転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第二十五話:転生TSサイヤ人が未来を託されるまで

 「さて、恐怖と殺戮を楽しむにしてもこれでは少々多い、……減らすとするかな」

 

 「――――ッッッ!!!!」

 

 屋根を蹴り砕き、俺はピッコロ大魔王に向けて突撃する。

 残した仲間が、何かを叫ぶが、俺の全意識は、ピッコロが言葉とともに握り込んだ、その手にある!

 

 「ミソシルっ!!」

 

 「待て、待たんか、ソシルミ!!!」

 

 無茶も無謀も正気の上、一瞬の判断であっても、それを見逃す俺ではない。

 ただ、……ただ、あの技がどれだけの人間の命を奪うのか、死を与えるのか、そう思うだけで、俺にはどうにも、我慢がならなかったのだ。

 

 「なにっ!? ふはは、バカめ……!!」

 

 疲労に霞む視界の先で、輝きすら握らない手が、そのプレッシャーを俺に叩きつけようとしている。

 死なせてたまるか、死んでたまるか。

 俺は気を高め、手の輝きをピッコロに、ピッコロが放つ気に向けて突撃する!!

 

 「―――――ッッッッ!!!!」

 

 特攻同然の行為と正反対の決意は、ピッコロの放つ純粋な害意と激突し。

 ……俺の負けだ、ただ一度攻撃を防いだだけで、俺の体はズタズタになって落下しつつある。

 

 「ソシルミ!!!」

 

 「ミソシル……くそーっ!!!」

 

 プリカと、悟空の声がする、心配と怒りの混ざった声だ。

 声が出せたのなら、逃げて体勢を立て直せと、ドラゴンボールがあるから平気だと、伝えたい。

 

 それすら叶わぬまま、俺の意識はそのまま、体ごと大穴へと飲み込まれていった。

 

 

 

 

 「プリカ、やつを拾え!!」

 

 「あ、ああ!」

 

 一瞬、呆然としていたオレを現実に引き戻す、チャパ王の声。

 オレはソシルミが武舞台の穴に落ちる寸前に拾って、そのまま穴の横に着地する。

 同時に、上空から響く叫び声……悟空!

 

 「てりゃあああああ!!」

 

 が、悟空もまた、ピッコロの一撃で地面にたたき落され、屋根を突き破って寺を大きく傾かせた。

 ……多分、まだ生きてるはずだ。

 

 「悟空……くそっ! おい、ソシルミ、大丈夫か!?」

 

 オレは必死にソシルミをゆすって呼びかける。

 ソシルミはあちこちズタズタだけど、息はしている、心臓も動いている、なら、まだ大丈夫のはずだ。

 

 「……意識のないけが人を……、揺するのは、やめろ、脳にダメージがあったら、どうするつもりだ」

 

 相変わらず、気の抜けたやつだ。

 多分こいつは、オレがそんなふうに思って安心するようにと、わざと調子を外して見せたんだろう。

 それが分かっても、素直にありがたいと思ってしまうくらいに、このたった一分足らずの時間は、衝撃的だった。

 

 「プリカ、逃げろ、ピッコロが来る」

 

 「ほう、わしをピッコロ大魔王と知っておるとは、よほど勉強熱心な武道家とみえる」

 

 ピッコロの声に、ソシルミは露骨に『しまった』という顔をした。

 次の瞬間、オレも思い出す、ピッコロの種族、ナメック星人はたしか、地獄耳なのだ。

 このままではまずい、だけど、ソシルミを抱えて逃げるにはあまりにも――――そう思った時、聞き覚えのある声が3つ同時に響いた。

 

 「とあーっ!!!」

 

 「どどん波!!!」

 

 「どどん!!!」

 

 鶴仙人と桃白白が撃った二筋のどどん波、それと、木の棒……亀仙人の杖がピッコロ大魔王にぶち当たる!

 いや、ぶち当たったように見えて、うまく弾いたようだけど、これで関心はソシルミと悟空から逸れたはずだ。

 

 (心配するな、ホイポイカプセルがある、仙豆を飲ませてやるからな)

 

 オレは身振りでそう伝えると、ソシルミは首を振って、空を見る。

 何がダメなんだ、そう思いながらオレも空を見上げると……その理由が、わかった。

 軍用機や民間機の大編隊が空を覆い、その隙間を縫うように羽の生えた化物や、パラシュートを背負った化物がどんどん会場に向けて降りてきていた。

 

 「ま、魔族……!?」

 

 「お……そらく、俺達の知らない歴史だ」

 

 ソシルミの喋り方が、いつもの論理的で理路整然としたものから、次第に朦朧としたものになってゆく。

 限界なんだ、ダメージから立ち直ってなんかいない、むしろちゃんと手当しないと、死んでしまう。

 オレはソシルミを守るため、チャパ王をアイコンタクトで呼び寄せた。

 

 「ソシルミはもう限界だ、意識も朦朧としてる」

 

 「……くだらん情に流されおって、おまえが倒れれば、もはや戦える者はおらんというのに」

 

 「申し訳ありません、師匠……」

 

 ひどい物言いだけど、自分の一番弟子がまともに戦うこともなくやられてしまえば、憎まれ口の一つも言いたくなるのかもしれない。

 でも、多分チャパ王は身を挺して自分や観客達を守ったソシルミの行いを、しっかり評価しているはずだ、そう思える、本心ではなさそうな言い方だった。

 ソシルミ自身もまた、苦い顔をしている……戦えないのが悔しいんだろう、いろいろな意味で、だ。

 

 「プリカ」

 

 そんなソシルミが、絞り出すようにオレの名を呼んだ。

 オレは何も言わずにうなずき、ソシルミの言葉を聞く。

 

 「悟空は多分もう戦えない、あいつに、逃げて、傷を癒やすように言ってくれ」

 

 「逃げて……傷を癒やす、そう伝えればいいんだな?」

 

 「ああ、それで分かってくれるはずだ、それと……」

 

 ソシルミは苦しみに息を詰まらせるような、それか、考え込むような感じで黙って、震える声で言葉をつなぐ。

 

 「奴はおかしい、強すぎる、つまり、何かが違う、亀仙人達は負けるだろう、お前も師匠と逃げろ……」

 

 「おい、ソシルミ、何がおかしいんだ、ピッコロ大魔王が強いのは最初っから……」

 

 「い、今の戦力では無理だ、逃げて、鍛えなおせ……、また、頼む、地球を……」

 

 そして、ソシルミは、苦しげに目を閉じ、体の力を抜いた。

 ……言ってることはわかる、危ないから逃げろと、戦力を十分残して、最後にはドラゴンボールで取り戻せと。

 

 何もかも正しい、正しい計算だ……足りないのは自分の命、それと……倒れた自分を置いて逃げろだなんて、家族同然の仲間に言い放たれたオレの気持ちを計算に入れることくらいだ。

 

 「なんだ! ソシルミ!! 地球を……オレに任せるつもりか!? オレがおまえを見捨てて逃げるってんじゃないだろうな!!」

 

 「プリカ、ソシルミが限界なのはおまえが言ったことだろう、寝かせてやれ」

 

 「……チャパさん、あんたはどうするつもりだ」

 

 「弟子の命令など聞く気はない、ソシルミを連れて逃げる」

 

 オレはそれを聞いて、大きくため息をついた。

 弟子が弟子なら師匠も師匠、我が強くて、判断が早い。

 オレもそれにならって、ソシルミを守ることにしよう……悟空を逃がすって指示だけは、聞くことにしておいてやる。

 

 

 

 「おいぼれどもが、このピッコロ大魔王に挑もうなどとは思いあがったものよ!!」

 

 そう言ってピッコロ大魔王は目玉を輝かせ、ギュワッと薙ぎ払うようにビームを放つ!

 三人は各々飛びのいて逃げ……ビームの軌道にあったビルが真っ二つに割れて倒壊、ついでのように、観客や警官が数十人、まとめて消し去られた。

 

 「き、きさま……!!」

 

 「関係のない連中を、か? わしの楽しみはそれよ、武道家どももそれを褒めたたえる連中も皆殺しだ、むろん、そうでない連中もな、きさまらにかまってやっているのは、単に順番の問題にすぎん」

 

 破壊力、それにチャージ時間の短さ、大魔王ってのは伊達じゃない。

 何よりこの場では……民間人を気にせず巻き込む戦い方が、何より恐ろしいんだ。

 そんなピッコロの行いと口ぶりに、亀仙人はかなり怒っているけど……それを制して、鶴仙人が飛び出す。

 

 「このハゲ! ピッコロの軽口にかまっておる場合か!! どどん!!」

 

 鶴仙人はたぶん、この場で自分が襲われているからか、亀仙人との共通の師匠、武泰斗の仇をうつためか、義憤では戦っていないからこそ、冷静でいられるんだろう。

 亀仙人は歯を食いしばって、それから、自分の杖(いつの間にか手に戻っている!)を投げ、自分もそのままピッコロに突っ込んだ!

 

 「くっ……とうっ!! つあああーっ!!!」

 

 杖はまるでブーメランのようにねじれた軌道を描きながらピッコロをかすめ……その間に、亀仙人本人がピッコロに飛び蹴りをかます、絵に書いたような同時攻撃だ!

 そこに二人のどどん波と暗器が加われば、さすがのピッコロもいくつかは弾けず、命中したり、無理な避け方をするハメになっている。

 

 「ふん、ただおいぼれただけではないようだな、武道家め」

 

 ……楽しんでいるのか、それともただ余裕があるだけか、ピッコロは三人を鼻で笑う。

 しばらくは大丈夫だ、オレはそう確信して、意識を自分たちの戦いに向ける。

 

 「っがあああ!! ぐああああ!!!」

 

 オレが放つ気弾が、一つ、また一つと魔族を木っ端みじんの『汚い花火』に変えてゆく。

 ソシルミがぶっ倒れたから遠慮する必要がなくなった……ってわけじゃないけど、どのみち、手加減する余裕も、理由もないんだ。

 

 「ぐわっ!!! ぎあああ!!!!」

 

 オレは直接ソシルミを守る仕事をチャパ王に任せて、とにかく気弾を撃ちまくっている。

 危険な兵器を持った魔族や、人々を襲う魔族を優先的に狙うが、後はもう、カンにまかせて撃つだけだ。

 悟空はもう筋斗雲を使ってどこか遠くへと向かった、傷を癒すために病院……じゃないか、どこかで体を休めるんだろう。

 ……観客席やその周り、寺の敷地内はもう、阿鼻叫喚の有様だ。

 

 「ぎゃああーっ!!」

 

 「た、助け……がふっ……」

 

 一人、また一人と、銃声や肉の立てる嫌な音とともに、観客やお坊さん、尼さんが殺されていく。

 わんさか降りてくる魔族は、オレではどうやっても殺しきれない。

 

 「きゃーっ!!」

 

 逃げ送れた女の子が魔族に襲われている、オレは気をぶつけて魔族を倒そうとするが……だめだ、間に合わない、近すぎる。

 そう思った時、半裸の男が駆け込んで、魔族をタックルで弾き飛ばした……バクテリアンだ!!

 

 「ヘヘ……食い放題たあ、大魔王さまさま……ぼげっ!」

 

 「とうっ!! お嬢さん、逃げてください!!」

 

 「は、はいっ」

 

 クリリンや天津飯、それに予選敗退した武道家の中でも強いやつらが、なんとか魔族と戦っている。

 それぞれのスタイルは様々だ、クリリンはひたすら駆け回って、ブルマたちを必死に守りながら、周りの魔族を倒していっている。

 

 「バカ! クリリン!! こっちを守りなさいよ!!」

 

 「そんなこと言ったって、見過ごせませんよ!」

 

 「あーもう!! こんなことならヤムチャについて病院に行ってりゃよかったわ!!」

 

 「くそーっ! クリリンのやつ、真面目ぶりやがって!!」

 

 「がんばってー! クリリンさーん!!」

 

 守るもののあるクリリンは必死に寺の外へ出るルートを探しているが、うまくいかない。

 オレたちの必死の戦いでも魔族は全然減らず、それどころか包囲は分厚くなっていく。

 やっぱり、この事態をなんとかするには、ピッコロを倒す以外にはないんだ。

 

 「はっ!! とあっ!! どどん波! どどん!! 鶴仙人さまに桃白白さんをお守りせねば……!」

 

 一方天津飯はピッコロと三人の戦いに割り込もうとする魔族をひたすら叩き潰している。

 もともと善人じゃない分、割り切った戦いをするのが、逆にありがたい。

 

 様々な武道家たち、特にクリリンと天津飯の大暴れのおかげで、戦況は有利だ。

 試合前から集まってきていた警察も……観客の避難の役には立ってくれている。

 

 「みなさま落ち着いて!! 警察の方の指示に従って避難をお願いします!!」

 

 ……それでも民間人の被害は抑えきれない、悟空は無事に逃げ切れたのか?

 そして、鶴亀両仙人、それに桃白白はピッコロ相手にいつまで持つ?

 倒してくれるならそれが一番のはずだ、それでも、オレの胸には、ソシルミが意識を失う間際に放った言葉が強く刻まれていた。

 

 「があ!! ぎああ!!!!」

 

 一つ、また一つと汚い花火が上がり、その何倍もの数の人間の命がオレたち武道家の手からこぼれていく。

 クリリンがかめはめ波を放って周囲を焼き払えば、その隙間を埋めるように何倍もの魔族が降りてくる、それを防ぐために軍用機を撃ち落とせば、今度は地上がおろそかになって、チャパ王とソシルミが敵に囲まれる。

 あちらを立てればこちらが立たずとは、まさにこのことだろう。

 

 「チャパ王さま!! ソシルミさんを守るお手伝いを、どうかわたしに!!」

 

 「好きに戦っていろ! かたっぱしから潰せば楽にもなる!!」

 

 ……意外、いや、ある意味予想通りだが、オレたちと深く関わっている武道家を除けば、一番活躍しているのはなんとバクテリアンだった。

 バクテリアンは力を込めて弾丸を弾き、レスラーとしてのすさまじい突撃力で魔族を蹴散らし、ソシルミとチャパ王を狙う連中をうまく排除しつつ、観客まで助けている。

 

 「このままなら、逃げるよりも魔族がなんとかなる方が先か……?」

 

 思わず口をついた言葉の通り、魔族との闘いはこちらの有利に進んでいる。

 問題は、言うまでもなくピッコロ大魔王。

 ピッコロに挑みかかった三人は体中にダメージを受けながらも、息のあった連携でうまく戦っている、ただ無策で消耗戦をするとも思えないから、なにかがあるはず……それが、この寺の、もっと言えば、この島、この世界の命運を握っているんだ。

 

 「ハゲじじい!!」

 

 「つるっぱげ!!」

 

 亀仙人と鶴仙人はしきりにお互いを罵りあいながら、次々と見知った技や、見知らぬ技を放っていた。

 鶴仙人のどどん波がピッコロの急所を狙って飛び、それをたまらずガードすれば、すかさず投げつけられた杖がその腕を押し込み、反撃を抑え込む。

 その流れもこれだけ続けば慣れたものか、ピッコロが余裕の笑みを浮かべて次なる手を打とうとすれば、鶴仙人が超能力で持ち上げた大量の瓦礫がピッコロを襲い、土煙がその視界を封じる。

 

 「どどん!! ……しっ!!」

 

 そんな連携の中、次々と飛び回りながら的確なタイミングで桃白白がどどん波や暗器を放ち、ピッコロの行動を妨害する。

 ……ピッコロにダメージはなく、ただ、戦いか、それかいたぶることを楽しむようにニヤニヤと笑うばかりだ。

 そして、飽きたのか、しびれを切らしたのか、手を握り込んで力を蓄えようとした……その時!

 

 「きええええい!!!」

 

 「むっ!!?」

 

 桃白白がどこかから取り出した青竜刀を持って突っ込む!

 これまでこそこそ隠れて攻撃を行うのみだった桃白白が突如取り出した長物に面食らったピッコロは、思わず目を見開いて振り払おうとして――――

 

 「鶴仙流、逆輸入『太陽拳』!!!」

 

 「あ……がっ!!?」

 

 ――――上体を逸らした桃白白の後ろから、鶴仙人の太陽拳がピッコロの目をくらませた。

 そして、客席でこそこそと動く亀仙人は、あるものを取り出した、あれは、オレも知っている。

 前世の話じゃない、今生の……あれは家でよく使ってるタッパーだ!

 

 「ゆくぞ、鶴!!」

 

 「わしに命令するんじゃないわい!!!」

 

 亀仙人が両手を突き出し、叫ぶ!!

 

 「魔封波!!!」

 

 「な、あ、お……おおおーっ!!!」

 

 亀仙人が放ったエネルギーの奔流に巻き込まれ、ピッコロは大波に飲まれる木の葉のように流されていく。

 でも、オレは知っている、魔封波は命をかけて放つ技、亀仙人はここで死ぬつもりだ!

 

 「つえええええい!!!」

 

 「おおおおーっ!!! こ、こんな――――」

 

 が、鶴仙人がそこに割って入る、鶴仙人は自分も力を放って、ピッコロを亀仙人の作る流れからかっさらって、タッパーの中に押し込んだ!!

 

 「今じゃ、封じるぞい!!」

 

 亀仙人は懐から『お札』を取り出し、ピッコロを封じたタッパーに向けてふらつきながら駆け寄っていく。

 ……どうやったのかはわからないけど、多分、亀仙人は何か危険なことが起きるのを察知して、封印のための道具を揃えていたんだ。

 しかも、鶴仙人とうまく連携して、理屈はわからないけど、魔封波の反動も抑え込んだらしい。

 亀の甲より年の劫、というか、亀の甲も揃えているんだから頭が下がる。

 

 「っがあ!! チャパさん、今だ、ホイポイカプセルを使おう!!」

 

 魔族はピッコロが封印されて動揺している、そこを突けば、なんとかホイポイカプセルを開いて仙豆を使えるはずだ。

 そう思って、ソシルミのところに駆け出そうとしたその時……突然、見たこともないような速度で、『なにか』が、ピッコロの入ったタッパーを砕いた。

 

 「はぁ……はぁ……肝を冷やしたぞ、やってくれたな、武道家ども!!!」

 

 バラバラに砕け散ったタッパーとお札の破片の中、大汗をかいたピッコロががなりたてる。

 ……そのとなりには、ローブを着た人型のなにか!!

 

 「せっかくお手伝いしてあげたのに、こんな早くにやられちゃうなんて、情けないったらありゃしないわ」

 

 「ふん、おおかた、きさまらの雑な偵察が見抜かれでもしたのだろう?」

 

 「あら失礼ね、ハエを一匹落としただけよ」

 

 「もうよいわ、下がっておれ!!」

 

 「あっそ、じゃあ頑張ってね、おじいちゃん!」

 

 人影はオレたちが茫然としている間に、すさまじい速度でどこかへと消えた。

 あいつ女口調だが、声も姿も立ち振る舞いも明らかに男、つまりオカマだ。

 ブルー将軍じゃない、声も明らかに違う……、なんだあいつは!!

 

 「……許さんぞきさまら!! もう容赦せん、チリも残さず消し去ってくれるわ!!」

 

 「ちょっとこれは……ヤバいかもしれん」

 

 「お、怖気づいてるんじゃないわい、このハゲ! のう桃白白!!」

 

 「わたしを巻き込まないでくれ兄者……」

 

 オレのところまで伝わってくるほど怒りをたぎらせたピッコロを前に、三人は必死で虚勢を張る。

 そう、虚勢だ……二人の仙人はオレにもわかるほど、その力をすり減らしていた。

 

 「きえええ――――ぐあああっ!!!」

 

 「亀ーっ!!!」

 

 杖を持って挑みかかった亀仙人は、片手でその杖をへし折られ、自分もその勢いのまま、崩壊しかけの本堂に突っ込んでいった。

 ……ソシルミが言ったのはこういうことか。

 ピッコロに勝てないんじゃない、何が起きるかわからないから、手持ちの材料で戦ってもろくなことにならない、そう言いたかったんだ。

 

 「これでやつは終わりだ、おまえも力を使い果たしたようだな、もはや再びあの技を撃つこともできんだろう」

 

 本堂の残骸を見ながら、ピッコロは呟く。

 鶴仙人は悔しさをたたえた顔で、わなわなと震えている。

 

 「先生……」

 

 「なんだ? じじいにもなって、師が恋しくなりでも――――」

 

 ピッコロが鶴仙人の小さなつぶやきをバカにした瞬間!

 鶴仙人が全身に気を煮え滾らせて、一息にピッコロに向けて突撃を始めた!

 

 「かああーっ!!!!!」

 

 そしてそのまま、滑り込むようなタックルで、ピッコロの腰にしがみつく!!

 

 「そちらに参ります!!!」

 

 「な、なに……く、くそっ……離さんか!!」

 

 振り払おうとするピッコロの抵抗を抑え込む鶴仙人、あれは文字通り決死の……自爆の構えだ!

 

 「桃白白!! 道場は任したぞ!!!」

 

 「待て、待ってくれ兄者――――」

 

 次の瞬間、凄まじい爆発がかつて観客席のあった場所を完膚なきまでに消し去り……その渦中に居たピッコロは……。

 生きていた。

 ……当然と言えば当然、すでに魔封波で命を使い果たしかけた鶴仙人が更に自爆をしたところで、たかが知れているんだ。

 

 「ク、クク……おいぼれの命一つで、わしを殺せるとでも思ったか……!」

 

 「つ、鶴……」

 

 瓦礫から這い出した亀仙人の、こころなしか力ない声が、鶴仙人を呼ぶ。

 

 「ようやく思い出したわ、きさまら、あの男の一番弟子と二番弟子だな?」

 

 「……おぬしが人の顔など覚えるとは意外じゃの」

 

 「当然、わしにとって人間など虫にすぎん、だが、毒虫の色は覚えておくものだろう?」

 

 亀仙人は二の句を告げず……黙りこくったまま、数秒、ピッコロ大魔王を睨んだ。

 そして、弾かれるように後ろに飛び退き、手を前に揃えた!

 

 「気功――――」

 

 「ぬるいわ」

 

 飛び退いた瞬間にはすでにピッコロが飛び出し、ちょうど、手を前に揃えきった所で、手刀が亀仙人の腹を貫いていた。

 ……終わりだ。

 この戦いに勝ち目はない。

 周りを見れば、生き残りの……いや、逃げ遅れた観客は、もういない。

 

 「チャパさん、逃げるぞ!!」

 

 「天! 撤退だ!!!」

 

 「く……鶴仙人さま……!」

 

 オレが叫ぶのと、桃白白が叫ぶのはほとんど同時で。

 自然に、まだ倒れたままのソシルミをかばうように、この場にいる武道家たちが集まることになった。

 桃白白は懐に手を伸ばしてチャパ王に向け、首をかしげる。

 

 「いや、場所がなかろう」

 

 何か乗り物を出すと言った桃白白にチャパ王は、場所がない、と返したと、一瞬後になってわかった。

 桃白白はニヤリと笑って、懐から出した手に握ったホイポイカプセルを、そのまま武舞台のあった場所に投げ捨る。

 そして、自らも追って入った……一体何を!?

 

 「見ておらんと蹴散らせい!」

 

 オレの動揺をさとったチャパ王が、魔族を潰せとせかす、ならばなにか策があるんだろう。

 天津飯とオレは動揺を振り切ってエネルギー技を連射する! 

 

 「がああ!! ぐあ!! だがあ!!」

 

 桃白白が穴にかまうからには、穴の周りだ、そうアタリを付けて、片っ端から穴の周り、穴の上空の魔族を潰していくと、至近弾の爆発で墜落した魔族が、穴の底で甲高い悲鳴を上げた!

 そして、落下音じゃないバチバチとあちこちに敵の破片が散らばる(この戦いでは)聞き慣れた音と、バラバラという空気を叩くような音が、地面の下から聞こえだす。

 この音は――――ヘリコプター!!

 

 「乗れ、逃げるぞ!!」

 

 そうか、地面の下、人間が一人もいない場所なら魔族もいないし、小ぶりのヘリくらいなら出せるのか!

 オレを含めた武道家たちの顔に希望が浮かぶ。

 ……そして、亀仙人の死体がオレたちの目の前に投げ捨てられた。

 

 「逃がすと思うか? クク……!!」

 

 血が滴ったままの手を握り込んだピッコロ。

 ヤバい!

 ソシルミを抱えて乗り込むには時間が足りない、オレはとっさにソシルミに覆いかぶさって――――その瞬間、ピッコロの腕からエネルギーが吹き出し……。

 チャパ王が、見たこともないほど強く手を輝かせて、オレたちの前に躍り出た。

 

 「ソシルミを頼んだ、そいつはガキだからな、おまえみたいのがついてないといかん」

 

 「チャパさ――――」

 

 そして、焼け焦げた地面と、崩壊した寺、街にぽっかりと残った燃え残り。

 ……パラパラと音を立てるヘリと、ソシルミの師匠が残した『影』だけが、残された。

 

 

→つづく




新年あけましておめでとうございます、桐山です。
遅めの投稿申し訳ありません、年末年始はやはり忙しい……普段からどうでもいい生活していると、正月休みは全然休みに思えませんね。


さて、意識を失ったままの我等が主人公、ソシルミ。
去ってしまった偉大な武道家たちの命を受け、脱出への希望を託されたヘリは、今まさに飛び立とうとしています。
彼等は無事脱出することが出来るのでしょうか、そして、あの人影は一体何者なのでしょうか。
次回、そして今年もお楽しみに!
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