転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第十八話:転生地球人と転生TSサイヤ人が再び天下一をめざすまで

 見上げる程の巨体に見合わぬ超高速の拳が俺を狙う。

 

 「セァッッッ!!!」

 

 俺を狙う拳を手刀でいなし、肩で腕を弾き、『つかむ』。

 肩と首で掴むことで自由になった腕は敵の腕を握り、その関節をあらぬ方向に――――

 

 「――――ッッッ!!?」

 

 手応えなし、敵は強靭な腕のしなりで俺の関節技をはねのけた。

 その『安直な力づく』に応報してやろう、そう思った瞬間、もう片腕だけを捻った打撃が俺の胴体に……。

 

 「ツアッッ!!!」

 

 ……腕だけ(ジャブ)よりなお早く、俺の脚が奴に突き刺さる。

 

 「傷一つなし、か、なるほどな」

 

 俺の蹴り、本気ではないにしろ、尋常の武道家が喰らえば文字通り真っ二つ、否、それ以上となる威力のハイキックを持ってしても、敵の体、ボディには傷一つ付かない。

 

 「ダメージ、ナシ」

 

 「皆まで言うな、お前の仕留め方は、ちゃんと考えてやるから」

 

 ――――俺が相対していたのは、ロボットだ。

 鋼の鎧に身を包んだ、全高3メートルほどの、丸みを帯びた人型ロボットが、俺の敵だった。

 

 「ガガ、マッサツ!」

 

 「……怒る機能なんて積んであるのか?」

 

 「コンビネーション"ツー"、シドウ!!」

 

 「ウオッッ!?」

 

 格闘戦を続けるロボットの腕から、次々と弾丸とレーザー光線が乱射される!

 

 「こりゃあ剣呑なッッ!!」 

 

 突然の奇襲にすんでのところで対応し、弾丸を逸し、レーザーを躱すが……ほんの数本だけ髪の毛が飛んだ。

 『あの頃』より黒さを増した赤茶の髪は、あのあこがれの範馬勇次郎に似たものになったと言える。

 背丈も、185センチと、あの冒険の頃から、15センチも伸びていた。

 

 「な、るほど……ッッ!!」

 

 「マッサツ!!」

 

 「あんまり好きな言葉じゃないが、お前の動き、いや……『作り』は、見切ったッッ!!」

 

 俺はロボに向けて突撃し、向けられた銃口、腕を軽く掴み、ひねる。

 敵の関節は柔軟であり、簡単に曲げたくらいじゃ壊れない"ことは既に感覚でも推測でも分かっている"、が、これが何より有効なこともまた、俺は直感していた。

 

 「トアァッッッ!!!!」

 

 軽くひねり、『真っ直ぐ』にした腕を蹴飛ばす!

 すると、奴のボディと腕は見事にめり込み合い、その隙間から火花と炎が散った。

 

 「マッサ…………ガピッ」

 

 「……さて、こんなもんか」

 

 この広く、頑丈な部屋はロボットの流れ弾にも、ロボットの炎上にもびくともしない。

 だが、そんな上等な部屋をも揺らすものが、次の瞬間、飛び込んできた。

 

 「うわああああああ!!! 鉄人拳七号~~~~!!!!」

 

 「うるさいぞプリカ! 戦わせたんだから壊されて当然だろうがッッ!!」

 

 少しボサついた髪、ジャージ……ではなく作業着に包まれた体はあの頃より少しだけ大きく、それでも、涙目の顔はほとんどあの頃のままだ(俺の顔は体と同じくゴツくなった)。

 プリカは声変わりの来ない高い声で更に叫ぶ!

 

 「そ、それでも少しは手加減とかあるだろ!!」

 

 「なら搭載兵器も手加減しろ! あれじゃ完全に殺人装置だ!!」

 

 ここは、いつぞや神龍に願った我が家の地下格闘訓練室、戦っていたのは、プリカが作った格闘ロボだ。

 ピラフやポッド、それに残骸を漁って手に入れたレッドリボン軍の技術をうんうん言いながら吸収した甲斐あって、凄まじい戦闘力を誇る……まあ、一般人規準での話だが。

 

 「ぐう……!」

 

 「……それよりいいのか、残骸が燃えてるぞ」

 

 「うわああああっ!!」

 

 プリカは残骸に突撃して助け出そうとし……それ自体が燃えているので当然うまく行かない、完全に気が転倒している。

 

 「どけッッ!!」

 

 「あ、消火器……」

 

 化学実験用の多用途消火器を持ち出した俺が、そのから騒ぎにケリを付けたわけだが……。

 プリカは怒り、騒ぎ疲れたのか、今度は落ち込み始めてしまった。

 

 「オレの鉄人拳七号……」

 

 「次はもっと強い天使のようなロボットに生まれてこいよ……待ってるからな……俺ももっともっと腕を上げて……」

 

 蹴られた。

 

 「七号は六号の反省で関節の動きが持つサスペンション機能を高めた機体だったのに……」

 

 「柔軟に曲がる一方で、動きのブレは異様は小さかったからな、軸線を合わせて叩けば潰せるんじゃないかと、やったら出来た」

 

 「……じゃあ、動作性を過信して関節そのもののショックアブソーバーを減らしたのが原因か、でも、そこを強化すると今度はスペースが――――」

 

 プリカは何やらぶつくさと呟きながら、俺に工具類と清掃用具を持ってくるよう命令する。

 またやぶ蛇になるのも嫌なので素直に従ってやると、今度は小さく礼を言って、消火剤を拭き取りながら、機体の分解を始めた。

 

 「…………ブラックボックスは多分無事だな……真水……は要らないか、泡消火だし……」

 

 作業中のプリカは独り言が多い(それはお互い様だが)、それに、相変わらず、鍛錬の時より真剣だ。

 それはシャクだが、真面目なのはいいことだ、今回はあっさりと撃破されたこのロボットも、進歩し続ければいずれ戦闘や鍛錬に役立つ日が来るだろう。

 俺は休憩がてら、しばし作業を眺めて……それから、格闘訓練室の壁に付いたボタンを押した。

 

 その途端、SF映画のように壁が開き、ガシャガシャと音を立てて鍛錬器具の数々が姿を表す。

 我が家の訓練室はなんでも揃っている。

 言葉尻を取られるまでもなく、本当に、既存の武術鍛錬に使うようなものはなんでも揃っているのだ。

 

 「万国の武器が真剣と木剣で取り揃えられ、俺達が蹴っても壊れないサンドバッグに木人椿、無尽蔵の巻藁に瓦……いたれりつくせりだ」

 

 「実験室の方も、買ったら何億じゃきかない機械がスペアパーツ付きでごろごろしてたぞ」

 

 「流石だな、神の龍は」

 

 「……使い方としては、めっちゃくだらないと思うけどな」

 

 俺は訓練室を回る、回っているだけで楽しいが、使えばもっと楽しい。

 格闘技術において、当てて学ぶという事は極めて重要だ、それが出来る、出来ないの差は天と地程に大きい……はずなのだが、一箇所鍛錬が足りない程度のディスアドバンテージ、すぐに潰してしまうのがこの世界の武道家だ。

 それは俺にとって恐れであり、安心でもある。

 

 「シッッ!! ダァッッ!!」

 

 はっきりと言ってしまえば、俺はまだ、舞空術を会得していない。

 

 「なんでおまえはかめはめ波とか、舞空術とか練習しないんだっけ?」

 

 「まだ無くてもやれるからな、地上戦が主流の今のうちにやれることをやっておきたい」

 

 下積みは大事、という教条的な思考にとらわれているわけではなく、あくまで今延ばしたい技術が地上戦なのだ。

 

 「お前の方はどうだ、鉄人拳の様子は」

 

 「フレームと、一部内骨格は再利用できそうだ」

 

 「それは作り直せばいいだろ、データと今後の話だ」

 

 プリカは短く押し黙った、見ると、むっとしたような、何かに呆れたような顔だ。

 それから、しょうがない、とでも言いたげに振り払って、思い出すような、考え出すような素振りをしてみせた。

 

 「とりあえず、色気は出さずにショックアブソーバーを真面目に研究する、それと、軸を曲げられた時の対処はプログラミングだけじゃ限界があるから、明日辺り、モーションキャプチャーに付き合ってくれ、おまえの動きを参考にしたい」

 

 「武術の達人を真似るのは合理的だな」

 

 「自分で言うな」

 

 俺がわざとらしく笑ってみせると、プリカは努めて無表情を作る、こればかりはいつも変わらない。

 会話が一段落し、今回やらなかった技もあるが、それを見せてやるか、次作った機体にかけて様子を見るか悩むな……と、考えていると、プリカは少し、何かの意趣返しをするかのような口調で、話しかけてきた。

 

 「……技のこと、出来ないから棚上げにしてるとかじゃないよな?」

 

 「失礼な、合理的な判断だとも」

 

 ……本当に正直に言えば、未だに空中浮遊、エネルギー放射の感覚がつかめないというのは、ある。

 あまり考えたくはないが、気を体内で操る術を覚えた反動というか、クセのせいなのだろうか。

 何にしろ、鶴仙人なり、神様なり、新たな師を見つけて本格的に学べるようになるまでは、棚上げでいいと……思うことにしている。

 

 「舞空術よりかめはめ波より、俺は俺のオリジナル、そしてそれを支える基礎こそを磨く、今はそれでいい、俺の明日は、そこにある」

 

 「競うな、持ち味をイカせ、か……」

 

 「刃牙の台詞を覚えているのか、珍しい」

 

 「おまえが何度も言うからだろ」

 

 体内で気を操る技術、輝く手に、シュラ戦で会得した『気力大移動』とでも呼ぶべき技、それらを既存の技術と組み合わせ、応用し、練り上げ、完全に近づける。

 それが俺の17歳、俺のエイジ753年だ。

 

 

 俺がひとしきり鍛錬を終えて、飯の前のひとっ風呂……と考え始める頃には、プリカもまた、自分の『鉄人拳』の清掃、解体が済んだようで、やり遂げた顔をしていた。

 

 「ふぅ、どうした、先に入るのか?」

 

 「……いや、お前が先でいい、俺はもう少しやってよう」

 

 プリカの作業着は全身がススやオイルまみれで……顔や手まで少し黒い、いかにもな『メカニック娘』ルックになっていた。

 萌え……なくもないし、プリカは全く気にしていないのだろうが、こちらとしては若干忍びない、何がというわけでもないが、あちらがどう考えていようと年頃の女の顔なのだ。

 

 「ん、そうか? 悪いな」

 

 俺達の体は初めて出会ったエイジ749年から比べて大分変化していた。

 まず、俺の体は180センチの大台に乗って久しく(正確には、ひと月前の計測で185センチだ)となり、体つきはゴツくなった、まだ黒光りはしていないが、幾分か範馬勇次郎……それと、師匠に似てきたと思う。

 一方のプリカは、サイヤ人らしく、ほんのわずかしか成長しなかったものの……なんというか、性徴の方は進んできた。

 

 「おーい、出たぞー」 

 

 「分かった、少し待て」

 

 「飯がつかえてるんだから、早くしてくれ」

 

 考えながら、半ば手慰みのように整理体操をしているうちに、湯上りのプリカが実験室へとやってきた。

 ……ジャージ姿のプリカの体は、あの頃の純然たる幼児体系から、若干丸みを帯びたものとなり、言いにくいが乳も出てきている。

 俺の視線に気づいたプリカは、いつもの訝し気な顔をした。

 

 「なんだ?」

 

 「特に何もないさ」

 

 あの冒険の終わり際、俺はプリカが(もとは)男だと知った。

 その男だと思っている友人の乳が出てくるという奇妙な体験をいっそ楽しんでみようかと思ったが、どうにも、一朝一夕で慣れることも、楽しむことも出来そうにない。

 俺が内心の苦悩を押し殺していると、プリカはその様子を見て、さらに訝しむ。

 

 「……いや、なんなんだ、流石に気になるぞ」

 

 「サイヤ人の成長タイプは複数あると聞くが、女性の場合、成長が遅いタイプでも性成熟は比較的早期に始まるのか、あるいは、性成熟も含めて別のタイプがあるのか、と、考えていたのだ」

 

 いかん、これでは何の誤魔化しにもなっていない。

 自分で言った瞬間、そう思ってハッとしたが、プリカはどうやら、それでも誤魔化されてくれたようだった。

 

 「うーん、確かに……、まだ今の姿を実際には見てないけど、二度目の天下一武道会で悟空が男っぽくなったって感じはないな」

 

 「こればっかりは、対面したときに見分するしかあるまい」

 

 会いさえすれば、喉仏、骨格、その他もろもろの条件で容易に判別できる。

 ……俺がそう伝えると、プリカは『じゃあ、その時教えてくれ』と言って、納得した様子でダイニングへと向かっていった。

 

 

 風呂場、ちょっとした旅館くらいはある大きな風呂場は、しかし、多くても数人で使うことしか想定していない設備規模だ、贅沢の極みというやつである。

 石鹸、シャンプー、その他もろもろ、二人で共用だ、プリカは女として色気を出すつもりはないようだし、さりとて、強引に男らしさを演出してやろうと企んでいる様子もない。

 

 「……知らない匂いのする風呂だ」

 

 最近また変わりつつある自分の体臭、共用の石鹸の匂い、それと……同居人の体臭。

 サイヤ人程でないにしろ鋭敏な鼻をごまかす事は俺自身にもできない。

 重ねて言うことになるが、それを放っているのは友人、それも男だと思っている相手なのだ、さっきは目のやり場に困っていたが、今度は鼻のやり場、いや、心のやり場に困っている。

 

 「なんだかなあ」

 

 こちらはこれだけで調子が狂ってしまうのだが、これだけ大きな変化を前にしても、プリカには特に葛藤する様子などは見られない。

 本人がそれでよいのであれば、こちらから触るべきことでもないのだろうか。

 俺はというと、この『二度目の第二次性徴』で得られた身体機能の拡張に大満足なのだが。

 プリカは一体、この変化をどう思っているのだろうか、割り切ってしまっているのか、内心嫌がって、つとめて気にしないようにしているのか、それとも……受け入れているのか。

 

 「おーい! いつまで入ってるんだー!」

 

 「わかったわかった、今出る!!」

 

 ……サイヤ人はいつでも空腹だ、どんな日でも力の限り食っているあいつだが、太る気配はない。

 もしあいつが女性であることを選んだとするなら、サイヤ人であることの最高の恩恵はこれかもしれないな。

 

 

 

 我が家の『台所』は実のところほとんど厨房だ。

 例によって一般家庭を遥かに上回る設備に、しかも炊事ロボットがあちこちを駆け回る金のかかった仕様(神龍への願いに金銭の概念があるなら)だが、こればっかりは贅沢とは言えない、これくらいないと食事量を賄えないからだ(元の歴史におけるチチはあの小さな家でどうサイヤ人に飯を食わせているのだ?)。

 

 「……今日はやけに静かに食べるんだな」

 

 「俺だっていつでも元気ハツラツってわけじゃない」

 

 「そっか」

 

 俺は未だに、めずらしくウジウジと悩みを引きずっているのだ、本当にめずらしいことに。

 

 「それに、いつでも話題があるわけじゃないさ」

 

 とはいえ、食べる方はしっかりやる。

 今日のメインはシチューだ……俺が作っていた頃と味以外何も変わってないな。

 

 「だが、そろそろ買い出しが必要だな、食材は特に」

 

 「もう足りないのか?」

 

 「献立が偏っている、恐らく材料切れが近い」

 

 「……よく気付くよな、おまえ」

 

 俺が鋭いのか、プリカが鈍いのか、こういう事に気付くのはいつも俺なのだ。

 ……が。

 

 「じゃあ、明日、モーションキャプチャーやる前にオレが買い出し行くよ」

 

 「俺が行く、選びたいものもあるからな」

 

 「ダメだ、おまえは金遣いが荒いんだよ、今日もフレームをイチイチ作り直せとか言うしな」

 

 俺が金遣い荒くマシンをいくつも持っているからこそ乗り切れた局面もあるというのに、なんて言い草だ。

 俺は観念して、プリカに買い物を頼むことにした。

 

 「じゃあ、おじやの材料とバナナ、あとコーラを買い込んできてくれ、あと、分かってるとは思うが、生物は少なめにしておけよ」

 

 「なんで?」

 

 「三日後は武道会だ、一日戦って、一泊して、往復も考えたら生ものは持たん」

 

 「……もうそんな時期だっけ」

 

 プリカはとぼけたように……いや、本気で忘れていたな、これは。

 

 「ま、何にしろ、せっかく後顧の憂いなく戦えるんだ、目一杯楽しもうじゃないか」

 

 「天津飯は多分、殺しにかかってくるけどな」

 

 「なに、奴とて武人、戦いとなればその血の滾りとフェアプレー精神を抑えることはできまい」

 

 皮肉っぽい台詞で戦意を燃やし、ニヤついた笑みを浮かべる。

 

 「……なあ、ソシルミ」

 

 「なんだ?」

 

 「やっぱり何かおかしいな」

 

 「俺のどこがおかしいって証拠だよ」

 

 「普段はそこまで露骨に前世のネットネタ使ったりしないだろ、やっぱりおかしい」

 

 ……確かに、二人っきりとはいえ、ここまで使うことはそうなかった……かもしれない。

 気が動転して口走ってしまっているのか?

 それとも、もしかしたら、気まずい気分を誤魔化すため、俺達が共有している、変わりようのない紐帯、つながりを確認したかったのかもしれない。

 何にしても……。

 

 「そうかもな、いちいち弱るなんて俺らしくもない、鍛錬も大詰めなんだ、しっかり気を張らないと」

 

 「……おまえは結構、繊細だろ、キツくなったら言ってくれ」

 

 「なんだ、急に優しいな」

 

 「おまえに優しくするべき時が、今くらいしかないだけだ」

 

 酷い言い草だ、いつでも優しくしてくれてもいいだろう。

 優しくされても色々と困ってしまうのだが。

 

 「舞空術とビームの話なら、おまえは要らないくらいに鍛えこんであるよ」

 

 「そういう優しさなら要らんぞ」

 

 「最後まで聞け、……オレも、研究ばっかやってきたわけじゃない、おまえに秘密の必殺技くらい、用意してある……おまえもそうだろ?」

 

 「……ああ」

 

 プリカが何を言いたいのか、何となく分かってきた。

 

 「天下一武道会はオレたちの三年の集大成だ、オレも、楽しみにしてる」

 

 「俺を元気付けるには武道か、安直だな」

 

 「そうか? 少しは元気が出たように見えるぞ」

 

 プリカはニヤッと笑った、俺の『ニヤッ』とは少し、というか大分違う、嫌らしさのない笑みだ。

 ……不覚にも、少しドキッときた。

 いや、中身がどうであれ、プリカは比較的整った容姿で、なおかつ健康的な武術少女でありメカニック少女だ。

 俺が多少心揺れたとて、誰に責めることができよう。

 すると、『お前、三年前は強引に引っ張り出してまで戦ったライバルがバッチリやる気を出してくれてるのに、なんて奴だ』と、心の声が、困った、少し勝てない……。

 内心の葛藤を、しかめっ面気味のうつむき加減で抑え込んでいると、プリカはそれを不機嫌が続いているか、慰めきれなかったと見たのか、今度は、『あくまでおまえが面倒だから、付き合ってやるんだ』とでも言いたげな、邪気を含ませた顔で笑った。

 この下心が、今の俺には心地いい。

 

 「よし、じゃあ、ダメ押しだ、これからもう何セットか、スパーリングに付き合ってやる」

 

 「大盤振る舞いだな、お前こそ何かあったんじゃないのか?」

 

 「三年に一度の大会の三日前だぞ、気合を入れる理由を聞く必要があるか?」

 

 俺を慰める、という目的すら覚えていないフリをして、プリカは立ち上がり、訓練室の方に歩きだして、手招きをする。

 俺はひとまず、友人の優しさに誤魔化されてやることにしたのだった。

 

→つづく




え? 物語が、闘いが進んでない?
大会は次回からです。

ということで、お久しぶり……と言わずに済んで安堵しています、桐山です。
これで脱線はひとまずおしまい、たった数話とはいえ、オリストーリー挟んでる間は緊張感が強いですね。

さて、ついに『新章開幕!』って感じです、章立てした記憶はありませんが。
第22回天下一武道会を前に、ソシルミ達は完全に未知の領域に突入しました。
三年間の月日は彼等と、彼等に関わった人々をどう変えたのでしょうか。
彼等自身と一緒に、それをお楽しみにしてくだされば幸いです。

それでは次回まで、ごきげんよう。
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