」

 

 後ろから『何をやっているんだ』とばかりの視線が飛んできている、マジにならなくては。

 

 「悟空、俺はレッドリボン軍からお前を抹殺する依頼を受けた」

 

 「抹殺?」

 

 「ぶちのめしてくれって頼まれたのさ、金でな」

 

 「つまり戦うってことか!」

 

 ……ズレた納得だが、まあこれでいいだろう。

 

 「あの軍隊の仲間ということか……!」

 

 「抹殺対象は悟空だけだ、お前は関係ない」

 

 「聖地カリンを守るのが私の役目だ! なにより、恩人を見捨てるわけにはいかん!!」

 

 ボラは傍らの槍を取って構え、こちらを睨みつけた……確かに、元の歴史での桃白白戦もそんな展開だったな。

 やる気はなかったんだが、これはこれで悪くない展開だ。

 何せ、一人しか敵が居なければ、戦闘種族二匹の闘争本能が満足しそうにない。

 

 「プリカ、お前は悟空とやりたくないだろ、ヤツを相手しろ」

 

 「……おしつける気か」

 

 「悪くない相手じゃないのか?」

 

 「いや、そう……かも、しれんが……」

 

 真剣にボラを値踏みしている様子のプリカ、小悪魔的な雰囲気というよりは、望まないシチュエーションで出てきたおやつを前に悩んでいる感じだ。

 一方、殺気をみなぎらせた実力者二人に値踏みされるボラは緊張し、悟空はワクワクしている。

 ……もう始めてもいいんじゃないか?

 

 「なんだ、やんないのか?」

 

 「やるともッッッ!!」

 

 悟空の何気ない誘いをきっかけに、戦いの火蓋は切って落とされた。

 まずは小手調べ、水平に飛び込みながらの蹴り込みだ。

 

 「へへ、やっぱりキックか!」

 

 「予習済みってか、光栄だなッッ!!」

 

 低身長相手のローキックはくり返し使ってきた戦術だが、有効性が損なわれることはない。

 にも関わらず、悟空はたやすく手で防ぎ、飛び退く形で完全に威力を殺してみせた。

 チャオズがやったのと同じで、より精度が高い!

 

 「向こうもおっ始めてるようだな……」

 

 「ボラのおっちゃんの槍は全然当たってねえみてえだ」

 

 地力の圧倒的な違いに加えて、おそらくサイヤ人の血が対武器、対大物の素質を与えているのだろう。

 実力差があろうと当たれば痛手を負うであろうボラの槍を楽しげに避けている。

 

 「さて、俺も仕事だ、続きをするぞ」

 

 「おうっ!」

 

 今度は真面目に拳を使った攻撃を。

 そう思って腰を落とした瞬間、背後に猛烈な殺気を感じ、腕を払う……が、空を切る!

 

 「むッッ」

 

 俺は更に腰を落とし、そのままの勢いで前方の『悟空』を巻き込んで転がり、再び立ち上がる。

 

 「残像拳かッッ!!」

 

 「うーん、当たると思ったんだけどなあ……」

 

 前の瞬間まで俺が居た場所をかすめるように落下しながら、悟空が言う。

 ……まずいな、対処はうまく行ったが、見えなかった。

 

 「面白ェ技だな、お前が俺に見えない速度で駆け回れるとも、思ねえが……」

 

 「へへっ、きゅっと力入れて飛ぶんだよ、自分にも周り見えねえから、動かれると駄目みてえだけどな!」

 

 見稽古で一瞬で習得してしまうあたり、悟空の才能は大したものだ。

 ……俺もやってみるか!

 

 「――ッ! ――――ッッ!!」

 

 「ひゃ~っ!」

 

 技の原理そのものは想像がついていた。

 武道家は常に意識せざるを得ない、自らの実力の限界と制御可能な限界の差を、『無視』するのだ。

 

 「――――()ッッッッ!!!」

 

 「っ!!」

 

 消え去った視界が戻る、振り下ろした腕の先には何もない。

 俺はその瞬間、更に『飛び』、元の場所へと帰る。

 地面には俺が駆け抜けた回数の二倍、いや、三倍の傷跡が刻まれていた。

 

 「ま、こうなるか」

 

 「避けてやったのにちっともスキがねえんだもんなあ……」

 

 なんのことはない、悟空は俺が飛ぶのに合わせ更に飛び、その応酬が繰り広げられ……。

 

 「……駄目だこりゃ、ラチがあかん、真面目にやろう」

 

 「……そうだな!」

 

 飛び回ってもお互いに見えなくなるばかりで何も利益がない、体力をムダに消耗して、楽しくもない。

 そのうち気配かヤマカンがあたって殴れるかもしれんが、そこまでやる気も出ない、いや……俺が負けるだけだ。

 互いに構えを取り、戦いは振り出しに戻った。

 

 「があっ!!」

 

 「くっ……!」

 

 向こうから飛んできたボラの折れた槍が突き刺さる音が、開戦の合図だ。

 同時に飛び出した俺達は、中心より僅かに俺寄りの地点で激突した。

 

 「ッッ!!」

 

 瞬間、伝わってくるのは莫大な膂力と鋭い打撃力!

 プリカの言う通り、力こそあいつに劣るものの、長年鍛えた武術の冴えは明らかに悟空が上か!

 打拳の鋭さ、連続攻撃には練度が如実に現れる……格闘技術だけで言っても、俺に匹敵するだろう。

 

 「はははッッ!! やっぱり、わかりやすいのもいい!!」

 

 「オラも好きだ!」

 

 拳を14、足を7、胴体が2、交差する頃にはその戦い方までもが伝わる。

 打撃を捌き、捌かれ、組み付き、躱される、それを何度もやれば、嫌でも分かってくるのだ。

 ――――そして理解した、悟空の戦いは『思い付き』だ。

 

 「噴ッッ!!」

 

 「よっと!」

 

 「シィッ!」

 

 飛び上がった悟空に放つ上段蹴りが、体の『くねり』で回避される。

 そこに貫手を叩き込めば、腕で防ぎつつ、わざと吹き飛んでいった。

 ……動物的な直観と理性的な洞察力の組み合わさった『思い付き』の繰り返し、それが悟空の力なのだ。

 

 「野生児ってよりも愉快なインテリだな、お前は」

 

 「?」

 

 「わからんでもいいさッ!!」

 

 俺はあえて腕を広げ、大きく広げた構えを取る。

 溢れる獣性を、抑え込むでも飼いならすでもなく生まれながらに、あるがままに受け入れているからこそ、戦闘中も冷静になれるのだろう。

 ――――この体の衝動と力を受け入れた俺と、似ているようで違う、俺のヒーロー。

 それが、夢をそのままに、ここにいる。

 

 「来いッッ!!」

 

 「おうっ!」

 

 次に飛び出した俺が放つ横なぎの腕を飛び上がって避ける悟空。

 俺は放つ勢いのままに倒れこみ、回転蹴りを繰り出す、が、なんなく回避された。

 牽制のつもりは毛頭なかったが、二の太刀は残してある。

 

 「ムンッッ!!」

 

 「ひゃっ!」

 

 前転する形で立ち直った俺と、未だ空中に留まっている悟空の変則的な空中戦!

 

 「――――ッッッ!!!」

 

 「たたたたたっ!!!」

 

 悟空は文字通り地に足の付かぬまま、五体全てを使って俺の拳を捌く。

 激しい戦いに袖は破れ、包帯が外れて開いた傷跡から血が溢れ始めた。

 ……このまま行けば勝敗は五分……いや、もっと悪いか?

 ならば、俺にとって、これがさしあたり最大のチャンスとなる!!

 

 「この好機、仕留めさせてもら――――ッッッ!?」

 

 かくなる上は『八手拳』をもって一息に――――そう思った瞬間、強烈な悪寒が俺の背筋を駆け抜けった。

 

 「へっ!?」

 

 「が――――」

 

 次いで轟音、これは『噴射炎』の音だ。

 距離は次第に近づき、数は多数。

 これは……。

 

 「ミサイルかッッッ!!!」

 

 多連装ミサイルランチャーから放たれたであろうそのミサイル群は、バラけつつもまっすぐカリン塔の足元へ向かって来ている。

 威力は高いが、十分に回避は可能、ここに居る四人全員、受けてもケガで済む……が。

 テントの中から覗く小さな影を見て、ボラが叫ぶ。

 

 「ウパ!!」

 

 「あ、あわわ……」

 

→つづく

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