転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第二十八話:転生地球人が我儘を通すまで

 爆音が響き、大きく通路が揺れる。

 世界の王都、中の都に肉薄した我々の機体は、激しい魔族の対空砲火に晒され、今まさに撃墜の憂き目にあおうとしていた。

 

 「だ、大丈夫だ、来る前にオレとピラフでしっかり補強した!」

 

 ……訂正、まだ沈まないらしい。

 だが危険な状況には変わらない、機体を空域から離脱させるため、俺達戦士は降下準備を始めていた。

 

 「オラ先に行く! 筋斗雲ーっ!!」

 

 悟空が甲板へのハッチを開き、飛び出してゆく、それを見送りながら俺達も準備していると、それを追い抜く二つの人影があった。

 

 「わたしと天津飯は甲板で対空戦闘を行う、都の戦いは任せたぞ」

 

 「……だが、オレたちもすぐに追う、きさまに鶴仙人さまの仇は譲らん!!」

 

 桃白白と仙豆で回復した天津飯がハッチへと登っていく、どうやらあの二人、、傷が治り切る前から厳しい鍛錬を行っていたらしい。

 だが……俺も譲る気はない。

 

 「それは保障できんが、健闘を祈る」

 

 「ソシルミ、オレたちも行くぞ」

 

 プリカがパラシュートを付け、俺の肩を叩く……俺はそのパラシュートをそっと外して、プリカの手を引いてハッチに走る。

 

 「おい!」

 

 「市街地への降下くらい、生身でも平気だ、ふらふら落ちたら格好のエサだぞ」

 

 「そう言われたってな……」

 

 ぶつくさ言うプリカを連れ、甲板に出る。

 機体に絡む魔族を片っ端から蹴り飛ばす天津飯と桃白白、そして、その周囲を飛び回る筋斗雲と如意棒の悟空、更に、機体各所に据え付けられた砲塔と地上からの砲撃の爆音!

 そこは小さな激戦地であった。

 

 「ソシルミ、ピラフが見てるぞ」

 

 甲板から見えるキャノピーには、後ろめたげにするピラフがいた。

 俺はそれにサムズアップで返し、プリカに向き直る。

 

 「地上は酷い有様だ、別々に行くぞ」

 

 「それはいいけど……」

 

 俺達、武道家有志連合の作戦は至極単純。

 ピラフ所有機で中の都に肉薄、その後、全員で飛び降り、魔族を蹴散らしながらピッコロの居座るキングキャッスルへと進撃、ピッコロを袋叩きにする。

 ……というものだったのだが、はっきり言ってもう作戦は形骸というか、骨子しか残っていない有様だ。

 

 「魔族が多すぎるが、そこは各国軍も来ているんだ、まあ、なんとかなるだろう」

 

 中の都に集結した魔族はあの日の戦いより遥かに多く、あちこちで民間人に乱暴狼藉を働いている。

 その上、大量の魔族と、各地から集結した軍隊との間で激しい市街戦が展開されているのだ。

 つまり我々は、魔族に対し攻撃を加え、突破を試みつつ、共に戦う仲間となった人間の軍隊をかばわなくてはならない。

 

 「ソシルミ、背中、戻っちゃったって言ってたよな、大丈夫なのか?」

 

 「必要のない時にあれは現れない、あの時はおそらく、毒のダメージによって強引に引き出されたんだろう」

 

 「……そっか、わかった、ピッコロと戦う前に、ケガとかするんじゃないぞ!」

 

 俺達は別々の方向に向け全力で走り、各々定めた戦場へと飛び出した。

 向かう先、中の都は往時の人の賑わいは影の形もなく、まさしく戒厳令下のゴーストタウンに、爆炎、硝煙、火災からの煙が立ち上っている。

 俺が定めた戦場はその一つ、人間の軍隊と魔族の集団が争っている大きな交差点だ!

 俺は姿勢を制御し、ちょうど、軍のバリケードの内部へと勢いよく着地する。

 

 「トアーッッ!!!」

 

 「な、なんだ!? お、おい、きさまは一体……!?」

 

 軍人さんが俺に銃を向ける、魔族と戦ってる途中に飛来した何者か、なんてもんをいきなり撃たないとは素晴らしい練度と言うほかない。

 ……周囲を見ると、焼け出された着の身着のままの民衆が恐怖に怯え、肝心の兵士たちも負傷兵だらけ、バリケードはあちこちで砕け、今にも魔族がなだれ込んできそうな状況だ。

 

 「ぐ……軍人さん! 魔族がバリケードに!?」

 

 「落ち着いてください、人間です……多分」

 

 「その通り、タンドール王国より参りました、武道家のソシルミです」

 

 「タンドール……、な、なるほど! チャパ王の弟子か!!」

 

 師匠の名はそれなりに売れているらしい、俺はバリケードの裂け目に向かって歩を進める。

 

 「奴らは俺が引き受けます、その間に、立て直して下さい」

 

 「お、おい――――」

 

 それ以上は聞かずにバリケードを飛び出し……次の瞬間、魔族連中の集中砲火が俺を襲う!!

 

 「――――ッッ!!!」

 

 俺にとって、小銃弾や小口径の機関砲弾程度は手を輝かせる必要すらない。

 だが、大ぶりの弾丸だけはあえてつかみ取り……!

 

 「フンッッ!!」

 

 「ぐげっ!?」

 

 魔族に向けて叩きつけた!

 俺は魔族陣地に向けてゆっくりと歩み寄ってゆく、敵を刺激せず、軍が体勢を立て直すまでの時間を稼ぐのだ。

 

 「な、なんだ! まさかあいつ、弾丸を掴んで!?」

 

 「武道家って連中は化物ばかりか……!!」

 

 「オレは聞いたことあるぞ! チャパ王の弟子には魔族を殺しまくるのが趣味の天才少年がいるって!!」

 

 だが、魔族どもは更に多くの火器を持ち出して俺に集中砲火を放っている。

 キリのない魔族どもを相手にするためには、軍隊がいるのはありがたいが、守りながらでは戦えない!

 そう思ったとき、背後で(おそらく、俺が立てたのよりも遥かに)大きな落下音がいくつも響き、続いて、ズシズシ、あるいはギュピギュピと歩行音が響き始めた。

 

 「またか! きさまらは何者だ!?」

 

 「メタリック」

 

 小さく、しかし、響く声で先頭の個体が言う。

 メタリック、メタリック軍曹だと!?

 俺が驚きながら弾丸を弾いている間に、メタリック軍団は背後で陣形を作り、軍隊の前に並び始めた。

 

 「「あ……ん」」

 

 「まさかッッ!!?」

 

 メタリック達が小さく上げた声、その正体を知っている俺が飛び退いたその次の瞬間には、敵陣にいくつものビームが突き刺さり、魔族達は一挙に蒸発、爆死した!

 本来ミサイルを使うはずの動作だが、ビームとは、大胆な改造が施されたものだ、あっけにとられながらそう思っていると、メタリックには似つかわしくない甲高い声が響く。

 

 「《どうじゃい! 連中の基地にあったデータを拝借して作ったロボット軍団は!》」

 

 「頼りにはなるな、頼りには……ッッ!!」

 

 ここはもう、メタリック軍団にまかせて大丈夫だろう……ピラフにとっては汚名返上のチャンス、張り切っていると見える。

 

 「よくわからないが、この状況で助けが来てくれるとは、これで住民の避難を進められそうだ!」

 

 「今のうちにバリケードを直すぞ! ……ありがとう、タンドールのソシルミ!!」

 

 魔族やその衣服の破片が燃え上がり、それに熱されたアスファルトなんかがチリチリ言う中を駆け、俺は次の戦場へ向かう。

 

 

 

 ……中の都に降下してから、もうすでに十数分が経過していた。

 高速で市中を駆け回る俺は魔族の集団を見つけ、ビルの壁を利用して一気に加速、ほぼ水平に飛び込み、そのまま手刀で指揮官の首を落とす。

 

 「ツアーッ!!!」

 

 「ガボ……」

 

 親分を殺された魔族は一瞬動揺し、俺に怒りを向ける……が、俺はそれを気にせず、魔族側のバリケードを蹴り飛ばし、行きがけの駄賃に数体の魔族を破壊してから次の戦場を探して再び駆け出す。

 俺はこの戦いで魔族を殺すことは厭わない、シュラのときが特殊だったのだと割り切り、腕を、拳を、指を、そして脚を振るっていく。

 だが……殺してはならない相手もまた、この戦場には存在していた。

 

 「ひぃぃっ! 来るなーっ!!」

 

 「う、撃つぞ、う、うああっ!!」

 

 それがこの、俺を恐れながら、ひたすら銃を撃ちまくる『人間』の集団、魔族によって徴兵された民間人だ。

 魔族、軍隊、武道家、そして、魔族や人間によって強制的、あるいは自発的に武装した民兵、それらが中の都全体で所狭しと撃ち合っているのだ。

 

 「俺は人間だッッ!! その銃は魔族どもに向けろ!!」

 

 「だ、駄目だあー!」

 

 「お……おれはそっちに行……ぎゃーっ!!」

 

 俺の言葉に答えた男を引き裂く魔族!

 民兵の後ろに隠れ、粛清の機会を見計らっていたのか……!

 

 「オラ! 撃たねえとおれがてめえらを殺すぜ!!」

 

 「ひぃ~!!」

 

 魔族が民兵たちを脅すとともに攻撃が激しくなり、接近は更に難しくなる。

 ……民兵もろとも、少なくとも、被害を飲み込めるならば対処のしようもあるが……!

 俺が攻めあぐねていると、上空から聞き覚えのある飛行音とともに、赤い筋が飛来し、人間達を打ち据え初めた!

 

 「がっ!?」

 

 「ぼげっ」

 

 「うーん……」

 

 頭や手を激しく撃たれた民兵は射撃を中断、これは……チャンスだ!

 一気にバリケードを飛び越え、気絶した民兵をまたぎ、魔族を襲う!!

 

 「ま、まちがやれ! おまえが動いたらこいつを……」

 

 その魔族が吐いた台詞はそこまで。

 直線上にあれば、木っ端魔族の行動などより遥かに早く、俺の手刀が届くのだ。

 俺は上を見上げ、先程の赤い筋の主、悟空に手を振る。

 

 「助かった!!」

 

 「またなミソシル!」

 

 手を振り返す悟空……無理やりさせられているとはいえ、仲間に銃を向けるならば力ずくでの排除もやむなし、理屈は分かるが、俺には難しい。

 そこを割り切れるのが戦闘民族らしさ、無力化に留めるのが、地球人らしい優しさといったところか。

 

 

 俺が民兵に余裕のある人間側の陣地を教え、更に中央に進もうとしていると、空の魔族の動きがおかしいことに気付いた。

 これまでの適当に飛んで飛来する航空機を撃滅するだけの動きではないもっと組織だった……これは!

 

 「航空爆撃かッッッ!!!」

 

 俺が叫ぶのと同時に、魔族どもが空中より爆弾、及び気弾の投下を開始した!

 しびれを切らしたのだろう、人類側の各陣地を猛烈に攻撃し始めた魔族だが、空中戦、遠距離戦の手段に欠ける俺に対抗する手立てはない。

 とはいえ、このままだと総崩れだ、急いで救援に――――

 

 「――――どどん波!!」

 

 「ちぇっ!! つぉっ!!」

 

 ……行くまでもない。

 そう俺に伝えるように、空中では天津飯と桃白白が踊り始めた。

 二人の動きはまさしく兄弟弟子が演じる阿吽の呼吸、魔族の拳足、銃撃やミサイルを軽々と避け、互いに向かう攻撃を無効化し、自らの攻撃は見事に命中させてゆく。

 

 「蝶のように舞い、蜂のように刺す、なるほど、まさしく!!」

 

 あの二人の鍛錬は見事実を結んだらしい!

 天津飯の動きからは、(残念ながら俺にもある)武道家としてのエゴ、すなわち、自らの技術を使って何もかもを片付けたいという欲の姿が消えている。

 殺し屋、戦闘者として純粋化され、技に執着する心を捨てたことで、かえってキレが上がったのだ。

 

 「砲撃開始!! あの武道家たちを援護するんだ!!」

 

 「撃てーっ!!」

 

 振り返れば、あちこちの陣地からも対空砲火が始まっている。

 更に、ピラフ機やメタリックからも砲撃が始まり……俺の出る幕はなさそうだ。

 先に進もう。

 

 

 

 重機関砲の陣地が10、いや、それ以上。

 集中砲火、いや、弾幕を前に、俺はビルの影に入って息を整える。

 

 「本気で俺を通さない気か、親分の戦力は十分だってのに、周到なことだ」

 

 ピッコロ大魔王の居座るキングキャッスルはもう目と鼻の先、だが、近づくにつれて魔族どもの守勢は堅くなり、今ではこの俺の力を持ってしても無防備に接近するのは難しいレベルに達していた。

 そう、無防備、には。

 

 「……チャルク先輩、技を使います」

 

 俺はホイポイカプセルを使って武器のセットを取り出し、片手持ちの曲剣と円盾を持つ。

 武器術を競い合うためでなく、拳では殺し切るのが遅いからと武器を使う不純、武器の技を愛するチャルク先輩が見たら顔をしかめるだろう。

 

 「ウオオオオッッッ!!!!」

 

 「また向かってきやがった!!」

 

 「そんなチンケな武器でどうしようってんだ!」

 

 重機関銃の弾丸だろうと、一流の武道家が持つ武器・防具の前ではBB弾、いや、ポップコーンも同然!

 盾で弾丸を弾き、剣身とソニックブームで弾丸を逸らしてゆく。

 俺はまたたく間に煙に包まれて砲火は止まり、連中の息遣いと叫び声だけが聞こえる。

 

 「や、やったか……ゴボっ……!?」

 

 「それは人間側の言う台詞だッッ!!」

 

 息遣いに向けて放った円形手裏剣、チャクラムが命中し、魔族どもの喉笛を切り裂いた!

 そのまますかさず突撃し、魔族を剣で切り裂き、盾で潰し、足で貫く!

 

 「―――――ッッッ!!!!」

 

 ……一息で殲滅は済んだ、息ももはや荒れてはいない。

 

 「ハァ……」

 

 だが、俺はため息をつかざるをえなかった。

 魔族の死骸に混ざって散らばる、人々の死体、日用品。

 世界最大の都市として賑わっていたはずの中の都の喧騒はもはやここにはない、人口密度はおそらく、ゼロ。

 殺戮と捕食、徴兵によって全て失われたのだ。

 

 「ピッコロを倒さなくては」

 

 ガラにもない使命感が口をついて出る。

 この戦場を切り抜け、ピッコロ大魔王を倒す、そのためならば、戦場で武器も使う。

 

 「トアアーッッ!!!」

 

 俺は曲剣の代わりに帯状の金属板を掴み、再びキングキャッスルへの突撃を始める。

 金属板の名はウルミ、剣に属する武器の一種であり、よくしなるよう加工され、刃付けされた帯状の金属板を一枚もしくは数枚束ねた武器だ。

 軽く手を振れば、剣身たちはねじれ、起き上がり、まるで俺の手にタコかイカの触手でもついたように踊りだす。

 

 「ば、化物!!?」

 

 「それはテメエらだろうがッッ!!!」

 

 ウルミの剣身を自在に制御する技は、師匠ではなく、チャルク先輩が教えてくれたものだ。

 武器の扱いに秀で、純粋な実力で言えば数段上になった俺にも血を流させた先輩……、魔族などにやられるなどとは、思いもしなかった。

 俺は盾とウルミで弾丸を弾き、砲弾を切り裂きながら魔族の群れに襲いかかる。

 

 「だが、化物で結構、貴様等魔族にとっての化物ならば、人には救いの神だ!!」

 

 ……どんな理屈が途中にあったのかは分からないが、一つ言える、俺がこの戦場を作ったのだ。

 俺は人間と武道の未来のために歴史を変えてきた、だが、結果はこのざま。

 もしかしたらプリカがそうしたように、道場か、いっそ山奥にでも隠れていればよかったのかもしれない。

 

 「魔族狩り、不名誉な称号だが、俺にはピッタリだ」

 

 戦い、そして殺戮が、俺の――――殺気!!

 接近、超音速、砲弾、大型!!!

 

 「――――キェェッッ……ぐわッッ!!!」

 

 超音速で叩きつけられる砲弾に、思わず叩きつけたウルミが爆散する。

 それと引き換えに直撃を避けた俺は、しかし、爆炎にまかれ、そのまま数十メートル吹き飛んで、瓦礫の海に沈んだ。

 

 「や、やったぞ! ひひひ! 人間ごときがおれたちに逆らうからこうなるんだ!!」

 

 「ようやく武器庫の鍵も開いたことだし、すぐに残りのやつらも……」

 

 瓦礫の隙間から見える爆炎の向こうには戦車軍団、それに随伴する魔族の群れ。

 ……まず、焼けた瓦礫を取り除かなくては、そして、連中の兵器を全て蹴り砕く、戦車砲も避ける。

 そうして算段を整えている間に飛行型の魔族どもが飛来し、俺が攻めていた区画の守りは更に盤石になってゆく。

 空中には雲霞の如き羽持ちの群れ、地上は地上で、所狭しと並ぶ異形と兵器の群れ。

 

 「…………ハァ」

 

 疲れた。

 肉体的なそれとは全く違う疲労感、徒労感が俺を襲う、かつては、今の何分の一の実力で楽しんでいた魔族との戦いだが、今は苦痛だけが広がって……。

 ピッコロにたどり着くには、この戦場を戦い抜かなくてはならない、そのためにはまず、立ち上がらなくては。

 立って、戦わなくては。

 

 「奴らを殺して、ピッコロを殺して、この戦場を終わらせる……」

 

 使命感に溢れたような台詞が、いかにもおっくうな感じで飛び出す、体はまだ、動かない。

 魔族殺しなんて、何度も繰り返してきたまずだ、ならば、違うのは……。

 そこまで考えた時、俺の後方からいくつもの光の球が飛び出し、戦車を次々と撃破していった。

 

 「この技は」

 

 瓦礫を激しく投げ飛ばす音、感触、差し込む日差し。

 ……そして、俺の隣に人影が立つ、見る必要もない、気弾のクセと気配だけで、プリカだと分かる。

 

 「寝てるなんて、おまえらしくない、戦場は楽しい場所じゃないのか?」

 

 「……ここは人間の街だ」

 

 「そんなの、前からあったんだろ?」

 

 「俺がこの戦場を作った」

 

 問い詰めるような質問の繰り返しを前に、思わず、本音を吐く。

 俺はプリカが引きこもっている間も歴史の全面にでしゃばり、プリカと出会ってからも、あれこれと言いくるめ、好き放題に連れ回し、歴史を変えてきた。

 ピッコロ大魔王の復活なんて、大規模な出来事まで捻じ曲げて、その挙げ句が……これだ。

 だが、プリカは、それを責める様子もなく、俺をじっと見ている。

 

 「おまえじゃない、ソシルミ、オレもだ」

 

 「お前は俺に……」

 

 「巻き込まれた、なんて言うなよ、オレをなんだと思ってる、流されやすいやつだなんて、思ってるんじゃないだろうな」

 

 「……いや、流されたとか、それは言い過ぎかもしれんが」

 

 蹴られ……そうになったが、プリカはしゃがんで俺の頬をひっぱたいた。

 

 「言い過ぎとかじゃない、根っこから違う、オレはそんな適当に考えてない、おまえが言う言葉が正しかったから、オレはおまえについてきたんだ」

 

 「プリカ……」

 

 「悪党でも殺さなくていいなら殺さない、歴史なんかよりピッコロに殺される人を助ける、なにが間違ってるんだ、なにも間違ってない、だから――――」

 

 城の方向から、大柄な魔族が次々とやってくる。

 時を同じくして、おそらくは正規兵が放棄したものであろう戦車を操る民兵が恐れ知らずにも中央へと進撃し始めた!

 

 「さすがの魔族も戦車砲ならイッパツだぜ! 的がデカけりゃその分ってな、撃てーっ!!」

 

 「ぐへへ……いただきまーす!」

 

 図体に知能を持っていかれたであろう、典型的な大柄魔族どもは戦車砲弾を口で受け止め、そのまま一気に飲み込み、それをエネルギーに変えたように、口を猛烈に光らせる!

 

 「ソシルミ!」

 

 「プリカ!」

 

 俺達が呼び合うのと同時に、俺は盾とウルミの残骸を置いて立ち上がり、素手になった両手に輝きを纏わす。

 そしてプリカは、莫大な力を練り始めた。

 奴らの気弾が来る!

 

 「――――ッッッ!!!!」

 

 「が……ぐが……ががが!!!!!」

 

 俺が明後日の方角に気を弾き飛ばした直後、プリカが飛び上がり、手を高く掲げた!

 手が持ち上げるのは巨大な輝く球体!!

 

 「ウェスト・スター・モーニング!!!」

 

 プリカが叫ぶのと同時に、エネルギーの塊は魔族どもに命中し、奴らの防衛ラインに巨大な穴を開けた!

 俺は魔族の壊滅を見守り、次に、逃走しつつある民兵の戦車を横目で見て安心しつつ、最後に、プリカを見る、ドヤ顔だ。

 

 「これが、試合最後に出そうとしていた技か」

 

 「大したもんだろ」

 

 プリカは短く勝ち誇った後、少し気恥ずかしそうにして、一歩だけ俺の後ろに回り込む。

 

 「……ソシルミ、おまえが落ち込むことなんてない、おまえは正しいことをしたし、間違ってるならオレも共犯だ、それでもまだ、責任を感じるなら――――」

 

 強く、普段の拳ではなく、平手で、背中を叩かれた。

 

 「――――間違いじゃなくしてこい、やりとげてみろ、おまえの好きなようにするんだ、オレも一緒にやる」

 

 「プリカ……!」

 

 俺はプリカに答えようとするが、それを聞くまでもなく、プリカは飛び上がり、穴を埋めようとする魔族に気弾と拳を叩きつけ始めた。

 ……先に進もう。

 

 

 

 手刀で貫いた魔族を投げ捨て、次に現れた敵が振り下ろす剣を拳で叩き割り、続く膝で頭を撃ち抜き、次の段へと登る。

 螺旋状になった階段の果てにある扉を蹴破り、俺はキングキャッスル頂上玉座の間へと殴り込んだ!

 

 「ピッコロ大魔王ッッッ!!!!」

 

 「ほう……まさかこの玉座へとたどり着いてくる者がいるとは……ん? おまえはどこかで見た顔だな」

 

 「ソシルミ、あの天下一武道会決勝を戦った武道家だ」

 

 「なるほど、なるほど……」

 

 ピッコロ大魔王はあくまで愉快げに、どこかから持ち込んだ玉座にただ一人座っている。

 元の歴史に居たはずの側近もそこにはいない、ドラゴンボールを使って手に入れたであろう、若々しい姿の大魔王は、ただただ自然体でこの俺を見つめていた。

 

 「この乱痴気騒ぎを終わらせに来たぞ、ピッコロ」

 

 「それは気が合うな、わしもそろそろ終わらせるつもりだった」

 

 「何ッッ!?」

 

 俺がそう叫ぶのと、ピッコロの姿がかき消えるのは同時のことだった。

 いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で、ピッコロは移動した。

 移動先は……玉座の上、キングキャッスルの尖塔!!

 

 「貴様、何を――――」

 

 ピッコロ大魔王は俺を見て笑い、そのまま戦場をねめつける。

 そして、俺の背後から、閃光が現れ、玉座に俺の影が刻まれた。

 

 「これは……ッッ!!」

 

 思わず振り返った俺の目に映るのは、爆発!

 眼下に広がっていたのは、唯一武道家達の支援を受けずに善戦していた国王直属軍の戦っていた領域が爆煙に包まれる光景だった!!

 溜めも何もない、ほぼ目線を向けるだけの時間で、自らの部下であるはずの魔族もろとも、一瞬にして!!!

 俺は下手人、ピッコロに向き直る――――いない!

 

 「よそ見ばかりしおって、心ここにあらずのままこのわしと戦うつもりか!!」

 

 「――――ッッッ!!」

 

 俺は腕を振り、半ば死に体のまま、背後の気配を薙ぐ、手応えなし。

 ……俺が振り返るまでは気配は尖塔にあった、一瞬の間に、俺の視界を外れ、そのまま高速移動で再び俺の背後に回ったのだ……!!

 この破壊、速度、やはり、若返ったピッコロ大魔王は、俺の手に余る強敵――――

 

 「さすが、大魔王」

 

 「ほう、わしを素直に褒める人間など、久々に出会ったわ」

 

 「強さを認めぬ相手と戦う意味がどこにある」

 

 「弱者を嬲るのは嫌いか?」

 

 俺はピッコロに向け、大きく体を開いて構え、それをもって答えと――――宣戦布告となす。

 乱痴気騒ぎを終わらせる?

 それだけならば、プリカを置いてくる意味などない、悟空も、桃白白も、天津飯も連れ立って、なんなら、メタリックにも砲撃させて戦えばいいんだ。

 違う、俺の目的はそうじゃない。

 

 『――――間違いじゃなくしてこい、やりとげてみろ、おまえの好きなようにするんだ、オレも一緒にやる』

 

 そうだ、俺はピッコロを倒す、素手で、一対一で。

 好きなようにやり遂げてみせる、間違いでなくす、友は戦場に置いてきたが、同時に、俺と共に戦っている。

 腹の底から湧き上がる果てしない、純粋な戦意は、間違いなく俺があの血を持っている証明であり、俺がこの生の中で積み上げてきた戦いの歴史と絆がもたらす……。

 ……わくわく、だった。

 

 

→つづく




半分徹夜みたいな状態になりながら必死でキン肉マンの無料公開読みまくってましたがそれと遅筆は関係なく今回はただのプロットの遅れでした、桐山です。


さて、いよいよ長く続いたピッコロ大魔王編も佳境、すなわち、最終決戦を迎えようとしています。
超神水の効力によって超強化されたソシルミの単騎駆け、しかし、若返ったピッコロ大魔王の戦力は強大です。
果たして出るか、鬼の貌、唸るか、爆力魔波!
自称・最強の血族の末裔VS異星の遺児の分裂体!!
ソシルミの、武道家達の、地球の運命やいかに。

次回もお楽しみに!
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