転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第三十一話:転生地球人と転生TSサイヤ人が再会を誓うまで

 ズラリと並んだメタリック達が同朋のスクラップを抱えながらコンテナに入ってゆく。

 コンテナは当然、ホイポイカプセル化機能搭載のものだ。

 

 「ピラフ、メタリックを後で貸してくれ、除染に使う」

 

 「何を今更水臭い……、わたしたちも手伝うぞ?」

 

 「流石に悪いからな、それに、チャパさんとこもひどい目にあったんだろ?」

 

 プリカとピラフは今後の段取り、鶴仙流の二人は早くもジェットを出してパパイヤ島へ向かう準備、悟空はヒマを持て余してそこらの瓦礫の上で体操。

 それぞれが次の準備を進める中、俺は……特にやることがないので、瓦礫に座ってコーラをかっくらっていた。

 

 「ブハッ……ふぅ、流石に疲れた、死にかけるのは毎度のことだが、ここまで絞り切るのは久々だ」

 

 「おつかれさま、だな」

 

 ピラフと一通り話し終えたプリカがオレの隣に座り、ねぎらってくれる。

 だが、そろそろ出なくては、食事や着替えは機内で済ませよう……そう思っていると、プリカが俺の顔を覗き込んで、なにか言いたげにしていた。

 

 「なんだ?」

 

 「なあ、ソシルミ、おまえまでカリン塔に行く必要、ほんとにあるか?」

 

 「……それはどういう意味だ」

 

 「必要ないって言ってるんじゃない、おまえにはあるのかって、聞いてるんだ」

 

 元の歴史を参考にするなら、悟空がカリン塔に行きさえすれば、あとは自然に、カリン様は神への直訴を承認し、悟空は神の下へと向かうだろう。

 ならば、そこに俺が居る理由などは、ない。

 あるとするならば……、そう、プリカの言う通りだ。

 

 「できることなら、神に会いたい、神の下で鍛えたい、……俺の好敵手の半身に会いたい」

 

 「じゃ、仕方ないな」

 

 「いいのか? 会えたら、俺は三年ずっと神殿で修行することになるぞ、別にお前は困らんだろうが」

 

 「オレは家の始末と作り直しに、今回のデータを踏まえての研究もある、仕事が多いんだ、行ってこい」

 

 いつの間にやら顔を空に向けたプリカは、こころなしか大きめの声でそう言い放った。

 まあ、俺が家に居ても、やれることは本人とメカのスパーリングパートナーしかない、むしろ食費と気苦労が減るだろう。

 何も問題はない。

 

 「じゃあ、俺はジャマだな、ちょっとくらい留守にした方が良さそうだ」

 

 少しやけくそ気味な感情をぶつけるような言葉に、プリカは何も言い返さない。

 心配はいらないと言ってくれているのか、本心だからなのか。

 

 「……そろそろ出る、数日帰ってこなかったら、そのときは神殿だと思ってくれ」

 

 「ああ、いってらっしゃい」

 

 こうして俺と悟空はカリン塔へと向かい、神への面会を志願することになった。

 

 

 

 

 潜在エネルギー、気、元気、スピリット、戦闘力、キリ、そのように呼ばれる各種の力、エネルギー、あるいは存在。

 それは万物に宿るエネルギーであり、あるいは、その存在や生命力そのものであるともされる。

 

 「飛ぶ、空を飛ぶ……」

 

 俺は疑問を投げかけるように呟き、その言葉を飲み込む。

 舞空術の飛行とはロケットのようにエネルギーを下方に噴射する反作用によって推力を得るもの『ではない』。

 舞空術の飛行とはホバー・クラフトやミノフスキー・クラフトのように地面と自らを物体やフィールドで繋げ、それによって地面から離れるもの『ではない』。

 舞空術の飛行とは飛行機や鳥のように空気を背後へと押し流す反作用と翼の揚力によって推力を得るもの『ではない』。

 

 「おーい、ミソシルー! どうしたんだー?」

 

 空高くから悟空が呼ぶ。

 実に楽しそうに、そして純粋に俺を心配する声色だ。

 ……俺は、ゆっくりと『力』を込め、自分の体を空中へと持ち上げた。

 

 「まだ飛ぶのなれねえのか」

 

 「仕方ないだろう、俺はお前らのように……」

 

 「なんだ?」

 

 「……かめはめ波とかは使えないからな」

 

 もともと飛べる人種というわけではない、という言葉を飲み込み、俺は当たり障りのない言葉を吐く。

 そして、少しの気恥ずかしさをごまかすため、周囲を見渡ししてゆく。

 平行に見渡せば青黒い空、少し下を見れば雲海、空気は薄く、日差しは地上よりも厳しい。

 

 「かめはめ波が使えなくたって、ミソシルはあのビカビカ光ったりする技使えるだろ?」

 

 「そうだな、もう少し鍛えれば、俺もうまく飛べるだろう」

 

 「なんで飛べねえんだろうなあ」

 

 舞空術、と呼ばれる一連の技術は、通常の物体が空を飛ぶ理屈とは全く違う原理で機能する。

 体を構成するエネルギーそのものを、そのものが持つ、意思によって自由に動かすことのできる性質をもって動かすもの……と、呼べるかも分からない、きわめて体感的な原理で、空を飛ぶのだ。

 ……つまり、俺は理論派だからうまく新技術になじめないという話で、種族差だけのせいにするわけにはいかない。

 悟空と同じく感覚派でサイヤ人のプリカは今頃、うまく飛べているのだろうか。

 

 「ソシルミよ、まだ上手く舞空術を使いこなせぬか」

 

 「ええ、仰る通りです、()()

 

 ふらふらとおっかなびっくり飛ぶ俺の元に、神様がやってくる。

 ……そう、神様。

 

 「おぬしが気を用いた技を受け入れられずにおるのは、おそらく、気を未だに自らの物として受け入れられておらんからだろう」

 

 俺達二人は今、天界に居た。

 

 

 ――――ことは、予想以上に簡単に済んだ。

 カリン塔に到着した俺達を、カリン様は温かく迎え、神殿行きにも同意してくれた。

 

 『……いいのですか?』

 

 『神様に会いたいんじゃろう? 神と言えば実力者中の実力者で……おぬしと無関係ではないというのも、おぬしなら知っておるだろうしのう』

 

 心が読めずとも、分かるものは分かる、ということだ。

 俺の精神は純粋ではない、と言おうとすると、カリン様は、心は純粋ならいいというものではないし、お前は自分で思っているより純粋で善良だ、と返してくれた。

 買いかぶられている気がしないでもないが、悪い気もしない。

 

 神殿への行き方はシンプルだ、カリン塔頂上部のソケットに如意棒を挿入し、伸ばせば、それがそのままエレベーターとなって神殿に到着する。

 元の歴史であれば、ミスター・ポポが現れ、悟空をボコボコにして鼻っ柱をへし折る、という流れになるのだが……。

 

 『こい、神様が待っている』

 

 『……何か、試練だとかは?』

 

 『ない、おまえたち未熟だけど、じゅうぶん強い、それに、たくさん強いやついて、鍛えあってる、あんしん』

 

 ということらしい。

 俺とプリカが参加したことによる些細な変化、と言った所だろうか。

 後の流れはシンプルだ、神は、ドラゴンボールと神龍の復活と引き換えに、俺と悟空に、次の天下一武道会に現れるであろう、ピッコロの子供を倒すためという名目で三年間の修行を要求したのだ。

 

 『地上の者たちの勇気と希望のために作ったドラゴンボールだが、皆、おのれの欲のためにしかつかわぬ……』

 

 『…………はい』

 

 『い、いや……おまえたちの使い方は少しはマシだったと思うぞ? 完全に自分のためだけではなかったわけだし……』

 

 ……フォローになっていないフォローとともに。

 そして今、俺と悟空は神様の元で鍛錬の日々を送っている。

 一般的な高地トレーニングによる心肺機能や効率のよい動きの鍛錬を始めとして、ヨガにも似たバランス修練、舞空術を中心とした『気』の操作訓練、そして、地球の古今東西の歴史や事物についての学習……。

 

 「エイジ650年、第一回天下一武道会開催……以来開催日は当時の暦によって決定され……優勝者は……」

 

 「すぅ……ぴぃ……」

 

 空から帰った俺達は自由時間を与えられ、悟空は昼寝、俺は座学の復習に勤しんでた。

 

 「のんきな奴め、せっかく神の下へと迎えられたというのに」

 

 悟空はぐっすりと寝て体を休める、俺はただ単に『体を動かしていない時間』としてこの時間をとらえている。

 ひたすらにのんきに見える悟空は、次なる修行に備えているとも言えた。

 だが、やはり、学ぶことは楽しい、ここには様々な名著や、歴代の神々がしたためた、表に出ない歴史までもが所蔵されている。

 プリカは科学や工学畑だが、俺はどちらかと言うと知識全般や生物学が好きなのだ。

 

 「休んでもよいのだぞ、ソシルミ」

 

 「身体は疲れていても、頭は疲れていませんから」

 

 「……ソシルミよ、おまえは、優れた力と技、それに精神力と知識欲も持っておるし、自ら望むことと責任を果たすことの間の釣り合いも取れておる」

 

 「なんですか、藪から棒に」

 

 「その果てにピッコロを倒したことは感謝している……だが、おまえはどうも、未来に対する考え方が甘い、そう感じざるをえんのだ」

 

 未来に対する考え方。

 ……多分、俺が未来に、漠然とした期待しか持たず、計画性というものがない、そんなことを、言っているのだろう。

 だが、その曖昧な希望こそが俺を鍛え、ついにはピッコロを倒すに至ったのだと、俺は思っていた。

 

 「おまえが世を渡りきってピッコロを倒すに至ったのは決しておまえ一人で成したことではない、そこで寝ておる孫悟空やお前の師匠、そして、あのプリカという娘がおまえの道をただし、支えたからこそのこと」

 

 「……確かに、そうかもしれません」

 

 「そしておまえは、あの娘を始めとして、地上への執着を捨てられておらん、修行がうまく行かないと思っているなら、そのせいだろうな」

 

 「いえ、神様、プリカとは納得ずくで別れたのです、私にはここで、プリカには地上で、やるべきことがある」

 

 神様は、『そうか』とだけ答えて、俺のもとを去っていった。

 ……ちょうど、歴史書の項目は西の都の成り立ちに移っている、西の都で、プリカは今、何をしているだろうか。

 しっかりと家を再建したのか、まだ手間取っているのか、また引きこもりになって、言葉を忘れてはいないだろうか……。

 

 

 

 モヤモヤする、イライラする、何か自分の中にたまっていくような感じだけど、何がたまってるのかはわからない。

 そんなモヤモヤをなんとか趣味にぶつけようとするけど、やっぱり上手くいかずに、オレはボリボリと頭をかき、情けないうめき声を吐き出した。

 

 「あ゛あ゛あ゛……!! やっぱり軸と軸受の強度が足りなくて……いや、ギアも足りないか、機構で誤魔化すにも限界がある、でも流石にそこまで材料工学に深入りするのは……でも、いつかは触らないと……」

 

 構築中の鉄人拳八号の起動実験、ガチャガチャと動く鉄人拳から取れるデータは、鉄人拳の性能をこれ以上に向上させようとすれば、そもそも材質のレベルで改善が必要、という結果を表していた。

 まるで、今はいない、この家には住んだことすらない同居人、あの相棒の愚痴みたいだ……と、少し失礼だけど、考えてしまう。

 

 「カッチン鋼でもあればしばらくはもつんだろうけど、ないものねだりだよなあ……」

 

 魔族に木っ端微塵にされた家の跡地は、しっかり除染し、オレは、ブルマやピラフたちに手伝ってもらいながら新しい家を建てた。

 自力……とは言いにくいけど、人間の手で建てた家には、前よりたくさんの機材や、チャパさんからもらった武器なんかが所狭しと置かれていて、だいぶ賑やかだ。

 

 「オレとロボットだけの楽しい我が家、買い出しとか言って余計なもの買うやつもいない」

 

 そう、オレの同居人、武道バカのソシルミは今頃、この星の神様のところで修行していて、地上にはいないのだ。

 

 「チャパさんからもらった武器も書物も、あいつがいなきゃ意味はなし、……まあ、あいつはもっといいことしてるんだろうけど」

 

 この地球で一番の実力者、神様。

 神様に修行を付けてもらえるってのは、格闘バカのあいつにとって一番幸せなことだろう。

 オレが口出しすることじゃないし、しても、何の意味もない。

 

 「……心配しなきゃいけないのは、オレのことだな、うん」

 

 ドラゴンボールを集めてみんなを蘇らせてから、除染が終わって家が建って、内装も整ってくると、オレはめっきり出不精になった。

 出不精と言っても、鍛錬はばっちりしているから運動不足の心配はない、心配なのは、言葉を忘れないか、だ。

 わざとらしく独り言を呟いてでも口を動かしていないと、すぐにでもあの森で発見されたときの野人状態になってしまう。

 

 「帰ってきたソシルミに笑われたくないしな……」

 

 だが、問題はそれだけじゃないし、もう一つの問題の方が、より大きかった。

 ……家の作業が終わったくらいからこっち、ずっと感じてる『モヤモヤ』だ。

 多分、森に住んでた頃に感じていた感覚と同じ……いや、少し、違うニュアンスもあるけど、とにかく、モヤモヤするんだ。

 

 「大猿になる……ってのも、ダメだしなあ、メタリックとかヤムチャとか借りて戦っても、全然ダメだったし」

 

 モヤモヤはどうやっても消えない、森に居た頃は、大猿になれば消えたし、恐竜を思いっきり殴れば、ちょっとはマシにもなった。

 今のは違う、メタリックを壊しかけても、ヤムチャやチャパさんと流血するまでスパーリングしても収まらない。

 

 「オレはサイヤ人だから戦いが好き、戦わないでいるとイライラする、でも、戦っても、モヤモヤは収まらない」

 

 森を出てからこっち、モヤモヤしてきたらソシルミにスパーリングを頼んでいた、サンドバッグを殴っても、少しはマシになった。

 ……今は、誰とやっても収まらない、モヤモヤは日に日に強まっていく。

 原因として考えられるのは、オレに発生した一番の変化、つまり……。

 

 「ソシルミが、いないこと……」

 

 目を逸らしても逸らしきれない、たった一つの答え……仮説。

 

 「……シャクだけど、多分、それしかない」

 

 オレはいつの間にか、作業を終え、工具をしまって、旅支度を整えていた。

 ただ、仮説を確かめるためなのかも、このモヤモヤを晴らすためかもわからないまま、オレは家を飛び出し、覚えたての舞空術で聖地カリンへと飛びはじめた。

 

 

 

 

 針。

 いわゆる針山地獄の針を一本抜き取ってきたと言えば想像しやすいだろう、大きく太い、しかし鋭い針。

 その上に置いた人差し指に全体重をかけ、逆立ちの姿勢を保つ……それが、俺の今やっている修行だ。

 精妙なバランス感覚と、エネルギーの一点集中さえ保たれていれば、針が指を貫くことはない。

 

 「おまえ、動きと精神力はわるくない」

 

 ミスター・ポポが俺を褒めるが、構っている余裕はない、この修業は半日続くのだ。

 少しでも体力と思考力は温存せねばならない、むしろ、ポポはそれを分かって茶々を入れに来ている。

 時折見に来るポポをスルーして、ひたすら耐える、ただそれだけでいい、精神力を鍛えるというのはそういうこと――――

 

 「ん……!?」

 

 ――――ポポが小さく声を上げる、このような子供だましに乗ってはならない。

 心をかき乱し、俺が失敗するのを待っているのだ。

 だが、今度は調子が違った、ポポは何やら急いで飛び出していくし……何か、神殿の外の気配を感じる。

 

 「来客か?」

 

 まさか、プリカが俺に会いに来たのか? 

 いや、一番確立が高いのはプリカだが、会いに来る理由はない。

 じゃあ誰だ、プリカだったなら、どうして……。

 そこまで考えた時、指先に痛みが走った。

 

 「痛ゥ……」

 

 指先に、1ミリか、2ミリか、針が突き刺さっている。

 修行は失敗だ、俺は床に飛び降りた、……いや、刺さったら失敗という条件はあったか?

 焦って降りてしまった。

 

 「……いや、何を焦っているんだ、俺は」

 

 もし来客がプリカだったとして何を焦るんだ。

 自分が何に焦っているのか分からない、まさか、修行をやめにしてまで、プリカを出迎えたいと思っているのか?

 俺が若干の混乱を抱いていると、何やら、強力なプレッシャーが建物の外から流れ込んでくる!

 

 流石に行くしかない、誰へともなく言い訳して、俺は建物の外が見えるイチにまで移動する。

 すると、通路の向こうでは、ポポが構えて(と言っても直立だが)何者かと相対している光景があった。

 ポポは冷や汗をかき、明らかに強敵と対峙している、プレッシャーは強まるばかりだ。

 ……この星にそんな強者がいるとすれば、魔族か、あるいは、プリカしかいない。

 

 「ミスター・ポポ、これは一体どういうことですかッッッ!!!」

 

 「ソシルミ」

 

 「ソシルミっ!!!」

 

 小さく俺を呼ぶポポ、続いて、その数十倍の声量で俺を呼ぶ声!

 聞き間違えるはずもない、プリカだ!

 プリカは笑みを浮かべて俺を呼ぶ、それと同時に、あのプレッシャーも収まった。

 

 「なんだ、何かすごい技を使っていたようだが、やめたのか?」

 

 「あ、あーいや、技ってほどじゃないんだ、はは」

 

 プリカは何か顔を赤くしながら頭を掻く、技に何か恥じるべき所でもあるのだろうか。

 

 「それで、どうしてここに?」

 

 「……大した用事じゃない、おまえがどうしてるのか気になったんだ」

 

 「見ての通り、ここで修行してるよ、お前はどうだ、プリカ」

 

 「仕事は全部済んだ、家もバッチリだ、建て替え祝い、チャパさんから色々貰ったから、楽しみにしとけ」

 

 近況報告のようになってしまった会話を、ポポは横から、じーっと見ている。

 やりにくい……というか、どうして黙って見ているんだ?

 

 「うれしそうだな、ソシルミ」

 

 「嬉しい……そうか、まあ、久々に会えたんだし、それはしょうがないでしょう」

 

 ポポは、まるでため息をつくように小さく沈黙し、俺とプリカを交互に見て、非難めいた声をあげた。

 

 「そいつ、神殿によこしまな理由で入ろうとした」

 

 「よ、よこしまって……」

 

 「おまえ、自分でわかっていないのか」

 

 ポポに『何か』を指摘されたプリカは何やら、固まって、激しく頭を掻いてあちこちと、こちらをチラチラ見てくる。

 こういう、プリカの感情が行き詰まった時に発揮されるヘンな仕草を見るのも久しぶりだ。

 懐かしいというか、独特の味があるな。

 しばらく、それを眺めていると、神殿内部から神様がやってきた。

 

 「ポポ、ふさわしくない者が来たなら、なぜ早く追い出さんのだ」

 

 「神様、追い出す必要ない、多分、帰れって言ったら帰ると思う」

 

 「ふむ……ポポが言うならばそうなのだろう、では早く帰れ、プリカ、ここはおまえの居るべき場所ではない」

 

 「神様、ちょっとお水でも飲みましょう、ソシルミ、プリカを帰しておけ」

 

 「な、なんだポポ、いきなり水などと、喉は乾いておらんぞ!?」

 

 半ば強引に神様を神殿に引っ張っていくポポ。

 ポポが神様にあんな態度を取っているのは初めてだ、一体何が起きている、俺達を二人にしてくれるつもりなのか?

 そして、俺の混乱をよそに、プリカは神殿から飛び降りようとしていた。

 

 「じゃあ、オレは帰る、ちゃんと修行してるみたいで、安心した」

 

 「待て待て! 多分、ポポはちょっとくらい話していいって言ってくれたんだぞ、ちょっと話していけ」

 

 「話すって、なんだ? 鉄人拳八号の技術的課題なんて聞いても困るだろ」

 

 「例えば……ここに来た本当の理由、とか」

 

 俺がそう言うと、プリカは目を丸くして身体をすくめ、それから、またあちこちを頭をかいて、うーうー言う、まるで4年前のようなモーションの後、小さく呟いた。

 

 「……モヤモヤするんだ」

 

 「モヤモヤ?」

 

 「昔、森に居た頃、オレはずっとモヤモヤしてた、モヤモヤしたら大猿になったり、恐竜を殴ったりして発散してた、おまえが連れ出してくれてからは、モヤモヤしなかった、でも、今はまた、モヤモヤする、誰とスパーリングしても、なくならないんだ」

 

 「闘争本能か」

 

 サイヤ人がモヤモヤして、大猿になったり恐竜を殴ったりすれば収まるものと言えば、闘争本能だろう。

 だが、プリカは何故か俺から目を逸らして、『違う』と言った。

 

 「た、多分違う、闘争本能じゃない」

 

 「では、なんだ?」

 

 「……オレがここに来る時、ちゃんとカリン様に挨拶したんだ、カリン様は、ちょっとイヤそうにしながら、オレがここに来てもいいって言ってくれた」

 

 「脅したんじゃないだろうな」

 

 俺が冗談めかして言った言葉を否定せず、プリカは言葉を続ける。

 ……流石に脅したというわけではなく、ただ、否定しにくい程に、圧を出してしまったとか、そういうことだろう。

 

 「いいって言われて、おまえに会えるって思ったら、なんだか気分がよくなって、モヤモヤはほとんどなくなったんだ」

 

 いや、待て、今何を言ったんだ!?

 俺に会えるからとか、そんな直球の事を言うやつだったか、こいつは。

 俺だって、こいつと浅からぬ縁があるからこそ同じ家に住んでいるわけだが、こんなあけすけに言われるとなると……!

 

 「おまえも赤くなるんだな」

 

 「俺をなんだと思ってるんだ」

 

 「聞かないとわかんないのか?」

 

 分からん、と、答えようとしたが、分かるような気もするのでどうにもならない。

 話題を逸らすのも何か負けたような気がする、こうなれば、同じ話題のまま進むしかないだろう。

 

 「それで、プリカ、……その、今は……」

 

 「ソシルミはどうだ、オレと別れてから、どう思った? あんな適当に決めちゃってさ」

 

 「は!? それは、だな……」

 

 いかん、何だか分からんが、俺は今猛烈なピンチにあるらしい。

 だが、それでも俺は、この会話から逃げる気にはなれないのだ。

 

 「……不安だった、お前をもう一度一人にしてしまったと思って、とんでもないことをしたんじゃないかと思った」

 

 「大げさだな」

 

 プリカは否定しながらも、どこか嬉しそうだ。

 

 「そうかもな、でも、間違いじゃなかった」

 

 「それで『おまえ』はどうだ、オレのことじゃなくて」

 

 「俺は……寂しかったさ」

 

 師匠でも、世話役でも、兄弟弟子でもない。

 隣で鍛えて、たまに教えあって、たまにスパーリングして、普段はわけのわからない機械を弄ってて、たまに俺に見せてくれる。

 そんなプリカが居た日々は、俺にとって、自分で思う以上に楽しかったのだ。

 

 「そっか、……オレのモヤモヤは、なくなったよ」

 

 「なら、良かった」

 

 「おまえの『その』顔を見れたからだな」

 

 「おい、そりゃどういうことだ?」

 

 プリカはこちらを見ないまま頷いて、神殿のフチに歩きはじめた。

 

 「オレは帰る、武道会の日に会おう、カリン塔までは迎えに来てやる」

 

 「もういいのか」

 

 「ああ、もういい、またな」

 

 振り返ってニカっと笑って、そのまま下界へと飛び込んでいくプリカは……。

 ……なんだか、いい顔をしていた。

 

 

→つづく




投稿遅れはエイジ756年以降に向けての全体シナリオ練り直しとシンエヴァのためです。
練り直しに手間取ってる間にエヴァ直撃で寝込んでました、すいません。



さて、これでエイジ753年の物語はおしまい、次にカメラが動くのはエイジ756年です。
ピッコロ大魔王の死から3年、復活したピッコロ大魔王を倒すべく、神の下で修行に励んだ二人は、ついに地上へと向かいます。
彼らは一体どのような成長を遂げ、そして、どのような戦いを繰り広げるのでしょうか。
組み上げられてきた運命の歯車は、今まさに、一つの完成を見ることになるでしょう。

さぁて次回も、サービスサービスゥ!!
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