転生地球人が宇宙最強になるまで   作:桐山将幸

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第四十三話:転生地球人が宇宙との戦いを始めるまで

 『ザザー……こちら南部方面軍、パパイヤ島から来た武道家達の協力もあり現在戦線は安定、なれど予断を許さず――――』

 

 『東の都防衛隊だ、狙い通り敵は都よりも木初の宇宙基地を狙っている、このままなら、だが――――』

 

 『――――でりゃああっ!!! お、オッス! 通信ってこれでいいんだよな? だりゃ!! オレンジシティはまだ平気だけど、ずっと続いたらオラたち腹減っちまうかも!!』

 

 『こちら西の都、ヤムチャだ!! クリリンもいる! こっちは余ゆ――――うわっ! だ、大丈夫だ、任せとけ!!』

 

 『こちら――――』

 

 「こちらスピニッチ荒野、すでに戦闘中だ、戦況は――――」

 

 「オレたち二人で十分だ、うがああああ!!!」

 

 ヘッドセットを首にかけたままのプリカが叫び、両手より光弾を射出した。

 荒れた平原の上空、夕焼け空を覆う雲霞の如き敵兵、そして円盤と戦うためだ。

 

 「スター・トライナリ・ケンタウリ!!!!」

 

 爆発、あるいは巨大な太鼓のような音と共に、光弾は数十メートルに膨れ上がり――――一気に空間を薙ぎ払った!!

 プリカを中心に回る2つの巨星。

 三連星、そして、そうである隣星の名を冠したその技は、戦闘力1000は下らないフリーザ軍の兵士を焼き、円盤を砕く。

 なんとも頼もしい姿だが、この活躍を羨む気はない、なぜなら――――

 

 「総員、やつを狙え!!」

 

 「光線砲が通じないほどじゃない、撃て!! 撃て!!!」

 

 衝撃波エネルギーを生み出し、突き刺さる敵の意思と動きを読み、俺は唱える。

 

 「灘新陰流"レーザーすべり"」

 

 その技の、容易に推測可能な効果はまさしく覿面、迫りくる光線、粒子線、エネルギーは直前でぐにゃりとその軌道を歪めて荒野へと突き刺さってゆく。

 原理は単純、衝撃波により生み出した空気の屈折で光線を曲げ、衝撃波そのものがビームを叩く、ただそれだけ。

 だが、使いこなせるのは俺だけだ。

 

 「そんな技ないだろ!!?」

 

 「新開発だ」

 

 ――――なぜなら、そうだ、二人で戦う時はいつだってこうだった。

 前衛と後衛にはっきり分かれる戦い方をせずとも、プリカの持つ直情的な戦い方を活かすためには、その集団戦に向かぬ性質をカバーする俺が必要なのだ。

 

 宇宙より飛来した大量のフリーザ軍は、概ね予想通りの地点へと降下し、地球への攻撃を開始した。

 フリーザ軍が取った戦法は、大量の兵士と円盤による力押し。

 戦法は単純なものの、未知の兵器とこれまでにない強力な敵兵に、しばらくは戸惑った。

 だが、そういう相手との戦いは、俺も、全地球人も、慣れたものだ。

 

 『こちらメンタンピン村、まだ戦闘はない、村人は魔族の襲来と勘違いして慌てている、気休めだが、襲撃前に逃しておけば多少はマシになるかもしれんな』

 

 『こちら王立防衛軍機械化部隊、北の都防衛のため、ツルマイツブリ山麓で待機中、こちらは勘違いどころか、用心棒まで雇ったらしい、影も形ないがな……まったく、ソシルミさんが何のために魔族の親玉と話を付けたと――――』

 

 ベジータが言った、『誇り』の意味は、まだわからない。

 だが、それを掴めずとも、かつて父であれと願った存在に誓ったものは、俺の腹の中にある。

 かつて見た世界への憧れ、師との絆、友との絆、世界中の戦士達との団結。

 見知った仲間も、よく知らない武道家達も――――多分、俺が把握していないだけで、沢山の知り合いや、かつての強敵達が、どこかで戦っているのだろう。

 

 「愉快だな、プリカ」

 

 技を終えたプリカに向け、俺は、わざとぶつ切りに言葉を放つ、甘える。

 

 「問題山積みだろ、サイヤ人じゃなきゃ腹痛で倒れてる……それに、早く片付けて皆を助けに行きたい」

 

 プリカの冷たい返答は、俺にだけは分かる完璧な回答だった。

 ……敵は総崩れ、息を整えたい程には疲れてはいないが、少し……プリカと話したい気分だ。

 

 「奴等の武器、最初は面倒くさかったが慣れてきた、お前はどうだ」

 

 「過保護なカレシのせいでちっとも覚えられないな、いや……それより、大丈夫か?」

 

 「何の話だ」

 

 「これは殺しだ、しかもあいつらはほとんどケダモノの魔族じゃない、人間だぞ」

 

 俺は一瞬ドキリと……いや、鼓動が跳ね上がるというよりは、かすかに押さえつけられるような感触に……すでに満たされているのに気付いた。

 悪党と戦って故郷と仲間達を守る時に、殺しをためらう程の不殺主義者になった覚えはない、が。

 

 「こればっかりは、ワクワクしないな」

 

 「対等なら殺し合いでも、オレたちを残して死んでもワクワクするくせに」

 

 「それでもワクワクするけど、死なないようにするさ」

 

 ワクワクしてない俺なんて、誰一人望んじゃいない。

 なんて、伝えようとして口を開く前に、俺達は敵の動きに気づく。

 敵がまとまりを持って動いている、これは……。

 

 「漏斗型の塊か、俺に通じる弾幕を作るためだろうな」

 

 「……あれを消し飛ばすのはムリだぞ、それなりに幅があるし、撃ったら逃げる」

 

 「だろうな、連中も考えられるじゃないか」

 

 目の前の敵に対する"危機感"は未だにない。

 あるのは、舞空術とは違う浮遊感、足元を焼く焦燥感。

 地球を守る、変えた歴史を走り切る、そう誓った意思とは裏腹に、為せることは地球全土を襲う敵の何%かを焼くことだけという焦り。

 この改変の影響(バタフライエフェクト)とも何者かの悪意ともつかぬ歴史の変質を掴みきれぬことへの焦り。

 戦士達への救援より、俺にとっては―――――

 

 「ソシルミ、技、あるんだよな」

 

 いつの間にか俺の顔を覗き込んでいたプリカが、しゃんとしろ、というように肩を叩く。

 ……そうだな、まずは、目の前の戦いだ。

 

 「ある、しっかり用意してきた、お前はただ気を高めて、とびっきり小さくて強い気弾を作って、俺の前に軽く飛ばしてくれればいい」

 

 「結局オレのパワーか?」

 

 あの悩みはもう克服しているんだろうな、そう釘を刺すように、プリカがいやらしく笑う。

 

 「違う、対等な合体技だ、今度はただの制御装置なんかじゃないぞ」

 

 「いいな、見せてくれ……っがああああ!! あああ!!」

 

 軽い口調と裏腹に、強い期待で目を輝かせたプリカは叫び、気を高めだす。

 それと、敵の群れがぞろりと動いてこちらに狙いを定めるのとは、全く同時だった。

 動く敵集団の中、はやった小物からこちらへ銃砲を向け、放ってくる。

 

 「俺の方に準備は要らない、お前はただ構えておいてくれ」

 

 答えはない、その理由が、不安もないからだというのは、聞かずとも分かった。

 俺はただひたすら、敵の攻撃を捌く、通じない攻撃は敵の苛立ちを誘い、更にその圧は高まってゆく。

 全軍に近い攻撃が一方から迫りくるのをひたすら衝撃波で防ぎ……生身も使う。

 

 「ッッッッ!!!!」

 

 輝きを纏った手を焼くレーザーの苦痛を、ヨガの呼吸でかき消す。

 皮膚がいくら削れようと俺の技に乱れはない、師の教えの賜物は、俺のすべてを望んだ戦いに注ぎ込む力を与えてくれているのだ。

 俺の手から輝く血液が散る度、プリカのエネルギーが僅かに乱れる。

 

 「も、もう…………っ!!!」

 

 「まだ引きつける」

 

 心配の色のエネルギーが、まるで浴びせかけられるように俺の背を包む。

 だが、それはフリだ。

 心配ばっかりしているフリをしながら、この時間だけは、屈託なく喜んでくれている。

 俺の――――

 

 「今だ」

 

 「があ!!!!!!」

 

 ――――幾度とも知れぬ再起に、新たなる奇跡に!!!!

 

 「()ァッッッッッ!!!!」

 

 もはや音と比べるべくもない超高速で回転した俺が放つのは、物理的には単なる張り手。

 だが、その先端には、宇宙最高の格闘技術が詰まっている。

 狙いはもちろん、プリカのエネルギーだ。

 拳を交わし、心を繋げ、体を重ね、エネルギー同士で、魂同士で結びついた俺達の『気』は、望まぬ限り互いを傷つけることはない。

 プリカのエネルギー弾は、余すことなく伝えられた俺のパワーにより……。

 

 「なっ……」

 

 戦闘の、おそらく最精鋭であろうエネルギーの大きなフリーザ軍兵士の小さな声。

 (研ぎ澄まされた感覚とはいえ、それが聞こえるほどに近かったのだと、今更気付く)

 それがあの一群が自ら立てた、最後の音だった。

 

 「どうだ、これなら寄生プレイとは誰にも言わせんぞ」

 

 「オレの気を使うのは慣れっこ、あとはいつもの衝撃波に、気力大移動に、ヘンな舞空術……オレがオレの気使うのよりよっぽど強いな、やっぱ」

 

 プリカはどこか誇らしげにしつつ、自分の言葉に自分でむず痒くなったようで、ぎゅっと強くまばたきをした。

 

 「お前の気はお前のものだ、あとヘンって言うな」

 

 「じゃあゲロビもやめろ、乙女だぞ乙女」

 

 お前は男とかジャージとか以前にそろそろ乙女という歳ではない。

 口に出したらまた蹴られそうなことを考えながら残る敵の影もない夕焼け空を眺め――――ている場合では、なさそうだ。

 

 『西の都だ! なんかでかい気がこっちに来てる!』

 

 『こちらタンドール王国軍司令部、ピラフ司令だ、全世界のフリーザ軍が兵力を動かしている! しかも、これまで待機していた精鋭まで―――――』

 

 ピラフは続けて、ほとんどすべての前線を読み上げる。

 時を同じくして、俺の感覚も掴んでいた……ベジータと同等かそれ以上の莫大なエネルギーの塊が、各方面に差し向けられてゆくのを。

 もちろん、たった今フリーザ軍を殲滅したばかりのこの荒野にもまもなく現れる、……増援とともに!

 

 「くそっ!! みんなと合流して助けに行けそうだったのに……!」

 

 「こっちに回る分、楽になったと思うしかない、……来るぞ、構えろ」

 

 無神経な俺の言葉は、一瞬プリカの心に突き刺さるが、エネルギー弾に放った平手と同じく、プリカの心はその言葉をするりと受け入れた。

 信頼感、というか、これは諦めか……まあ、いつものことだ。

 

 「……人がため息ついてるのに、ドヤ顔しやがって」

 

 「まあ、いいじゃないか」

 

 迫りくる敵を前に、気色悪いにやけ面と、ジト目が交差した。

 

 

 

 「ひぃぃぃっ!!!!」

 

 「ム、ムリだああ!!!」

 

 恐慌状態で叫ぶ見慣れぬ人種、戦闘服と呼ばれるインナーとアーマーを着込んだ彼等フリーザ軍兵士は……。

 俺達へと、まっすぐ突撃してきていた!!

 

 「ムリなら引っ込んでいろ、降伏は受け入れるッッッ!!!」

 

 「お、おれ……ぎゃっ!!」

 

 俺の言葉に応じようとした兵士が、"前後の数人ごと"遠方からのビームに撃ち抜かれて消え去った。

 怒りに揺れる俺の目に映る下手人は、兵士の群れの外、夕暮れ空に浮かぶ青紫のぶつぶつ、戦闘服、その顔にスカウターはない。

 

 「裏切り者は殺される、当然だよなぁ!!?」

 

 遠くで、聞き覚えはある、しかし聞き慣れない声ががなりたてる。

 俺の腕の一振りで兵士達は細切れに、プリカがエネルギーを振り回せば、チリになる。

 それでも突撃は止まない、まるで俺達への恐れがないかのように突撃は続く、それのわけが、奴だ!

 

 「に、逃げたって殺されるんだ!! や、やってやる!!」

 

 「北の戦場はバケモノいなくてラクだって言うぜ、今からでも……」

 

 「バカ! バレるに決まってる!!!」

 

 連中の厳しい規律……否、恐怖支配。

 フリーザ軍は単なる匪賊の集まりではないが、まともな軍隊でもない。

 外れれば味方に当たる射撃武器を使っての包囲戦、無実の味方を巻き込む情け容赦のない粛清……!

 俺はフリーザによる支配のおぞましさに恐怖しつつ、フリーザ軍の内情に触れられたわずかな喜びを胸に、兵士たちへと語りかける。

 

 「繰り返す、今すぐ戦場を離れて亡命申請を行うなら受け入れる! 粛清が怖いならば俺の後ろへゆけ!! ……指揮官のキュイ氏、貴方もだッッッ!!!」

 

 「けっ、ベジータのやつを袋叩きで追っ払ったからって調子に乗りやがって、きさまらごときがフリーザ様に勝てるかよ!!」

 

 声を張り上げるキュイ。

 キュイ――――フリーザ軍の兵士。

 元の歴史では、もともとベジータと同格の戦士だったが、裏切り者となったベジータを抹殺する任務を受けたものの、地球の戦いで腕を上げていたベジータに逆に殺されてしまう、という役回りだった人物だ。

 ……フリーザ軍でもかなり上の立場に居て、しかもフリーザへの恨みもないであろうこいつにとって、フリーザを裏切る理由はない。

 だが……。

 

 「なあプリカ、お前のパワーで連中のスカウターは全部爆発したようだが、何故あいつらは平気な顔をしているんだ?」

 

 「オレが知るか!! うっがああ!!!」

 

 戦闘力の増加を計測すると爆発するスカウター、信頼できる計器が故障したというのに恐れないのは何故だ?

 そんな疑問を脳裏にめぐらしながらも、光線をすべて回避し、敵へと手刀を叩き込む俺。

 気力を高めて光線を弾きながら、自らも幾筋ものエネルギービーム、エネルギー弾を放ち、叫ぶプリカ。

 対照的な戦い方と同じく、纏う雰囲気も対照的だ。

 プリカは間違いなく苛立っている、というか怒っている。

 それはフリーザ軍への怒りであり……。

 

 「さっさと片付けるぞ!! 早くしないと、まだまだフリーザ軍は全力じゃないのに……!!」

 

 「今の連中の強みは数に任せた捨て身の戦術だ、なら、対処法は――――」

 

 「キュイとやりたいならそう言え!」

 

 ……予想以上に余裕を失っている。

 吹っ切れたようで、プリカ自身もこの状況に思うところはあるのだ。

 いや、単純に仲間達を案じているだけなのかもしれない。

 このまま素直に突撃すれば、プリカは援護する、キュイも多分プライドから応じるだろう。

 だが、それじゃあいけない。

 

 「そうだ、俺はキュイとやりたい、あいつと一対一で戦いたい」

 

 「……なら、早く行けよ」

 

 …………。

 

 「俺は今でも、この戦いを楽しむ気でいる、地球を守る使命と、戦いの喜びは別だ」

 

 「…………わかった」

 

 プリカは、俺の要領を得ない言葉にぐっと足を上げた。

 瞬間――――衝撃!!

 

 「ぬおおおおッッッ!!!!?」

 

 蹴りだ。

 ヤクザキックか、16門キックか、足の平で蹴られた俺は激しく吹き飛び――――キュイの前でようやく止まった。

 

 「はっ!? あ、あのサイヤ人、てめえの味方じゃねえのか!!?」

 

 「……そのはずだが、まあいいッッ!! 一対一と洒落込もうじゃねえか!!!」

 

 俺は腕を刃牙の構えに、足を空中飛行に合わせて揃え、キュイに向けて突撃する。

 

 「キエエエエエッッッ!!!」

 

 「こ……このっ!!!」

 

 拳による攻撃と迎撃が交差し、激しく入れ替わる。

 周囲のフリーザ軍は割り込むどころか、援護もままならず呻くばかり。

 だが、キュイは俺の奇襲ぎみの攻撃に完全に対応している!

 敵も歴戦、流石はフリーザ軍のエリートか。

 俺は望んだ喜びを感じ、大いに笑う。

 

 「ベジータと同格というその実力、味わわせてもらうッッ!!」

 

 「ぬかしやがれサル以下があ!!!」

 

 殴り合いから逃れ、飛び退くキュイ。

 その狙いは一つ、エネルギー弾の連射による俺の抹殺だ!!

 

 「うががーっ!!!!!」

 

 「―――ッッッッ!!!」

 

 戦闘力18000の連続エネルギー弾!

 数度見たならともかく、初見のそれは俺にも消し切ることは出来ない、衝撃波で壊し、輝く手で防ぎ、ひたすら耐え…………。

 …………弾幕が途切れた!

 

 「はぁ……はぁ……はーっはっはっは!! ちょっと腕が立つくらいで、サル以下が調子に乗りやがっ――――がっ!!!?」

 

 煙の先の顎を、蹴りで撃ち抜く……が。

 

 「な、なにぃ!!? 生きてやがるだとぉ!!」

 

 「浅いかッッッ!!!」

 

 「ふざけやがって!! エネルギーが駄目なら、素手でぶち殺してやる!!!」

 

 らしくなってきた!!

 怒りに滾るキュイの拳足は、先程を遥かに超え、その歴戦という他に見るところのない技術力に反して、戦闘力18000という数値が表す以上のパワーを発揮しつつある。

 一方、この俺のパワー、身体構造は地球人の域を――――半歩しか超えない。

 そのもどかしさと、これからやる戦いへのワクワクをないまぜにして、俺は戦いながら笑う。

 

 「妙な体さばきを……! きさま、超能力者かっ!!?」

 

 「武道家くらい宇宙にもいるだろッッッ!?」

 

 「てめえ含めて、全員口だけだがなっ!!!!!」

 

 ならば試してみるか……そう言おうとした瞬間、俺の背筋に走る悪寒!

 単なるエネルギーではない、これは――――

 

 「ふっ、フリーザ様ばんざい!!!」

 

 「わ、われらがタッブ星に栄光あれ!! サイヤ人に死を!!!」

 

 後ろから俺に抱きつこうとする二人のフリーザ軍兵士!!

 エネルギー量は少ないが、それらをバラバラに振りほどく一瞬は――――

 

 「もらったぜ!!!!!」

 

 「ガ――――」

 

 キュイの一撃が俺にたどり着くのに、十分な時間だった!!

 

 

 

 ……意識は途切れることなく、だが、衝撃は一瞬だけ、現実への理解を送れさせた。

 草の混じった土煙は、キュイの一撃を受けた俺がえぐった……キュイが、俺越しにえぐった大地だ。

 遠くで、プリカが兵士達と戦っている、キュイが愉快そうにあざ笑っている。

 俺は……。

 

 「だ、大丈夫ですかソシルミさん!!」

 

 声が聞こえた、聞き覚えのない、若い男の声だ。

 

 「貴方は……」

 

 「戦場を報告するために遣わされた部隊の者です、ですが、いてもたってもいられず……」

 

 「なるほど」

 

 確かに、自分達を守るはずの俺がこんなざまでは、不安になるのも仕方ないだろう。

 なら、早く戦線に戻らなくては。

 

 「離れていてください、巻き添えを食いますよ」

 

 「待ってください! あんな威力で叩きつけられて……!!」

 

 ……認識がすれ違っている、か。

 

 「俺は平気です」

 

 「そんな、ベジータと同等ということは、計算上は今のあなたより……」

 

 「弱い」

 

 「へ?」

 

 土煙で見えないが、その兵士はたしかに顔をまぬけに歪めた。

 俺は土の味をいっそ楽しむように、ニィと口角を上げる。

 

 「大猿の一撃より、弱い」

 

 「大猿って中の都に出た、あの……」

 

 ……自分達を守るための措置とはいえ、この情報格差は寂しい。

 そうだ、俺が病の床で憧れ続けた男の一人が、傍らで俺を脅かし続けたひとが持っていた、最強の技。

 それを俺が……意識しないなんてことが、できるわけがない。

 土煙の隙間からキュイが見える、さて、そろそろ潮時か。

 

 「もう行きます、土煙に紛れてお逃げください」

 

 「あ、あのっ……!!」

 

 兵士が俺を呼び止める、俺は捨て台詞なら飛びながら聞こう、と思って一度力を込めたが、その真剣さに、足を止めた。

 

 「あの……地球は……わたしたちは、本当に勝てるんでしょうか」

 

 そうか、俺は頼られているのだ、地上最強の戦士の一角として、地球を救ってきた英雄として。

 だから、こんなにこの人は、不安げな顔をしているんだ。

 ……ああ、Z戦士はそんなことに興味なかったが、俺には悪くない。

 一瞬だけ、そんなワクワクで意識を塗り固めて……胸によぎる黒い『影』、唯一明確な不確定要素を、良き戦いのために押し込めて、俺は微笑む。

 

 「俺は奴に勝つ、仲間達も全員勝つ、あんたも勝つ、大丈夫だ――――奇跡は起きる」

 

 

 

 

 人には、満身創痍に見えるだろう。

 偏袒右肩はあちこちが破れ、手を中心にあちこちの皮膚が焼け焦げ、裂傷の数も定かならぬ俺は、ゆっくりとキュイの眼前へと昇る。

 倒すためだ。

 

 「へっ、やっぱり、地球人ってのはどれだけ鍛えてもムダな種族だったな」

 

 「――――テメエのパンチ、せっかく隙だらけの俺を殴ったってのに、ナッパより弱いぜ、ほんとにベジータと同等だったのか?」

 

 「こ、この!!! いつまでも減らず口を叩きやがって!!」

 

 侮辱のための挑発なんて、くだらないマネはしない。

 俺が品性を売って買うのはケンカじゃない、戦いの楽しみと、さらなる強さだけだ。

 

 「口だけかどうか、減らず口かどうか……次の一撃で分かる、来るといい、侵略者ッッッ!!!!」

 

 「うるせえんだよゴミカスがーっ!!!!」

 

 キュイはついに怒り狂い、俺に向かて飛びかかる、だが、その動きからは正気は失われておらず、油断もない。

 ならばどう戦うか――――

 

 「…………ッッッ」

 

 ――――俺は大猿の拳に耐えた、だが、耐えられただけでは戦えない、あの拳に抗うにはどうすればいい。

 あの拳を破るには。

 まず手にとったのは自らの肉体、強靭で頼もしく……だが、大猿の拳には耐えられない。

 次に手にとったのは心身に潜むエネルギー、……これも、足りない。

 技術――――目の前にあったのは、変身を最早行わぬ友の使う技、界王拳。

 ……使いこなすには肉体の強度が足らぬ。

 

 「くらえーっ!!!!」

 

 キュイの拳が迫る。

 ……何でも使う、俺の中にある全てを。

 肉体、エネルギー、技術、鬼の貌、見様見真似の界王拳――――俺の中のものすべてを使う。

 俺の中にないものは、何一つ使わない。

 全身全霊を込めて――――

 

 「()ィッッッッ!!!!」

 

 「な――――に……ぃ……」

 

 カウンターとして放たれた拳がキュイの腹部を貫通……否、消し飛ばした。

 

 「キュ、キュイ様が、ま……まっぷたつに……!!!?」

 

 メインの具材は築き上げた格闘技術。

 次に、エネルギーの循環を威力に変える気力大移動。

 そして、本来は体を崩壊へと導くであろう数倍の界王拳は、適切な位置と時間に絞って使うことにより技の具材へと変わる。

 最後の隠し味……それは、そこまで極まった最高の技そのものが引きずり出した、俺の裡に潜む鬼の貌、それをもって、真の完成となす。

 

 「……鬼面閃光拳」

 

 俺は、自らが生み出した技の名を呼び、戦いを見守ってくれていた相棒に勝利を報告……しようとしたその時、その相棒、プリカが怯えるフリーザ軍をかきわけ、俺の隣に飛び込んできた。

 

 「おまえらしい戦いだったな」

 

 「俺らしい戦いだったぞッッッ!!!!」

 

 かつての戦いでもそうだった、プリカは、自分達で変えた未来の責任を取るため、ただ単に皆を、地球を守るために戦う。

 だが、その中で、俺と同じ楽しみを感じてくれた、俺の楽しみ、俺の宿命を果たすために共に戦ってくれた。

 今回も、そうだったのだ。

 そんなプリカは、戦いへの出資者として、俺に質問があるようだ、俺は素直に耳を傾ける。

 

 「……それで、『誇り』は見えたか?」

 

 「まだ、分からない」

 

 だが、喜びは大きい。

 いつぶりだろうか、正面から、誰の力も頼らず強敵と戦い、打ち破ったのは……。

 その喜びをほんの僅かでも分かち合おうと、俺はプリカを見る。

 プリカは一瞬だけ笑みを浮かべ……恥ずかしげにそれを振り払うと、キッと敵を睨んだ。

 

 「そうか、じゃあさっさと蹴散ら――――」

 

 『――――こちら東の都!! 連中、宇宙基地がもぬけの殻だと気付いておかんむりだ!! 敵指揮官には傷一つつかない、このままじゃ……』

 

 『ツルマイツブリ山麓、敵に有力な指揮官はいないが、こちらにも武道家がいない、戦況は悪化する一方だ!!』

 

 『オ、オラは平気だけんど、悟飯が疲れてきたみてえだ、休ませてやりてえが……駄目だ、軍隊の皆が死んじまう……!!』

 

 声、声、声。

 通信機の向こうからは、それぞれの代表者の放つ『悲鳴のような声』だけではなく、完全なる悲鳴や断末魔までもが響く。

 『助けに行かなくては』、プリカの肩が使命を感じてびくんと揺れるが、俺はそれに答えてやれない。

 二人で守るこの戦場を見捨てれば後ろの市民はあっけなく蹂躙される。

 ――――しかし、それよりも強く俺を留めるのは、今ここでうかつに動けば、『影』が何をしでかすか、何をもたらすか分からないという恐怖。

 そして、しかも。

 じっとりと俺を包み込んでいた嫌な予感は、影ではない、影とは思えぬ、全く違う形で実態を持ち、俺に襲いかかってきていた。

 

 「ソシルミ、早く倒すぞ、油断は禁物なんて言ってる場合じゃない、ちょっとでも早く――――」

 

 「――――は、早く殲滅するぞ!! プリカッッッ!!!!」

 

 「ソ、ソシルミ!!?」

 

 巨大なエネルギーが、北の方角へと降ってゆく、サイボーグ軍人の戦う土地に。

 その数は、五。

 

 「奴等が来るッッッ!!!」

 

→つづく




お久しぶりです、桐山です。


……また大分開いてしまいましたね、すいません。
とはいえ、やるべきことはやったので、これから加速していく……といいなあ。


さて、ついにやってきたフリーザ軍、全世界への攻撃に、同じく全世界で立ち上がった戦士達。
携えるものが技か兵器かなど、地球を守らんとする意思の統一を前には、意味を成さぬ。
戦え、地球の戦士たちよ。
今だ姿を表さぬ帝王、そして影を倒し、この星に、しばしの平和を。
『転生地球人が宇宙最強になるまで』
フリーザ編……そして、最終編、はじめッッ!!!


次回もお楽しみに!!
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